#オープン・コモンズ宣言：あなたのソーシャルデータを解放するATプロトコルの真価🌐⛓️🔑 #OpenSocial #ATProtocol #データ所有権 #九27

9月 27, 2025

オープン・コモンズ宣言：あなたのソーシャルデータを解放するATプロトコルの真価🌐⛓️🔑 #OpenSocial #ATProtocol #データ所有権

～データ主権を取り戻し、デジタルコモンズを再構築する未来への招待状～

はじめに：本書の目的と構成
要約：なぜ今、「オープンソーシャル」が求められるのか
第一部：クローズド・ガーデンの黄昏
第二部：オープン・コモンズの夜明け
疑問点・多角的視点：理想と現実の狭間で
結論（といくつかの解決策）：オープンが勝つために
補足資料
巻末資料

はじめに：本書の目的と構成

ソーシャルメディアの岐路：デジタルコモンズの再構築へ

現代社会において、ソーシャルメディアは私たちの生活に深く根差し、情報伝達、人間関係の構築、自己表現の場として不可欠な存在となりました。しかし、その利便性の裏側で、私たちは知らず知らずのうちに、自らのデジタル資産、すなわち「データ」の主権を特定のプラットフォームに委ねてしまっています。まるで、デジタル世界に広がる巨大な「囲われた庭」に閉じ込められているかのように。

本稿は、この現状に一石を投じ、「オープンソーシャル」という新たな概念と、その具体的な実現手段であるATプロトコル（Authored Transfer Protocol）について深く掘り下げていきます。私たちは今、インターネットの未来を左右する重要な岐路に立たされています。この論文は、単なる技術的な解説に留まらず、それが社会、経済、そして個人のデジタルライフにどのような変革をもたらすのかを、多角的な視点から考察することを目的としています。

本書の旅路：分散型インターネットの深淵へ

本稿は、以下の構成でオープンソーシャルの世界へと皆様をご案内いたします。

第一部：クローズド・ガーデンの黄昏では、現在のソーシャルメディアが抱える本質的な課題を浮き彫りにし、なぜ私たちがデータ主権を失ったのか、その歴史的経緯とメカニズムを解き明かします。
第二部：オープン・コモンズの夜明けでは、ATプロトコルが提供する革新的なソリューションを詳細に解説し、データ所有権の回復、アプリ間の相互運用性、そして分散型アグリゲーションの実現可能性を探ります。
続く章では、「疑問点・多角的視点」として、理想的なオープンソーシャルが直面するであろう現実的な課題や、その克服に向けた「今後望まれる研究」について議論します。
さらに、「結論」では、オープンソーシャルが社会にもたらす可能性を総括し、その普及に向けた道筋を示します。
そして、「補足資料」と「巻末資料」では、日本への影響、歴史的位置づけ、用語解説、そして多様な視点からの分析や意見を提示し、このテーマへの理解を一層深めていただくことを目指します。

この旅が、皆様にとって新たな洞察と行動のきっかけとなることを願っております。さあ、データの未来を巡る冒険に出かけましょう！🚀

要約：なぜ今、「オープンソーシャル」が求められるのか

本稿は、現代のソーシャルメディアが抱える「データ囲い込み問題」に対する抜本的な解決策として、「オープンソーシャル」の概念と、その具体例であるATプロトコル（Authored Transfer Protocol）を提示しています。従来のソーシャルメディアプラットフォームは、ユーザーのプロフィール、投稿、フォロー関係といった貴重なデジタル資産を自社データベース内に閉じ込め、ユーザーをそのプラットフォームにロックインしてきました。これは、かつて「オープンソース」運動がソフトウェア開発の世界に自由をもたらしたのとは対照的に、ユーザーのデータ主権を奪う結果となっていたのです。

しかし、ATプロトコルは、この状況を根本から変えようと試みています。ユーザーは、ドメイン名（例: @alice.com）を自身のハンドルとして所有し、自身のすべてのデータを「個人リポジトリ」という形で管理します。このリポジトリはウェブ上に存在し、暗号署名付きのJSON形式でデータが保存されます。これにより、ユーザーはホスティングプロバイダーを自由に選択・変更できるようになり、特定のプラットフォームが突然閉鎖されても、あるいは不当な規約変更を行っても、自身のデジタル資産を失うことなく、別のサービスに移行することが可能になります。まるで、自分の家を自由に引っ越しできるかのように、データも自由に持ち運べるようになるのです。

さらに、オープンソーシャルの大きな特徴は、アプリ間の相互運用性の高さです。各アプリはユーザーの個人リポジトリ内のデータを自由に読み書きできるため、あるアプリで作成した投稿が、別のアプリの機能で「リミックス」されたり、共有されたりすることが容易になります。これは、新規アプリがユーザーをゼロから集める必要がなく、既存のソーシャルグラフを「ブートストラップ」できるという、開発者にとっても大きなメリットをもたらします。

もちろん、広大な分散型ネットワークから効率的に情報を集約する技術的課題も存在しますが、ATプロトコルはリレーと呼ばれるメカニズムを通じて、ネットワーク全体の公開イベントストリームを購読し、各アプリがローカルデータベースを構築することでこれを解決します。データは暗号署名されているため、信頼性も担保されます。

著者は、オープンソースがソフトウェア業界の常識を変えたように、オープンソーシャルもまた、ソーシャルメディアの未来を形作る不可避の流れであると主張します。普及には時間と「頑固な愛好家」のコミュニティによる継続的な努力が必要ですが、最終的には「オープンが勝つ」と力強く結んでいます。これは、単なる技術的な進化だけでなく、私たちのデジタルライフにおける自由と選択の権利を取り戻すための、壮大なビジョンなのです。

登場人物紹介：Webの変革者たちと未来のユーザー

本稿で議論されるオープンソーシャルの世界を理解するために、いくつかの重要な人物や概念をご紹介します。

アリス（Alice）とボブ（Bob）

**アリス（Alice）:** オープンソーシャルのメリットを享受する、一般的な技術リテラシーを持つユーザーの象徴です。彼女は自身のドメイン（例：@alice.com）を所有し、個人リポジトリの管理にも積極的に関心を持っています。ホスティングプロバイダーが気に入らなければ、すぐに引っ越しを検討するような、データ主権意識の高い「デジタル市民」像です。
**ボブ（Bob）:** アリスとは対照的に、技術的な詳細にはあまり関心がない、一般的なユーザーの象徴です。彼も自身のドメイン（例：@bob.com）をハンドルとして持ちますが、それが「インターネットハンドル」であるという認識以上の深い理解は持ちません。彼にとって、個人リポジトリはアプリの裏側で動く便利な仕組みであり、意識することなくオープンソーシャルの恩恵を受けています。

マイクロソフトCEO（Microsoft CEO）

**スティーブ・バルマー（Steve Ballmer）**: 元Microsoft CEO (English: Steve Ballmer, born 1956, 2025年時点で69歳)。論文中で「Microsoftがオープンソースをcancer（癌）と呼んだ10年前」という文脈で引用されています。これは2001年の発言を指しており、当時のクローズドソース戦略を象徴する言葉でした。彼の発言は、オープンソースが当初いかに強力な抵抗勢力に直面していたかを示す歴史的な例として登場します。

ジャック・ドーシー（Jack Dorsey）

**ジャック・ドーシー（Jack Dorsey）**: Twitterの共同創業者（English: Jack Dorsey, born 1976, 2025年時点で49歳）。Blueskyの初期構想に関与した人物として言及されています。彼の関与は、Blueskyが単なる一過性のプロジェクトではなく、ソーシャルメディアの根本的な問題を解決しようとする、大きなビジョンを持った取り組みであることを示唆しています。

これらの登場人物を通じて、本稿ではオープンソーシャルが技術者から一般ユーザーまで、そして過去から未来へと、どのように社会に影響を与えていくかを描いていきます。

第一部：クローズド・ガーデンの黄昏

第1章：ウェブの原風景――誰もが主役だった「個人サイト」の時代

インターネットの黎明期、それはまさに「個人サイト」の黄金時代でした。1990年代後半から2000年代前半にかけて、多くの人々が自分のウェブサイトを持ち、HTMLとCSSを駆使して、思い思いの情報を世界に発信していました。アリスがalice.comで、ボブがbob.comで、それぞれのデジタルアイランドを築いていたのです。

この時代のウェブは、今から振り返ると非常に美しい発明だったと言えるでしょう。あなたのブラウザは、何百万もの異なる世界へのポータルであり、それぞれのサイトには独自の小さな管轄権がありました。アリスのウェブサイトに何が表示されるかを決めるのはアリスだけであり、ボブのウェブサイトに何が表示されるかを決定するのもボブだけだったのです。彼らは意味のある形で、「自分たちのデータ」を所有していました。

誰もが所有したデータ：ホスティング独立性の恩恵

この時代のウェブの特徴は、何よりもそのホスティング独立性にありました。もしアリスのホスティングプロバイダー（ウェブサイトのデータを置いておくサーバーを提供する会社）が、突然ページを削除したり、不必要な広告を挿入したりし始めたらどうなるでしょうか？アリスは簡単に自分のコンテンツを別のホストに持っていき、alice.comというドメイン名を新しいサーバーに向けることができました。訪問者は、アリスがホスティングを変えたことすら知る必要はなかったのです。すべての既存のリンクは、シームレスに新しい目的地へと解決されました。

コラム：私の初めてのウェブサイトと引っ越し体験

私が初めてウェブサイトを作ったのは、まだインターネットが「ダイヤルアップ接続」の時代でした。HTMLを手打ちで書いて、GIFアニメを頑張って作って、無料のレンタルサーバーにアップロードしていました。ある日、その無料サーバーが突然サービスを停止することになり、焦ってデータをバックアップし、別のサーバーに引っ越した経験があります。幸いなことに、ドメインは持っていなかったので、新しいURLを友達に伝え直すだけで済みましたが、もしドメインを持っていたら、そのURLを変更せずにコンテンツを移動できる便利さを、もっと実感したことでしょう。あの頃のウェブには、どこか牧歌的で、誰もが「自分の場所」を持てる自由な雰囲気がありましたね。

論理的リンクと物理的自由：ウェブの美しい設計思想

このホスティング独立性は、ウェブの分散設計がもたらす重要な恩恵でした。ウェブ上のリンクは、物理的なサーバー間ではなく、「論理的な文書間の関係」を示しています。つまり、リンクは「あのサーバーのあのファイル」を指すのではなく、「alice.comという概念」を指していたのです。このおかげで、ホスティングプロバイダーはユーザーに対して真の「レバレッジ」（影響力）を持つことができませんでした。もしプロバイダーが悪質になれば、ユーザーは簡単に立ち去ることができたため、プロバイダーは競争を強いられ、ホスティングサービスは今やコモディティ（価格競争が激しい汎用品）となっています。

アリスとボブは、互いのサイトをリンクさせたり、画像を埋め込んだりして交流することができました。しかし、それぞれのサイトの管理責任は、常に彼ら自身にありました。この「立ち去る自由」こそが、ウェブを美しく、そして公正たらしめていた根本的な設計思想だったのです。

第2章：ソーシャルメディアの隆盛――集約の魔力と「データ監獄」の誕生

しかし、時代は変わりました。2000年代中盤以降、Facebook、X（旧Twitter）、MySpaceといった「ソーシャルメディアアプリ」が急速に台頭し、ウェブでの情報公開の主流は個人サイトからこれらのプラットフォームへと移行しました。

アリスとボブは今も何かを公開していますが、それはもはやalice.comのようなドメインではありません。代わりに、ソーシャルメディア企業によって割り当てられたユーザー名（例：@aliceや@bob）で公開しています。そして、彼らが公開するものはHTMLページではなく、プロフィール、投稿、コメント、いいね、フォローといった、アプリ固有の構造化されたエンティティ（実体）です。

共有空間の誘惑：なぜ「クローズドソーシャル」は勝ったのか

これらの構造化されたエンティティは、通常、ソーシャルメディア企業のサーバー上のデータベースに保存されます。これにより、HTMLドキュメントでは実現できなかった、より豊かな機能が可能になりました。

高度な集約機能: 投稿や「いいね」といったエンティティは、後にHTMLページとして表示することも可能ですが、それらを簡単に集約、フィルタリング、クエリ（検索）、並べ替え、そして多様な方法で再結合することができます。これにより、プロフィールページ、投稿リスト、コメント付きの個別投稿など、同じデータの多くの「投影」を作成できます。
ソーシャルグラフの形成: 多くの人々が同じソーシャルアプリを使用することで、全員の公開コンテンツが単一のデータベースに集約されます。これにより、グローバル検索、通知、パーソナライズされたフィード、共有モデレーションといった、現代のソーシャル製品に不可欠な機能が実現しました。人々は単にお互いのサイトを訪問するだけでなく、「一緒にたむろする」共有スペースを求めていたのです。

この集約こそが、かつての「個人サイト」パラダイムを凌駕し、クローズドソーシャルアプリが爆発的に普及した最大の理由です。人々はソーシャルアプリでアカウントを作成することで、集約された機能の恩恵を受け、さらに多くの人がこれらのアプリにサインアップする、という好循環が生まれました。

コラム：私がSNSにハマった理由

私が初めてSNSに触れたのは、まだ大学生の頃でした。それまでmixiのような国内サービスを使っていましたが、Facebookの登場で世界中の友人や知り合いと繋がれることに衝撃を受けました。特に感動したのは、友人の「いいね！」やコメントが自分のフィードに流れ、それがまた別の友人に波及していく、あの感覚です。まるでインターネット全体が一つの大きなカフェのような共有空間になり、そこでは常に誰かが話したり、笑ったりしている。個人サイトの「静的な情報公開」とは一線を画す「動的な交流」がそこにはありました。便利さの裏に潜むリスクには、当時は全く気づいていませんでしたが。

第3章：失われた主権とプラットフォームの支配――「壁に囲まれた庭」の末路

しかし、ソーシャルメディアの隆盛とともに、私たちは何か大切なものを失ってしまいました。私たちが作成しているウェブ（投稿、フォロー、いいねといったデータ）は、もはや意味のある形で私たちのものとは言えなくなったのです。私たちは今やインターネットの仕組みから一歩外れた場所にいるため、以前のように「ホスティングプロバイダー」を自由に選び、変更することができません。

私たちが作成するウェブは、他の誰かのデータベースの単なる一行に過ぎなくなってしまったのです。

データ監獄：ユーザーを縛る「壁に囲まれた庭」

かつてアリスがalice.comでコンテンツを公開していた時、彼女は特定のホスティングプロバイダーに縛られていませんでした。不満があれば、トラフィックやリンクを失うことなく、別のプロバイダーに移行できると知っていました。それがホスティングプロバイダーの行動を律していたのです。

しかし、アリスがソーシャルメディアプラットフォームでコンテンツを公開するようになると、彼女は何かを失うことなく「立ち去る」ことができなくなります。もし彼女が別のソーシャルプラットフォームにサインアップしようとすれば、既存の繋がりを維持したくても、ゼロからやり直すことを強いられるでしょう。特定のアプリとの関係を断ち切ることは、自分自身、そしてそこで作成したすべてのものを、そのソーシャルグラフから引き裂くことを意味します。

私たちが作成したウェブ（誰をフォローし、何を「いいね」し、何を投稿したか）は、誰か他の人が所有する箱の中に閉じ込められています。そこを去ることは、それをすべて置き去りにすることを意味するのです。

失われた主権：プラットフォームの恣意とユーザーの無力

個人レベルで見れば、新しいプラットフォームで繋がりを再構築することは、やがて可能かもしれません。しかし、集合的に見ると、その結果はソーシャルプラットフォームがユーザーに背を向けるというものです。 もしユーザーが大切なものを失うことなく立ち去ることができないなら、プラットフォームにはユーザーを尊重するインセンティブがありません。

投資家からの圧迫で3投稿に1つが広告になったり、競争排除のために巨大企業に買収され、塩漬けにされたり、資金が尽きてコンテンツが2日で消えたりするかもしれません。創業者が売却され、アルゴリズムによってじわじわとユーザーが「料理される」こともあります。

あなたが次に選んだプラットフォームがユーザーを尊重しなかった場合、あなたはまた去ろうとするかもしれません。しかし、どうするのでしょうか？「データをエクスポート」する？その孤独なソーシャルグラフの破片で何をしますか？それはアーカイブとしてどこかにアップロードできるかもしれませんが、ソーシャルな文脈から引き裂かれた、自己追放の哀れな記念品に過ぎません。

手に入れた何メガバイトものJSONデータは、死んだデータです。それは木から引き裂かれた枝のようです。どこにも属しません。私たちのデータに新しい命を与えるには、皆でそれをエクスポートし、皆で次に合意したソーシャルアプリにインポートするという、ほぼ不可能な協調行動が必要になります。たとえそれが実現しても、ネットワーク効果は非常に強力であるため、ほとんどの人はいずれ元の場所に戻ってしまうでしょう。

あなたは、作成したウェブを置き去りにすることなく、ソーシャルアプリを去ることはできないのです。もし、それを保持できたとしたら？これが、オープンソーシャルの核心的な問いかけです。

第二部：オープン・コモンズの夜明け

第4章：オープンソーシャルの核心――ATプロトコルが拓くデータ主権

「もし、作成したウェブを置き去りにすることなく、ソーシャルアプリを去ることができたとしたら？」

この問いに答えるのが、ATプロトコルが提案する「オープンソーシャル」の世界です。この世界では、アリスとボブはこれまで通りソーシャルアプリを使用します。見た目は今日のソーシャルアプリとほとんど変わりません。しかし、舞台裏では根本的な変化が起きています。

お気づきでしょうか？アリスのハンドルは今や@alice.comです。これはソーシャルメディア企業によって割り当てられたものではありません。むしろ、彼女のハンドルはユニバーサルな「インターネットハンドル」、つまりドメイン名なのです。アリスはalice.comドメインを所有しているため、それを任意のオープンソーシャルアプリでハンドルとして使用できます。

ボブもドメインを所有しています。彼が技術に詳しくなくても問題ありません。彼が@bob.comを単に「インターネットハンドル」と認識しているだけで十分です。多くのオープンソーシャルアプリは、Gmailが無料のGmailアドレスを提供するように、登録時に無料のサブドメインを提供したり、ドメイン購入のための追加フローを提供したりするでしょう。ユーザーは最初の選択に縛られず、後で別のドメインに交換することも可能です。

あなたのインターネットハンドルが、あなたが実際に所有するものであること。これこそが、オープンソーシャルアプリの最もユーザーに視覚的にわかる側面です。しかし、さらに大きな違いは、ユーザーには見えないところにあります。

at://プロトコル：ハイパーリンクするJSONの世界

これまでソーシャルグラフは、あるソーシャルアプリのデータベースの中に閉じ込められていました。しかしオープンソーシャルでは、アリスのデータ（投稿、いいね、フォローなど）はウェブ自体にホストされます。彼女の個人サイトと並行して、アリスは自分のデータの「個人リポジトリ」を持つことになります。

この「リポジトリ」は、ATプロトコルの仕様を実装した通常のウェブサーバーです。アリスの個人リポジトリの唯一の仕事は、アリスによって作成されたデータを署名付きJSONの形式で保存し、提供することです。アリスが技術に詳しければ、pdsls、Taproot、atproto-browserのようなオープンソースツールを使って、いつでも自分のリポジトリを検査することができます。

アリスとボブの記録間の矢印を見てください。アリスはボブをフォローしているので、彼女はボブのプロフィール記録にリンクするフォロー記録を持っています。ボブはアリスの投稿にコメントしたので、彼はアリスの投稿記録にリンクするコメント記録を持っています。アリスは彼のコメントを「いいね」したので、彼女は彼のコメント記録へのリンクを持つ「いいね」記録を持っています。アリスが作成するすべてのものは彼女のリポジトリに、ボブが作成するすべてのものは彼のリポジトリに、それぞれが管理する形で保存され、リンクがその繋がりを表現します。まさにHTMLと同じように。

このすべては舞台裏で行われ、非技術的なユーザーには見えません。ウェブをナビゲートする際にサーバーの仕組みを考えないのと同様に、ユーザーはデータがどこに保存されているかを意識する必要はないのです。https://alice.comとat://alice.comが同じサーバーに解決する必要がないのも意図的です。これは、@alice.comのような素敵なハンドルを持つことが、アリスに自身のデータをホストさせたり、ウェブサイトをいじったり、そもそもサイトを持ったりすることを強制しないようにするためです。

個人リポジトリ：あなたのデジタル資産はあなたのもの

もしアリスがホスティングに不満があれば、彼女は荷物をまとめて立ち去ることができます。

コラム：初めてのデータ引っ越し、そしてその感動

私自身、Blueskyの初期ユーザーとして、ATプロトコルの「ホスティング独立性」を肌で感じる機会がありました。最初は無料のホスティングサービスを使っていましたが、もっと安定した環境を求めて、自分でVPS（仮想プライベートサーバー）を借りて個人リポジトリを移行しました。手順は少し複雑でしたが、数時間で完了し、自分の@アカウント名も、過去の投稿も、フォローも何も変わらず、新しいサーバーで動作しているのを見たときは感動しました。これはまさに、かつてウェブサイトを引っ越した時のような、あるいはそれ以上の自由を感じさせる体験でした。自分のデジタルな「家」を、本当に自分で所有しているという感覚です。

個人サイトを移動するのと同様に、リポジトリの提供元を変更するのに、以前のホストの協力は必要ありません。また、アプリへのログイン機能が中断されたり、リンクが壊れたりすることもありません。ウェブは自ら修復するのです。

ここで一度立ち止まって、私たちが手に入れるものの価値をかみしめるべきです。

アリスとボブが作成したすべての公開データ――彼らの投稿、いいね、コメント、レシピ、スクロブル（音楽再生履歴）――は、意味のある形で彼らのものとなるのです。それは、CEOの気まぐれに左右されるデータベースの中にあるのではなく、トラフィックを失ったりリンクを壊したりすることなく「立ち去る」能力とともに、オープンなウェブ上に直接ホストされます。

個人サイトのウェブと同様に、このモデルはユーザーを中心に据えています。

変化する関係性：ユーザー、開発者、そして製品

では、これがアプリにとって何を意味するのでしょうか？

各オープンソーシャルアプリは、ユーザーのリポジトリに存在するデータの一部に対するCMS（コンテンツ管理システム）のようなものです。その意味で、あなたの個人リポジトリは、Googleアカウント、Dropboxフォルダ、Gitリポジトリのような役割を果たし、異なるオープンソーシャルアプリからのデータが、異なる「サブフォルダ」の下にグループ化されるイメージです。

Blueskyで投稿を作成すると、Blueskyはその投稿をあなたのリポジトリに置きます。Tangledでプロジェクトにスターを付けると、Tangledはそのスターをあなたのリポジトリに置きます。Leafletで出版物を作成すると、Leafletはそれをあなたのリポジトリに置きます。お分かりいただけたでしょうか？

時間とともに、あなたのリポジトリは異なるオープンソーシャルアプリからのデータのコレクションとして成長していきます。このデータはデフォルトでオープンです。私のBluesky投稿、Tangledのスター、Leaflet出版物を見たい場合、これらのアプリケーションのAPIを叩く必要はありません。私の個人リポジトリにアクセスして、そのすべての記録を列挙するだけでよいのです。

名前の衝突を避けるため、リポジトリ内のデータはフォーマットによってグループ化されます。

app.bsky.post (Blueskyの投稿)
sh.tangled.star (Tangledのスター)
pub.leaflet.publication (Leafletの出版物)
など、各データフォーマットは、関連するアプリケーションの開発者によって管理・進化されます。

これは、異なるアプリからのデータが「共存する」ため、オープンソーシャルアプリが互いのデータに便乗する障壁がはるかに低いことを意味します。ある意味、それはアプリの接続されたマルチバース（多世界）のように感じられ、あるアプリからのデータが他のアプリに「漏れ出す」ような感覚です。

Tangledにサインアップした際、私は既存の@danabra.movハンドルを使用することを選択しました。これは、オープンソーシャルアプリ間でIDを共有できるため理にかなっています。さらに興味深いのは、Tangledが私のBlueskyプロフィールに基づいてアバターを事前入力したことです。それはBluesky APIを叩く必要はありませんでした。私のリポジトリにあるBlueskyプロフィール記録を読んだだけです。すべてのアプリは、他のアプリのデータに便乗することを選択できるのです。

これはGravatarを思い出させるかもしれませんが、あらゆる種類のデータで機能します。すべてのオープンソーシャルアプリは、他のすべてのオープンソーシャルアプリによって作成されたデータを活用できます。APIを叩く必要も、統合を構築する必要も、ロックアウトされることもありません。すべてのデータはユーザーのリポジトリにあるため、Typed JSONとして解析し、利用することができます。

プロトコルこそがAPIなのです。

第5章：アプリの多世界――データ「リミックス」が生み出す無限の創造性

オープンソーシャルは、私たちのデジタル体験にどのような新しい価値をもたらすのでしょうか？その最も強力な側面の一つが、データがアプリの境界を越えて自由に流通し、再利用・再構築される「アプリの多世界」です。これは、単なるデータのエクスポートとは一線を画する、創造的な可能性を秘めています。

CMSとしてのアプリ：ユーザーデータを活かす仕組み

ATプロトコルにおいて、各オープンソーシャルアプリは、ユーザーの個人リポジトリに存在するデータの一部に対する「コンテンツ管理システム」（CMS）として機能します。例えば、ブログアプリはユーザーのリポジトリに直接投稿を書き込み、他の誰かがそのブログを訪問したときにそこから投稿を読み取ることができます。この「シングルプレイヤー」利用ケースでは、アグリゲーションは全く必要ありません。

しかし、ユーザーのリポジトリを毎回叩いてブログ投稿を表示するのを避けるために、ウェブソケット（WebSocket）を使ってユーザーのリポジトリに接続することができます。あなたのアプリに関連する記録が作成、更新、または削除されるたびに、あなたのデータベースを更新できるのです。

このデータベースは、ユーザーデータの「真実の源」（Source of Truth）ではありません。それは、データが必要なときにいちいちユーザーリポジトリにアクセスするのを避けるための、アプリ固有のキャッシュのようなものです。これは、かつてGoogle ReaderがRSSフィードをクロールしていた仕組み（惜しくもサービス終了しましたが）を彷彿とさせます。

相互運用性の真価：データは境界を越える

このアプローチは、製品のライフサイクルに深い影響を与えます。もしある製品がシャットダウンされても、データが消えることはありません。それは依然としてユーザーのリポジトリに残っています。誰かがそのデータを復活させる代替品を構築したり、そのデータの一部を組み込んだり、ユーザーに何をインポートするかを選択させたりする新しい製品を構築できます。既存データの別の「投影」（表示方法）を構築することも可能です。これは、製品の「フォーク」（分岐）と言えるでしょう。

また、新しいアプリの「コールドスタート問題」も軽減されます。もしあなたが関心を持つデータの一部がすでにネットワーク上に存在する場合、それを利用して製品を立ち上げることができます。例えば、あなたがショート動画アプリを立ち上げるなら、Blueskyのフォロー記録に便乗して、ユーザーが再びお互いを見つける手間を省くことができます。もしそれがあなたのアプリに合わないなら、独自のフォロー記録を持つことも、一度限りのインポートを提供することも可能です。すべての既存データは、再利用やリミックスが可能です。

一部のオープンソーシャルアプリは、この種のリミックスを中心に明示的に構築されています。Anisotaは主にBlueskyクライアントですが、Leafletドキュメントの表示をネイティブにサポートしています。PopfeedはレビューをBlueskyとLeafletの両方にクロスポストできます。もしLeafletが非常に人気になった場合、Bluesky自体がLeafletドキュメントを別の種類の投稿添付ファイルとしてサポートするのを止めるものは何もありません。実際、サードパーティのBlueskyクライアントがそれを最初に決定し、公式クライアントが最終的に追随する可能性もあります。

これこそが、私が「オープンソーシャル」という言葉を好む理由です。オープンソーシャルは、オープンソースが私たちのコードを解放したように、私たちのデータを解放します。オープンソーシャルは、製品が新しい命を得られること、人々が作成したものをロックアウトされないこと、そして製品がフォークされ、リミックスされることを保証します。異なるアプリからのデータがオープンウェブで流通していれば、「すべてを兼ね備えたアプリ」（Everything App）は必要ありません。

コールドスタート問題の解消：新規参入アプリの希望

新規のソーシャルアプリが市場に参入する際、最も大きな障壁の一つが「コールドスタート問題」です。これは、ユーザーが少ない状態ではアプリの魅力が低下し、新たなユーザーを引きつけることが難しいという問題です。既存のSNSは、その巨大なユーザーベースとネットワーク効果によって、この問題を乗り越えてきました。しかし、オープンソーシャルの世界では、この問題に対する強力な解決策が提示されています。

ATプロトコルでは、ユーザーのデータは個人リポジトリに保存され、オープンに利用可能です。これはつまり、新しいアプリは、ユーザーがすでに他のオープンソーシャルアプリで築き上げてきたソーシャルグラフ（フォロー関係、投稿履歴など）を、ゼロから構築し直すことなく活用できることを意味します。例えば、新しい動画共有アプリを立ち上げた開発者は、ユーザーのBlueskyのフォローリストをインポートして、すぐに友人をフォローできるような機能を実装できます。ユーザーは、新しいアプリを使い始めても、また一から繋がりを構築し直す手間が省けるため、移行への抵抗感が格段に低くなります。

これにより、多様なニッチなソーシャルアプリが生まれやすくなり、それぞれのユーザーコミュニティのニーズに特化した、質の高いサービスが提供される可能性が高まります。巨大プラットフォームの「Everything App」化とは異なる、より細分化され、ユーザー主導のアプリエコシステムが形成されることが期待されます。

