Blueskyの深い孤独:ユーザー増でも活気なき「青い空」の真実を探る #Bluesky #SNSの未来 #Web3 #六13 #2023JドーシーのBlueSky_令和IT史ざっくり解説
ブルースキーの深い孤独:ユーザー増でも活気なき「青い空」の真実を探る #Bluesky #SNSの未来 #Web3
X(旧Twitter)からの“難民”を迎え入れ、一時は活況を呈したかのように見えたBluesky。しかし、そのアカウント数が3,650万を超えた今、多くのユーザーが「なぜか空虚に感じる」とささやき始めています。この論文は、その不思議な現象の核心に迫り、現代のソーシャルメディアが直面する、より深い問題をも浮き彫りにしています。
目次
登場人物紹介
- アレックス・カーシュナー (Alex Kirshner)
- Blueskyを主要なマイクロブログアプリとして積極的に利用しており、その経験からBlueskyの現状に対する深い洞察を提供しています。
- ニティッシュ・パーワ (Nitish Pahwa)
- Blueskyのヘビーユーザーであり、X(旧Twitter)からの移行者として、Blueskyのコミュニティ形成と課題について内部からの視点を提供しています。
- ルーク・ウィンキー (Luke Winkie)
- Blueskyの雰囲気について、筆者らとは異なる、あるいは補完的な視点を提供しています。
- ドナルド・トランプ (Donald Trump)
- アメリカ合衆国の元大統領です。彼の再選の可能性が浮上した時期に、政治的議論の場としてのXの状況を嫌ったユーザーがBlueskyへ急増したと論文は指摘しています。
- イーロン・マスク (Elon Musk)
- X(旧Twitter)の現オーナーであり、テスラやスペースXのCEOでもあります。彼のTwitter買収とそれに続く運営方針の変更が、多くのユーザーがBlueskyをはじめとする代替SNSへ移行する最大のきっかけとなりました。
- フレイバー・フラブ (Flavor Flav)
- アメリカのラッパー、俳優、テレビパーソナリティです。論文中で、Blueskyに投稿する「ランダムだが楽しい有名人」の一例として挙げられています。
- ミナ・カイムズ (Mina Kimes)
- アメリカのスポーツジャーナリストです。彼女もまた、Blueskyに投稿する有名人の一人として言及されています。
- ジェイク・ポール (Jake Paul)
- アメリカのYouTuber、プロボクサーです。彼の試合中にBlueskyが一時的に盛り上がったと述べられています。
- マイク・タイソン (Mike Tyson)
- 元プロボクシング世界王者です。ジェイク・ポールとの試合中にBlueskyでの会話が活発になったと記されています。
- アシュウィン・ロドリゲス (Ashwin Rodrigues)
- 筆メディア評論家です。彼の書いた「Blueskyは冗談が言えない」という記事が、Blueskyのユーモアの欠如を指摘する根拠として引用されています。
- ケン・ホワイト (Ken White)
- Blueskyの批評家たちの意見について的確な観察を行った人物として引用されています。批評家たちがTwitterには課さない「礼儀、礼儀正しさ、生産性」といった規範を代替SNSに求める傾向を指摘しました。
- ティモシー・シャラメ (Timothée Chalamet)
- アメリカの俳優です。ニックスの試合での彼の写真がBlueskyで広く共有された事例として挙げられています。
- ジェンナーズ (Jenners)
- アメリカのリアリティ番組「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ」で知られる、カーダシアン家の親戚の一族です。ティモシー・シャラメとともに、ニックスの試合での写真がBlueskyで拡散した事例として言及されています。
- クリストファー・ミムズ (Christopher Mims)
- ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記者です。XとBlueskyの言論の差を比較する際、彼の発言が引用されています。
- カマラ・ハリス (Kamala Harris)
- アメリカ合衆国の副大統領です。彼女のキャンペーン戦略がBlueskyで議論の対象になる機会として言及されています。
- ジェフリー・ディーン (Jeffrey Dean)
- Googleのソフトウェアエンジニアであり、大規模データ処理技術であるMapReduceの共同開発者の一人です。
- サンジェイ・ゲマワット (Sanjay Ghemawat)
- Googleのソフトウェアエンジニアであり、MapReduceのもう一人の共同開発者です。
- ダグ・カッティング (Doug Cutting)
- オープンソースの検索エンジンNutchの開発者であり、Hadoopの共同開発者として知られています。彼の息子が愛用していた象のぬいぐるみから「Hadoop」という名前がつけられました。
- マイク・カファレラ (Mike Cafarella)
- NutchとHadoopの共同開発者の一人です。
- マーク・ザッカーバーグ (Mark Zuckerberg)
- Facebookの共同創業者であり、メタ・プラットフォームズのCEOです。Facebookの「いいね」以外のリアクションボタン導入に関する彼の考え方が紹介されています。
- コリイ・ドクトロウ (Cory Doctorow)
- カナダのSF作家、ジャーナリスト、ブロガーです。著作権活動家としても知られ、レピュテーション経済を予見したSF作品『マジック・キングダムで落ちぶれて』が引用されています。
- ウィリアム・ダビドウ (William Davidow)
- 元Intel社の幹部であり、マーケッター、投資家、著作家です。情報過多によって社会が「過剰結合社会」になっていると警鐘を鳴らす著書『つながりすぎた世界』が言及されています。
- デレック・ボック (Derek Bok)
- ハーバード大学の元学長です。大学の経済力と学生の能力の相関関係について言及し、評価のあり方を批判する著書『幸福の研究』も紹介されています。
- サルマン・カーン (Salman Khan)
- オンライン教育プラットフォーム「カーン・アカデミー」の創設者です。大学教育におけるマイクロ・クレデンシャルの重要性を提唱しています。
コラム:SNSが教えてくれたこと、そして失ったもの
筆者自身も、かつてはTwitterにどっぷりと浸かっていました。その頃のTwitterは、まさに「町の広場」でした。新しい情報がリアルタイムで飛び交い、共通の趣味を持つ人々と瞬時に繋がり、時には思わぬ著名人とのやり取りに胸を躍らせたものです。地方の小さなイベントが、たった一つのツイートで全国に知れ渡るような、そんな魔法のような力がありました。
しかし、いつの頃からか、その「広場」は変質していきました。政治的な対立や、誰かを攻撃する言論が目に付くようになり、気軽に冗談を言ったり、個人的な感想を述べたりするのに躊躇するようになりました。フォロワーが増えれば増えるほど、発言の責任とリスクも重くのしかかり、結局は沈黙を選ぶことが増えました。あの頃の「