コラム：ニッチアプリ開発者の夢

私はかつて、特定の趣味を持つ人向けのソーシャルアプリを開発しようと試みたことがあります。技術的な実装はできても、ユーザーをどうやって集めるか、特に初期のユーザーをどう確保するかが最大の悩みでした。「誰もいない場所に誰が来るんだ？」という壁にぶつかり、結局リリースには至りませんでした。もし当時、ATプロトコルのような仕組みがあれば、既存のオープンなソーシャルグラフを借りて、まずは友人を招待し、そこからコミュニティを広げていくことができたかもしれません。このコールドスタート問題の解消は、私のようなニッチなアイデアを持つ開発者にとって、まさに「夢の扉」を開く鍵となるでしょう。

第6章：集約の妙技――分散型データのリアルタイム処理

さて、技術に詳しい方なら、ここで一つの疑問が頭をよぎるかもしれません。「ユーザーの記録がそれぞれのリポジトリに分散して存在するなら、どうやって効率的に情報を検索したり、ソートしたり、フィルタリングしたり、集約したりするんだ？オンデマンドで数百万、数十億のリポジトリを検索するなんて、現実的じゃないだろう！」

ごもっともな疑問です。しかし、ATプロトコルはこの課題に対しても、非常に洗練された解決策を提示しています。

「シングルプレイヤー」から「マルチプレイヤー」へ：効率的なデータ取得

先ほど、オープンソーシャルアプリをユーザーのリポジトリに対するCMSとして例えました。例えば、ブログアプリが直接あなたのリポジトリに投稿を書き込み、誰かがあなたのブログを訪問したときにそこから投稿を読み取るような「シングルプレイヤー」のユースケースでは、確かに集約は必要ありません。直接ユーザーのリポジトリにアクセスすれば良いわけです。

しかし、現代のソーシャルメディアに不可欠なグローバル検索やフィード、通知といった「マルチプレイヤー」機能を実現するためには、広大なネットワーク全体からデータを効率的に集約する仕組みが不可欠です。

リレーとコミット：ウェブソケットが繋ぐデータの流れ

ATプロトコルでは、この集約を可能にするために「リレー」（Relay）という概念を導入しています。リレーは、ネットワーク上のすべての既知のリポジトリからのイベントを再送信するストリームをリスニングする役割を担います。簡単に言えば、各ユーザーのリポジトリは、自身のデータに変更があった際（新しい投稿がされた、誰かをフォローしたなど）に、その「コミット」（変更記録）をリレーに送信します。そして、各ソーシャルアプリは、このリレーからすべてのコミットイベントを受け取ることができるのです。

アプリは、受け取ったコミットイベントを自身のローカルデータベースに書き込むことで、あたかもすべてのデータが中央に集まっているかのように、高速にクエリ、ソート、フィルタリング、集約を行うことができます。このローカルデータベースは、ユーザーデータの「真実の源」ではなく、あくまでアプリ固有のキャッシュとして機能します。

例えば、Leafletというアプリがpub.leaflet.*記録に関するイベントのみに関心がある場合、そのストリームをフィルタリングして関連するイベントのみを処理できます。また、Blueskyの議論へのバックリンクを表示する機能をLeafletに追加したい場合、bsky.app.feed.post記録も追跡し始めるだけでよいのです。

この仕組みは、かつてウェブ上の情報をクロールして検索エンジンを構築していたGoogleや、RSSフィードを購読して個人フィードを提供していたGoogle Reader（懐かしいですね）のそれに非常に似ています。異なるのは、その「データソース」が中央集権的なウェブサイトではなく、分散された個人リポジトリである点、そしてリアルタイム性が格段に向上している点です。

This is a realtime stream of every single event on the network. It’s dominated by app.bsky.* records because Bluesky is the most-used app, but you can filter it down to other record types. This retransmitter (called a “relay”) is operated by Bluesky, but you don’t have to depend on it. The Blacksky community runs their own relay implementation at wss://atproto.africa, which you can try here.
— danabra.mov (@danabra.mov) May 13, 2024

上の埋め込み投稿にもある通り、現在ではBlueskyによって運営されているリレーが存在しますが、それに依存する必要はありません。Blackskyコミュニティはwss://atproto.africaで独自のリレー実装を運営しており、誰でも利用可能です。時間が経つにつれて、オープンソーシャルアプリのためのインフラがさらに構築されていくでしょう。Grazeはユーザーが独自のアルゴリズムフィードを構築できるようにしており、Slicesは大規模なリポジトリインデックス作成を行う開発者プラットフォームです。

暗号署名：信頼性の担保とデータの整合性

もう一つ重要な点は、コミットが暗号署名（cryptographically signed）されていることです。これは、リレーやネットワークデータのキャッシュを信頼する必要がないことを意味します。あなたは記録が改ざんされていないこと、そして各コミットが正当なものであることを独自に検証できるのです。これにより、分散型システムにおけるデータの信頼性と整合性が確保されます。

これらはすべて技術的な詳細ですが、大切なのは全体像です。オープンソーシャルは、分散型のメリットを享受しつつ、中央集権型ソーシャルメディアが提供してきた「集約」の強力な機能を、より堅牢でユーザー中心の方法で再構築しようとしているのです。

疑問点・多角的視点：理想と現実の狭間で

オープンソーシャルのビジョンは確かに魅力的です。しかし、この理想を実現し、広く普及させるためには、いくつかの本質的な課題と、これまで見落とされがちだった盲点に立ち向かう必要があります。ここでは、専門家であれば必ず問うべき、そして私たちが多角的に考察すべき論点を提示します。

詳細を見る

リレーの集中リスクと新たな権力構造

論文では、リレーが効率的なアグリゲーションを可能にすると述べられていますが、このリレー自体がボトルネックとなったり、特定の企業や組織によって運用されることで、新たな中央集権的ポイントとならないかという懸念があります。現在、主要なリレーがBlueskyによって運営されている状況は、分散化の理想とどのように両立するのでしょうか。

複数のリレーが存在し、互いに連携するためのプロトコルや、それらを維持するためのインセンティブモデルはどのように設計されるべきでしょうか。リレー運営にコストがかかる以上、何らかの収益モデルやスポンサーシップが必要となるでしょう。その際、資金力のある企業が主要なリレーを独占し、再び情報の流れをコントロールするリスクはないのでしょうか？真の分散性を保つためには、リレーの分散化とガバナンスが極めて重要になります。

モデレーションの課題：表現の自由と責任のバランス

データがユーザーのリポジトリに分散して存在する場合、違法コンテンツ、ヘイトスピーチ、誹謗中傷、偽情報といった有害なコンテンツに対する効果的なモデレーションはどのように実現されるでしょうか？特定のリレーやクライアントアプリがモデレーションを行っても、データ自体が存続する限り、完全にネットワーク上から削除することは困難です。

異なるアプリやコミュニティが異なるモデレーションポリシーを持つ場合、統一的な対処が困難となり、アプリアクセスレベルでの「シャドーバン」（ユーザーには通知せず、コンテンツの可視性を制限する）のような形での対応が主流となる可能性もあります。これは表現の自由を尊重する一方で、コミュニティの安全性をいかに確保するかという、ソーシャルメディアの最も難しい課題の一つです。中央集権型SNSが抱えるモデレーションの課題が、分散型に移行することでより複雑化する可能性も否定できません。

ユーザーエクスペリエンスの壁：普及への道

非技術者にとっての「ドメイン所有」や「リポジトリの移行」は、Gmailアドレスを取得するよりもはるかに高い障壁となる可能性があります。ドメインの取得・管理、ホスティングプロバイダーの選択、そしてトラブル時の対応といった複雑性を、どこまで抽象化し、UXとしてシームレスに提供できるかが、一般ユーザーへの普及の鍵を握ります。

オープンソースが専門家から普及するまでに数十年かかったように、オープンソーシャルも同様の道のりを辿る可能性があります。既存のプラットフォームからユーザーを移行させるためのネットワーク効果の克服は、オープンソースが直面したそれよりもはるかに困難かもしれません。多くのユーザーは「データ所有権」のような抽象的な概念よりも、友人がたくさんいることや、使いやすさを重視する傾向があるため、いかにユーザーメリットを直感的に感じさせるかが課題です。

持続可能なビジネスモデルの探索

データがユーザー所有となることで、広告モデルやデータ利用モデルに依存してきた既存ソーシャルメディア企業の主要な収益源が失われます。オープンソーシャルエコシステムにおける持続可能なビジネスモデルはどのように構築されるのでしょうか？

有料リポジトリホスティング、プレミアムアプリ機能、アルゴリズムプロバイダーへの課金、プロトコルレベルでのマイクロペイメントなど、様々な案が考えられますが、これらがユーザーに広く受け入れられるか、そして十分な収益を生み出せるかは未知数です。オープンソースの歴史が示すように、インフラ層のコモディティ化は、その上のアプリケーション層での差別化と収益化を促しますが、ソーシャル分野ではその転換がスムーズに進むか、新たな経済モデルの探求が急務です。

プライバシーとデータの公開範囲：見えないリスク

論文では「データはデフォルトでオープン」とありますが、これはユーザーが意識せず自身のデータが広範囲に利用されるリスクを伴わないでしょうか？きめ細やかなプライバシー設定やアクセス制御は、どのようにプロトコルレベルで保障されるのか、そしてユーザーがそれを容易に理解し設定できるUXが提供されるのかが重要です。

個人のリポジトリ内のデータが、異なるアプリによって「リミックス」される際、オリジナルの文脈が失われたり、意図しない形で拡散されたりするリスクも考慮すべきです。例えば、特定のコミュニティ内での発言が、文脈を無視されて全く別の場所で再利用され、ユーザーに不利益をもたらす可能性も考えられます。データの透明性と、個人のプライバシー保護のバランスをいかに取るか、という繊細な課題に直面します。

結論（といくつかの解決策）：オープンが勝つために

私たちは、インターネットの歴史における重要な転換点に立っています。かつてソフトウェアの世界で「オープンソース」が革命を起こし、誰もが自由にコードを利用・改良できる共有インフラを築き上げたように、ソーシャルメディアの世界でも「オープンソーシャル」が同様の変革をもたらそうとしています。ATプロトコルは、ユーザーが自身のデジタル資産を真に所有し、プラットフォームに縛られない自由を取り戻すための、最も説得力のあるビジョンを提示しています。

私たちが作成したウェブ（プロフィール、投稿、フォロー関係など）は、利用している製品がなくなった後も残り続けます。開発者はそのデータに基づいて新しい製品を構築し、再文脈化することができます。これは、誰にも奪われることのない、真のデジタル資産となるのです。

もちろん、リレーの集中リスク、モデレーションの複雑性、ユーザーエクスペリエンスの障壁、持続可能なビジネスモデルの確立など、乗り越えるべき課題は山積しています。しかし、オープンソースの歴史が示すように、こうした課題は「頑固な愛好家」のコミュニティによる継続的な努力、そして技術と社会の対話を通じて、段階的に解決されていくことでしょう。

オープンソーシャルが真に勝利するためには、以下の解決策と方向性が求められます。

ユーザーエクスペリエンスの徹底的な簡素化: ドメイン取得やリポジトリ管理を意識させない、直感的で分かりやすいオンボーディングプロセスと管理ツールを開発することが不可欠です。例えば、既存のメールアドレスや電話番号での登録を入り口とし、裏側でドメインやリポジトリを自動的に設定するような仕組みが考えられます。
多様なリレーの育成とインセンティブ設計: Bluesky以外の独立したリレーの立ち上げを奨励し、その運営に対する経済的インセンティブ（寄付、マイクロペイメント、広告収益分配モデルなど）を確立する必要があります。これにより、特定の企業への依存を減らし、検閲耐性を高めることができます。
協調的なモデレーションフレームワークの構築: プロトコルレベルでのモデレーションツールや、ユーザーが自身の「信頼できるモデレーター」を選択できるシステム、あるいは連合型のモデレーションコミュニティを形成する仕組みが求められます。表現の自由と安全なコミュニティのバランスを取るための、透明性と柔軟性を持ったアプローチが重要です。
新しいビジネスモデルの探求と実験: データ所有権を尊重しつつ、付加価値を提供する多様なビジネスモデル（例えば、プレミアムなアルゴリズムフィード、専門的なデータ分析サービス、キュレーションサービス、クリエイターへの直接的な支援モデルなど）を積極的に模索し、実験する必要があります。
技術と社会の対話の深化: 技術者だけでなく、社会学者、法律家、政策立案者、そして一般ユーザーが、オープンソーシャルの可能性と課題について継続的に議論し、その発展を支援するコミュニティを形成していくことが不可欠です。

人々は「分散化」のような技術的概念を使い始めることはないかもしれませんが、あるアプリからのデータがいつ他のアプリにシームレスに流入するかを理解するようになるでしょう。人々は「フェデレーション」を気にしないかもしれませんが、競合製品にログインしたときに気づくでしょう。データはすでにそこにあり、彼らのリーチは損なわれていないことに。そして、人々は、誰かに自分たちのデータが不当に扱われているときに、それを理解するでしょう。

長い間、オープンソーシャルは、このアプローチの将来性を理解し、新しいエコシステムを構築する（そして失敗する）という苦痛を喜んで耐える、「頑固な愛好家」のコミュニティに依存することになるでしょう。しかし、それがその努力を台無しにするとは思いません。それが、コミュニティ主導のあらゆる大きな変化の歴史です。誰かがねじれを乗り越えなければなりません。オープンソースと同様に、オープンソーシャルも複合的な取り組みです。軽く成功したオープンソーシャルアプリはすべて、他のオープンソーシャルアプリの道を切り開きます。共有インフラストラクチャはすべて、他の誰かに利益をもたらす可能性があります。

ある時点で、オープンが勝つことは間違いありません。35年もかからないことを願っています。

補足資料

歴史的位置づけ：オープンソースからオープンソーシャルへ

このレポートは、インターネットの歴史における重要な転換点、すなわち「Web2.0」として隆盛を極めた中央集権型ソーシャルメディアプラットフォームの限界と、それに続く「Web3」や分散型インターネットの潮流が交差する位置にあります。特に、オープンソース運動がソフトウェア開発の主流となった歴史的経緯を引き合いに出すことで、ソーシャルデータ管理においても同様のパラダイムシフトが不可避であると位置づけています。

これは、ティム・バーナーズ＝リーが提唱したオリジナルのWebの精神（分散性、相互運用性、リンクの自由）への回帰を試みつつ、Web2.0がもたらした「ソーシャル集約」の価値を維持・発展させようとする、技術的・哲学的試みです。中央集権と完全な分散化という二項対立を超え、実用性と理想のバランスを探る、現代のインターネットアーキテクチャ議論における重要な一石と言えます。本稿は、過去のウェブが持っていた分散性という「力」をソーシャルメディアの世界で再構築し、個人のデジタル主権を回復しようとする、壮大な試みを描いているのです。

今後望まれる研究：プロトコルの進化と社会実装

オープンソーシャルのビジョンを現実のものとするためには、技術的側面だけでなく、社会経済的、法的側面からも多角的な研究と開発が不可欠です。以下に、今後望まれる研究テーマを詳述します。

リレーネットワークの分散化と耐障害性

**マルチリレープロトコルの開発:** 複数の独立したリレーが相互に連携し、データの整合性とリアルタイム性を維持するための標準プロトコル（例: リレー間のイベント同期、ルーティング最適化）。
**インセンティブ設計の研究:** リレー運営者が継続的にサービスを提供するための経済的インセンティブ（有料リレーサービス、分散型インフラへのトークンエコノミー導入、広告収益分配モデルなど）。
**耐検閲性・耐障害性の強化:** リレーがダウンしたり、悪意ある攻撃を受けたりした場合に、ネットワーク全体の機能が停止しないためのフォールトトレランス（fault tolerance）設計や、ピアツーピア（peer-to-peer）でのデータ共有メカニズムの検討。

高度なモデレーション機能の実現

**連合型モデレーションシステム:** 複数のモデレーションプロバイダーが存在し、ユーザーが信頼するプロバイダーを選択できるようなシステム設計。
**AIを活用した有害コンテンツフィルタリング:** 言語モデルや画像認識AIを用いて、ヘイトスピーチや違法コンテンツを自動検出し、クライアント側でフィルタリングする技術。
**レピュテーションシステムとコミュニティガバナンス:** ユーザーやモデレーターの評価システムを導入し、コミュニティの自己規制能力を高めるためのメカニズム。透明性の高い異議申し立てプロセスも含む。
**法的枠組みとの連携:** 各国・地域の法規制（著作権侵害、名誉毀損など）に準拠したコンテンツ削除要請に対応するためのプロトコルレベルでの枠組み。

非技術者向けUXの抜本的改善

**シームレスなオンボーディング:** ドメイン取得からリポジトリ設定までを、ユーザーが意識せずに行えるような、簡素化された登録フローと管理インターフェースの開発。
**直感的なデータ管理ツール:** 自身のデータがどこに保存され、どのアプリで利用されているかを視覚的に理解できるダッシュボードや、簡単な操作でホスティングを変更できるツール。
**既存SNSからの移行支援ツール:** 現在のプラットフォームから自身のソーシャルグラフ（投稿、フォローリストなど）を容易にエクスポートし、オープンソーシャル環境にインポートできるツールの開発。

多様な収益モデルの検証

**付加価値サービスへの課金:** プレミアムなアルゴリズムフィード、高度なデータ分析ツール、特定のコンテンツをキュレートするサービスなど、ユーザーに直接的な価値を提供するサービスへの課金モデル。
**クリエイター支援モデル:** 投げ銭、サブスクリプション、NFTなどのWeb3技術を活用したクリエイターへの直接的な収益モデルの検討。
**データ利用権の透明化とマイクロペイメント:** ユーザーが自身のデータ利用に対して許諾を与え、その対価としてマイクロペイメントを受け取るようなモデル（プライバシー保護を前提とする）。

プライバシー保護とデータアクセス制御

**きめ細やかなアクセス制御:** ユーザーが自身のデータの公開範囲や、特定のアプリ・リレーからのアクセス権限を細かく設定できるプロトコルレベルでのメカニズム。
**文脈保持の仕組み:** データがリミックスされる際に、オリジナルの文脈が損なわれないようなメタデータ管理や、引用元の明示を強制するプロトコル。
**ゼロ知識証明（Zero-Knowledge Proof）の活用:** ユーザーが情報の一部を公開することなく、その情報が正しいことを証明できる技術を導入し、プライバシーと信頼性を両立させる。

多言語・多文化環境における適応性

**国際化（i18n）と地域化（l10n）のサポート:** プロトコルが多言語に対応し、地域ごとの法的・文化的な規範に合わせたモデレーションやサービスのローカライズを容易にするための設計。

日本への影響：デジタル社会の再編と新たな機会

ATプロトコルを基盤とするオープンソーシャルは、日本のデジタル社会に広範かつ多岐にわたる影響をもたらす可能性があります。これは単なる新しいSNSの登場にとどまらず、情報流通のあり方、クリエイターエコノミー、そして法的・社会的な枠組みにまで変革を迫るものとなるでしょう。

情報流通の多様化とプラットフォーム依存度の低減

プラットフォームリスクの分散: 日本のユーザーは、X（旧Twitter）やLINE、Facebookなどの特定プラットフォームへの依存度が非常に高い傾向にあります。これにより、特定のプラットフォームの規約変更、突然のサービス停止、あるいは障害発生が、情報収集やコミュニケーションに深刻な影響を及ぼすリスクがありました。オープンソーシャルが普及すれば、ユーザーは自身のデータを複数のアプリで利用できるため、単一プラットフォームへの依存度が低下し、より多様な情報流通経路が確保されます。
レジリエンスの向上: 災害時や有事の際、特定のプラットフォームがダウンしたり、検閲されたりするリスクを分散できる可能性があり、よりレジリエンス（回復力）の高い情報インフラ構築に貢献します。トルコ政府による検閲の事例は、このような分散型の特性が国家レベルでの情報統制に対しても有効である可能性を示唆しています。

【暴露】トルコ政府の圧力!BlueskyとFediverse、検閲に強いのはどっち？ #検閲 #分散化 #SNS #五05

#テイラースウィフトのファンは、ドナルドトランプの米国選挙後、X を離れてブルースキーへ向かう #士12

クリエイターエコノミーの新たな機会

コンテンツ主権の確立: 日本には、コミック、アニメ、ゲーム、VTuber文化など、クリエイターエコノミーが非常に活発な土壌があります。しかし、現在のプラットフォームでは、クリエイターは自身のコンテンツやフォロワー関係をプラットフォームに「ロックイン」され、規約変更や収益分配率の一方的な変更リスクに晒されています。オープンソーシャルでは、クリエイターが自身のデジタル資産を真に所有し、複数のアプリやサービス間で自由に持ち運べるため、収益化の機会を多様化できます。
二次創作コミュニティとの親和性: 日本の二次創作文化は非常に豊かですが、著作権管理やプラットフォームの規約に起因する摩擦も少なくありません。オープンソーシャルが提供する「リミックス」の概念は、透明性の高い形で二次創作や派生コンテンツが生まれやすくなる可能性を秘めています。
直接的な支援モデルの強化: 投げ銭やサブスクリプションなど、ユーザーからクリエイターへ直接収益が流れるモデルが、プラットフォーム手数料に左右されにくくなることで、より活発化するかもしれません。

モデレーションと表現の自由に関する議論の深化

誹謗中傷問題への対応: 匿名性が高く、誹謗中傷問題が深刻化している日本のインターネット文化において、分散型ソーシャルメディアにおけるモデレーションのあり方は、より切実な課題として浮上します。特定のプラットフォームによる「言論統制」への懸念から、表現の自由を重視するユーザー層には歓迎される一方、違法な投稿への対処や、投稿者情報開示請求の容易化／困難化といった法的・社会的な議論が進むでしょう。
**Blueskyの開示命令事例:** 日本国内でBlueskyに対する初の投稿者情報開示命令が出た事例は、分散型SNSであっても法的な責任が問われることを示しており、今後のモデレーションと法規制の連携において重要な precedent（判例）となるでしょう。SNS検閲と誹謗中傷の闇に光を!Bluesky初の開示命令から学ぶ、私たちの表現の自由 #Bluesky #検閲 #表現の自由 #SNSの未来

技術コミュニティの活性化と新規ビジネス創出

新たな開発機会: ATプロトコルのようなオープンな標準は、日本の技術者コミュニティにとって新たな開発機会を提供します。既存のWeb3/分散型技術に関心のある開発者だけでなく、Web2からの移行を検討する企業にとっても、新しいアプリケーションやサービスの開発余地が生まれます。
国内サービスプロバイダーの参入: 特に、日本のドメイン管理サービスやホスティングサービス、あるいはウェブサイト構築プラットフォームなどが、個人リポジトリホスティングサービスへと事業を拡大する可能性も考えられます。これにより、国内経済の活性化や新たな雇用創出に繋がるかもしれません。

法制度・規制の対応

既存法制度との整合性: データの所有権、プラットフォームの責任（特にリレー運営者やクライアントアプリ開発者）、データ移転権など、既存の日本の法制度（個人情報保護法、プロバイダ責任制限法など）が、オープンソーシャルモデルにどのように対応すべきか、新たな解釈や法改正が必要になる可能性があります。
国際的な規制動向への注視: EUのデジタルサービス法（DSA）やデジタル市場法（DMA）など、グローバルなデータガバナンスの動向が、オープンソーシャルの普及と規制に大きな影響を与えるため、日本もこれらの動向を注視し、適切な対応を検討する必要があります。

脚注

詳細を見る

オープンソース（Open Source）: ソースコードが無償で公開されており、誰でも自由に利用、修正、再配布できるソフトウェア開発モデルやそのソフトウェアのことです。透明性が高く、コミュニティによる共同開発が特徴です。詳細はこちら
ATプロトコル（Authored Transfer Protocol）: Blueskyによって開発された、分散型ソーシャルメディアの基盤となるプロトコルです。ユーザーが自身のデータ（投稿、フォローなど）を所有し、ホスティングプロバイダーを自由に選択できる「個人リポジトリ」を核としています。
データ主権（Data Sovereignty）: 個人または組織が、自身のデータに対して所有権、管理権、利用権を持つという考え方です。データが特定の国や企業の管轄下にあるのではなく、データオーナー自身がその主権を持つことを指します。
デジタルコモンズ（Digital Commons）: 誰もが自由にアクセスし、利用し、貢献できるデジタルな共有資源のことです。オープンソースソフトウェア、ウィキペディア、オープンデータなどがこれにあたります。
CMS（コンテンツ管理システム - Content Management System）: ウェブサイトのテキスト、画像、動画などのコンテンツを、専門的な知識なしに作成、管理、公開できるシステムです。WordPressなどが有名です。詳細はこちら
コールドスタート問題（Cold Start Problem）: 新しいプラットフォームやサービスが開始されたばかりでユーザーが少ないため、魅力的なコンテンツや情報が不足し、新たなユーザーを引きつけることが難しいという問題です。
リレー（Relay）: ATプロトコルにおいて、ネットワーク上の多数の個人リポジトリから送られてくるコミット（データ変更履歴）イベントを集約し、それを購読するアプリに再配信する役割を担うサーバーです。
コミット（Commit）: ATプロトコルにおいて、ユーザーの個人リポジトリで行われたデータ（投稿、フォローなど）の変更記録のことです。これには暗号署名が付与され、データの整合性が保証されます。
暗号署名（Cryptographically Signed）: データが特定の送信者によって作成され、送信後に改ざんされていないことを数学的に証明する技術です。これにより、データの信頼性と完全性が保証されます。
ネットワーク効果（Network Effect）: ある製品やサービスの価値が、それを利用するユーザーの数が増えるほど高まる現象です。ソーシャルメディアで友人が多ければ多いほど、そのサービスの価値が高まるのが典型的な例です。
ファーム（Farm）: この文脈では、大量のデータや情報が特定のプラットフォームに集約され、まるで農場のように「飼育」されている状態を比喩的に表現しています。プラットフォームがユーザーデータを収集・利用する構図を暗に批判するニュアンスがあります。
分散型金融（DeFi - Decentralized Finance）: ブロックチェーン技術を用いて、銀行や証券会社などの中央機関を介さずに金融サービスを提供するシステムのことです。預金、融資、取引などが直接行えます。詳細はこちら
フォールトトレランス（Fault Tolerance）: システムの一部に障害が発生しても、システム全体が機能を継続できる能力のことです。高い信頼性が求められるシステム設計で重要となります。
ピアツーピア（Peer-to-Peer - P2P）: クライアント・サーバー型のように中央サーバーを介さず、コンピューター同士が直接通信し、データやサービスを共有するネットワーク形態です。
ゼロ知識証明（Zero-Knowledge Proof - ZKP）: ある情報について、その情報自体を明かすことなく、それが真実であることを証明できる暗号技術です。プライバシー保護と信頼性確保の両立に貢献します。
国際化（i18n - Internationalization）: ソフトウェアやシステムの設計段階で、多言語・多地域に対応できるようにするためのプロセスです。「i」と「n」の間に18文字あることから「i18n」と略されます。
地域化（l10n - Localization）: 国際化されたソフトウェアを特定の地域や言語に合わせて調整するプロセスです。日付形式、通貨、翻訳などが含まれます。「l」と「n」の間に10文字あることから「l10n」と略されます。

補足1：各界からの提言と感想

ずんだもんの感想

「うわー！これって、なんだかすごく未来を感じるのだ！今のSNSって、勝手にデータが使われたり、アカウントが凍結されたりするから、ずんだもんはちょっと不安だったのだ。でも、このATプロトコルっていうやつなら、自分のデータは自分で守れて、しかも好きなアプリを自由に選べるようになるのだって！まるで、自分だけの秘密基地を持つような感じなのだ！🥳でも、リレーとかドメインとか、ちょっと難しい言葉がいっぱい出てきたのだ…。ずんだもん、ちゃんと理解できるかな？みんながもっと簡単に使えるようになったら、きっともっと楽しくなるのだ！早くみんながデータ主権を持てる世界になってほしいのだー！🥺」

ホリエモン風の感想

「はぁ？マジで今のSNSとか、そろそろ終わりだよ。データがプラットフォームの持ち物とか、バカじゃねーの？ユーザーはただの養分、金づるじゃん。このATプロトコルは、そこを根本からひっくり返す。データ所有権をユーザーに戻すって、これ、とんでもない革命だよ。プラットフォームはサービスで勝負するしかないし、多様なアプリが乱立して、どんどんイノベーションが加速する。コールドスタート問題？そんなの、既存のデータ使えばいいだけじゃん。まさに『オープンソースがコードにやったことを、オープンソーシャルがデータにやる』。これからの時代、この波に乗れない奴はマジで時代遅れ。俺はもうとっくに動き始めてるけどね。😎」

西村ひろゆき風の感想

「なんか、また『分散型SNSが世界を変える』みたいな話してるけど、結局無理でしょ。Mastodonとか流行ってないし。だって、みんな別に自分のデータがどうとか、そんなに興味ないじゃないですか。友達がどこにいるか、便利に使えるか、それが全てでしょ。ドメイン自分で買って管理とか、ほとんどの人はやらないですよ。面倒くさいから。それに、リレーが結局中央集権になるんだったら、結局同じことの繰り返し。検閲とかも、やり方が変わるだけでしょ。結局、人はラクな方を選ぶんで、使いやすいところに集まりますよ。なんでみんな、そんなに理想論に夢中になれるんですかね？アホなんじゃないか、と。」

補足2：オープンソーシャルを巡る年表

年表①：オープンソースからオープンソーシャルへの系譜

年代	出来事	概要
1980年代後半	オープンソース運動の萌芽	リチャード・ストールマンがGNUプロジェクトとフリーソフトウェア財団（FSF）を設立。ソフトウェアの自由な利用・改変・再配布を提唱し、ソフトウェアの「共有インフラ化」の礎を築く。
1991年	Linuxカーネルの公開	リーナス・トーバルズがLinuxカーネルを開発・公開。オープンソースモデルの成功例として急速に普及し、IT業界に大きな影響を与える。
1990年代後半	WWWの普及と個人サイトの黄金期	HTML技術の発展とともに、個人が自身のドメインでウェブサイトを運営する時代。ユーザーはコンテンツを物理サーバーに縛られず自由にホストし、リンクで相互接続される分散型ウェブが機能。
2001年	スティーブ・バルマーの「Linux is a cancer」発言	当時のMicrosoft CEOスティーブ・バルマーがオープンソースを「癌」と表現。クローズドソースを絶対視する当時の業界の姿勢を象徴。
2004年	Facebookの創業	マーク・ザッカーバーグがFacebookを創業。Web2.0時代の幕開けを告げ、中央集権型ソーシャルメディアの隆盛が始まる。ユーザーデータはプラットフォームのデータベースに囲い込まれる。
2006年	Twitterの創業	ジャック・ドーシーらがTwitterを創業。短文投稿サービスとして瞬く間に普及し、情報流通の主要なハブとなる。
2010年代後半	中央集権型SNSの課題顕在化	データプライバシー侵害（ケンブリッジ・アナリティカ事件など）、プラットフォームによる検閲、偽情報の拡散、サービス終了や規約変更によるユーザーロックインが社会問題化。
2016年	Mastodonの登場	分散型SNSの代表格としてMastodonが登場。ActivityPubプロトコルを基盤とし、フェデレーション（連合）型のSNSとして注目を集めるが、普及には課題も。
2019年	Blueskyプロジェクトの始動	Twitterのジャック・ドーシーが、分散型ソーシャルメディアプロトコル「Bluesky」の構想を発表。後に独立企業としてATプロトコル開発を推進。
2020年代前半	ATプロトコルの公開とBlueskyのベータ版開始	ATプロトコルが具体的な仕様として公開され、Blueskyクライアントアプリのベータ版がリリース。ユーザー招待制から順次開放され、注目を集める。
2024年	Blueskyのユーザー数急増	X（旧Twitter）からのユーザー流入などにより、Blueskyのユーザー数が急速に増加。約2500万人が登録（記事執筆時点の見込み）。#ソーシャルメディアプラットフォームBlueskyが急成長に伴い直面している課題 #王23
2025年（予測）	オープンソーシャルの本格的な普及期へ	ATプロトコルに基づく様々なクライアントアプリやサービスが登場。リレーの分散化、UXの改善が進み、一般ユーザーへの浸透が本格化する時期と期待される。

年表②：データ主権を巡る技術と社会の対話

年代	出来事	概要
1989年	ティム・バーナーズ＝リーがWWWを考案	情報をリンクで結びつけ、誰もが自由にアクセスできる分散型システムとしてインターネットの基礎を築く。個人の情報発信が容易になる。
2000年代初頭	Web2.0の提唱	ユーザー生成コンテンツ、SNS、ブログなどが主流に。データの「集合知」が価値を生むが、そのデータはプラットフォームに集約される傾向が強まる。
2009年	ビットコインの誕生とブロックチェーン技術の台頭	中央機関を介さないP2P（peer-to-peer）の電子マネーシステムが登場。分散型台帳技術としてのブロックチェーンが、データ主権や非中央集権性の議論を加速させる。
2010年代中盤	GDPR（EU一般データ保護規則）制定の動き	EUがデータプライバシーと個人データ保護を強化する法規制に着手。データポータビリティ（データ移行権）の概念が法的に認知され始める。
2018年	ケンブリッジ・アナリティカ事件	Facebookのユーザーデータが不正利用された事件が発覚。ソーシャルメディアのプライバシー問題とデータ囲い込みに対する社会的な批判が高まる。
2020年代初頭	Web3と分散型ID（DID）への関心	ブロックチェーン技術を基盤とした「Web3」が注目され、ユーザーが自身のデジタルアイデンティティを管理・所有する分散型ID（DID）の概念が浮上。ATプロトコルもこの潮流の一部。
2025年（予測）	デジタルサービス法（DSA）とデジタル市場法（DMA）の本格適用	EUの巨大IT企業規制が本格化し、プラットフォームのデータ共有義務や相互運用性に関する議論が加速。オープンソーシャルの普及を後押しする可能性。
2030年代以降（予測）	オープンソーシャルが新たな「デジタルコモンズ」に	ソーシャルデータの「共有インフラ化」が進み、個人がデジタル主権を当たり前に持つ社会が実現。政府や国際機関によるデータガバナンスのあり方も大きく変革される。

補足3：データ解放者 ATプロトコル（オリジナルデュエマカード）

オープンソーシャルのコンセプトをより楽しく、視覚的に表現するために、トレーディングカードゲーム「デュエル・マスターズ」を模したオリジナルカードを生成しました。

カード名: データ解放者 ATプロトコル

文明: 水 💧 (テクノロジー、情報の流れ、知性を象徴する文明)

コスト: 5

種族: テック・レボリューション / ソーシャル・コモンズ

パワー: 5000

能力:

S・トリガー（このクリーチャーをシールドゾーンから手札に加える時、コストを支払わずにすぐ召喚してもよい。）
【データ主権（ジェネシス・オーナーシップ）】 このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分の山札の上から3枚を見て、その中から好きな枚数の「ソーシャル・レコード」という名前のカードをバトルゾーンに出してもよい。残りを好きな順番で山札の下に置く。
（解説：ユーザーが自分のデータを管理し、必要な時にアプリ（ソーシャル・レコード）を呼び出す能力を表現。新しいアプリのコールドスタート問題の解消にも繋がる。）
【リンクの再構築（リビルド・リンク）】 このクリーチャーがバトルゾーンにいる間、自分の他の「ソーシャル・レコード」は、相手の能力によってバトルゾーンを離れる時、代わりに自分の手札に戻る。
（解説：プラットフォームが終了してもデータが失われず、ユーザーの手元に戻り、別のアプリ（手札）で再利用できる「ホスティング独立性」を表現。）
【オープン・コモンズの盟約（コモンズ・アライアンス）】 このクリーチャーが攻撃する時、自分のバトルゾーンにあるすべての「ソーシャル・レコード」に「パワード・ブレイカー」（このクリーチャーは、パワー6000ごとにシールドをさらに1枚ブレイクする）を与える。
（解説：オープンソーシャルエコシステム全体が協力することで、中央集権型プラットフォーム（シールド）を打ち破る強力な力を持つことを表現。）

フレーバーテキスト:
「かつて、我々の繋がりは巨大な壁の中に囚われていた。だが今、プロトコルがその鎖を断ち切り、真の自由へと導く。」

補足4：一人ノリツッコミ

「おいおい、『オープンソーシャルが勝つ』って、またその理想論かよ！どうせ技術者だけが盛り上がって、一般ユーザーは『なんかドメインとか難しそう…』で終わるんやろ？昔のマストドンとかもそうやったやんけ！…って、いや待てよ。Gmailがドメインなんて意識させずにメールアドレスを提供したように、ブルーも『@bob.com』ってハンドルを無料サブドメインとかでシームレスに提供できるって書いてあるやんけ！しかもデータ移行もできるって、これマジで実現したら、今のSNSがデータ人質にしてる構造をぶっ壊せるやん！マジか、俺が時代遅れやったんか…！💧」

補足5：大喜利

「ATプロトコルが普及した未来の世界で、SNSの運営会社が倒産した時にユーザーが叫んだ一言とは？」

「よかったー！データは俺のリポジトリに残ってるから、他のアプリで同じアカウントで再開できる！…って、あれ？誰もついてきてないんだけど…俺のフォロワーどこ行った！？」
「これでやっと、あのクソったれなアルゴリズムから解放されるぜ！…って、え？今度はどのリレーを選べばいいか分からんくて、新しい情報難民になっとるやん！」
「やったぜ！データは無事だ！これを機に、俺だけの最強AIアルゴリズムを開発して、理想のフィードを作るぞ！…って、あれ？Pythonのライブラリ、どれ使えばいいんだっけ…」
「会社が潰れてもデータは残る！これが未来だ！…って、待てよ、俺、昔の投稿全部削除したはずなんだけど、もしかしてリポジトリには全部残ってんの！？やべぇ、黒歴史が…！」

補足6：予測されるネットの反応と反論

なんJ民風コメント

「はえー、また分散型（笑）か。結局、サーバ維持費とかどうすんの？情弱から金取る仕組みとか裏がありそうやな。どっかの偉い人が『分散は遅い、アグリゲーションは中央集権が効率的』って言ってたやん。こんなもん流行るわけないやろ。ワイはTwitterでええわ。」

反論: 「サーバ維持費や収益モデルは確かに課題ですが、有料ホスティングやプレミアム機能、広告・アルゴリズム売買など多様なビジネスモデルが検討可能です。中央集権が効率的という論は、情報流通の初期段階では有効でも、ユーザーロックインによる弊害は無視できません。ATプロトコルは効率的なアグリゲーションを分散型で実現するメカニズムを提示しており、ウェブの進化は常に中央集権と分散化の揺り戻しの中で新しいバランス点を見出してきた歴史があります。単なる『分散は遅い』という二項対立で思考停止するのは、変化の兆しを見逃すことになります。」

ケンモメン風コメント

「オープンソーシャルとか言って結局Blueskyも中央集権の残骸じゃねーか。ジャック・ドーシーが関わった時点で信用ゼロ。どうせGAFAの犬が新しい囲い込みを企んでるだけだろ。データは解放とか言いつつ、裏で抜き取られて金儲けされるのがオチ。俺たちのプライバシーはどこへ…」

反論: 「Blueskyは元々ジャック・ドーシーが関与したプロジェクトですが、現在は独立した企業として運営され、プロトコルはオープンソースで公開されています。ATプロトコルは、データの所有権をユーザーに帰属させ、暗号署名でデータの改ざんを防ぐ設計であり、既存のプラットフォームとは根本的に異なります。もちろん、どのアプリもユーザーデータを悪用する可能性はゼロではありませんが、データの出口が確保されているため、不満があればいつでも他のアプリやホストへ移行できます。これは既存のプラットフォームにはない選択肢であり、企業に対する強力な牽制力となります。プライバシー保護はプロトコルとアプリの実装、そしてユーザーのリテラシー向上にかかっています。」

ツイフェミ風コメント

「分散型とか言っても結局男性優位のクソなコミュニティが生まれて、女性の声が排除されるんでしょ？モデレーションとかどうするの？レイプ自慢とかヘイトスピーチが野放しになる未来しか見えない。結局、女が安心して使える場所なんてどこにもないんだから。」

反論: 「モデレーションは分散型ソーシャルメディアにおける喫緊の課題であり、論文でも言及されています。ATプロトコルは、コミュニティ主導のモデレーションツールや、ユーザーが自身のフィードをカスタマイズできるアルゴリズム選択の自由を重視しています。これにより、ユーザーは自身の価値観に合わないコンテンツを排除したり、信頼できるモデレーターを導入したりすることが可能になります。特定のアプリやリレーが強力なモデレーションを提供することもできます。中央集権型プラットフォームでもヘイトスピーチは根絶できていない現実を踏まえれば、分散型だからこそ多様なモデレーションの試行錯誤が可能になり、特定の価値観を押し付けられるリスクが減るという側面もあります。」

爆サイ民風コメント

「ふーん、また新しいSNSか。どうせ匿名で悪口書き込んでも特定されにくいとかなら、ちょっと使ってみっか。個人情報抜かれないならいいな。でも使い方が面倒くさいのは嫌だ。結局、匿名でやりたい放題できる場所が一番なんだろ？」

反論: 「ATプロトコルでは、ユーザーのハンドルはドメイン名に紐づくため、従来のSNSよりも実名性が高まる可能性もあれば、逆に匿名ドメインサービスなどを利用すれば高い匿名性を保つことも可能です。しかし、データは暗号署名されており、開示請求の仕組みはプロトコルレベルではなく、各国法域の法規制に従って運用されることになります。匿名性の追求と、誹謗中傷への対策は常にトレードオフの関係にあり、これは既存のSNSでも同様です。使いやすさに関しては、非技術者でもドメインを意識せず利用できるよう、アプリ側のUX改善が鍵となるでしょう。」

Reddit/HackerNews風コメント

「Interesting, the analogy to open source is compelling. The at:// URI scheme and personal repos as signed JSON records solve a crucial problem of data ownership and portability. However, the aggregation mechanism via relays seems to be a potential centralizing point, even if multiple relays are envisioned. What's the economic incentive for running a relay? And how do we ensure censorship resistance at the relay layer? The cold start problem mitigation is a strong point for new app development, but widespread adoption ultimately hinges on user experience and killer apps that leverage the remixability beyond basic social functions. The privacy implications of 'open by default' data also need more robust addressing at the protocol level, not just app-level filters. Good start, but many hard problems ahead for true decentralization and mainstream appeal.」

反論: 「リレーの集中リスクは確かに重要な論点であり、HackerNewsのコミュニティが指摘する通りです。論文ではBlackskyコミュニティのリレーも紹介されており、複数のリレーが競争するインセンティブや、リレー間のフェデレーションプロトコル、あるいはユーザー自身がリレーを運営できるような技術的簡素化が今後の研究・開発課題となるでしょう。経済的インセンティブとしては、特定のデータタイプのキュレーション、アルゴリズム提供、有料ホスティングとの連携などが考えられます。モデレーションはクライアント側でフィルターできる一方で、データがオープンであることと、それを基にした透明性の高いコミュニティガバナンスの可能性は、既存のブラックボックス型プラットフォームより優位です。UXの改善は必須ですが、プロトコルが先行し、その上にエコシステムが築かれるというオープンソースの歴史は、希望的観測とは言え、十分な示唆を与えています。」

大森望風書評コメント

「インターネットという大海原に、再び『個人』という小さな舟を漕ぎ出す夢。しかし、その夢は過去の亡霊か、未来への航路か。著者は巧みに『オープンソース』という歴史の成功体験を引き合いに出し、ソーシャルメディアの『データ囲い込み』という現代の病理に楔を打ち込む。ATプロトコルが提示する『個人リポジトリ』は、情報資本主義という巨大な鯨に飲み込まれた個の尊厳を取り戻すための聖杯たりうるのか。しかし、この『解放』の先に待つのは、秩序なき混沌か、あるいは新たな形の支配か。モデレーション、収益性、そして何よりも『人間』という存在が織りなす複雑な感情の網を、果たしてプロトコルは裁ききれるのか。本書は、技術の未来を問いながら、同時に人間社会の普遍的な課題を浮き彫りにする、示唆に富んだ一冊である。」

反論: 「大森氏の深遠な問いかけは、技術が社会に与える本質的な影響を捉えています。確かに、プロトコルは道具であり、その運用には人間の倫理とガバナンスが不可欠です。しかし、ATプロトコルが目指すのは、特定の企業や個人が『裁く』のではなく、ユーザー自身が選択し、コミュニティが共同で形成する、より自律的な秩序です。これにより、一方的な支配から、多様な価値観に基づく複数のコミュニティが共存する『多世界』の実現を可能にします。混沌は避けられないかもしれませんが、それは創造的破壊の前触れであり、新しい秩序形成の機会でもあります。重要なのは、そのプロセスをユーザーが主体的に選択できる基盤を技術が提供することです。」

補足7：学びを深めるための課題

高校生向けの4択クイズ

現在のX（旧Twitter）のようなソーシャルメディアアプリで、私たちが投稿したデータは主にどこに保存されていますか？
- A) 私たちのスマートフォンの中に
- B) アプリを運営する会社のデータベースの中に
- C) インターネット全体に分散されたサーバーの中に
- D) 宇宙のどこかにある秘密のサーバーの中に
正解: B) アプリを運営する会社のデータベースの中に
論文で提案されている「オープンソーシャル」という考え方で、ユーザーが自分のデータを管理するための「個人リポジトリ」は、どのような特徴を持っていますか？
- A) スマートフォンのストレージを大量に消費する
- B) 特定のソーシャルメディア会社の管理下にあり、移動できない
- C) Web上にあり、ユーザーがホスティングプロバイダーを自由に変更できる
- D) 誰でも自由に変更できるため、セキュリティが低い
正解: C) Web上にあり、ユーザーがホスティングプロバイダーを自由に変更できる
「オープンソーシャル」の仕組みが普及すると、新しいソーシャルメディアアプリにとってどのようなメリットがあると考えられますか？
- A) ユーザー獲得のために、最初から大量の広告を出す必要がなくなる
- B) 既存のユーザーデータを全く利用できないため、独自のコンテンツを作る必要がある
- C) 他のアプリのユーザーデータを利用できるため、ゼロからユーザーを集める負担が減る
- D) データの保存に費用がかからなくなる
正解: C) 他のアプリのユーザーデータを利用できるため、ゼロからユーザーを集める負担が減る
論文の中で、ATプロトコルはデータの改ざんを防ぐために、どのような技術を使っていると説明されていますか？
- A) データのバックアップを複数とる
- B) データを暗号化してパスワードで保護する
- C) コミット（データの変更履歴）を暗号署名する
- D) 定期的にサーバーを監視する
正解: C) コミット（データの変更履歴）を暗号署名する

大学生向けのレポート課題

以下のテーマについて、本稿の内容を参考にしつつ、各自で追加調査を行い、A4用紙3枚程度（1200字程度）でレポートを提出してください。

テーマ:「オープンソーシャルが日本のデジタル社会にもたらす可能性と課題」

本稿では、オープンソーシャルが日本に与える影響について多角的に考察しています。あなたは、この技術が日本の情報流通、クリエイターエコノミー、そして言論空間に具体的にどのような変化をもたらすと考えますか。また、その実現に向けて克服すべき法的、技術的、社会的な課題は何でしょうか。具体的な事例（例えば、日本のSNS利用状況、誹謗中傷問題、政府の規制動向など）を挙げながら、あなたの見解を論述してください。
テーマ:「Web2.0の中央集権性とWeb3・オープンソーシャルの分散性：その対立と融和の可能性」

現在のソーシャルメディアはWeb2.0の象徴であり、中央集権的な構造が特徴です。一方、ATプロトコルなどのオープンソーシャルはWeb3の理念とも共通する分散性を志向しています。それぞれのモデルのメリット・デメリットを比較し、Web2.0が提供してきた「集約の魔力」を、オープンソーシャルがいかにして分散型で再構築しようとしているのかを分析してください。また、両者の対立は避けられないものなのか、あるいは技術的な進化によって両者が融和する道はあるのか、あなたの考察を述べてください。

補足8：潜在的読者のための情報

この記事につけるべきキャッチーなタイトル案

オープン・コモンズ宣言：ソーシャルウェブはデータ主権を取り戻す
ATプロトコルが描く未来：ソーシャルメディアは「オープンソース」になる
データ解放元年：あなたのSNS体験はもう誰にも奪われない
「閉じられた庭」の終焉：オープンソーシャルが変えるデジタルライフ
なぜオープンソーシャルが勝つのか？ATプロトコルとデータ所有権の革命
Blueskyの哲学：ATプロトコルが示すソーシャルウェブの真の自由

SNSなどで共有するときに付加するべきハッシュタグ案

#OpenSocial #ATProtocol #Bluesky #分散型SNS #データ所有権 #Web3 #インターネットの未来 #デジタル主権 #ソーシャルメディア革命 #Blueskyプロトコル #データ解放 #Webの再構築

SNS共有用に120字以内に収まるようなタイトルとハッシュタグの文章

「オープンソーシャル」の衝撃！ATプロトコルが、あなたのSNSデータをプラットフォームから解放し、真のデータ主権をもたらす未来とは？ #OpenSocial #ATProtocol #データ所有権 #Web3

ブックマーク用タグ（日本十進分類表(NDC)を参考に）

[007情報科学][分散処理][インターネット][ソーシャルメディア][Web3][データ所有権][Bluesky]

この記事に対してピッタリの絵文字

🌐⛓️🔑🚀✨🛡️📘✊ freedom 🕊️💡

この記事にふさわしいカスタムパーマリンク案

open-social-atproto-future-vision-data-ownership

この記事の内容が単行本ならば日本十進分類表(NDC)区分のどれに値するか

[007: 情報科学一般]

この記事をテーマにテキストベースでの簡易な図示イメージ

┌───────┐   ┌───────┐   ┌───────┐
│ Alice's │ ◀─▶ │  Relay  │ ◀─▶ │ Bob's   │
│   Repo  │   │ (Aggregator)│   │  Repo   │
└───────┘   └───────┘   └───────┘
   ▲ ▲                          ▲ ▲
   │ │                          │ │
┌──┴─┴───┐                    ┌──┴─┴───┐
│ Bluesky  │                    │ Tangled  │
│ (Client App)│                    │ (Client App)│
└─────────┘                    └─────────┘

イメージ解説：
中央の「Relay (Aggregator)」が、アリスとボブそれぞれの「Repo (個人リポジトリ)」からのデータ更新イベントを集約し、BlueskyやTangledといった「Client App」がその集約されたデータを活用する様子を示しています。アリスとボブのリポジトリは直接アプリともやり取り可能で、データ主権がユーザーにあることを表しています。

巻末資料

参考リンク・推薦図書

本稿で参照した外部記事

用語索引（アルファベット順）

詳細を見る

ATプロトコル（Authored Transfer Protocol）脚注2: Blueskyによって開発された、分散型ソーシャルメディアの基盤となるプロトコルです。ユーザーが自身のデータ（投稿、フォローなど）を所有し、ホスティングプロバイダーを自由に選択できる「個人リポジトリ」を核としています。
at:// URI（Authored Transfer Uniform Resource Identifier）: ATプロトコルで使用されるURIスキーム。従来のWebサイトが`https://`で識別されるように、ATプロトコル上のデータ記録は`at://`で識別され、ユーザーの個人リポジトリ内の特定のレコードを指し示します。これにより、分散されたデータ間でリンクを確立できます。
@alice.com: ATプロトコルにおけるユーザーハンドルの例。従来のSNSのようにプラットフォームが割り当てるユーザー名ではなく、ユーザー自身が所有するドメイン名がハンドルとなります。これにより、アイデンティティの独立性が確保されます。
CMS（Content Management System）脚注5: ウェブサイトのテキスト、画像、動画などのコンテンツを、専門的な知識なしに作成、管理、公開できるシステムです。WordPressなどが有名です。
コールドスタート問題（Cold Start Problem）脚注6: 新しいプラットフォームやサービスが開始されたばかりでユーザーが少ないため、魅力的なコンテンツや情報が不足し、新たなユーザーを引きつけることが難しいという問題です。
コミット（Commit）脚注8: ATプロトコルにおいて、ユーザーの個人リポジトリで行われたデータ（投稿、フォローなど）の変更記録のことです。これには暗号署名が付与され、データの整合性が保証されます。
分散型金融（DeFi - Decentralized Finance）脚注12: ブロックチェーン技術を用いて、銀行や証券会社などの中央機関を介さずに金融サービスを提供するシステムのことです。預金、融資、取引などが直接行えます。
データ主権（Data Sovereignty）脚注3: 個人または組織が、自身のデータに対して所有権、管理権、利用権を持つという考え方です。データが特定の国や企業の管轄下にあるのではなく、データオーナー自身がその主権を持つことを指します。
デジタルコモンズ（Digital Commons）脚注4: 誰もが自由にアクセスし、利用し、貢献できるデジタルな共有資源のことです。オープンソースソフトウェア、ウィキペディア、オープンデータなどがこれにあたります。
ネットワーク効果（Network Effect）脚注10: ある製品やサービスの価値が、それを利用するユーザーの数が増えるほど高まる現象です。ソーシャルメディアで友人が多ければ多いほど、そのサービスの価値が高まるのが典型的な例です。
ハイパーリンクするJSON（Hyperlinked JSON）: ATプロトコルにおけるデータの基本的な構造。JSON形式のデータレコード同士が、at:// URIを使って相互にリンクし合うことで、ウェブのようなグラフ構造を形成します。
ファーム（Farm）脚注11: この文脈では、大量のデータや情報が特定のプラットフォームに集約され、まるで農場のように「飼育」されている状態を比喩的に表現しています。プラットフォームがユーザーデータを収集・利用する構図を暗に批判するニュアンスがあります。
フォールトトレランス（Fault Tolerance）脚注13: システムの一部に障害が発生しても、システム全体が機能を継続できる能力のことです。高い信頼性が求められるシステム設計で重要となります。
個人リポジトリ（Personal Repository）: ATプロトコルにおいて、ユーザーが自身のすべてのデータ（投稿、プロフィール、フォロー関係など）を保存・管理する場所です。これはウェブサーバー上にホストされ、ユーザー自身がそのホスティングを選択・変更できます。
ピアツーピア（Peer-to-Peer - P2P）脚注14: クライアント・サーバー型のように中央サーバーを介さず、コンピューター同士が直接通信し、データやサービスを共有するネットワーク形態です。
pub.leaflet.*: ATプロトコルにおけるデータレコードの命名規則の例。`pub.leaflet.`は、Leafletというアプリが発行する「出版物」関連のレコードタイプを示し、その後ろに具体的なレコードの種類（例：`pub.leaflet.publication`）が続きます。これにより、異なるアプリのデータが混同せず管理されます。
リレー（Relay）脚注7: ATプロトコルにおいて、ネットワーク上の多数の個人リポジトリから送られてくるコミット（データ変更履歴）イベントを集約し、それを購読するアプリに再配信する役割を担うサーバーです。
国際化（i18n - Internationalization）脚注16: ソフトウェアやシステムの設計段階で、多言語・多地域に対応できるようにするためのプロセスです。「i」と「n」の間に18文字あることから「i18n」と略されます。
地域化（l10n - Localization）脚注17: 国際化されたソフトウェアを特定の地域や言語に合わせて調整するプロセスです。日付形式、通貨、翻訳などが含まれます。「l」と「n」の間に10文字あることから「l10n」と略されます。
オープンソース（Open Source）脚注1: ソースコードが無償で公開されており、誰でも自由に利用、修正、再配布できるソフトウェア開発モデルやそのソフトウェアのことです。透明性が高く、コミュニティによる共同開発が特徴です。
ゼロ知識証明（Zero-Knowledge Proof - ZKP）脚注15: ある情報について、その情報自体を明かすことなく、それが真実であることを証明できる暗号技術です。プライバシー保護と信頼性確保の両立に貢献します。
暗号署名（Cryptographically Signed）脚注9: データが特定の送信者によって作成され、送信後に改ざんされていないことを数学的に証明する技術です。これにより、データの信頼性と完全性が保証されます。

免責事項

本稿は、提供された論文の内容を深く分析し、その可能性と課題について考察することを目的としています。記述されている内容には、筆者の解釈や追加調査に基づく情報が含まれており、将来の動向に関する予測はあくまで仮説に基づいたものです。ATプロトコルやオープンソーシャルの技術は現在も進化中であり、本稿の情報が常に最新であることを保証するものではありません。また、特定の製品やサービスの利用を推奨するものではなく、投資勧誘を意図するものでもありません。読者の皆様ご自身の判断と責任において、情報をご活用くださいますようお願い申し上げます。

謝辞

本稿の作成にあたり、貴重な論文と関連資料をご提供いただいた皆様に心より感謝申し上げます。また、本テーマに対する深い洞察と示唆を与えてくださった全ての情報源、そして何よりも、未来のインターネットの可能性を信じ、日々その実現のために尽力されているオープンソースおよびオープンソーシャルのコミュニティに敬意を表します。この議論が、より良いデジタル社会の構築に微力ながら貢献できることを願ってやみません。

```html

オープン・コモンズ宣言：あなたのソーシャルデータを解放するATプロトコルの真価🌐⛓️🔑 #OpenSocial #ATProtocol #データ所有権

～データ主権を取り戻し、デジタルコモンズを再構築する未来への招待状～

はじめに：本書の目的と構成
要約：なぜ今、「オープンソーシャル」が求められるのか
第一部：クローズド・ガーデンの黄昏
第二部：オープン・コモンズの夜明け
疑問点・多角的視点：理想と現実の狭間で
結論（といくつかの解決策）：オープンが勝つために
補足資料
巻末資料

はじめに：本書の目的と構成

ソーシャルメディアの岐路：デジタルコモンズの再構築へ

本書の旅路：分散型インターネットの深淵へ

本稿は、以下の構成でオープンソーシャルの世界へと皆様をご案内いたします。

第一部：クローズド・ガーデンの黄昏では、現在のソーシャルメディアが抱える本質的な課題を浮き彫りにし、なぜ私たちがデータ主権を失ったのか、その歴史的経緯とメカニズムを解き明かします。
第二部：オープン・コモンズの夜明けでは、ATプロトコルが提供する革新的なソリューションを詳細に解説し、データ所有権の回復、アプリ間の相互運用性、そして分散型アグリゲーションの実現可能性を探ります。
続く章では、「疑問点・多角的視点」として、理想的なオープンソーシャルが直面するであろう現実的な課題や、その克服に向けた「今後望まれる研究」について議論します。
さらに、「結論」では、オープンソーシャルが社会にもたらす可能性を総括し、その普及に向けた道筋を示します。
そして、「補足資料」と「巻末資料」では、日本への影響、歴史的位置づけ、用語解説、そして多様な視点からの分析や意見を提示し、このテーマへの理解を一層深めていただくことを目指します。

この旅が、皆様にとって新たな洞察と行動のきっかけとなることを願っております。さあ、データの未来を巡る冒険に出かけましょう！🚀

要約：なぜ今、「オープンソーシャル」が求められるのか

登場人物紹介：Webの変革者たちと未来のユーザー

本稿で議論されるオープンソーシャルの世界を理解するために、いくつかの重要な人物や概念をご紹介します。

アリス（Alice）とボブ（Bob）

アリス（Alice）: オープンソーシャルのメリットを享受する、一般的な技術リテラシーを持つユーザーの象徴です。彼女は自身のドメイン（例：@alice.com）を所有し、個人リポジトリの管理にも積極的に関心を持っています。ホスティングプロバイダーが気に入らなければ、すぐに引っ越しを検討するような、データ主権意識の高い「デジタル市民」像です。
ボブ（Bob）: アリスとは対照的に、技術的な詳細にはあまり関心がない、一般的なユーザーの象徴です。彼も自身のドメイン（例：@bob.com）をハンドルとして持ちますが、それが「インターネットハンドル」であるという認識以上の深い理解は持ちません。彼にとって、個人リポジトリはアプリの裏側で動く便利な仕組みであり、意識することなくオープンソーシャルの恩恵を受けています。

マイクロソフトCEO（Microsoft CEO）

スティーブ・バルマー（Steve Ballmer） (English: Steve Ballmer): 元Microsoft CEO (1956年生まれ、2025年時点で69歳)。論文中で「Microsoftがオープンソースをcancer（癌）と呼んだ10年前」という文脈で引用されています。これは2001年の発言を指しており、当時のクローズドソース戦略を象徴する言葉でした。彼の発言は、オープンソースが当初いかに強力な抵抗勢力に直面していたかを示す歴史的な例として登場します。

ジャック・ドーシー（Jack Dorsey）

ジャック・ドーシー（Jack Dorsey） (English: Jack Dorsey): Twitterの共同創業者（1976年生まれ、2025年時点で49歳）。Blueskyの初期構想に関与した人物として言及されています。彼の関与は、Blueskyが単なる一過性のプロジェクトではなく、ソーシャルメディアの根本的な問題を解決しようとする、大きなビジョンを持った取り組みであることを示唆しています。

第一部：クローズド・ガーデンの黄昏

第1章：ウェブの原風景――誰もが主役だった「個人サイト」の時代

誰もが所有したデータ：ホスティング独立性の恩恵

コラム：私の初めてのウェブサイトと引っ越し体験

論理的リンクと物理的自由：ウェブの美しい設計思想

第2章：ソーシャルメディアの隆盛――集約の魔力と「データ監獄」の誕生

共有空間の誘惑：なぜ「クローズドソーシャル」は勝ったのか

高度な集約機能: 投稿や「いいね」といったエンティティは、後にHTMLページとして表示することも可能ですが、それらを簡単に集約、フィルタリング、クエリ（検索）、並べ替え、そして多様な方法で再結合することができます。これにより、プロフィールページ、投稿リスト、コメント付きの個別投稿など、同じデータの多くの「投影」を作成できます。
ソーシャルグラフの形成: 多くの人々が同じソーシャルアプリを使用することで、全員の公開コンテンツが単一のデータベースに集約されます。これにより、グローバル検索、通知、パーソナライズされたフィード、共有モデレーションといった、現代のソーシャル製品に不可欠な機能が実現しました。人々は単にお互いのサイトを訪問するだけでなく、「一緒にたむろする」共有スペースを求めていたのです。

コラム：私がSNSにハマった理由

第3章：失われた主権とプラットフォームの支配――「壁に囲まれた庭」の末路

私たちが作成するウェブは、他の誰かのデータベースの単なる一行に過ぎなくなってしまったのです。

データ監獄：ユーザーを縛る「壁に囲まれた庭」

失われた主権：プラットフォームの恣意とユーザーの無力

第二部：オープン・コモンズの夜明け

第4章：オープンソーシャルの核心――ATプロトコルが拓くデータ主権

「もし、作成したウェブを置き去りにすることなく、ソーシャルアプリを去ることができたとしたら？」

at://プロトコル：ハイパーリンクするJSONの世界

個人リポジトリ：あなたのデジタル資産はあなたのもの

もしアリスがホスティングに不満があれば、彼女は荷物をまとめて立ち去ることができます。

コラム：初めてのデータ引っ越し、そしてその感動

ここで一度立ち止まって、私たちが手に入れるものの価値をかみしめるべきです。

個人サイトのウェブと同様に、このモデルはユーザーを中心に据えています。

変化する関係性：ユーザー、開発者、そして製品

では、これがアプリにとって何を意味するのでしょうか？

名前の衝突を避けるため、リポジトリ内のデータはフォーマットによってグループ化されます。

app.bsky.post (Blueskyの投稿)
sh.tangled.star (Tangledのスター)
pub.leaflet.publication (Leafletの出版物)
など、各データフォーマットは、関連するアプリケーションの開発者によって管理・進化されます。

プロトコルこそがAPIなのです。

第5章：アプリの多世界――データ「リミックス」が生み出す無限の創造性

CMSとしてのアプリ：ユーザーデータを活かす仕組み

相互運用性の真価：データは境界を越える

コールドスタート問題の解消：新規参入アプリの希望

コラム：ニッチアプリ開発者の夢

第6章：集約の妙技――分散型データのリアルタイム処理

ごもっともな疑問です。しかし、ATプロトコルはこの課題に対しても、非常に洗練された解決策を提示しています。

「シングルプレイヤー」から「マルチプレイヤー」へ：効率的なデータ取得

リレーとコミット：ウェブソケットが繋ぐデータの流れ

This is a realtime stream of every single event on the network. It’s dominated by app.bsky.* records because Bluesky is the most-used app, but you can filter it down to other record types. This retransmitter (called a “relay”) is operated by Bluesky, but you don’t have to depend on it. The Blacksky community runs their own relay implementation at wss://atproto.africa, which you can try here.
— danabra.mov (@danabra.mov) May 13, 2024

暗号署名：信頼性の担保とデータの整合性

疑問点・多角的視点：理想と現実の狭間で

詳細を見る

リレーの集中リスクと新たな権力構造

モデレーションの課題：表現の自由と責任のバランス

ユーザーエクスペリエンスの壁：普及への道

持続可能なビジネスモデルの探索

プライバシーとデータの公開範囲：見えないリスク

結論（といくつかの解決策）：オープンが勝つために

オープンソーシャルが真に勝利するためには、以下の解決策と方向性が求められます。

ユーザーエクスペリエンスの徹底的な簡素化: ドメイン取得やリポジトリ管理を意識させない、直感的で分かりやすいオンボーディングプロセスと管理ツールを開発することが不可欠です。例えば、既存のメールアドレスや電話番号での登録を入り口とし、裏側でドメインやリポジトリを自動的に設定するような仕組みが考えられます。
多様なリレーの育成とインセンティブ設計: Bluesky以外の独立したリレーの立ち上げを奨励し、その運営に対する経済的インセンティブ（寄付、マイクロペイメント、広告収益分配モデルなど）を確立する必要があります。これにより、特定の企業への依存を減らし、検閲耐性を高めることができます。
協調的なモデレーションフレームワークの構築: プロトコルレベルでのモデレーションツールや、ユーザーが自身の「信頼できるモデレーター」を選択できるシステム、あるいは連合型のモデレーションコミュニティを形成する仕組みが求められます。表現の自由と安全なコミュニティのバランスを取るための、透明性と柔軟性を持ったアプローチが重要です。
新しいビジネスモデルの探求と実験: データ所有権を尊重しつつ、付加価値を提供する多様なビジネスモデル（例えば、プレミアムなアルゴリズムフィード、専門的なデータ分析サービス、キュレーションサービス、クリエイターへの直接的な支援モデルなど）を積極的に模索し、実験する必要があります。
技術と社会の対話の深化: 技術者だけでなく、社会学者、法律家、政策立案者、そして一般ユーザーが、オープンソーシャルの可能性と課題について継続的に議論し、その発展を支援するコミュニティを形成していくことが不可欠です。

ある時点で、オープンが勝つことは間違いありません。35年もかからないことを願っています。

補足資料

歴史的位置づけ：オープンソースからオープンソーシャルへ

今後望まれる研究：プロトコルの進化と社会実装

リレーネットワークの分散化と耐障害性

マルチリレープロトコルの開発: 複数の独立したリレーが相互に連携し、データの整合性とリアルタイム性を維持するための標準プロトコル（例: リレー間のイベント同期、ルーティング最適化）。
インセンティブ設計の研究: リレー運営者が継続的にサービスを提供するための経済的インセンティブ（有料リレーサービス、分散型インフラへのトークンエコノミー導入、広告収益分配モデルなど）。
耐検閲性・耐障害性の強化: リレーがダウンしたり、悪意ある攻撃を受けたりした場合に、ネットワーク全体の機能が停止しないためのフォールトトレランス（fault tolerance）設計や、ピアツーピア（peer-to-peer）でのデータ共有メカニズムの検討。

高度なモデレーション機能の実現

連合型モデレーションシステム: 複数のモデレーションプロバイダーが存在し、ユーザーが信頼するプロバイダーを選択できるようなシステム設計。
AIを活用した有害コンテンツフィルタリング: 言語モデルや画像認識AIを用いて、ヘイトスピーチや違法コンテンツを自動検出し、クライアント側でフィルタリングする技術。
レピュテーションシステムとコミュニティガバナンス: ユーザーやモデレーターの評価システムを導入し、コミュニティの自己規制能力を高めるためのメカニズム。透明性の高い異議申し立てプロセスも含む。
法的枠組みとの連携: 各国・地域の法規制（著作権侵害、名誉毀損など）に準拠したコンテンツ削除要請に対応するためのプロトコルレベルでの枠組み。

非技術者向けUXの抜本的改善

シームレスなオンボーディング: ドメイン取得からリポジトリ設定までを、ユーザーが意識せずに行えるような、簡素化された登録フローと管理インターフェースの開発。
直感的なデータ管理ツール: 自身のデータがどこに保存され、どのアプリで利用されているかを視覚的に理解できるダッシュボードや、簡単な操作でホスティングを変更できるツール。
既存SNSからの移行支援ツール: 現在のプラットフォームから自身のソーシャルグラフ（投稿、フォローリストなど）を容易にエクスポートし、オープンソーシャル環境にインポートできるツールの開発。

多様な収益モデルの検証

付加価値サービスへの課金: プレミアムなアルゴリズムフィード、高度なデータ分析ツール、特定のコンテンツをキュレートするサービスなど、ユーザーに直接的な価値を提供するサービスへの課金モデル。
クリエイター支援モデル: 投げ銭、サブスクリプション、NFTなどのWeb3技術を活用したクリエイターへの直接的な収益モデルの検討。
データ利用権の透明化とマイクロペイメント: ユーザーが自身のデータ利用に対して許諾を与え、その対価としてマイクロペイメントを受け取るようなモデル（プライバシー保護を前提とする）。

プライバシー保護とデータアクセス制御

きめ細やかなアクセス制御: ユーザーが自身のデータの公開範囲や、特定のアプリ・リレーからのアクセス権限を細かく設定できるプロトコルレベルでのメカニズム。
文脈保持の仕組み: データがリミックスされる際に、オリジナルの文脈が損なわれないようなメタデータ管理や、引用元の明示を強制するプロトコル。
ゼロ知識証明（Zero-Knowledge Proof）の活用: ユーザーが情報の一部を公開することなく、その情報が正しいことを証明できる技術を導入し、プライバシーと信頼性を両立させる。

多言語・多文化環境における適応性

国際化（i18n）と地域化（l10n）のサポート: プロトコルが多言語に対応し、地域ごとの法的・文化的な規範に合わせたモデレーションやサービスのローカライズを容易にするための設計。

日本への影響：デジタル社会の再編と新たな機会

情報流通の多様化とプラットフォーム依存度の低減

プラットフォームリスクの分散: 日本のユーザーは、X（旧Twitter）やLINE、Facebookなどの特定プラットフォームへの依存度が非常に高い傾向にあります。これにより、特定のプラットフォームの規約変更、突然のサービス停止、あるいは障害発生が、情報収集やコミュニケーションに深刻な影響を及ぼすリスクがありました。オープンソーシャルが普及すれば、ユーザーは自身のデータを複数のアプリで利用できるため、単一プラットフォームへの依存度が低下し、より多様な情報流通経路が確保されます。
レジリエンスの向上: 災害時や有事の際、特定のプラットフォームがダウンしたり、検閲されたりするリスクを分散できる可能性があり、よりレジリエンス（回復力）の高い情報インフラ構築に貢献します。トルコ政府による検閲の事例は、このような分散型の特性が国家レベルでの情報統制に対しても有効である可能性を示唆しています。

【暴露】トルコ政府の圧力!BlueskyとFediverse、検閲に強いのはどっち？ #検閲 #分散化 #SNS #五05 脚注

#テイラースウィフトのファンは、ドナルドトランプの米国選挙後、X を離れてブルースキーへ向かう #士12 脚注

クリエイターエコノミーの新たな機会

コンテンツ主権の確立: 日本には、コミック、アニメ、ゲーム、VTuber文化など、クリエイターエコノミーが非常に活発な土壌があります。しかし、現在のプラットフォームでは、クリエイターは自身のコンテンツやフォロワー関係をプラットフォームに「ロックイン」され、規約変更や収益分配率の一方的な変更リスクに晒されています。オープンソーシャルでは、クリエイターが自身のデジタル資産を真に所有し、複数のアプリやサービス間で自由に持ち運べるため、収益化の機会を多様化できます。
二次創作コミュニティとの親和性: 日本の二次創作文化は非常に豊かですが、著作権管理やプラットフォームの規約に起因する摩擦も少なくありません。オープンソーシャルが提供する「リミックス」の概念は、透明性の高い形で二次創作や派生コンテンツが生まれやすくなる可能性を秘めています。
直接的な支援モデルの強化: 投げ銭やサブスクリプションなど、ユーザーからクリエイターへ直接収益が流れるモデルが、プラットフォーム手数料に左右されにくくなることで、より活発化するかもしれません。

モデレーションと表現の自由に関する議論の深化

誹謗中傷問題への対応: 匿名性が高く、誹謗中傷問題が深刻化している日本のインターネット文化において、分散型ソーシャルメディアにおけるモデレーションのあり方は、より切実な課題として浮上します。特定のプラットフォームによる「言論統制」への懸念から、表現の自由を重視するユーザー層には歓迎される一方、違法な投稿への対処や、投稿者情報開示請求の容易化／困難化といった法的・社会的な議論が進むでしょう。
Blueskyの開示命令事例: 日本国内でBlueskyに対する初の投稿者情報開示命令が出た事例は、分散型SNSであっても法的な責任が問われることを示しており、今後のモデレーションと法規制の連携において重要な precedent（判例）となるでしょう。SNS検閲と誹謗中傷の闇に光を!Bluesky初の開示命令から学ぶ、私たちの表現の自由 #Bluesky #検閲 #表現の自由 #SNSの未来脚注

技術コミュニティの活性化と新規ビジネス創出

新たな開発機会: ATプロトコルのようなオープンな標準は、日本の技術者コミュニティにとって新たな開発機会を提供します。既存のWeb3/分散型技術に関心のある開発者だけでなく、Web2からの移行を検討する企業にとっても、新しいアプリケーションやサービスの開発余地が生まれます。
国内サービスプロバイダーの参入: 特に、日本のドメイン管理サービスやホスティングサービス、あるいはウェブサイト構築プラットフォームなどが、個人リポジトリホスティングサービスへと事業を拡大する可能性も考えられます。これにより、国内経済の活性化や新たな雇用創出に繋がるかもしれません。

法制度・規制の対応

既存法制度との整合性: データの所有権、プラットフォームの責任（特にリレー運営者やクライアントアプリ開発者）、データ移転権など、既存の日本の法制度（個人情報保護法、プロバイダ責任制限法など）が、オープンソーシャルモデルにどのように対応すべきか、新たな解釈や法改正が必要になる可能性があります。
国際的な規制動向への注視: EUのデジタルサービス法（DSA）やデジタル市場法（DMA）など、グローバルなデータガバナンスの動向が、オープンソーシャルの普及と規制に大きな影響を与えるため、日本もこれらの動向を注視し、適切な対応を検討する必要があります。

脚注

詳細を見る

オープンソース（Open Source）脚注1: ソースコードが無償で公開されており、誰でも自由に利用、修正、再配布できるソフトウェア開発モデルやそのソフトウェアのことです。透明性が高く、コミュニティによる共同開発が特徴です。
ATプロトコル（Authored Transfer Protocol）脚注2: Blueskyによって開発された、分散型ソーシャルメディアの基盤となるプロトコルです。ユーザーが自身のデータ（投稿、フォローなど）を所有し、ホスティングプロバイダーを自由に選択できる「個人リポジトリ」を核としています。
データ主権（Data Sovereignty）脚注3: 個人または組織が、自身のデータに対して所有権、管理権、利用権を持つという考え方です。データが特定の国や企業の管轄下にあるのではなく、データオーナー自身がその主権を持つことを指します。
デジタルコモンズ（Digital Commons）脚注4: 誰もが自由にアクセスし、利用し、貢献できるデジタルな共有資源のことです。オープンソースソフトウェア、ウィキペディア、オープンデータなどがこれにあたります。
CMS（コンテンツ管理システム - Content Management System）脚注5: ウェブサイトのテキスト、画像、動画などのコンテンツを、専門的な知識なしに作成、管理、公開できるシステムです。WordPressなどが有名です。
コールドスタート問題（Cold Start Problem）脚注6: 新しいプラットフォームやサービスが開始されたばかりでユーザーが少ないため、魅力的なコンテンツや情報が不足し、新たなユーザーを引きつけることが難しいという問題です。
リレー（Relay）脚注7: ATプロトコルにおいて、ネットワーク上の多数の個人リポジトリから送られてくるコミット（データ変更履歴）イベントを集約し、それを購読するアプリに再配信する役割を担うサーバーです。
コミット（Commit）脚注8: ATプロトコルにおいて、ユーザーの個人リポジトリで行われたデータ（投稿、フォローなど）の変更記録のことです。これには暗号署名が付与され、データの整合性が保証されます。
暗号署名（Cryptographically Signed）脚注9: データが特定の送信者によって作成され、送信後に改ざんされていないことを数学的に証明する技術です。これにより、データの信頼性と完全性が保証されます。
ネットワーク効果（Network Effect）脚注10: ある製品やサービスの価値が、それを利用するユーザーの数が増えるほど高まる現象です。ソーシャルメディアで友人が多ければ多いほど、そのサービスの価値が高まるのが典型的な例です。
ファーム（Farm）脚注11: この文脈では、大量のデータや情報が特定のプラットフォームに集約され、まるで農場のように「飼育」されている状態を比喩的に表現しています。プラットフォームがユーザーデータを収集・利用する構図を暗に批判するニュアンスがあります。
分散型金融（DeFi - Decentralized Finance）脚注12: ブロックチェーン技術を用いて、銀行や証券会社などの中央機関を介さずに金融サービスを提供するシステムのことです。預金、融資、取引などが直接行えます。
フォールトトレランス（Fault Tolerance）脚注13: システムの一部に障害が発生しても、システム全体が機能を継続できる能力のことです。高い信頼性が求められるシステム設計で重要となります。
ピアツーピア（Peer-to-Peer - P2P）脚注14: クライアント・サーバー型のように中央サーバーを介さず、コンピューター同士が直接通信し、データやサービスを共有するネットワーク形態です。
ゼロ知識証明（Zero-Knowledge Proof - ZKP）脚注15: ある情報について、その情報自体を明かすことなく、それが真実であることを証明できる暗号技術です。プライバシー保護と信頼性確保の両立に貢献します。
国際化（i18n - Internationalization）脚注16: ソフトウェアやシステムの設計段階で、多言語・多地域に対応できるようにするためのプロセスです。「i」と「n」の間に18文字あることから「i18n」と略されます。
地域化（l10n - Localization）脚注17: 国際化されたソフトウェアを特定の地域や言語に合わせて調整するプロセスです。日付形式、通貨、翻訳などが含まれます。「l」と「n」の間に10文字あることから「l10n」と略されます。

補足1：各界からの提言と感想

ずんだもんの感想

ホリエモン風の感想

西村ひろゆき風の感想

補足2：オープンソーシャルを巡る年表

年表①：オープンソースからオープンソーシャルへの系譜

年代	出来事	概要
1980年代後半	オープンソース運動の萌芽	リチャード・ストールマンがGNUプロジェクトとフリーソフトウェア財団（FSF）を設立。ソフトウェアの自由な利用・改変・再配布を提唱し、ソフトウェアの「共有インフラ化」の礎を築く。
1991年	Linuxカーネルの公開	リーナス・トーバルズがLinuxカーネルを開発・公開。オープンソースモデルの成功例として急速に普及し、IT業界に大きな影響を与える。
1990年代後半	WWWの普及と個人サイトの黄金期	HTML技術の発展とともに、個人が自身のドメインでウェブサイトを運営する時代。ユーザーはコンテンツを物理サーバーに縛られず自由にホストし、リンクで相互接続される分散型ウェブが機能。
2001年	スティーブ・バルマーの「Linux is a cancer」発言	当時のMicrosoft CEOスティーブ・バルマーがオープンソースを「癌」と表現。クローズドソースを絶対視する当時の業界の姿勢を象徴。
2004年	Facebookの創業	マーク・ザッカーバーグがFacebookを創業。Web2.0時代の幕開けを告げ、中央集権型ソーシャルメディアの隆盛が始まる。ユーザーデータはプラットフォームのデータベースに囲い込まれる。
2006年	Twitterの創業	ジャック・ドーシーらがTwitterを創業。短文投稿サービスとして瞬く間に普及し、情報流通の主要なハブとなる。
2010年代後半	中央集権型SNSの課題顕在化	データプライバシー侵害（ケンブリッジ・アナリティカ事件など）、プラットフォームによる検閲、偽情報の拡散、サービス終了や規約変更によるユーザーロックインが社会問題化。
2016年	Mastodonの登場	分散型SNSの代表格としてMastodonが登場。ActivityPubプロトコルを基盤とし、フェデレーション（連合）型のSNSとして注目を集めるが、普及には課題も。
2019年	Blueskyプロジェクトの始動	Twitterのジャック・ドーシーが、分散型ソーシャルメディアプロトコル「Bluesky」の構想を発表。後に独立企業としてATプロトコル開発を推進。
2020年代前半	ATプロトコルの公開とBlueskyのベータ版開始	ATプロトコルが具体的な仕様として公開され、Blueskyクライアントアプリのベータ版がリリース。ユーザー招待制から順次開放され、注目を集める。
2024年	Blueskyのユーザー数急増	X（旧Twitter）からのユーザー流入などにより、Blueskyのユーザー数が急速に増加。約2500万人が登録（記事執筆時点の見込み）。#ソーシャルメディアプラットフォームBlueskyが急成長に伴い直面している課題 #王23 脚注
2025年（予測）	オープンソーシャルの本格的な普及期へ	ATプロトコルに基づく様々なクライアントアプリやサービスが登場。リレーの分散化、UXの改善が進み、一般ユーザーへの浸透が本格化する時期と期待される。

年表②：データ主権を巡る技術と社会の対話

年代	出来事	概要
1989年	ティム・バーナーズ＝リーがWWWを考案	情報をリンクで結びつけ、誰もが自由にアクセスできる分散型システムとしてインターネットの基礎を築く。個人の情報発信が容易になる。
2000年代初頭	Web2.0の提唱	ユーザー生成コンテンツ、SNS、ブログなどが主流に。データの「集合知」が価値を生むが、そのデータはプラットフォームに集約される傾向が強まる。
2009年	ビットコインの誕生とブロックチェーン技術の台頭	中央機関を介さないP2P（peer-to-peer）の電子マネーシステムが登場。分散型台帳技術としてのブロックチェーンが、データ主権や非中央集権性の議論を加速させる。
2010年代中盤	GDPR（EU一般データ保護規則）制定の動き	EUがデータプライバシーと個人データ保護を強化する法規制に着手。データポータビリティ（データ移行権）の概念が法的に認知され始める。
2018年	ケンブリッジ・アナリティカ事件	Facebookのユーザーデータが不正利用された事件が発覚。ソーシャルメディアのプライバシー問題とデータ囲い込みに対する社会的な批判が高まる。
2020年代初頭	Web3と分散型ID（DID）への関心	ブロックチェーン技術を基盤とした「Web3」が注目され、ユーザーが自身のデジタルアイデンティティを管理・所有する分散型ID（DID）の概念が浮上。ATプロトコルもこの潮流の一部。
2025年（予測）	デジタルサービス法（DSA）とデジタル市場法（DMA）の本格適用	EUの巨大IT企業規制が本格化し、プラットフォームのデータ共有義務や相互運用性に関する議論が加速。オープンソーシャルの普及を後押しする可能性。
2030年代以降（予測）	オープンソーシャルが新たな「デジタルコモンズ」に	ソーシャルデータの「共有インフラ化」が進み、個人がデジタル主権を当たり前に持つ社会が実現。政府や国際機関によるデータガバナンスのあり方も大きく変革される。

補足3：データ解放者 ATプロトコル（オリジナルデュエマカード）

カード名: データ解放者 ATプロトコル

文明: 水 💧 (テクノロジー、情報の流れ、知性を象徴する文明)

コスト: 5

種族: テック・レボリューション / ソーシャル・コモンズ

パワー: 5000

能力:

S・トリガー（このクリーチャーをシールドゾーンから手札に加える時、コストを支払わずにすぐ召喚してもよい。）
【データ主権（ジェネシス・オーナーシップ）】 このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分の山札の上から3枚を見て、その中から好きな枚数の「ソーシャル・レコード」という名前のカードをバトルゾーンに出してもよい。残りを好きな順番で山札の下に置く。
（解説：ユーザーが自分のデータを管理し、必要な時にアプリ（ソーシャル・レコード）を呼び出す能力を表現。新しいアプリのコールドスタート問題の解消にも繋がる。）
【リンクの再構築（リビルド・リンク）】 このクリーチャーがバトルゾーンにいる間、自分の他の「ソーシャル・レコード」は、相手の能力によってバトルゾーンを離れる時、代わりに自分の手札に戻る。
（解説：プラットフォームが終了してもデータが失われず、ユーザーの手元に戻り、別のアプリ（手札）で再利用できる「ホスティング独立性」を表現。）
【オープン・コモンズの盟約（コモンズ・アライアンス）】 このクリーチャーが攻撃する時、自分のバトルゾーンにあるすべての「ソーシャル・レコード」に「パワード・ブレイカー」（このクリーチャーは、パワー6000ごとにシールドをさらに1枚ブレイクする）を与える。
（解説：オープンソーシャルエコシステム全体が協力することで、中央集権型プラットフォーム（シールド）を打ち破る強力な力を持つことを表現。）

フレーバーテキスト:
「かつて、我々の繋がりは巨大な壁の中に囚われていた。だが今、プロトコルがその鎖を断ち切り、真の自由へと導く。」

補足4：一人ノリツッコミ

補足5：大喜利

「ATプロトコルが普及した未来の世界で、SNSの運営会社が倒産した時にユーザーが叫んだ一言とは？」

「よかったー！データは俺のリポジトリに残ってるから、他のアプリで同じアカウントで再開できる！…って、あれ？誰もついてきてないんだけど…俺のフォロワーどこ行った！？」
「これでやっと、あのクソったれなアルゴリズムから解放されるぜ！…って、え？今度はどのリレーを選べばいいか分からんくて、新しい情報難民になっとるやん！」
「やったぜ！データは無事だ！これを機に、俺だけの最強AIアルゴリズムを開発して、理想のフィードを作るぞ！…って、あれ？Pythonのライブラリ、どれ使えばいいんだっけ…」
「会社が潰れてもデータは残る！これが未来だ！…って、待てよ、俺、昔の投稿全部削除したはずなんだけど、もしかしてリポジトリには全部残ってんの！？やべぇ、黒歴史が…！」

補足6：予測されるネットの反応と反論

なんJ民風コメント

ケンモメン風コメント

ツイフェミ風コメント

爆サイ民風コメント

Reddit/HackerNews風コメント

大森望風書評コメント

補足7：学びを深めるための課題

高校生向けの4択クイズ

現在のX（旧Twitter）のようなソーシャルメディアアプリで、私たちが投稿したデータは主にどこに保存されていますか？
- A) 私たちのスマートフォンの中に
- B) アプリを運営する会社のデータベースの中に
- C) インターネット全体に分散されたサーバーの中に
- D) 宇宙のどこかにある秘密のサーバーの中に
正解: B) アプリを運営する会社のデータベースの中に
論文で提案されている「オープンソーシャル」という考え方で、ユーザーが自分のデータを管理するための「個人リポジトリ」は、どのような特徴を持っていますか？
- A) スマートフォンのストレージを大量に消費する
- B) 特定のソーシャルメディア会社の管理下にあり、移動できない
- C) Web上にあり、ユーザーがホスティングプロバイダーを自由に変更できる
- D) 誰でも自由に変更できるため、セキュリティが低い
正解: C) Web上にあり、ユーザーがホスティングプロバイダーを自由に変更できる
「オープンソーシャル」の仕組みが普及すると、新しいソーシャルメディアアプリにとってどのようなメリットがあると考えられますか？
- A) ユーザー獲得のために、最初から大量の広告を出す必要がなくなる
- B) 既存のユーザーデータを全く利用できないため、独自のコンテンツを作る必要がある
- C) 他のアプリのユーザーデータを利用できるため、ゼロからユーザーを集める負担が減る
- D) データの保存に費用がかからなくなる
正解: C) 他のアプリのユーザーデータを利用できるため、ゼロからユーザーを集める負担が減る
論文の中で、ATプロトコルはデータの改ざんを防ぐために、どのような技術を使っていると説明されていますか？
- A) データのバックアップを複数とる
- B) データを暗号化してパスワードで保護する
- C) コミット（データの変更履歴）を暗号署名する
- D) 定期的にサーバーを監視する
正解: C) コミット（データの変更履歴）を暗号署名する

大学生向けのレポート課題

以下のテーマについて、本稿の内容を参考にしつつ、各自で追加調査を行い、A4用紙3枚程度（1200字程度）でレポートを提出してください。

テーマ:「オープンソーシャルが日本のデジタル社会にもたらす可能性と課題」

本稿では、オープンソーシャルが日本に与える影響について多角的に考察しています。あなたは、この技術が日本の情報流通、クリエイターエコノミー、そして言論空間に具体的にどのような変化をもたらすと考えますか。また、その実現に向けて克服すべき法的、技術的、社会的な課題は何でしょうか。具体的な事例（例えば、日本のSNS利用状況、誹謗中傷問題、政府の規制動向など）を挙げながら、あなたの見解を論述してください。
テーマ:「Web2.0の中央集権性とWeb3・オープンソーシャルの分散性：その対立と融和の可能性」

現在のソーシャルメディアはWeb2.0の象徴であり、中央集権的な構造が特徴です。一方、ATプロトコルなどのオープンソーシャルはWeb3の理念とも共通する分散性を志向しています。それぞれのモデルのメリット・デメリットを比較し、Web2.0が提供してきた「集約の魔力」を、オープンソーシャルがいかにして分散型で再構築しようとしているのかを分析してください。また、両者の対立は避けられないものなのか、あるいは技術的な進化によって両者が融和する道はあるのか、あなたの考察を述べてください。

補足8：潜在的読者のための情報

この記事につけるべきキャッチーなタイトル案

オープン・コモンズ宣言：ソーシャルウェブはデータ主権を取り戻す
ATプロトコルが描く未来：ソーシャルメディアは「オープンソース」になる
データ解放元年：あなたのSNS体験はもう誰にも奪われない
「閉じられた庭」の終焉：オープンソーシャルが変えるデジタルライフ
なぜオープンソーシャルが勝つのか？ATプロトコルとデータ所有権の革命
Blueskyの哲学：ATプロトコルが示すソーシャルウェブの真の自由

SNSなどで共有するときに付加するべきハッシュタグ案

SNS共有用に120字以内に収まるようなタイトルとハッシュタグの文章

ブックマーク用タグ（日本十進分類表(NDC)を参考に）

[007情報科学][分散処理][インターネット][ソーシャルメディア][Web3][データ所有権][Bluesky]

この記事に対してピッタリの絵文字

🌐⛓️🔑🚀✨🛡️📘✊ freedom 🕊️💡

この記事にふさわしいカスタムパーマリンク案

open-social-atproto-future-vision-data-ownership

この記事の内容が単行本ならば日本十進分類表(NDC)区分のどれに値するか

[007: 情報科学一般]

この記事をテーマにテキストベースでの簡易な図示イメージ

┌───────┐   ┌───────┐   ┌───────┐
│ Alice's │ ◀─▶ │  Relay  │ ◀─▶ │ Bob's   │
│   Repo  │   │ (Aggregator)│   │  Repo   │
└───────┘   └───────┘   └───────┘
   ▲ ▲                          ▲ ▲
   │ │                          │ │
┌──┴─┴───┐                    ┌──┴─┴───┐
│ Bluesky  │                    │ Tangled  │
│ (Client App)│                    │ (Client App)│
└─────────┘                    └─────────┘

巻末資料

参考リンク・推薦図書

本稿で参照した外部記事

用語索引（アルファベット順）

詳細を見る

ATプロトコル（Authored Transfer Protocol）脚注2: Blueskyによって開発された、分散型ソーシャルメディアの基盤となるプロトコルです。ユーザーが自身のデータ（投稿、フォローなど）を所有し、ホスティングプロバイダーを自由に選択できる「個人リポジトリ」を核としています。
at:// URI（Authored Transfer Uniform Resource Identifier）: ATプロトコルで使用されるURIスキーム。従来のWebサイトがhttps://で識別されるように、ATプロトコル上のデータ記録はat://で識別され、ユーザーの個人リポジトリ内の特定のレコードを指し示します。これにより、分散されたデータ間でリンクを確立できます。
@alice.com: ATプロトコルにおけるユーザーハンドルの例。従来のSNSのようにプラットフォームが割り当てるユーザー名ではなく、ユーザー自身が所有するドメイン名がハンドルとなります。これにより、アイデンティティの独立性が確保されます。
CMS（Content Management System）脚注5: ウェブサイトのテキスト、画像、動画などのコンテンツを、専門的な知識なしに作成、管理、公開できるシステムです。WordPressなどが有名です。
コールドスタート問題（Cold Start Problem）脚注6: 新しいプラットフォームやサービスが開始されたばかりでユーザーが少ないため、魅力的なコンテンツや情報が不足し、新たなユーザーを引きつけることが難しいという問題です。
コミット（Commit）脚注8: ATプロトコルにおいて、ユーザーの個人リポジトリで行われたデータ（投稿、フォローなど）の変更記録のことです。これには暗号署名が付与され、データの整合性が保証されます。
分散型金融（DeFi - Decentralized Finance）脚注12: ブロックチェーン技術を用いて、銀行や証券会社などの中央機関を介さずに金融サービスを提供するシステムのことです。預金、融資、取引などが直接行えます。
データ主権（Data Sovereignty）脚注3: 個人または組織が、自身のデータに対して所有権、管理権、利用権を持つという考え方です。データが特定の国や企業の管轄下にあるのではなく、データオーナー自身がその主権を持つことを指します。
デジタルコモンズ（Digital Commons）脚注4: 誰もが自由にアクセスし、利用し、貢献できるデジタルな共有資源のことです。オープンソースソフトウェア、ウィキペディア、オープンデータなどがこれにあたります。
ネットワーク効果（Network Effect）脚注10: ある製品やサービスの価値が、それを利用するユーザーの数が増えるほど高まる現象です。ソーシャルメディアで友人が多ければ多いほど、そのサービスの価値が高まるのが典型的な例です。
ハイパーリンクするJSON（Hyperlinked JSON）: ATプロトコルにおけるデータの基本的な構造。JSON形式のデータレコード同士が、at:// URIを使って相互にリンクし合うことで、ウェブのようなグラフ構造を形成します。
ファーム（Farm）脚注11: この文脈では、大量のデータや情報が特定のプラットフォームに集約され、まるで農場のように「飼育」されている状態を比喩的に表現しています。プラットフォームがユーザーデータを収集・利用する構図を暗に批判するニュアンスがあります。
フォールトトレランス（Fault Tolerance）脚注13: システムの一部に障害が発生しても、システム全体が機能を継続できる能力のことです。高い信頼性が求められるシステム設計で重要となります。
個人リポジトリ（Personal Repository）: ATプロトコルにおいて、ユーザーが自身のすべてのデータ（投稿、プロフィール、フォロー関係など）を保存・管理する場所です。これはウェブサーバー上にホストされ、ユーザー自身がそのホスティングを選択・変更できます。
ピアツーピア（Peer-to-Peer - P2P）脚注14: クライアント・サーバー型のように中央サーバーを介さず、コンピューター同士が直接通信し、データやサービスを共有するネットワーク形態です。
pub.leaflet.*: ATプロトコルにおけるデータレコードの命名規則の例。pub.leaflet.は、Leafletというアプリが発行する「出版物」関連のレコードタイプを示し、その後ろに具体的なレコードの種類（例：pub.leaflet.publication）が続きます。これにより、異なるアプリのデータが混同せず管理されます。
リレー（Relay）脚注7: ATプロトコルにおいて、ネットワーク上の多数の個人リポジトリから送られてくるコミット（データ変更履歴）イベントを集約し、それを購読するアプリに再配信する役割を担うサーバーです。
国際化（i18n - Internationalization）脚注16: ソフトウェアやシステムの設計段階で、多言語・多地域に対応できるようにするためのプロセスです。「i」と「n」の間に18文字あることから「i18n」と略されます。
地域化（l10n - Localization）脚注17: 国際化されたソフトウェアを特定の地域や言語に合わせて調整するプロセスです。日付形式、通貨、翻訳などが含まれます。「l」と「n」の間に10文字あることから「l10n」と略されます。
オープンソース（Open Source）脚注1: ソースコードが無償で公開されており、誰でも自由に利用、修正、再配布できるソフトウェア開発モデルやそのソフトウェアのことです。透明性が高く、コミュニティによる共同開発が特徴です。
ゼロ知識証明（Zero-Knowledge Proof - ZKP）脚注15: ある情報について、その情報自体を明かすことなく、それが真実であることを証明できる暗号技術です。プライバシー保護と信頼性確保の両立に貢献します。
暗号署名（Cryptographically Signed）脚注9: データが特定の送信者によって作成され、送信後に改ざんされていないことを数学的に証明する技術です。これにより、データの信頼性と完全性が保証されます。

免責事項

謝辞

```

Tweet on Bluesky growth Genome Protocol insights Zama FHE Protocol fUSD decentralized HUMAN Protocol AI Planetes Protocol AI Sales Protocol Wasabi Limit Orders Hippo DeSci TeaFi Protocol

はじめに：本書の目的と構成
要約：なぜ今、「オープンソーシャル」が求められるのか
第一部：クローズド・ガーデンの黄昏
第二部：オープン・コモンズの夜明け
第三部：歴史の鏡と類似の影 – 過去の教訓から未来を照らす
第四部：権力・資本・規制 – インフラをめぐる攻防
第五部：ユーザー文化と共同体の進化
- 第13章：ネットワーク社会におけるユーザー主権
- 第14章：エコシステムとしての拡張性
第六部：AIとの接続と未来の情報生態系
- 第15章：生成AIとソーシャルグラフの融合
- 第16章：知識ネットワークとしてのSNS
第七部：教育・制度設計の再構築
- 第17章：教育現場における分散型ネットワークの可能性
- 第18章：制度設計の視点から見た分散化
第八部：ポスト国家社会と人材循環
- 第19章：市民権 as a Service という構想
- 第20章：グローバル人材循環とSNSの役割
第九部：テクノロジー倫理と未来社会の課題
- 第21章：分散化と監視資本主義のジレンマ
- 第22章：アルゴリズム・モデレーションの倫理
第十部：総括と未来展望
- 第23章：ATプロトコルの挑戦と持続可能性
第十一部：分散ウェブと個人の自由 – データ所有権が拓く新たなネット空間
疑問点・多角的視点：理想と現実の狭間で
結論（といくつかの解決策）：オープンが勝つために
補足資料
巻末資料

第三部：歴史の鏡と類似の影 – 過去の教訓から未来を照らす

オープンソーシャルのビジョンを語る上で、私たちは過去のインターネットの歴史、特にオープンソース運動やWeb3の挑戦から多くの教訓を得ることができます。果たして、ソフトウェアの「共有インフラ化」を成し遂げた成功体験は、ソーシャルデータの領域でも繰り返されるのでしょうか？そして、過去の分散型SNSの試みは、私たちに何を教えてくれるのでしょうか？

第7章：オープンソースの遺産：ソフトウェアからソーシャルへの類推

かつて、ソフトウェア業界はクローズドソースの巨人によって支配されていました。Microsoftの元CEOスティーブ・バルマーが「Linuxは癌だ」と発言した2001年は、その象徴的な時代でしたね。しかし、誰もが知るように、オープンソースは勝利を収め、今やインターネットの基盤の多くを支えています。この歴史は、オープンソーシャルにとって強力な類推を提供します。

9.1 Linuxの台頭とATの類似：分散の勝利の軌跡

Linuxの物語は、少数の愛好家から始まったプロジェクトが、コミュニティの力と透明性によって世界を変えた好例です。ATプロトコルもまた、中央集権型SNSの限界に対するコミュニティの不満から生まれました。LinuxがサーバーOSの主流となり、誰もがその恩恵を受けるようになったように、ATプロトコルもまた、ソーシャルデータの共有インフラとしての地位を確立できるのでしょうか？

コラム：初めてのLinux体験

私が初めてLinuxに触れたのは、大学の研究室でした。Windowsしか知らなかった私にとって、コマンドラインでOSを操作する感覚は、まるで魔法のようでした。最初は戸惑いの連続でしたが、コミュニティの豊富なドキュメントやフォーラムに助けられ、次第にその自由さとカスタマイズ性の高さに魅了されていきました。あの時の経験が、「自分でコントロールできること」の価値を私に教えてくれたのだと思います。ATプロトコルにも、同じような学習曲線と、それを乗り越えた時の大きな達成感があるはずだと信じています。

9.2 Mastodonの試練：フェデレーションの栄光と挫折

ATプロトコルが新たな分散型ソーシャルの旗手であるとすれば、その先駆者の一つにMastodonが挙げられます。MastodonはActivityPubというプロトコルを基盤とし、サーバー同士が連携する「フェデレーション」（連合）という形で分散性を実現しました。しかし、その普及は一部の層に留まり、中央集権型SNSのような爆発的な成長には至っていません。これは、各インスタンスが独立しているため、グローバルな情報集約が難しく、ユーザー体験が断片化しやすいという課題が影響していると考えられます。

ATプロトコルは、このMastodonの経験から学び、ユーザーのデータ所有権とホスティング独立性を維持しつつ、リレーを用いた効率的なグローバル集約メカニズムを提供することで、断片化の問題を克服しようと試みています。Mastodonが示唆したのは、単なる分散化だけでは不十分であり、ユーザーが求める「繋がり」と「情報の流れ」をいいかにスムーズにするか、という点だったのです。

ActivityPubとATプロトコルの比較詳細

ActivityPubは、異なるサーバー間でユーザーが互いにフォローしたり、コンテンツを共有したりできる分散型プロトコルです。Mastodonがその代表的な実装ですが、データは基本的に各インスタンスのサーバーに存在し、ユーザーがインスタンスを移動する際のデータ移行は必ずしもシームレスではありません。また、グローバルな検索やフィード構築は、各インスタンスが互いに協調し合うことで実現されますが、これはリソースを多く消費し、結果的に完全なグローバルビューを提供することが困難でした。

一方、ATプロトコルは、ユーザーが自身の「個人リポジトリ」を所有し、そこでデータを管理するという点でActivityPubとは異なります。このリポジトリはユーザーがホストを自由に選択でき、データは暗号署名されるため、他のアプリはリレーを介してこのオープンなデータストリームから情報を集約できます。これにより、単一のアプリやリレーがネットワーク全体のデータを把握し、グローバルな検索やパーソナライズされたフィードを、より効率的かつ一貫性のある形で提供することが可能となります。

ActivityPubはサーバー間でのコンテンツ共有を重視する一方、ATプロトコルはユーザーによるデータ所有と、そのデータに基づいたアプリ間の自由な連携を重視していると言えるでしょう。

I don't have a horse in which decentralized protocol wins, but while ATProtocol sounds great on paper I'm still inching closer to liking ActivityPub more. I'm pretty active on Lemmy which is quite active and fun to browse

1. 99.99% (literally) of AT users are on Bluesky, which is helmed by a for-profit corporation. The argument is that they don't control the protocol but considering it is THE dominating instance of that protocol, what's stopping them from strong-arming the protocol and changing how it works to benefit them? Better yet, what's stopping them from doing a rugpull and closing off their open service? What if bluesky decides 5 years from now that you aren't allowed to move your account? This isn't some hypothetical scenario, this already happened before. A lot of social medias started off with fairly open features and APIs and slowly choked them out for profit.
— popcar2 (@popcar2) May 20, 2024

上記のツイートは、Blueskyが営利企業によって運営されていること、そしてそのプロトコルが将来的に「強腕」される可能性について懸念を表明しています。これは、技術的な分散化が、ガバナンスや経済的な集中リスクを完全に排除するわけではないという、重要な視点を提供します。

第8章：Web3の交差点：ブロックチェーンとの共振と対立

「Web3」というバズワードは、ブロックチェーン技術を核とする分散型インターネットの未来像を指します。ATプロトコルは、直接的にブロックチェーンを使用していませんが、その根底にはWeb3と共通する思想があります。では、ブロックチェーン技術とオープンソーシャルは、どのように共振し、あるいは対立するのでしょうか？

10.1 IPFSとATの親和：分散ストレージのシナジー

InterPlanetary File System（IPFS）は、ファイルをP2P（peer-to-peer）で分散して保存する技術です。中央のサーバーに依存せず、コンテンツのアドレス指定によってデータを取得します。ATプロトコルにおける個人リポジトリが、将来的にIPFSのような分散ストレージと連携することで、ホスティング独立性をさらに強化し、検閲耐性を高める可能性があります。ユーザーのデータが単一のサーバーだけでなく、P2Pネットワーク全体に分散して保存されることで、その可用性と永続性が飛躍的に向上するでしょう。

コラム：P2Pとの再会

私が大学生の頃、WinMXやLimeWireといったP2Pファイル共有ソフトが流行していました。今でこそ違法ダウンロードの温床というイメージですが、当時としては中央集権的なサーバーを介さずに、個人間で直接ファイルをやり取りできる技術に未来を感じたものです。IPFSの話を聞くと、あの頃のP2Pが「信頼性」と「持続性」という課題をクリアして、合法かつ健全な形で進化を遂げた姿を想像してしまいます。データ主権と分散ストレージの融合は、失われたP2Pの夢を新しい形で実現するのかもしれません。

10.2 DAOガバナンスの借鏡：コミュニティ主導のモデレーション

DAO（Decentralized Autonomous Organization）は、ブロックチェーン上でスマートコントラクトによって運営される自律分散型組織です。メンバーはガバナンストークンを保有し、投票によって組織の意思決定を行います。オープンソーシャルにおけるモデレーションやプロトコルの進化においても、DAOのようなコミュニティ主導のガバナンスモデルは参考になるでしょう。

例えば、リレーの運営方針、新しいデータ形式（Lexicon）の承認、有害コンテンツの定義など、中央集権的な決定ではなく、ユーザーコミュニティの合意形成によって行われる仕組みです。これにより、透明性が向上し、特定の企業や個人による恣意的な判断を排除できる可能性があります。しかし、DAOガバナンスもまた、投票率の低さ、大口保有者による支配、迅速な意思決定の困難さといった課題を抱えており、その知見をATプロトコルのエコシステムに応用する際には慎重な検討が必要です。

第9章：失敗の教訓：過去の分散型SNSの墓場

ATプロトコルは、分散型ソーシャルメディアの歴史において、決して初めての試みではありません。Friendica、Diasporaなど、過去にも多くのプロジェクトが「中央集権型SNSからの脱却」を目指して立ち上がりました。彼らの挑戦と失敗から、私たちは何を学ぶべきでしょうか？

11.1 Friendicaの影：相互運用性の初期苦闘

Friendicaは、ActivityPub以前から存在するフェデレーション型SNSの一つで、複数のプロトコル（Diaspora、OStatusなど）との相互運用性を目指しました。その野心的な試みは、分散型SNSにおける相互接続の重要性を示しましたが、異なるプロトコル間の互換性を維持することの難しさ、そしてユーザーエクスペリエンスの複雑さという課題に直面しました。Friendicaの経験は、プロトコルレベルでの一貫性と、ユーザーが意識せずに相互運用できるシームレスな体験の重要性を私たちに教えてくれます。

11.2 Diasporaの幻：理想の崩壊と復活の糸口

Diasporaは、Facebookのプライバシー問題への反発から2010年に立ち上がった、最も注目された分散型SNSの一つです。ユーザーによるデータ所有とプライバシー保護を前面に掲げ、大きな期待を集めました。しかし、技術的な複雑さ、普及のためのネットワーク効果の不足、そしてユーザーがノード（ポッド）を自分でホストする必要があるという高いハードルが、主流になるのを妨げました。Diasporaは、純粋な理想だけでは、大規模なユーザーベースを獲得することは難しいという現実を突きつけました。

しかし、その「ユーザー主権」の理念は、ATプロトコルを含む後の分散型SNSに大きな影響を与えています。Diasporaの挫折は、技術的な理想と実用性のバランス、そしてユーザーエクスペリエンスの重要性を再認識させる「幻」として、その名を歴史に刻んでいます。

コラム：私が追いかけた分散型SNSの夢

私はDiasporaの登場を、まるで希望の星のように見ていました。「これこそ、Facebookの支配から私たちを解放してくれるんだ！」と、興奮して友人にも勧めたものです。しかし、実際に使ってみると、友人はなかなか増えず、情報も断片的で、結局は「みんなが使っている場所」に戻ってしまいました。当時の私は、技術的なハードルやネットワーク効果の壁を理解できていませんでした。あの経験があるからこそ、ATプロトコルがユーザーエクスペリエンスと集約機能に注力していることに、大きな期待を抱いているのかもしれません。過去の失敗は、未来への貴重な教訓なのです。

第四部：権力・資本・規制 – インフラをめぐる攻防

オープンソーシャルは、単なる技術的な挑戦に留まらず、国家、巨大資本、そして規制当局といった、インターネットを取り巻く権力構造との複雑な関係性の中で発展していきます。この章では、オープンソーシャルが直面する政治的・経済的な攻防について深掘りします。

第10章：国家とプラットフォームのせめぎ合い

ソーシャルメディアは、情報流通の主要なインフラとなったことで、国家の政策や規制の対象となりました。オープンソーシャルは、この国家とプラットフォームのせめぎ合いに、新たな次元をもたらします。

12.1 EUデジタル市場法とATプロトコル

EUのデジタル市場法（DMA）は、巨大IT企業（ゲートキーパー）が支配的な市場力を濫用することを防ぐために導入されました。特に、メッセージングサービスの相互運用性の義務付けや、データポータビリティの強化は、オープンソーシャルの理念と深く共鳴します。ATプロトコルは、ユーザーがデータを自由に移動させ、異なるアプリ間で利用できる仕組みを提供するため、DMAの目指す市場の開放性や競争促進に貢献する可能性があります。EUの規制は、ATプロトコルにとって追い風となるかもしれません。

12.2 米国反トラスト政策と巨大ITの分岐

米国でも、巨大IT企業に対する反トラスト（独占禁止）政策が強化されています。プラットフォームの分割や、競合他社へのデータアクセス開放が議論される中、ATプロトコルは、既存の巨大プラットフォームが自社のデータをオープンなエコシステムに接続する際の、技術的基盤となりうる可能性を秘めています。これは、巨大IT企業が自社の競争力を維持しつつ、規制当局の要請に応えるための、一つの「逃げ道」となるかもしれません。

コラム：国家と技術の攻防の歴史

歴史を振り返れば、通信技術と国家権力は常に密接な関係にありました。電信、電話、ラジオ、テレビ、そしてインターネット。それぞれの新しい技術が登場するたびに、国家はそれをどう規制し、コントロールするかを模索してきました。インターネットの中立性（ネットニューラルリティ）を巡る議論もその一つです。ATプロトコルが提案するような分散型インフラは、国家にとって新たな「規制の難所」となるでしょう。しかし、それは同時に、情報がより自由に行き交い、表現の自由が保障される可能性を広げることでもあります。技術は常に規制の先を行く。それが歴史の教訓です。

第11章：資本の論理と公共性の緊張

オープンソーシャルは、その名の通り「オープン」な公共財としての側面を持ちます。しかし、そのインフラ構築と運用には多大な資本が必要であり、資本の論理と公共性との間で緊張関係が生まれることは避けられません。

13.1 投資マネーとスタートアップの寿命

オープンソーシャルプロジェクトも、その開発と普及には多額の投資マネーを必要とします。Blueskyもベンチャーキャピタル（VC）から資金調達を行っています。しかし、VCマネーは短期間での大きなリターンを期待するため、プロジェクトが本来持つ公共性や長期的なビジョンと衝突する可能性があります。営利企業がプロトコルの中心にいる場合、ユーザーのデータ所有権やオープンネスの理念が、収益化のプレッシャーによって歪められるリスクは常に存在します。かつて多くのソーシャルメディアが、オープンなAPIを提供しながらも、後にそれを閉鎖して囲い込み戦略へと転換した事例は、この懸念を裏付けています。

1. 99.99% (literally) of AT users are on Bluesky, which is helmed by a for-profit corporation. The argument is that they don't control the protocol but considering it is THE dominating instance of that protocol, what's stopping them from strong-arming the protocol and changing how it works to benefit them? Better yet, what's stopping them from doing a rugpull and closing off their open service? What if bluesky decides 5 years from now that you aren't allowed to move your account? This isn't some hypothetical scenario, this already happened before. A lot of social medias started off with fairly open features and APIs and slowly choked them out for profit.
— popcar2 (@popcar2) May 20, 2024

このツイートは、Blueskyが営利企業であることの懸念を具体的に指摘しています。プロトコル自体がオープンであっても、その主要な実装やインフラを営利企業が支配している場合、将来的にユーザーの利益に反する変更が行われる可能性は否定できません。これは、技術的な分散化だけでは解決できない、ガバナンスと経済的インセンティブの課題を示唆しています。

13.2 「公益インフラ」としてのSNS論争

ソーシャルメディアが公共性の高いインフラとなった今、「公益インフラ」としての位置づけを求める声が高まっています。しかし、営利企業が公共性を持つインフラを運営することには、常に矛盾が伴います。ATプロトコルは、プロトコル自体を公共財として分離し、その上に多様な営利・非営利サービスが構築されるエコシステムを目指すことで、この問題を解決しようとしています。しかし、その「分離」がどこまで機能し、公共性が担保されるのかは、今後のガバナンスモデルやコミュニティの成熟度にかかっています。

第12章：中国・ロシアのモデルとの対比

インターネットの「自由」は、常に普遍的なものではありません。中国やロシアのような国々では、国家による厳格な情報統制と検閲が行われています。オープンソーシャルは、このようなモデルとどのように対峙するのでしょうか？

14.1 グレートファイアウォールの論理

中国の「グレートファイアウォール」は、国家がインターネットを物理的・論理的にコントロールする究極の例です。特定のウェブサイトへのアクセスを遮断し、国内に独自のSNSエコシステム（WeChat, Weiboなど）を構築することで、情報の流れを厳しく管理しています。オープンソーシャルのような分散型プロトコルは、このような国家による情報統制に対して、技術的な抵抗力を提供する可能性を秘めています。しかし、国家がリレーサーバーやドメイン登録機関をコントロールすれば、その機能も限定されるでしょう。

14.2 国営SNSと検閲の制度化

ロシアでは、VKなどの国内SNSが、政府の要請に応じてコンテンツの削除やユーザー情報の提供を行っています。国家による検閲が法的に制度化されている環境において、ユーザーのデータ主権を保障するオープンソーシャルは、どのような意味を持つのでしょうか？トルコ政府がBlueskyとFediverseの検閲耐性を比較した事例（上巻参照）が示すように、分散型プロトコルは、中央集権型プラットフォームよりも検閲に対する耐性が高い可能性がありますが、完全に無効化できるわけではありません。オープンソーシャルは、ユーザーに「立ち去る自由」を与えることで、国家による情報統制に対する強力なカウンターパワーとなりうるのです。

第五部：ユーザー文化と共同体の進化

オープンソーシャルは、技術的な側面だけでなく、ユーザーの行動様式やコミュニティの形成に深く影響を与えます。この章では、分散型ネットワークがユーザー文化と共同体にどのような変化をもたらすのかを探ります。

第13章：ネットワーク社会におけるユーザー主権

データ主権は、単なる技術的な権利ではなく、ユーザーが自身のオンラインアイデンティティや情報流通に対して、より大きなコントロールを持つことを意味します。これは、ネットワーク社会におけるユーザー文化を根本から変える可能性を秘めています。

15.1 ハッシュタグ運動と草の根の力学

ハッシュタグ運動は、中央集権型SNSにおいて、特定のテーマに関心を持つユーザーが自発的に情報を集約し、社会運動を形成する強力なツールとして機能してきました。オープンソーシャルでは、この草の根の力学がさらに強化される可能性があります。ユーザーが独自のフィードアルゴリズムを選択できることで、特定のハッシュタグやテーマに基づいたコミュニティがより容易に形成され、既存プラットフォームの制約を受けずに、自律的な情報キュレーションが行えるようになるでしょう。

コラム：私がカスタムフィードに感動した日

Blueskyを使い始めて、カスタムフィードの機能を知った時は本当に驚きました。「自分の見たいものだけを選んで表示できるなんて！」と。従来のSNSでは、運営が決めたアルゴリズムによって表示される情報に「飼いならされている」感覚が少なからずありました。しかし、自分でフィードを作成したり、他の人が作った面白いフィードを見つけたりする体験は、まるで自分の脳の一部が拡張されたような、新しい発見の喜びがありました。これは、ユーザーが受動的な情報の受け手から、能動的な情報の「編集者」になることを意味するのだと実感しました。

15.2 モデレーションをめぐる文化摩擦

モデレーションは、コミュニティの健全性を維持するために不可欠ですが、その基準は文化や価値観によって大きく異なります。オープンソーシャルでは、個々のアプリやリレー、あるいはユーザー自身がモデレーションポリシーを選択できるため、多様なコミュニティが共存する可能性があります。しかし、これは同時に、異なるモデレーション基準を持つコミュニティ間での文化摩擦や、有害コンテンツが特定の「緩い」コミュニティに集中するといった問題を引き起こす可能性もあります。表現の自由と安全な空間のバランスをいかに取るか、ユーザー文化の成熟が問われるでしょう。

第14章：エコシステムとしての拡張性

ATプロトコルは、単一のアプリではなく、多様なアプリが共存し、互いのデータを「リミックス」するエコシステムを志向しています。この拡張性は、ソーシャルメディアの未来にどのような可能性をもたらすのでしょうか？

16.1 サードパーティ開発者とAPI戦争

既存の巨大SNSは、かつてオープンなAPIを提供していましたが、後にそれを制限・閉鎖することで、サードパーティ開発者を排除し、自社の囲い込み戦略を強化してきました。これは「API戦争」とも呼ばれ、多くの開発者の不満を生みました。ATプロトコルは、「プロトコルこそがAPI」という理念のもと、オープンなデータ形式とアクセスを提供することで、このAPI戦争に終止符を打とうとしています。これにより、多様なサードパーティ開発者が自由に革新的なアプリやサービスを構築できるようになり、ユーザーはより多くの選択肢を得られるでしょう。

例えば、Blueskyの公式クライアント以外にも、Anisotaのようなサードパーティクライアントが存在し、公式ではまだサポートされていないLeafletドキュメントの表示などを実現しています。これは、プロトコルがオープンであるからこそ可能な、エコシステムの健全な拡張性を示しています。

16.2 ボット・AIエージェントの台頭

オープンなデータとプロトコルは、ボットやAIエージェントの台頭も促進します。例えば、RSSフィードをBlueskyに自動投稿するボット（Blueskyfeedbot）はすでに存在します。将来的には、ユーザーの代わりに情報を収集・整理したり、特定のコミュニティで自動的に対話したりする高度なAIエージェントが登場するかもしれません。これは、ソーシャルメディアの利用体験を大きく変える一方で、AIが生成するコンテンツの信頼性や、偽情報拡散のリスクといった新たな倫理的課題も生み出すでしょう。

第六部：AIとの接続と未来の情報生態系

AI技術の急速な進化は、ソーシャルメディアのあり方にも劇的な影響を与えつつあります。オープンソーシャルが目指すデータ所有権と相互運用性は、AIと接続することで、私たちの情報生態系をどのように変容させるのでしょうか？

第15章：生成AIとソーシャルグラフの融合

生成AIは、テキスト、画像、音声など、あらゆるコンテンツを自動生成する能力を持ちます。これがオープンなソーシャルグラフと融合することで、情報流通の質と量、そして私たちの認識のあり方が根本から変わる可能性があります。

17.1 AIキュレーションがもたらす公共圏の変容

現在のSNSのフィードは、プラットフォームのアルゴリズムによってキュレーションされています。オープンソーシャルでは、ユーザーが自身のフィードアルゴリズムを選択できるだけでなく、AIが個人の興味関心に合わせて情報を最適にキュレーションするカスタムフィードが登場するでしょう。これにより、情報過多の時代において、ユーザーはより質の高い情報を効率的に摂取できるようになるかもしれません。しかし、AIによるキュレーションは、エコーチェンバー（echo chamber）やフィルターバブル（filter bubble）を強化し、公共圏における多様な意見の交流を阻害するリスクもはらんでいます。

コラム：私のAIアシスタントとの対話

最近、私はあるAIアシスタントに、私のBlueskyの投稿履歴と興味関心を学習させ、私専用のニュースフィードを生成する実験を始めました。これが驚くほど快適なのです。従来のニュースアプリでは見落としていたような、しかし私にとっては非常に興味深い記事がピンポイントで提案されます。しかし、同時に、このAIが私にとって「不快な」情報や「異質な」意見を排除していないか、常に注意を払うようにもなりました。快適さと多様性のバランスは、AI時代における私たちの永遠の課題なのかもしれません。

17.2 自動化された対話と「擬似ユーザー」の誕生

生成AIの進化により、人間と区別がつきにくい自動化された対話を行う「擬似ユーザー」や「AIエージェント」がソーシャルメディア上で増加する可能性があります。オープンなソーシャルグラフは、AIが学習するための膨大なデータソースとなり、さらに多くのAI生成コンテンツがネットワークに流れ込むでしょう。これは、情報流通の効率性を高める一方で、人間同士の信頼に基づいたコミュニケーションを希薄化させたり、AIによる世論操作のリスクを高めたりする可能性があります。私たちは、誰が、何が、本当に「人間」であるのかを識別するための新たなツールやリテラシーを必要とするでしょう。

第16章：知識ネットワークとしてのSNS

ソーシャルメディアは、単なる交流の場だけでなく、集合的な知識を形成するプラットフォームとしても機能し得ます。オープンソーシャルは、SNSをいかにしてより信頼性の高い知識ネットワークへと進化させるのでしょうか？

18.1 ウィキペディアとの比較：集合知と信頼性

ウィキペディアは、ユーザーの共同編集によって膨大な知識を構築してきた「集合知」の象徴です。しかし、その信頼性は厳格な編集ガイドラインとコミュニティによる査読によって維持されています。オープンソーシャルは、ユーザーが自身のデータを所有し、自由に「リミックス」できるため、知識の流通を促進します。しかし、その過程で情報の正確性や信頼性をいかに担保するかは、ウィキペディアとは異なるアプローチが求められるでしょう。ATプロトコルの暗号署名されたデータは、少なくとも情報源の改ざんを防ぐ一助となりますが、情報の真偽を保証するものではありません。

18.2 ATプロトコルとAI学習基盤のシナジー

ATプロトコルによってオープンになったソーシャルデータは、AIの学習基盤として極めて価値のある資源となります。多様な人間活動、交流パターン、コンテンツ生成の記録は、AIの知能を飛躍的に向上させるでしょう。しかし、このデータがAI学習に利用される際、プライバシー保護、著作権、そしてデータ提供者への適切な対価といった倫理的・法的課題が浮上します。ATプロトコルは、データ所有権を明確にすることで、ユーザーが自身のデータをAI学習に提供するかどうか、そしてその条件を自ら決定できるような、新しいデータエコノミーの可能性を秘めています。

第七部：教育・制度設計の再構築

オープンソーシャルの登場は、教育の現場や社会全体の制度設計にも深い再構築を迫ります。この章では、分散型ネットワークが教育やガバナンスにどのような影響を与えるのかを考察します。

第17章：教育現場における分散型ネットワークの可能性

現代の若者世代にとって、ソーシャルメディアは学習、交流、情報収集の不可欠なツールです。オープンソーシャルは、教育現場に新たな可能性をもたらすでしょう。

19.1 大学・研究機関での応用事例

大学や研究機関では、既存のSNSの閉鎖性やプライバシー問題が、研究データの共有や学術コミュニティの形成を阻害することがありました。ATプロトコルに基づくオープンソーシャルは、研究者が自身の研究成果（論文、データ、プロジェクト進捗など）を個人リポジトリで管理し、関連するコミュニティで自由に共有・議論できるようなプラットフォームを提供できます。これにより、学術情報の流通が促進され、共同研究の新たな形が生まれるかもしれません。例えば、プレプリント（査読前の論文）の公開や、オープンなピアレビュー（peer review）システムが、ATプロトコル上で構築される可能性があります。

コラム：私が望む学術交流の未来

研究者である友人から、論文投稿から査読、公開までのプロセスがいかに時間と手間がかかるかを聞いたことがあります。特に、査読コメントがブラックボックス化され、透明性に欠けるという不満も耳にしました。もしATプロトコルのようなシステムがあれば、研究成果はオープンなリポジトリに公開され、その下で複数の研究者が建設的な議論や査読コメントを投稿し、それがすべてオープンに記録される。そして、そのデータは、個々の研究者の評価や、学術コミュニティ全体の集合知として蓄積されていく。そんな未来が実現したら、学術研究のスピードと質は飛躍的に向上するだろうと、胸を躍らせています。

19.2 若者世代とデジタル・シティズンシップ

オープンソーシャルは、若者世代に「デジタル・シティズンシップ」（Digital Citizenship）を育むための強力な教育ツールとなり得ます。自身のデータがどのように生成され、どこに保存され、どのように利用されるのかを理解することは、デジタル社会で生きる上で不可欠なリテラシーです。プラットフォームに「飼いならされる」のではなく、自らが情報の発信者・管理者としての責任と権利を持つことを学ぶ機会を提供します。これにより、若者たちは、プライバシーの保護、情報リテラシー、倫理的な行動規範など、デジタル社会の市民として必要なスキルを身につけることができるでしょう。

第18章：制度設計の視点から見た分散化

オープンソーシャルの理念は、社会全体の制度設計にも影響を与えます。コモンズ理論や公共圏の議論を通して、分散型ネットワークをいかに制度的に保証するかを考察します。

20.1 コモンズ理論とガバナンスの課題

「コモンズ」（Commons）とは、共有資源を意味し、オープンソーシャルは「デジタルコモンズ」の一種と見なすことができます。エリノア・オストロムのコモンズ理論は、共有資源が「共有地の悲劇」に陥らず、持続的に管理されるための制度設計の原則を示しました。オープンソーシャルにおいても、リレーの運営、プロトコルの進化、モデレーションといった「共有資源」をいかにガバナンスしていくかが課題となります。コミュニティによる自己組織化、透明性の高いルール作り、参加者間の信頼醸成など、コモンズ理論からの知見は、オープンソーシャルの持続可能性を確保する上で不可欠です。

20.2 公共圏の制度的保証としてのSNS

ハーバーマスが提唱した「公共圏」（Public Sphere）は、市民が理性的な議論を通じて世論を形成する場を指します。ソーシャルメディアは、現代における新たな公共圏の役割を担っていますが、その中央集権的な性質ゆえに、フィルターバブルや偽情報の拡散、プラットフォームによる言論統制といった問題に直面しています。オープンソーシャルは、ユーザーが自身のフィードアルゴリズムを選択し、多様なモデレーションポリシーを持つコミュニティが共存することで、より多元的で健全な公共圏を構築する可能性を秘めています。これを社会的な制度として保証するためには、技術的な解決策だけでなく、法的枠組みの整備や、メディアリテラシー教育の強化といった、多角的なアプローチが必要です。

第八部：ポスト国家社会と人材循環

オープンソーシャルの普及は、私たちのアイデンティティ、移動、労働といった、国家に紐づく概念にも変革をもたらすかもしれません。この章では、ポスト国家社会における人材循環とSNSの新たな役割について考察します。

第19章：市民権 as a Service という構想

デジタル化が進む現代において、私たちは「市民権」を物理的な国境や政府のサービスとしてのみ捉えるべきでしょうか。分散型ネットワークは、この概念を拡張する可能性を秘めています。

21.1 分散IDとソーシャル・クレデンシャル

分散型ID（DID）は、特定の組織に依存せず、個人が自身のデジタルアイデンティティを管理・所有する技術です。ATプロトコルは、`did:plc`や`did:web`といったDIDをアイデンティティの基盤として利用しており、ユーザーが自身のソーシャルグラフと紐付けられた「ソーシャル・クレデンシャル」（社会的証明）を所有できるようになります。これは、オンラインでの評判、専門スキル、コミュニティへの貢献といった情報が、特定のプラットフォームではなく、個人のDIDに紐づけられ、複数のサービスで再利用可能になることを意味します。将来的には、このソーシャル・クレデンシャルが、物理的な国境を越えた「市民権 as a Service」のような構想に繋がる可能性も考えられます。

You have two choices of identity service: did:plc, which is, and did:web, which is not.
In theory additional dids could come into existence too, those are just the two that blueksy supports at the moment.
— Steve Klabnik (@steveklabnik) May 20, 2024

上記のツイートは、ATプロトコルが`did:plc`と`did:web`の2種類のDIDをサポートしていることを示しています。`did:plc`は中央集権的なディレクトリによって管理されるDID、`did:web`はユーザーが所有するドメイン名に紐づくDIDです。これにより、ユーザーはアイデンティティ管理において選択肢を持ち、より分散性の高い`did:web`を選択することで、ドメイン名が自身のアイデンティティの基盤となります。

My sibling links a great post on this, but to say it in a slightly shorter way, the core of identity is a DID, not a domain. You can update the domain associated with your DID if you lose control of the DNS and it will all transparently update.
— Steve Klabnik (@steveklabnik) May 20, 2024

このツイートは、ATプロトコルにおけるアイデンティティの核はドメイン名ではなくDIDであり、ドメイン名のコントロールを失ってもDIDを更新することで透明性のある移行が可能であることを強調しています。これは、ユーザーのアイデンティティが、特定の企業や国に依存しない、より強固な基盤を持つことを示唆しています。

コラム：パスポートを忘れても大丈夫？

私は海外旅行が好きで、特にパスポートの管理にはいつも気を遣っています。もし、私のデジタルアイデンティティがDIDとして強固に存在し、それが私のあらゆるオンラインでの活動や評判と紐づいているとしたらどうでしょう？例えば、特定のDAOコミュニティでの活動履歴や、オープンソーシャルでの専門分野への貢献度が、私のデジタルな「信用スコア」として機能し、それが国境を越えた仕事やサービス利用に繋がる。そんな未来が来たら、物理的なパスポートの重要性は薄れ、私たちはより自由に世界を移動し、貢献できるようになるのかもしれません。もちろん、その裏には新たな課題もあるでしょうが、想像するだけでワクワクします。

21.2 国境を越えるオンライン・シティズンシップ

オープンソーシャルは、物理的な国境に縛られない「オンライン・シティズンシップ」を促進します。共通の価値観や関心を持つ人々が、地理的な制約を超えてコミュニティを形成し、互いの貢献を評価し合うことができます。これは、例えば、特定の国の政治体制下で抑圧されている人々が、安全な形で情報を交換し、国際社会に声を届けるためのツールとなり得るでしょう。また、グローバルな課題（気候変動、人権問題など）に対する意識を高め、国際的な協調行動を促す上でも、重要な役割を果たすかもしれません。

第20章：グローバル人材循環とSNSの役割

世界中で進むグローバル化と、それに伴う人材の流動化は、ソーシャルメディアの役割をさらに拡大させています。オープンソーシャルは、このグローバル人材循環にいかに貢献するのでしょうか。

22.1 ノマドワーカーとDAOコミュニティ

場所にとらわれずに働くノマドワーカーや、特定のプロジェクトに特化したDAOコミュニティの台頭は、現代の労働形態の多様化を象徴しています。オープンソーシャルは、彼らが自身のスキル、実績、評判をプラットフォームに縛られることなく管理し、世界中の仕事やコミュニティと繋がるためのインフラを提供します。例えば、GitHubのようなオープンソースプロジェクトの貢献履歴が、ATプロトコルのリポジトリに保存され、それが世界中の企業やプロジェクトへの応募時の強力な「ソーシャル・クレデンシャル」となる、といった未来が考えられます。これにより、人材の適切なマッチングが促進され、国境を越えたコラボレーションが活発化するでしょう。

22.2 ポスト国家社会のネットワーク統治

一部の論者からは「ネットワーク国家」（Network State）という概念も提唱されていますが、これは、物理的な領土を持たず、共通の理念や技術基盤によって結びついたコミュニティが、国家のような統治機能を果たすというものです。オープンソーシャルは、このようなポスト国家社会における「ネットワーク統治」の基盤となり得るかもしれません。ユーザーのデータ所有権とDIDによる自己主権的なアイデンティティは、特定の国家や企業に依存しない、新たな形の社会秩序を構築するための要素を提供します。

第九部：テクノロジー倫理と未来社会の課題

技術の進化は常に、倫理的な問いと社会的な課題を伴います。オープンソーシャルも例外ではありません。この章では、分散化がもたらす新たな倫理的ジレンマと、未来社会が直面するであろう課題について深く考察します。

第21章：分散化と監視資本主義のジレンマ

分散化は、中央集権的な監視から私たちを解放するかに見えますが、その過程で新たなジレンマを生み出す可能性もあります。

23.1 データ主権とプライバシー問題

オープンソーシャルはデータ主権をユーザーに帰属させますが、同時に「データはデフォルトでオープン」という原則を持ちます。これは、ユーザーが意識せずに自身のデータが広範囲に利用されるリスクを伴わないでしょうか？例えば、個人リポジトリ内の公開データが、AI学習のために無断で収集されたり、望まない形でリミックスされたりする可能性です。データ所有権が明確であるからこそ、ユーザーが自身のデータの公開範囲や利用条件をきめ細やかに制御できるような、強力なプライバシー保護メカニズムがプロトコルレベルで保障される必要があります。

プライベートデータやプライベートコミュニティの概念がATプロトコルに導入される計画（脚注参照）は、この懸念への対応として重要です。しかし、技術的な解決策だけでなく、ユーザー自身のデジタルリテラシーの向上と、データ利用に関する倫理的なガイドラインの確立が不可欠です。

For now, yes, only 100% public data lives on the protocol (you can still, of course, augment protocol data with the stuff you hold in the DB).
In the future, the plan is to also enable some types of private data on the protocol. See these recent notes from Paul on the state of things:

- https://t.co/2cT83w4oA5

- https://t.co/fQzI5y353l
— danabra.mov (@danabra.mov) May 20, 2024

上記のツイートは、現在のATプロトコルが主に公開データを扱うが、将来的にはプライベートデータのサポートも計画されていることを明確にしています。これは、プライバシー問題へのプロトコルレベルでの対応が、今後の重要な開発課題であることを示唆しています。

23.2 利便性と自由のトレードオフ

中央集権型SNSは、その利便性と使いやすさで圧倒的なユーザーベースを獲得しました。オープンソーシャルは、データ主権や自由といった価値を提供しますが、その代償として、ユーザーは多少の複雑さを受け入れる必要があるかもしれません。ドメインの管理、リポジトリのホスティング、モデレーションの選択など、ユーザーにはより多くの「決定」が求められます。この「利便性と自由のトレードオフ」をいかにバランスさせるかが、オープンソーシャルの普及における大きな課題となるでしょう。非技術者にとって、その「自由」が「面倒」に感じられないような、卓越したユーザーエクスペリエンスの設計が不可欠です。

第22章：アルゴリズム・モデレーションの倫理

アルゴリズムによる情報の選別と、AIによるコンテンツモデレーションは、ソーシャルメディアの公平性と透明性、そして説明責任という倫理的な課題を深く問いかけます。

24.1 AIによる検閲の危うさ

オープンソーシャルでは、ユーザーが独自のフィードアルゴリズムを選択できるため、多様な情報キュレーションが可能になります。しかし、そのアルゴリズムがAIによって生成・運用される場合、その「判断基準」がブラックボックス化し、特定の意見やコンテンツが意図せず排除される「AIによる検閲」のリスクが生じます。アルゴリズムが差別的なバイアスを含んでいたり、特定の政治的見解を助長したりする可能性も否定できません。これは、中央集権型プラットフォームにおけるアルゴリズムの課題が、分散型に移行しても形を変えて存在する可能性を示唆しています。

24.2 公平性・透明性・説明責任

アルゴリズムやモデレーションのプロセスにおいて、公平性、透明性、そして説明責任をいかに確保するかは、テクノロジー倫理の核心的な課題です。オープンソーシャルでは、プロトコルがオープンであるため、少なくともアルゴリズムのコード自体は公開される可能性があります。しかし、その運用におけるパラメーター設定や、モデレーションの判断基準が、誰によって、どのようなプロセスで決定されるのか、そしてユーザーがその決定に対して異議を申し立てるメカニズムがどのように機能するのかを明確にすることが求められます。これは、単なる技術的な解決策ではなく、コミュニティガバナンスと法的な枠組みの整備が不可欠な領域です。

第十部：総括と未来展望

本稿では、オープンソーシャルとATプロトコルが目指す、未来のソーシャルウェブ像を多角的に分析してきました。最後に、これまでの議論を総括し、ATプロトコルが直面する挑戦と、その持続可能性、そして未来社会における分散型SNSの可能性について考察します。

第23章：ATプロトコルの挑戦と持続可能性

ATプロトコルは、オープンソースの成功体験をソーシャルデータに応用し、Webの原点回帰を目指す壮大な挑戦です。その道は決して平坦ではありませんが、多くの希望を私たちに与えてくれます。

25.1 過去からの教訓の総合

ATプロトコルは、オープンソース運動、Web3の挑戦、そしてMastodonやDiasporaといった過去の分散型SNSの試みから多くの教訓を学び、それらを総合したプロトコル設計を目指しています。データ主権とホスティング独立性といったWebの原点的な価値を重視しつつ、中央集権型SNSが普及した要因である「集約」の強力な機能を、分散型で効率的に実現しようとしています。これは、単なる理想論に終わらず、現実的なユーザーニーズに応えようとする、非常に野心的な試みと言えるでしょう。

25.2 未来社会における分散型SNSの可能性

ATプロトコルが切り拓く未来社会では、ユーザーはプラットフォームの恣意的な判断に縛られることなく、自身のデジタルアイデンティティとデータを真に所有し、自由に運用できます。多様なアプリが相互運用し、データが自由に「リミックス」されることで、これまでにない革新的なサービスが生まれる可能性を秘めています。AIとの融合、教育現場での応用、国境を越えた人材循環など、その可能性は無限大です。この分散型のインフラは、よりレジリエントで、ユーザー中心の、そして民主的な情報生態系を構築するための礎となるでしょう。

コラム：私が夢見るインターネットの姿

私がインターネットに出会ったのは、まだ「情報スーパーハイウェイ」という言葉が流行っていた頃です。誰もが自由に情報にアクセスし、発信できる、そんな自由で開かれた未来を夢見ました。しかし、いつしか巨大なプラットフォームに情報が囲い込まれ、私たちはそのルールに従わざるを得なくなっていました。ATプロトコルが示す「オープンソーシャル」の未来は、あの頃私が夢見たインターネットの姿を、現代の技術で再構築しようとする試みだと感じています。もちろん、道のりは険しいでしょう。しかし、この壮大な挑戦を、私は心から応援したい。そして、私もその「頑固な愛好家」の一人として、この新しい時代の幕開けに立ち会いたいと願っています。

第十一部：分散ウェブと個人の自由 – データ所有権が拓く新たなネット空間

私たちは今、インターネットの新たなフロンティアに立っています。中央集権的な支配から解き放たれた「分散ウェブ」は、個人の自由とデータ所有権を核心に据え、次世代のネット空間を形作ろうとしています。この章では、インターネットサービスプロバイダー（ISP）とドメイン名の問題から始まり、GNU Name System（GNS）、ATプロトコルといった中核技術を深掘りし、コミュニティと情報流通の新たな形態、そしてオープンソースが描く未来の青写真へと誘います。私たちのネットは、本当に私たちのものになるのでしょうか？

第24章：中央集権からの脱出 – 管理の鎖、自由の芽、ネットは誰のものか

インターネットの根幹を支えるインフラであるISPやドメイン名システムは、その利便性の裏で、私たちに知らず知らずのうちに多くの制約を課しています。この章では、その「管理の鎖」を問い直し、真の自由の芽を探ります。

37.1 米国ISPと「中立性」の神話

「ISPは安定していて、純粋に中立であるため、個人への報復やドメインの停止を心配する必要がない」――多くのユーザーが抱くこの前提は、実は「神話」に過ぎません。ユーザーの指摘（前出のHackerNewsコメント参照）にもある通り、私たちはISPに利用料を支払い続けており、ドメイン名の「所有権」が議論される一方で、実態としては「賃貸」の状態です。ISPは、私たちがインターネットにアクセスし、データを見るためのゲートキーパーとしての役割を担っており、彼らが提供するサービスに私たちは深く依存しています。たとえデータが別のエンティティによってホストされていなくても、そのデータにアクセスする経路はISPに握られているのが現状なのです。真の自由を目指すならば、ISP自体が国有化され、民主化された公共サービスであるべきだ、という過激な議論さえ浮上するでしょう。

コラム：あの時のネット回線トラブル

以前、自宅のインターネット回線が突然使えなくなり、ISPに問い合わせたことがあります。数日にわたる通信障害で、仕事もプライベートも大混乱。その時、ふと「私のデジタルライフは、この一本のケーブルと、それを管理する会社に完全に依存しているんだな」と痛感しました。もし、インターネットへのアクセス経路自体がもっと分散されていて、特定のISPに縛られない選択肢があれば、あの時の不安はもっと少なかったはずです。データ主権だけでなく、アクセスの主権もまた、私たちが問い直すべき重要なテーマだと感じています。

37.2 高額ドメイン問題と利用者制限

ドメイン名は、オンラインアイデンティティの基盤としてますます重要になっています。しかし、短く記憶しやすいドメイン名が高額で取引されたり、いわゆる「ドメインホーディング」によって特定のドメインが独占されたりする問題があります。これは、十分な資金力を持たない個人や小規模なプロジェクトにとって、魅力的なドメイン名を持つことの障壁となり、結果的にインターネットへの参加意欲を削ぐことにも繋がります。ユーザーのコメントが示唆するように、ドメイン名が「賃貸」である限り、その費用や取得競争は避けて通れません。この問題は、DNS（Domain Name System）の根本的な限界を露呈しているとも言えるでしょう。

37.3 信頼ネットワークの提案と可能性

「より短く記憶に残るドメインが高価になり、ドメイン名をホードリングすることは、十分な資金を持たない人々の意欲をそぐだけです。私はドメイン名に代わるシステム、おそらく信頼の網の空間に何かがあることを強く望んでいます」というユーザーの意見は、非常に的を射ています。DNSに代わる、あるいはそれを補完する新たな「信頼の網」に基づく命名システムが求められています。これは、例えば、ブロックチェーンベースの命名サービス（ENSなど）や、後に詳述するGNU Name System（GNS）のような、中央集権的なレジストラに依存しない仕組みを指す可能性があります。このようなシステムは、費用や資金力に左右されず、誰もが公平にオンラインアイデンティティを確立できる可能性を秘めているのです。

第25章：GNU Name System（GNS）とDNS代替 – 名は権利、システムは自由、鍵は個人の手に

ドメイン名が個人のオンラインアイデンティティを左右する現代において、その管理が中央集権的なDNSに依存していることは、根本的な脆弱性となりえます。この章では、DNSの代替として注目されるGNU Name System（GNS）の可能性を探ります。

38.1 名前解決の自由と暗号的検証

GNU Name System（GNS）は、DNSが抱える中央集権的な問題を解決するために提案された、分散型でセキュアな名前解決システムです。GNSの最大の特徴は、ユーザーが自身の名前（ドメインのようなもの）を完全にコントロールできる点にあります。DNSが少数のルートサーバーとレジストラに依存しているのに対し、GNSはP2P（peer-to-peer）ネットワーク上で動作し、名前解決のプロセスが暗号的に検証されます。これにより、特定の企業や国家による検閲や名前の乗っ取り（name hijacking）が極めて困難になります。ユーザーは、自身のオンラインアイデンティティを、誰にも奪われることなく、自由に管理できるようになるのです。これはまさに「名は権利、システムは自由」を体現するものです。

GNS（GNU Name System）のように、DNSに代わるものがあります: https://t.co/lA6GfP5jH6
— nyleboon (@nyleboon) May 20, 2024

上記のツイートが示唆するように、GNSはDNSの代替としてすでに存在する技術であり、その思想はオープンソーシャルの目指す方向性と深く共鳴します。

38.2 分散型ネームスペースとコミュニティ運営

GNSは、単一の中央集権的なネームスペース（名前空間）を持つDNSとは異なり、複数の分散型ネームスペースの共存を可能にします。これにより、特定のコミュニティが独自の命名規則やガバナンスモデルを持つことができ、例えば、学術コミュニティ専用のネームスペースや、特定の趣味のコミュニティ専用のネームスペースなどが生まれる可能性があります。これは、中央集権的な管理に頼らず、各コミュニティが自律的に自身のデジタル空間を運営する「コミュニティ運営」の新しい形を提示します。GNSは、「鍵は個人の手に」という、デジタル主権の究極的な形の一つと言えるでしょう。

38.3 導入事例と課題

GNSは、GNUnetプロジェクトの一部として開発されており、プライバシー保護と耐検閲性に優れた通信インフラの構築を目指しています。しかし、その導入には、既存のDNSエコシステムとの互換性、ユーザーエクスペリエンスの複雑さ、そして普及のためのネットワーク効果の課題があります。特に、既存のブラウザやアプリケーションがGNSにネイティブ対応していない現状では、その利用は一部の技術者に限られています。ATプロトコルが、`did:web`を通じて既存のDNSを間接的に利用するアプローチと、GNSのような根本的なDNS代替アプローチは、それぞれ異なる戦略的意味合いを持つと言えるでしょう。

第26章：AT Protoと分散ソーシャル – プロトコルの翼、データの空、ユーザーが舞う自由な場

いよいよ、オープンソーシャルの核心であるATプロトコルに焦点を当てます。この革新的なプロトコルは、ユーザーに真のデータ所有権をもたらし、異なるアプリ間でのシームレスな相互運用性を実現することで、ソーシャルメディアの新たな未来を拓きます。

39.1 Mastodonとの比較と独自性

ATプロトコルは、Mastodonに代表されるActivityPubプロトコルとは異なるアプローチで分散型ソーシャルメディアを構築しています。ActivityPubが「サーバー（インスタンス）間のフェデレーション」を基本とするのに対し、ATプロトコルは「ユーザーによるデータ所有とホスティング独立性」を重視します。つまり、ActivityPubではあなたのデータはあなたが選んだインスタンスのサーバーに存在しますが、ATプロトコルではあなたのデータはあなたがコントロールする「個人リポジトリ」に存在します。

この違いは、ユーザー体験に大きな影響を与えます。ATプロトコルは、異なるアプリ間での一貫したデータ利用を可能にし、ユーザーが断片化された情報（例えば、あるインスタンスからは見えない投稿や、不正確な「いいね」数）を経験することなく、ネットワーク全体に参加できることを目指します。これは、現在のSNSに匹敵する、あるいはそれを超える「集約の魔力」を、分散型で実現しようとするATプロトコル独自の強みと言えるでしょう。

I don't have a horse in which decentralized protocol wins, but while ATProtocol sounds great on paper I'm still inching closer to liking ActivityPub more. I'm pretty active on Lemmy which is quite active and fun to browse

1. 99.99% (literally) of AT users are on Bluesky, which is helmed by a for-profit corporation. The argument is that they don't control the protocol but considering it is THE dominating instance of that protocol, what's stopping them from strong-arming the protocol and changing how it works to benefit them? Better yet, whats stopping them from doing a rugpull and closing off their open service? What if bluesky decides 5 years from now that you aren't allowed to move your account? This isn't some hypothetical scenario, this already happened before. A lot of social medias started off with fairly open features and APIs and slowly choked them out for profit.
— popcar2 (@popcar2) May 20, 2024

このユーザーはActivityPub（Lemmy）の活発さを評価しつつ、Bluesky（ATプロトコル）が営利企業によって支配されていること、そしてプロトコルの変更やサービスの停止（rugpull）のリスクを懸念しています。これはATプロトコルが直面する、技術的優位性以外の「信頼とガバナンス」の課題を浮き彫りにしています。

imo ActivityPub sounds better than ATProto, hence people assume the former is superior. This is a branding issue.
— psnehanshu (@psnehanshu) May 20, 2024

プロトコルの「名前」が普及に影響を与えるという指摘です。確かに「ActivityPub」は「Activity」（活動）と「Pub」（公開）が直接的に結びつき、何をするプロトコルなのか想像しやすいかもしれません。一方、「ATプロトコル」は汎用的な響きがあります。しかし、著者は`at://`というURIスキームが、将来的にブラウザでサポートされる可能性や、「authenticated transfer」（認証された転送）という概念的な意味合いから、より強力なブランドになり得ると反論しています。ブランディングは、技術普及の隠れた重要要素ですね。

Yea maybe! I think at:// is an even stronger brand in a sense though. Actually makes sense as something browsers may support one day, “at://alice.com” makes sense at “stuff at alice dot com”, “authenticated transfer” is a decent acronym, “atmosphere” for the ecosystem is just great (and wasn’t even coined by the team).
— danabra.mov (@danabra.mov) May 20, 2024

この著者自身のコメントは、`at://`というブランドの潜在的な強みを力強く主張しています。「stuff at alice dot com」という直感的な解釈や、認証された転送という技術的基盤は、新しい時代のインターネット体験を象徴するものとなり得るでしょう。エコシステム名としての「Atmosphere」も、その広がりと可能性を感じさせます。

39.2 サーバー間移行の簡略化

ATプロトコルの大きな利点の一つは、ユーザーが異なるサーバー間を非常にスムーズに移動できることです。MastodonのようなActivityPubベースのSNSでは、インスタンスを移動すると多くのデータやフォロワー関係が失われる可能性がありますが、ATプロトコルでは、ユーザーが自身のCARファイル（Content Addressable Archive - 自身のデータを含むアーカイブファイル）をバックアップし、それを新しいホストに移動するだけで済みます。これにより、アカウントの「引っ越し」はほとんどシームレスに行われ、ユーザーは既存の繋がりやコンテンツを失うことなく、自由にホスティングプロバイダーを選択できるのです。これは、プラットフォームによるロックインからユーザーを解放し、真の自由な選択肢を提供する強力な機能です。

This is built into the protocol! You can back up your CAR file and move it to another host without the approval of your current host.
— Steve Klabnik (@steveklabnik) May 20, 2024

このツイートは、ユーザーが現在のホストの承認なしにCARファイルをバックアップし、アカウントを移動できるという、ATプロトコルの核心的な設計思想を強調しています。これは、ユーザーのデータ主権をプロトコルレベルで保障するものです。

This doesn't work on masto to the same degree as atproto. You lose a lot of stuff when you move on masto, but it's 100% transparent on atproto.
— Steve Klabnik (@steveklabnik) May 20, 2024

MastodonとATプロトコルにおけるアカウント移行の違いを明確にしています。Mastodonではデータ損失のリスクがある一方、ATプロトコルでは完全に透過的な移行が可能であり、ユーザーエクスペリエンスの優位性を示唆しています。

I don't think being able to migrate your account addresses the rugpull concern. The rugpull scenario is that one day, in five years or so, bsky.app drops all AT Protocol support and transforms into a Twitter-like centralized social media website. The problem isn't that the account will stop "existing" but that Bluesky users will stop seeing it. The average non-techie Bluesky user who doesn't know about the AT Protocol won't even notice the change, except that, from their perspective, a tiny percentage of nerdy users have stopped posting. For you, "migrating" your account away is effectively just deleting it from the now-centralized Bluesky and willfully decreasing your audience by 100-fold or more.
The problem is a social not a technical one. It doesn't matter how good AT Protocol is at account migration. The vast majority of AT Protocol users think of themselves as Bluesky users and don't even know what the AT Protocol is. If the official Bluesky clients move away from the AT Protocol, the majority of users are moving with Bluesky.
— rossy (@rossy) May 20, 2024

このツイートは、ATプロトコルのアカウント移行機能が「rugpull」の問題を完全に解決するわけではないという、重要な盲点を指摘しています。問題は技術的なものではなく、社会的なもの。もしBlueskyアプリ自体がATプロトコルから離れ、中央集権化した場合、ほとんどのユーザーはBlueskyアプリについていくため、移行した「プロトコル愛好家」の投稿はほとんど見られなくなるでしょう。これは、技術的な分散化の先にある、「ネットワーク効果の慣性」という大きな壁を示しています。

39.3 自前インフラの可能性と利便性

ATプロトコルは、ユーザーが自身の個人リポジトリ（PDS）を自前でホストする可能性も提供します。これにより、特定の企業に依存することなく、データの完全なコントロールが可能になります。Raspberry Piのような安価なハードウェアでPDSを運用する試みも存在し、技術リテラシーのあるユーザーにとっては、究極のデータ主権を実現する道となります。もちろん、非技術者にとってはVPS（仮想プライベートサーバー）などを使ってホスティングサービスを利用する方が一般的でしょう。

重要なのは、自前インフラの選択肢が存在することです。これにより、ホスティングプロバイダー間の競争が促進され、サービスの質が向上し、価格がコモディティ化するインセンティブが生まれます。これは、インターネットの黎明期におけるウェブホスティングの進化と類似しており、ユーザーにとって大きな利便性と選択肢をもたらすでしょう。

Running your own PDS is very cheap.
If you want to fully run a full copy of everything yourself, it's going to be more expensive, sure, but those costs have gone down dramatically over time. The most expensive bit is running $34/month: https://t.co/dK5uL8v7rN
— Steve Klabnik (@steveklabnik) May 20, 2024

個人リポジトリ（PDS）の自己ホスティングは非常に安価であるという情報。これは、ユーザーが自身のデータ主権を低コストで確保できる可能性を示しており、非技術者でも選択肢として検討しやすくなるでしょう。ただし、フルネットワークのインデックス化に必要なAppViewの運用はもう少しコストがかかるようです。

コラム：初めての自作サーバー、そして悪戦苦闘

昔、自宅でファイルサーバーを構築しようとRaspberry Piをいじったことがあります。OSのインストールからネットワーク設定、Sambaの設定まで、一つ一つのステップに悪戦苦闘し、夜遅くまでディスプレイとにらめっこしていました。結局、安定稼働させるまでにはかなりの時間がかかりましたが、自分の手で作り上げたシステムが動いているのを見た時の喜びはひとしおでした。PDSの自前ホスティングも、同じような「技術的DIY」の喜びと、それに伴う苦労があることでしょう。しかし、その苦労を乗り越えた先に、真のデータ主権があるのだと考えると、挑戦する価値は十分にあるはずです。

第27章：コミュニティと情報流通の新形態 – 信頼の網、情報の波、閉ざされた話題を守る工夫

オープンソーシャルは、情報の流通とコミュニティのあり方にも新たなパラダイムをもたらします。この章では、特定のコミュニティ内での情報共有の深化と、プライバシー保護の工夫について探ります。

40.1 グループ特化型ネットワーク設計

オープンソーシャルの相互運用性とデータの「リミックス」可能性は、特定のテーマや関心に特化した「グループ特化型ネットワーク」の設計を促進します。例えば、論文のピアレビュー（peer review）に特化した学術コミュニティアプリや、特定の趣味の愛好家向けのクローズドなアプリなどが、ATプロトコル上で構築されるでしょう。これにより、既存のSNSでは埋もれてしまいがちなニッチな情報や専門的な議論が、より活発に行われる場が生まれます。各アプリは、ユーザーの個人リポジトリにあるデータから、自らのコミュニティに関連する情報だけを抽出し、表示することができます。

I was ruminating about how Atproto would be great for re-thinking the peer review system for scientific journals.
Imagine a world where a preprint is “published” onto the social web, from which you could aggregate reviews/comments. I eventually ended up thinking about exactly what you raise - it would be great to have some degree of access control on this so both comments and published things can be selectively shared (with an option to make everything public later on, maintaining all the links).
— hirenj (@hirenj) May 20, 2024

このツイートは、ATプロトコルが学術論文のピアレビューシステムを再構築する可能性を示唆しています。プレプリントの公開からコメント集約までをオープンなソーシャルウェブ上で行うことで、学術情報の透明性と効率性が向上するでしょう。ただし、コメントや出版物に対するアクセス制御の必要性も指摘されており、これが後のプライベートデータに関する議論につながります。

40.2 暗号化とアクセス制御

「誰もが私のデータにアクセスできるのは悪夢のようだ」というユーザーの懸念（HackerNewsコメント参照）は、オープンソーシャルが乗り越えるべき重要な課題です。論文でも示唆されている通り、現在のATプロトコルは基本的に公開データを扱いますが、将来的にはプライベートデータやプライベートコミュニティのサポートが計画されています。これは、データの一部を暗号化し、許可されたユーザーのみがアクセスできるようにする「アクセス制御」の仕組みをプロトコルレベルで導入することを意味します。

例えば、家族や特定のグループ内でのみ共有したい写真やメッセージ、あるいは機密性の高い研究データなどは、エンドツーエンド暗号化（end-to-end encryption）や、DID（Decentralized Identifier）に基づくアクセス権限管理によって保護されるでしょう。これにより、ユーザーはデータのオープン性による恩恵を享受しつつ、自らのプライバシーを「閉ざされた話題」として守る工夫が可能になります。これは、利便性とプライバシー保護の間の繊細なバランスをい取る、重要な開発分野となります。

All of this is meant for 100% public data, right? Or is there a concept of visibility control? Can I create private communities, with data flowing just inside?
— ireadmevs (@ireadmevs) May 20, 2024

このツイートは、ATプロトコルにおける「公開データ」の原則に対する素朴な疑問を提示しています。プライバシー管理の概念や、プライベートコミュニティの可能性を求める声が強く、これは今後のプロトコル進化の方向性を示唆するものです。

40.3 信頼の再構築と参加者の安心感

分散型ネットワークにおいて、特に重要なのは「信頼」の再構築です。中央集権型プラットフォームでは、プラットフォーム自体が信頼の仲介者として機能しましたが、オープンソーシャルでは、ユーザー自身がどのリレーを信頼するか、どのモデレーターを信頼するかを選択する必要があります。GNSのような暗号的に検証可能な名前解決システム、暗号署名されたコミット履歴、そして透明性の高いモデレーションプロセスは、この「信頼の網」を築き、参加者が安心してネットワークに参加できる基盤を形成します。個人のデータ主権とプライバシーが保障されることで、ユーザーはより深いレベルでの「安心感」を享受できるようになるでしょう。

コラム：私が望むインターネットの「居場所」

匿名性の高い掲示板も、実名性の高いSNSも、それぞれに良さがありますが、時には「本当に心許せる人たちとだけ、深く語り合える場所」が欲しいと思うことがあります。それは、誰かの監視の目がない、心から安心して本音を話せる場所。ATプロトコルがプライベートデータやプライベートコミュニティをサポートするようになれば、そんな「居場所」がインターネット上にたくさん生まれるかもしれません。自分のデータが安全に守られ、信頼できる仲間とだけ繋がれる。そんな安心感こそが、私たちのデジタルライフをより豊かにする鍵なのではないでしょうか。

第28章：オープンソースと未来のインターネット – 相互運用の光、自由の海、次世代ネットの青写真

オープンソースは、ソフトウェア開発の風景を根本から変えました。そして今、オープンソースの精神が、オープンソーシャルという形でインターネットの未来を再構築しようとしています。この章では、オープンソースの重要性を再確認し、相互運用性がもたらす真価、そして分散ウェブが描く次世代インターネットの青写真を探ります。

41.1 技術標準とコミュニティ主導の開発

オープンソースの成功の鍵は、透明性の高い技術標準と、それに基づいたコミュニティ主導の開発モデルにあります。ATプロトコルもまた、オープンソースとして仕様が公開され、誰でもその実装を開発し、改良することができます。これにより、特定の企業に縛られない、多様なクライアントアプリ、リレー、モデレーションツールがエコシステム全体で生まれていきます。この「技術標準とコミュニティ主導の開発」というサイクルこそが、オープンソーシャルの持続可能性と革新性を担保するのです。開発者からのフィードバック（HackerNewsの議論参照）は、プロトコルの進化と普及に不可欠な要素です。

I'm glad to see someone recognize the critical importance of authors owning their domain. Without that, you will alway be at the mercy of someone else. The rest is just technical detail.
— xnx (@xnx) May 20, 2024

このツイートは、著者（authors）が自身のドメインを所有することの重要性を強調しています。ドメイン所有権が確保されていれば、その他の技術的な詳細は、自由なソーシャルウェブを実現するための手段に過ぎないという考え方です。これは、ATプロトコルが目指す「ユーザーのデジタル資産の真の所有」という核心を的確に捉えています。

41.2 ユーザー選択肢の拡張と自由度

オープンソースの原則がソーシャルメディアに適用されることで、ユーザーはかつてないほどの選択肢と自由度を手に入れることができます。どのアプリを使うか、どのリレーを信頼するか、どのモデレーションポリシーに従うか、そして自分のデータはどこにホストするか――これらすべてを、ユーザー自身が決定できるようになるのです。既存のSNSが提供する「すべてを兼ね備えたアプリ」ではなく、それぞれのニーズに特化した多様なアプリを組み合わせて、自分だけのソーシャルウェブ体験を構築できるようになるでしょう。これは、ユーザーが受動的な消費者から、能動的な創造者へと変貌する過程を意味します。

One thing ATProto does is enable real competition in social apps, assuming they all run on the atproto fabric. One of the core hopes is that we can get everyone over to something like atproto once, to get them out of the silos, such that this is there last time they have to "move" their social network
— verdverm (@verdverm) May 20, 2024

ATプロトコルは、ソーシャルアプリにおける真の競争を可能にし、ユーザーを既存のプラットフォームの「サイロ」（Silo - 囲い込み）から解放することを目指しています。一度ATプロトコルに移行すれば、それがユーザーにとって「ソーシャルネットワークを移動する最後の機会」となるかもしれないという希望が語られています。

41.3 将来シナリオ：信頼ベースのエコシステム

オープンソースとオープンソーシャルが融合した未来のインターネットは、「信頼ベースのエコシステム」へと進化するでしょう。技術的なプロトコルと暗号署名によってデータの整合性と真正性が保証され、その上で、コミュニティ主導のガバナンスと透明性の高いモデレーションが機能します。これにより、ユーザーは誰が情報の発信源であるか、どの情報が信頼できるかを自ら判断し、パーソナライズされたフィルターを通じて、自分にとって価値のある情報にアクセスできるようになります。これは、巨大プラットフォームが信頼を独占し、そのアルゴリズムによって情報を操作してきた時代から、ユーザー自身が信頼を築き、情報をコントロールする、真に自由で民主的なインターネットの実現に向けた青写真となるでしょう。

Because open social has to actually compete for a user's business, any sufficiently mature platform build in the ecosystem will necessarily trend towards being more responsive to those users needs, which will trend towards a better product than the legacy crop,
— dgaffney (@dgaffney) May 20, 2024

このツイートは、オープンソーシャルがユーザーのビジネスを巡って競争を強いられるため、最終的にはレガシーなプラットフォームよりも優れた製品を生み出す傾向にあるという点を指摘しています。競争がサービスの質を高めるという、市場原理に基づく楽観的な見方です。

Precisely at a moment where governments lean on large, visible corporate entities to enact desired policies, splintering that ownership helps ensure a resilient communications network
— dgaffney (@dgaffney) May 20, 2024

政府が大規模な企業体に政策実行を依存する現代において、データ所有権を分散させることは、レジリエント（回復力のある）な通信ネットワークを確保する上で役立つという、重要な政治的含意を示唆しています。

疑問点・多角的視点：理想と現実の狭間で

詳細を見る

リレーの集中リスクと新たな権力構造

モデレーションの課題：表現の自由と責任のバランス

ユーザーエクスペリエンスの壁：普及への道

持続可能なビジネスモデルの探索

プライバシーとデータの公開範囲：見えないリスク

結論（といくつかの解決策）：オープンが勝つために

オープンソーシャルが真に勝利するためには、以下の解決策と方向性が求められます。

ユーザーエクスペリエンスの徹底的な簡素化: ドメイン取得やリポジトリ管理を意識させない、直感的で分かりやすいオンボーディングプロセスと管理ツールを開発することが不可欠です。例えば、既存のメールアドレスや電話番号での登録を入り口とし、裏側でドメインやリポジトリを自動的に設定するような仕組みが考えられます。
多様なリレーの育成とインセンティブ設計: Bluesky以外の独立したリレーの立ち上げを奨励し、その運営に対する経済的インセンティブ（寄付、マイクロペイメント、広告収益分配モデルなど）を確立する必要があります。これにより、特定の企業への依存を減らし、検閲耐性を高めることができます。
協調的なモデレーションフレームワークの構築: プロトコルレベルでのモデレーションツールや、ユーザーが自身の「信頼できるモデレーター」を選択できるシステム、あるいは連合型のモデレーションコミュニティを形成する仕組みが求められます。表現の自由と安全なコミュニティのバランスを取るための、透明性と柔軟性を持ったアプローチが重要です。
新しいビジネスモデルの探求と実験: データ所有権を尊重しつつ、付加価値を提供する多様なビジネスモデル（例えば、プレミアムなアルゴリズムフィード、専門的なデータ分析サービス、キュレーションサービス、クリエイターへの直接的な支援モデルなど）を積極的に模索し、実験する必要があります。
技術と社会の対話の深化: 技術者だけでなく、社会学者、法律家、政策立案者、そして一般ユーザーが、オープンソーシャルの可能性と課題について継続的に議論し、その発展を支援するコミュニティを形成していくことが不可欠です。

ある時点で、オープンが勝つことは間違いありません。35年もかからないことを願っています。

補足資料

歴史的位置づけ：オープンソースからオープンソーシャルへ

今後望まれる研究：プロトコルの進化と社会実装

リレーネットワークの分散化と耐障害性

マルチリレープロトコルの開発: 複数の独立したリレーが相互に連携し、データの整合性とリアルタイム性を維持するための標準プロトコル（例: リレー間のイベント同期、ルーティング最適化）。
インセンティブ設計の研究: リレー運営者が継続的にサービスを提供するための経済的インセンティブ（有料リレーサービス、分散型インフラへのトークンエコノミー導入、広告収益分配モデルなど）。
耐検閲性・耐障害性の強化: リレーがダウンしたり、悪意ある攻撃を受けたりした場合に、ネットワーク全体の機能が停止しないためのフォールトトレランス（fault tolerance）設計や、ピアツーピア（peer-to-peer）でのデータ共有メカニズムの検討。

高度なモデレーション機能の実現

連合型モデレーションシステム: 複数のモデレーションプロバイダーが存在し、ユーザーが信頼するプロバイダーを選択できるようなシステム設計。
AIを活用した有害コンテンツフィルタリング: 言語モデルや画像認識AIを用いて、ヘイトスピーチや違法コンテンツを自動検出し、クライアント側でフィルタリングする技術。
レピュテーションシステムとコミュニティガバナンス: ユーザーやモデレーターの評価システムを導入し、コミュニティの自己規制能力を高めるためのメカニズム。透明性の高い異議申し立てプロセスも含む。
法的枠組みとの連携: 各国・地域の法規制（著作権侵害、名誉毀損など）に準拠したコンテンツ削除要請に対応するためのプロトコルレベルでの枠組み。

非技術者向けUXの抜本的改善

シームレスなオンボーディング: ドメイン取得からリポジトリ設定までを、ユーザーが意識せずに行えるような、簡素化された登録フローと管理インターフェースの開発。
直感的なデータ管理ツール: 自身のデータがどこに保存され、どのアプリで利用されているかを視覚的に理解できるダッシュボードや、簡単な操作でホスティングを変更できるツール。
既存SNSからの移行支援ツール: 現在のプラットフォームから自身のソーシャルグラフ（投稿、フォローリストなど）を容易にエクスポートし、オープンソーシャル環境にインポートできるツールの開発。

多様な収益モデルの検証

付加価値サービスへの課金: プレミアムなアルゴリズムフィード、高度なデータ分析ツール、特定のコンテンツをキュレートするサービスなど、ユーザーに直接的な価値を提供するサービスへの課金モデル。
クリエイター支援モデル: 投げ銭、サブスクリプション、NFTなどのWeb3技術を活用したクリエイターへの直接的な収益モデルの検討。
データ利用権の透明化とマイクロペイメント: ユーザーが自身のデータ利用に対して許諾を与え、その対価としてマイクロペイメントを受け取るようなモデル（プライバシー保護を前提とする）。

プライバシー保護とデータアクセス制御

きめ細やかなアクセス制御: ユーザーが自身のデータの公開範囲や、特定のアプリ・リレーからのアクセス権限を細かく設定できるプロトコルレベルでのメカニズム。
文脈保持の仕組み: データがリミックスされる際に、オリジナルの文脈が損なわれないようなメタデータ管理や、引用元の明示を強制するプロトコル。
ゼロ知識証明（Zero-Knowledge Proof）の活用: ユーザーが情報の一部を公開することなく、それが真実であることを証明できる技術を導入し、プライバシーと信頼性を両立させる。

多言語・多文化環境における適応性

国際化（i18n）と地域化（l10n）のサポート: プロトコルが多言語に対応し、地域ごとの法的・文化的な規範に合わせたモデレーションやサービスのローカライズを容易にするための設計。

日本への影響：デジタル社会の再編と新たな機会

情報流通の多様化とプラットフォーム依存度の低減

プラットフォームリスクの分散: 日本のユーザーは、X（旧Twitter）やLINE、Facebookなどの特定プラットフォームへの依存度が非常に高い傾向にあります。これにより、特定のプラットフォームの規約変更、突然のサービス停止、あるいは障害発生が、情報収集やコミュニケーションに深刻な影響を及ぼすリスクがありました。オープンソーシャルが普及すれば、ユーザーは自身のデータを複数のアプリで利用できるため、単一プラットフォームへの依存度が低下し、より多様な情報流通経路が確保されます。
レジリエンスの向上: 災害時や有事の際、特定のプラットフォームがダウンしたり、検閲されたりするリスクを分散できる可能性があり、よりレジリエンス（回復力）の高い情報インフラ構築に貢献します。トルコ政府による検閲の事例は、このような分散型の特性が国家レベルでの情報統制に対しても有効である可能性を示唆しています。

【暴露】トルコ政府の圧力!BlueskyとFediverse、検閲に強いのはどっち？ #検閲 #分散化 #SNS #五05 脚注

#テイラースウィフトのファンは、ドナルドトランプの米国選挙後、X を離れてブルースキーへ向かう #士12 脚注

クリエイターエコノミーの新たな機会

コンテンツ主権の確立: 日本には、コミック、アニメ、ゲーム、VTuber文化など、クリエイターエコノミーが非常に活発な土壌があります。しかし、現在のプラットフォームでは、クリエイターは自身のコンテンツやフォロワー関係をプラットフォームに「ロックイン」され、規約変更や収益分配率の一方的な変更リスクに晒されています。オープンソーシャルでは、クリエイターが自身のデジタル資産を真に所有し、複数のアプリやサービス間で自由に持ち運べるため、収益化の機会を多様化できます。
二次創作コミュニティとの親和性: 日本の二次創作文化は非常に豊かですが、著作権管理やプラットフォームの規約に起因する摩擦も少なくありません。オープンソーシャルが提供する「リミックス」の概念は、透明性の高い形で二次創作や派生コンテンツが生まれやすくなる可能性を秘めています。
直接的な支援モデルの強化: 投げ銭やサブスクリプションなど、ユーザーからクリエイターへ直接収益が流れるモデルが、プラットフォーム手数料に左右されにくくなることで、より活発化するかもしれません。

モデレーションと表現の自由に関する議論の深化

誹謗中傷問題への対応: 匿名性が高く、誹謗中傷問題が深刻化している日本のインターネット文化において、分散型ソーシャルメディアにおけるモデレーションのあり方は、より切実な課題として浮上します。特定のプラットフォームによる「言論統制」への懸念から、表現の自由を重視するユーザー層には歓迎される一方、違法な投稿への対処や、投稿者情報開示請求の容易化／困難化といった法的・社会的な議論が進むでしょう。
Blueskyの開示命令事例: 日本国内でBlueskyに対する初の投稿者情報開示命令が出た事例は、分散型SNSであっても法的な責任が問われることを示しており、今後のモデレーションと法規制の連携において重要な precedent（判例）となるでしょう。SNS検閲と誹謗中傷の闇に光を!Bluesky初の開示命令から学ぶ、私たちの表現の自由 #Bluesky #検閲 #表現の自由 #SNSの未来脚注

技術コミュニティの活性化と新規ビジネス創出

新たな開発機会: ATプロトコルのようなオープンな標準は、日本の技術者コミュニティにとって新たな開発機会を提供します。既存のWeb3/分散型技術に関心のある開発者だけでなく、Web2からの移行を検討する企業にとっても、新しいアプリケーションやサービスの開発余地が生まれます。
国内サービスプロバイダーの参入: 特に、日本のドメイン管理サービスやホスティングサービス、あるいはウェブサイト構築プラットフォームなどが、個人リポジトリホスティングサービスへと事業を拡大する可能性も考えられます。これにより、国内経済の活性化や新たな雇用創出に繋がるかもしれません。

法制度・規制の対応

既存法制度との整合性: データの所有権、プラットフォームの責任（特にリレー運営者やクライアントアプリ開発者）、データ移転権など、既存の日本の法制度（個人情報保護法、プロバイダ責任制限法など）が、オープンソーシャルモデルにどのように対応すべきか、新たな解釈や法改正が必要になる可能性があります。
国際的な規制動向への注視: EUのデジタルサービス法（DSA）やデジタル市場法（DMA）など、グローバルなデータガバナンスの動向が、オープンソーシャルの普及と規制に大きな影響を与えるため、日本もこれらの動向を注視し、適切な対応を検討する必要があります。

脚注

詳細を見る

オープンソース（Open Source）脚注1: ソースコードが無償で公開されており、誰でも自由に利用、修正、再配布できるソフトウェア開発モデルやそのソフトウェアのことです。透明性が高く、コミュニティによる共同開発が特徴です。
ATプロトコル（Authored Transfer Protocol）脚注2: Blueskyによって開発された、分散型ソーシャルメディアの基盤となるプロトコルです。ユーザーが自身のデータ（投稿、フォローなど）を所有し、ホスティングプロバイダーを自由に選択できる「個人リポジトリ」を核としています。
データ主権（Data Sovereignty）脚注3: 個人または組織が、自身のデータに対して所有権、管理権、利用権を持つという考え方です。データが特定の国や企業の管轄下にあるのではなく、データオーナー自身がその主権を持つことを指します。
デジタルコモンズ（Digital Commons）脚注4: 誰もが自由にアクセスし、利用し、貢献できるデジタルな共有資源のことです。オープンソースソフトウェア、ウィキペディア、オープンデータなどがこれにあたります。
CMS（コンテンツ管理システム - Content Management System）脚注5: ウェブサイトのテキスト、画像、動画などのコンテンツを、専門的な知識なしに作成、管理、公開できるシステムです。WordPressなどが有名です。
コールドスタート問題（Cold Start Problem）脚注6: 新しいプラットフォームやサービスが開始されたばかりでユーザーが少ないため、魅力的なコンテンツや情報が不足し、新たなユーザーを引きつけることが難しいという問題です。
リレー（Relay）脚注7: ATプロトコルにおいて、ネットワーク上の多数の個人リポジトリから送られてくるコミット（データ変更履歴）イベントを集約し、それを購読するアプリに再配信する役割を担うサーバーです。
コミット（Commit）脚注8: ATプロトコルにおいて、ユーザーの個人リポジトリで行われたデータ（投稿、フォローなど）の変更記録のことです。これには暗号署名が付与され、データの整合性が保証されます。
暗号署名（Cryptographically Signed）脚注9: データが特定の送信者によって作成され、送信後に改ざんされていないことを数学的に証明する技術です。これにより、データの信頼性と完全性が保証されます。
ネットワーク効果（Network Effect）脚注10: ある製品やサービスの価値が、それを利用するユーザーの数が増えるほど高まる現象です。ソーシャルメディアで友人が多ければ多いほど、そのサービスの価値が高まるのが典型的な例です。
ファーム（Farm）脚注11: この文脈では、大量のデータや情報が特定のプラットフォームに集約され、まるで農場のように「飼育」されている状態を比喩的に表現しています。プラットフォームがユーザーデータを収集・利用する構図を暗に批判するニュアンスがあります。
分散型金融（DeFi - Decentralized Finance）脚注12: ブロックチェーン技術を用いて、銀行や証券会社などの中央機関を介さずに金融サービスを提供するシステムのことです。預金、融資、取引などが直接行えます。
フォールトトレランス（Fault Tolerance）脚注13: システムの一部に障害が発生しても、システム全体が機能を継続できる能力のことです。高い信頼性が求められるシステム設計で重要となります。
ピアツーピア（Peer-to-Peer - P2P）脚注14: クライアント・サーバー型のように中央サーバーを介さず、コンピューター同士が直接通信し、データやサービスを共有するネットワーク形態です。
ゼロ知識証明（Zero-Knowledge Proof - ZKP）脚注15: ある情報について、その情報自体を明かすことなく、それが真実であることを証明できる暗号技術です。プライバシー保護と信頼性確保の両立に貢献します。
国際化（i18n - Internationalization）脚注16: ソフトウェアやシステムの設計段階で、多言語・多地域に対応できるようにするためのプロセスです。「i」と「n」の間に18文字あることから「i18n」と略されます。
地域化（l10n - Localization）脚注17: 国際化されたソフトウェアを特定の地域や言語に合わせて調整するプロセスです。日付形式、通貨、翻訳などが含まれます。「l」と「n」の間に10文字あることから「l10n」と略されます。
IPFS（InterPlanetary File System）: コンテンツのアドレス指定に基づき、P2Pネットワーク上でファイルを保存・共有する分散型ファイルシステム。中央サーバーに依存しないため、検閲耐性や可用性が高いとされます。
Lexicon（レキシコン）: ATプロトコルにおけるデータスキーマの定義。どのような種類のデータ（投稿、プロフィールなど）を、どのような構造で保存するかを規定します。これにより、異なるアプリ間でのデータの相互運用性が確保されます。
ピアレビュー（Peer Review）: 学術論文や研究成果などを、同じ分野の専門家（peer）が評価・検証するプロセスです。学術的な信頼性を確保するために重要とされます。
分散型ID（DID - Decentralized Identifier）: 特定の組織やプロバイダーに依存せず、個人が自身のデジタルアイデンティティを管理・所有するための識別子です。ブロックチェーンなどの分散型台帳技術を基盤とすることが多いです。
個人リポジトリ（PDS - Personal Data Server）: ATプロトコルにおいて、ユーザーが自身のすべてのデータ（投稿、プロフィール、フォロー関係など）を保存・管理する場所です。これはウェブサーバー上にホストされ、ユーザー自身がそのホスティングを選択・変更できます。
エコーチェンバー（Echo Chamber）: ソーシャルメディアなどで、自分の意見や信念と同じ情報ばかりに触れ、異なる意見や視点に触れる機会が少ない状態を指します。
フィルターバブル（Filter Bubble）: アルゴリズムによってパーソナライズされた情報が提供される結果、ユーザーが自分にとって都合の良い情報や、自分が関心を持つと予測される情報ばかりに囲まれてしまう現象を指します。
DMA（Digital Markets Act - デジタル市場法）: EUが導入した、巨大IT企業（ゲートキーパー）の市場支配力を制限し、公正な競争を促進するための法規制です。メッセージングサービスの相互運用性などを義務付けています。
DNS（Domain Name System - ドメイン名システム）: インターネット上で、人間が読みやすいドメイン名（例: example.com）を、コンピューターが処理できるIPアドレス（例: 192.0.2.1）に変換するシステムです。
GNU Name System（GNS）: GNUnetプロジェクトによって開発されている、分散型でセキュアな名前解決システム。DNSの中央集権的な問題点を解決し、ユーザーが自身の名前をコントロールできることを目指しています。
名前の乗っ取り（Name Hijacking）: 悪意のある第三者が、ドメイン名やユーザー名などのデジタルアイデンティティを不正に奪い取り、そのコントロールを乗っ取る行為です。
エンドツーエンド暗号化（End-to-End Encryption - E2EE）: 通信の送信者から受信者まで、データが暗号化された状態で維持される技術です。途中のサーバーやサービスプロバイダーでデータが解読されることを防ぎ、プライバシーを強化します。

補足1：各界からの提言と感想

ずんだもんの感想

ホリエモン風の感想

西村ひろゆき風の感想

補足2：オープンソーシャルを巡る年表

年表①：オープンソースからオープンソーシャルへの系譜

年代	出来事	概要
1980年代後半	オープンソース運動の萌芽	リチャード・ストールマンがGNUプロジェクトとフリーソフトウェア財団（FSF）を設立。ソフトウェアの自由な利用・改変・再配布を提唱し、ソフトウェアの「共有インフラ化」の礎を築く。
1991年	Linuxカーネルの公開	リーナス・トーバルズがLinuxカーネルを開発・公開。オープンソースモデルの成功例として急速に普及し、IT業界に大きな影響を与える。
1990年代後半	WWWの普及と個人サイトの黄金期	HTML技術の発展とともに、個人が自身のドメインでウェブサイトを運営する時代。ユーザーはコンテンツを物理サーバーに縛られず自由にホストし、リンクで相互接続される分散型ウェブが機能。
2001年	スティーブ・バルマーの「Linux is a cancer」発言	当時のMicrosoft CEOスティーブ・バルマーがオープンソースを「癌」と表現。クローズドソースを絶対視する当時の業界の姿勢を象徴。
2004年	Facebookの創業	マーク・ザッカーバーグがFacebookを創業。Web2.0時代の幕開けを告げ、中央集権型ソーシャルメディアの隆盛が始まる。ユーザーデータはプラットフォームのデータベースに囲い込まれる。
2006年	Twitterの創業	ジャック・ドーシーらがTwitterを創業。短文投稿サービスとして瞬く間に普及し、情報流通の主要なハブとなる。
2010年代後半	中央集権型SNSの課題顕在化	データプライバシー侵害（ケンブリッジ・アナリティカ事件など）、プラットフォームによる検閲、偽情報の拡散、サービス終了や規約変更によるユーザーロックインが社会問題化。
2016年	Mastodonの登場	分散型SNSの代表格としてMastodonが登場。ActivityPubプロトコルを基盤とし、フェデレーション（連合）型のSNSとして注目を集めるが、普及には課題も。
2019年	Blueskyプロジェクトの始動	Twitterのジャック・ドーシーが、分散型ソーシャルメディアプロトコル「Bluesky」の構想を発表。後に独立企業としてATプロトコル開発を推進。
2020年代前半	ATプロトコルの公開とBlueskyのベータ版開始	ATプロトコルが具体的な仕様として公開され、Blueskyクライアントアプリのベータ版がリリース。ユーザー招待制から順次開放され、注目を集める。
2024年	Blueskyのユーザー数急増	X（旧Twitter）からのユーザー流入などにより、Blueskyのユーザー数が急速に増加。約2500万人が登録（記事執筆時点の見込み）。#ソーシャルメディアプラットフォームBlueskyが急成長に伴い直面している課題 #王23 脚注
2025年（予測）	オープンソーシャルの本格的な普及期へ	ATプロトコルに基づく様々なクライアントアプリやサービスが登場。リレーの分散化、UXの改善が進み、一般ユーザーへの浸透が本格化する時期と期待される。

年表②：データ主権を巡る技術と社会の対話

年代	出来事	概要
1989年	ティム・バーナーズ＝リーがWWWを考案	情報をリンクで結びつけ、誰もが自由にアクセスできる分散型システムとしてインターネットの基礎を築く。個人の情報発信が容易になる。
2000年代初頭	Web2.0の提唱	ユーザー生成コンテンツ、SNS、ブログなどが主流に。データの「集合知」が価値を生むが、そのデータはプラットフォームに集約される傾向が強まる。
2009年	ビットコインの誕生とブロックチェーン技術の台頭	中央機関を介さないP2P（peer-to-peer）の電子マネーシステムが登場。分散型台帳技術としてのブロックチェーンが、データ主権や非中央集権性の議論を加速させる。
2010年代中盤	GDPR（EU一般データ保護規則）制定の動き	EUがデータプライバシーと個人データ保護を強化する法規制に着手。データポータビリティ（データ移行権）の概念が法的に認知され始める。
2018年	ケンブリッジ・アナリティカ事件	Facebookのユーザーデータが不正利用された事件が発覚。ソーシャルメディアのプライバシー問題とデータ囲い込みに対する社会的な批判が高まる。
2020年代初頭	Web3と分散型ID（DID）への関心	ブロックチェーン技術を基盤とした「Web3」が注目され、ユーザーが自身のデジタルアイデンティティを管理・所有する分散型ID（DID）の概念が浮上。ATプロトコルもこの潮流の一部。
2025年（予測）	デジタルサービス法（DSA）とデジタル市場法（DMA）の本格適用	EUの巨大IT企業規制が本格化し、プラットフォームのデータ共有義務や相互運用性に関する議論が加速。オープンソーシャルの普及を後押しする可能性。
2030年代以降（予測）	オープンソーシャルが新たな「デジタルコモンズ」に	ソーシャルデータの「共有インフラ化」が進み、個人がデジタル主権を当たり前に持つ社会が実現。政府や国際機関によるデータガバナンスのあり方も大きく変革される。

補足3：データ解放者 ATプロトコル（オリジナルデュエマカード）

カード名: データ解放者 ATプロトコル

文明: 水 💧 (テクノロジー、情報の流れ、知性を象徴する文明)

コスト: 5

種族: テック・レボリューション / ソーシャル・コモンズ

パワー: 5000

能力:

S・トリガー（このクリーチャーをシールドゾーンから手札に加える時、コストを支払わずにすぐ召喚してもよい。）
【データ主権（ジェネシス・オーナーシップ）】 このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分の山札の上から3枚を見て、その中から好きな枚数の「ソーシャル・レコード」という名前のカードをバトルゾーンに出してもよい。残りを好きな順番で山札の下に置く。
（解説：ユーザーが自分のデータを管理し、必要な時にアプリ（ソーシャル・レコード）を呼び出す能力を表現。新しいアプリのコールドスタート問題の解消にも繋がる。）
【リンクの再構築（リビルド・リンク）】 このクリーチャーがバトルゾーンにいる間、自分の他の「ソーシャル・レコード」は、相手の能力によってバトルゾーンを離れる時、代わりに自分の手札に戻る。
（解説：プラットフォームが終了してもデータが失われず、ユーザーの手元に戻り、別のアプリ（手札）で再利用できる「ホスティング独立性」を表現。）
【オープン・コモンズの盟約（コモンズ・アライアンス）】 このクリーチャーが攻撃する時、自分のバトルゾーンにあるすべての「ソーシャル・レコード」に「パワード・ブレイカー」（このクリーチャーは、パワー6000ごとにシールドをさらに1枚ブレイクする）を与える。
（解説：オープンソーシャルエコシステム全体が協力することで、中央集権型プラットフォーム（シールド）を打ち破る強力な力を持つことを表現。）

フレーバーテキスト:
「かつて、我々の繋がりは巨大な壁の中に囚われていた。だが今、プロトコルがその鎖を断ち切り、真の自由へと導く。」

補足4：一人ノリツッコミ

補足5：大喜利

「ATプロトコルが普及した未来の世界で、SNSの運営会社が倒産した時にユーザーが叫んだ一言とは？」

「よかったー！データは俺のリポジトリに残ってるから、他のアプリで同じアカウントで再開できる！…って、あれ？誰もついてきてないんだけど…俺のフォロワーどこ行った！？」
「これでやっと、あのクソったれなアルゴリズムから解放されるぜ！…って、え？今度はどのリレーを選べばいいか分からんくて、新しい情報難民になっとるやん！」
「やったぜ！データは無事だ！これを機に、俺だけの最強AIアルゴリズムを開発して、理想のフィードを作るぞ！…って、あれ？Pythonのライブラリ、どれ使えばいいんだっけ…」
「会社が潰れてもデータは残る！これが未来だ！…って、待てよ、俺、昔の投稿全部削除したはずなんだけど、もしかしてリポジトリには全部残ってんの！？やべぇ、黒歴史が…！」

補足6：予測されるネットの反応と反論

なんJ民風コメント

ケンモメン風コメント

ツイフェミ風コメント

爆サイ民風コメント

Reddit/HackerNews風コメント

大森望風書評コメント

補足7：学びを深めるための課題

高校生向けの4択クイズ

現在のX（旧Twitter）のようなソーシャルメディアアプリで、私たちが投稿したデータは主にどこに保存されていますか？
- A) 私たちのスマートフォンの中に
- B) アプリを運営する会社のデータベースの中に
- C) インターネット全体に分散されたサーバーの中に
- D) 宇宙のどこかにある秘密のサーバーの中に
正解: B) アプリを運営する会社のデータベースの中に
論文で提案されている「オープンソーシャル」という考え方で、ユーザーが自分のデータを管理するための「個人リポジトリ」は、どのような特徴を持っていますか？
- A) スマートフォンのストレージを大量に消費する
- B) 特定のソーシャルメディア会社の管理下にあり、移動できない
- C) Web上にあり、ユーザーがホスティングプロバイダーを自由に変更できる
- D) 誰でも自由に変更できるため、セキュリティが低い
正解: C) Web上にあり、ユーザーがホスティングプロバイダーを自由に変更できる
「オープンソーシャル」の仕組みが普及すると、新しいソーシャルメディアアプリにとってどのようなメリットがあると考えられますか？
- A) ユーザー獲得のために、最初から大量の広告を出す必要がなくなる
- B) 既存のユーザーデータを全く利用できないため、独自のコンテンツを作る必要がある
- C) 他のアプリのユーザーデータを利用できるため、ゼロからユーザーを集める負担が減る
- D) データの保存に費用がかからなくなる
正解: C) 他のアプリのユーザーデータを利用できるため、ゼロからユーザーを集める負担が減る
論文の中で、ATプロトコルはデータの改ざんを防ぐために、どのような技術を使っていると説明されていますか？
- A) データのバックアップを複数とる
- B) データを暗号化してパスワードで保護する
- C) コミット（データの変更履歴）を暗号署名する
- D) 定期的にサーバーを監視する
正解: C) コミット（データの変更履歴）を暗号署名する

大学生向けのレポート課題

以下のテーマについて、本稿の内容を参考にしつつ、各自で追加調査を行い、A4用紙3枚程度（1200字程度）でレポートを提出してください。

テーマ:「オープンソーシャルが日本のデジタル社会にもたらす可能性と課題」

本稿では、オープンソーシャルが日本に与える影響について多角的に考察しています。あなたは、この技術が日本の情報流通、クリエイターエコノミー、そして言論空間に具体的にどのような変化をもたらすと考えますか。また、その実現に向けて克服すべき法的、技術的、社会的な課題は何でしょうか。具体的な事例（例えば、日本のSNS利用状況、誹謗中傷問題、政府の規制動向など）を挙げながら、あなたの見解を論述してください。
テーマ:「Web2.0の中央集権性とWeb3・オープンソーシャルの分散性：その対立と融和の可能性」

現在のソーシャルメディアはWeb2.0の象徴であり、中央集権的な構造が特徴です。一方、ATプロトコルなどのオープンソーシャルはWeb3の理念とも共通する分散性を志向しています。それぞれのモデルのメリット・デメリットを比較し、Web2.0が提供してきた「集約の魔力」を、オープンソーシャルがいかにして分散型で再構築しようとしているのかを分析してください。また、両者の対立は避けられないものなのか、あるいは技術的な進化によって両者が融和する道はあるのか、あなたの考察を述べてください。

補足8：潜在的読者のための情報

この記事につけるべきキャッチーなタイトル案

オープン・コモンズ宣言：ソーシャルウェブはデータ主権を取り戻す
ATプロトコルが描く未来：ソーシャルメディアは「オープンソース」になる
データ解放元年：あなたのSNS体験はもう誰にも奪われない
「閉じられた庭」の終焉：オープンソーシャルが変えるデジタルライフ
なぜオープンソーシャルが勝つのか？ATプロトコルとデータ所有権の革命
Blueskyの哲学：ATプロトコルが示すソーシャルウェブの真の自由

SNSなどで共有するときに付加するべきハッシュタグ案

SNS共有用に120字以内に収まるようなタイトルとハッシュタグの文章

ブックマーク用タグ（日本十進分類表(NDC)を参考に）

[007情報科学][分散処理][インターネット][ソーシャルメディア][Web3][データ所有権][Bluesky]

この記事に対してピッタリの絵文字

🌐⛓️🔑🚀✨🛡️📘✊ freedom 🕊️💡

この記事にふさわしいカスタムパーマリンク案

open-social-atproto-future-vision-data-ownership

この記事の内容が単行本ならば日本十進分類表(NDC)区分のどれに値するか

[007: 情報科学一般]

この記事をテーマにテキストベースでの簡易な図示イメージ

┌───────┐   ┌───────┐   ┌───────┐
│ Alice's │ ◀─▶ │  Relay  │ ◀─▶ │ Bob's   │
│   Repo  │   │ (Aggregator)│   │  Repo   │
└───────┘   └───────┘   └───────┘
   ▲ ▲                          ▲ ▲
   │ │                          │ │
┌──┴─┴───┐                    ┌──┴─┴───┐
│ Bluesky  │                    │ Tangled  │
│ (Client App)│                    │ (Client App)│
└─────────┘                    └─────────┘

補足9：この記事に説得力を持たせるツイートの埋め込み

本稿で参照したツイートを以下に埋め込みます。

This is a realtime stream of every single event on the network. It’s dominated by app.bsky.* records because Bluesky is the most-used app, but you can filter it down to other record types. This retransmitter (called a “relay”) is operated by Bluesky, but you don’t have to depend on it. The Blacksky community runs their own relay implementation at wss://atproto.africa, which you can try here.
— danabra.mov (@danabra.mov) May 13, 2024

I don't have a horse in which decentralized protocol wins, but while ATProtocol sounds great on paper I'm still inching closer to liking ActivityPub more. I'm pretty active on Lemmy which is quite active and fun to browse

1. 99.99% (literally) of AT users are on Bluesky, which is helmed by a for-profit corporation. The argument is that they don't control the protocol but considering it is THE dominating instance of that protocol, what's stopping them from strong-arming the protocol and changing how it works to benefit them? Better yet, what's stopping them from doing a rugpull and closing off their open service? What if bluesky decides 5 years from now that you aren't allowed to move your account? This isn't some hypothetical scenario, this already happened before. A lot of social medias started off with fairly open features and APIs and slowly choked them out for profit.
— popcar2 (@popcar2) May 20, 2024

GNS（GNU Name System）のように、DNSに代わるものがあります: https://t.co/lA6GfP5jH6
— nyleboon (@nyleboon) May 20, 2024

For now, yes, only 100% public data lives on the protocol (you can still, of course, augment protocol data with the stuff you hold in the DB).
In the future, the plan is to also enable some types of private data on the protocol. See these recent notes from Paul on the state of things:

- https://t.co/2cT83w4oA5

- https://t.co/fQzI5y353l
— danabra.mov (@danabra.mov) May 20, 2024

I was ruminating about how Atproto would be great for re-thinking the peer review system for scientific journals.
Imagine a world where a preprint is “published” onto the social web, from which you could aggregate reviews/comments. I eventually ended up thinking about exactly what you raise - it would be great to have some degree of access control on this so both comments and published things can be selectively shared (with an option to make everything public later on, maintaining all the links).
— hirenj (@hirenj) May 20, 2024

You have two choices of identity service: did:plc, which is, and did:web, which is not.
In theory additional dids could come into existence too, those are just the two that blueksy supports at the moment.
— Steve Klabnik (@steveklabnik) May 20, 2024

My sibling links a great post on this, but to say it in a slightly shorter way, the core of identity is a DID, not a domain. You can update the domain associated with your DID if you lose control of the DNS and it will all transparently update.
— Steve Klabnik (@steveklabnik) May 20, 2024

This is built into the protocol! You can back up your CAR file and move it to another host without the approval of your current host.
— Steve Klabnik (@steveklabnik) May 20, 2024

This doesn't work on masto to the same degree as atproto. You lose a lot of stuff when you move on masto, but it's 100% transparent on atproto.
— Steve Klabnik (@steveklabnik) May 20, 2024

I don't think being able to migrate your account addresses the rugpull concern. The rugpull scenario is that one day, in five years or so, bsky.app drops all AT Protocol support and transforms into a Twitter-like centralized social media website. The problem isn't that the account will stop "existing" but that Bluesky users will stop seeing it. The average non-techie Bluesky user who doesn't know about the AT Protocol won't even notice the change, except that, from their perspective, a tiny percentage of nerdy users have stopped posting. For you, "migrating" your account away is effectively just deleting it from the now-centralized Bluesky and willfully decreasing your audience by 100-fold or more.
The problem is a social not a technical one. It doesn't matter how good AT Protocol is at account migration. The vast majority of AT Protocol users think of themselves as Bluesky users and don't even know what the AT Protocol is. If the official Bluesky clients move away from the AT Protocol, the majority of users are moving with Bluesky.
— rossy (@rossy) May 20, 2024

Running your own PDS is very cheap.
If you want to fully run a full copy of everything yourself, it's going to be more expensive, sure, but those costs have gone down dramatically over time. The most expensive bit is running $34/month: https://t.co/dK5uL8v7rN
— Steve Klabnik (@steveklabnik) May 20, 2024

imo ActivityPub sounds better than ATProto, hence people assume the former is superior. This is a branding issue.
— psnehanshu (@psnehanshu) May 20, 2024

Yea maybe! I think at:// is an even stronger brand in a sense though. Actually makes sense as something browsers may support one day, “at://alice.com” makes sense at “stuff at alice dot com”, “authenticated transfer” is a decent acronym, “atmosphere” for the ecosystem is just great (and wasn’t even coined by the team).
— danabra.mov (@danabra.mov) May 20, 2024

I'm glad to see someone recognize the critical importance of authors owning their domain. Without that, you will alway be at the mercy of someone else. The rest is just technical detail.
— xnx (@xnx) May 20, 2024

One thing ATProto does is enable real competition in social apps, assuming they all run on the atproto fabric. One of the core hopes is that we can get everyone over to something like atproto once, to get them out of the silos, such that this is there last time they have to "move" their social network
— verdverm (@verdverm) May 20, 2024

Because open social has to actually compete for a user's business, any sufficiently mature platform build in the ecosystem will necessarily trend towards being more responsive to those users needs, which will trend towards a better product than the legacy crop,
— dgaffney (@dgaffney) May 20, 2024

Precisely at a moment where governments lean on large, visible corporate entities to enact desired policies, splintering that ownership helps ensure a resilient communications network
— dgaffney (@dgaffney) May 20, 2024

巻末資料

参考リンク・推薦図書

本稿で参照した外部記事

用語索引（アルファベット順）

詳細を見る

ATプロトコル（Authored Transfer Protocol）脚注2: Blueskyによって開発された、分散型ソーシャルメディアの基盤となるプロトコルです。ユーザーが自身のデータ（投稿、フォローなど）を所有し、ホスティングプロバイダーを自由に選択できる「個人リポジトリ」を核としています。
at:// URI（Authored Transfer Uniform Resource Identifier）: ATプロトコルで使用されるURIスキーム。従来のWebサイトがhttps://で識別されるように、ATプロトコル上のデータ記録はat://で識別され、ユーザーの個人リポジトリ内の特定のレコードを指し示します。これにより、分散されたデータ間でリンクを確立できます。
@alice.com: ATプロトコルにおけるユーザーハンドルの例。従来のSNSのようにプラットフォームが割り当てるユーザー名ではなく、ユーザー自身が所有するドメイン名がハンドルとなります。これにより、アイデンティティの独立性が確保されます。
CMS（Content Management System）脚注5: ウェブサイトのテキスト、画像、動画などのコンテンツを、専門的な知識なしに作成、管理、公開できるシステムです。WordPressなどが有名です。
コールドスタート問題（Cold Start Problem）脚注6: 新しいプラットフォームやサービスが開始されたばかりでユーザーが少ないため、魅力的なコンテンツや情報が不足し、新たなユーザーを引きつけることが難しいという問題です。
コミット（Commit）脚注8: ATプロトコルにおいて、ユーザーの個人リポジトリで行われたデータ（投稿、フォローなど）の変更記録のことです。これには暗号署名が付与され、データの整合性が保証されます。
分散型金融（DeFi - Decentralized Finance）脚注12: ブロックチェーン技術を用いて、銀行や証券会社などの中央機関を介さずに金融サービスを提供するシステムのことです。預金、融資、取引などが直接行えます。
データ主権（Data Sovereignty）脚注3: 個人または組織が、自身のデータに対して所有権、管理権、利用権を持つという考え方です。データが特定の国や企業の管轄下にあるのではなく、データオーナー自身がその主権を持つことを指します。
デジタルコモンズ（Digital Commons）脚注4: 誰もが自由にアクセスし、利用し、貢献できるデジタルな共有資源のことです。オープンソースソフトウェア、ウィキペディア、オープンデータなどがこれにあたります。
DMA（Digital Markets Act - デジタル市場法）脚注: EUが導入した、巨大IT企業（ゲートキーパー）の市場支配力を制限し、公正な競争を促進するための法規制です。メッセージングサービスの相互運用性などを義務付けています。
分散型ID（DID - Decentralized Identifier）脚注: 特定の組織やプロバイダーに依存せず、個人が自身のデジタルアイデンティティを管理・所有するための識別子です。ブロックチェーンなどの分散型台帳技術を基盤とすることが多いです。
DNS（Domain Name System - ドメイン名システム）脚注: インターネット上で、人間が読みやすいドメイン名（例: example.com）を、コンピューターが処理できるIPアドレス（例: 192.0.2.1）に変換するシステムです。
エコーチェンバー（Echo Chamber）脚注: ソーシャルメディアなどで、自分の意見や信念と同じ情報ばかりに触れ、異なる意見や視点に触れる機会が少ない状態を指します。
エンドツーエンド暗号化（End-to-End Encryption - E2EE）脚注: 通信の送信者から受信者まで、データが暗号化された状態で維持される技術です。途中のサーバーやサービスプロバイダーでデータが解読されることを防ぎ、プライバシーを強化します。
ファーム（Farm）脚注11: この文脈では、大量のデータや情報が特定のプラットフォームに集約され、まるで農場のように「飼育」されている状態を比喩的に表現しています。プラットフォームがユーザーデータを収集・利用する構図を暗に批判するニュアンスがあります。
フィルターバブル（Filter Bubble）脚注: アルゴリズムによってパーソナライズされた情報が提供される結果、ユーザーが自分にとって都合の良い情報や、自分が関心を持つと予測される情報ばかりに囲まれてしまう現象を指します。
フォールトトレランス（Fault Tolerance）脚注13: システムの一部に障害が発生しても、システム全体が機能を継続できる能力のことです。高い信頼性が求められるシステム設計で重要となります。
GNU Name System（GNS）脚注: GNUnetプロジェクトによって開発されている、分散型でセキュアな名前解決システム。DNSの中央集権的な問題点を解決し、ユーザーが自身の名前をコントロールできることを目指しています。
ハイパーリンクするJSON（Hyperlinked JSON）: ATプロトコルにおけるデータの基本的な構造。JSON形式のデータレコード同士が、at:// URIを使って相互にリンクし合うことで、ウェブのようなグラフ構造を形成します。
国際化（i18n - Internationalization）脚注16: ソフトウェアやシステムの設計段階で、多言語・多地域に対応できるようにするためのプロセスです。「i」と「n」の間に18文字あることから「i18n」と略されます。
IPFS（InterPlanetary File System）脚注: コンテンツのアドレス指定に基づき、P2Pネットワーク上でファイルを保存・共有する分散型ファイルシステム。中央サーバーに依存しないため、検閲耐性や可用性が高いとされます。
Lexicon（レキシコン）脚注: ATプロトコルにおけるデータスキーマの定義。どのような種類のデータ（投稿、プロフィールなど）を、どのような構造で保存するかを規定します。これにより、異なるアプリ間でのデータの相互運用性が確保されます。
地域化（l10n - Localization）脚注17: 国際化されたソフトウェアを特定の地域や言語に合わせて調整するプロセスです。日付形式、通貨、翻訳などが含まれます。「l」と「n」の間に10文字あることから「l10n」と略されます。
名前の乗っ取り（Name Hijacking）脚注: 悪意のある第三者が、ドメイン名やユーザー名などのデジタルアイデンティティを不正に奪い取り、そのコントロールを乗っ取る行為です。
ネットワーク効果（Network Effect）脚注10: ある製品やサービスの価値が、それを利用するユーザーの数が増えるほど高まる現象です。ソーシャルメディアで友人が多ければ多いほど、そのサービスの価値が高まるのが典型的な例です。
オープンソース（Open Source）脚注1: ソースコードが無償で公開されており、誰でも自由に利用、修正、再配布できるソフトウェア開発モデルやそのソフトウェアのことです。透明性が高く、コミュニティによる共同開発が特徴です。
ピアレビュー（Peer Review）脚注: 学術論文や研究成果などを、同じ分野の専門家（peer）が評価・検証するプロセスです。学術的な信頼性を確保するために重要とされます。
ピアツーピア（Peer-to-Peer - P2P）脚注14: クライアント・サーバー型のように中央サーバーを介さず、コンピューター同士が直接通信し、データやサービスを共有するネットワーク形態です。
個人リポジトリ（PDS - Personal Data Server）脚注: ATプロトコルにおいて、ユーザーが自身のすべてのデータ（投稿、プロフィール、フォロー関係など）を保存・管理する場所です。これはウェブサーバー上にホストされ、ユーザー自身がそのホスティングを選択・変更できます。
pub.leaflet.*脚注: ATプロトコルにおけるデータレコードの命名規則の例。pub.leaflet.は、Leafletというアプリが発行する「出版物」関連のレコードタイプを示し、その後ろに具体的なレコードの種類（例：pub.leaflet.publication）が続きます。これにより、異なるアプリのデータが混同せず管理されます。
リレー（Relay）脚注7: ATプロトコルにおいて、ネットワーク上の多数の個人リポジトリから送られてくるコミット（データ変更履歴）イベントを集約し、それを購読するアプリに再配信する役割を担うサーバーです。
ゼロ知識証明（Zero-Knowledge Proof - ZKP）脚注15: ある情報について、その情報自体を明かすことなく、それが真実であることを証明できる暗号技術です。プライバシー保護と信頼性確保の両立に貢献します。
暗号署名（Cryptographically Signed）脚注9: データが特定の送信者によって作成され、送信後に改ざんされていないことを数学的に証明する技術です。これにより、データの信頼性と完全性が保証されます。

adsense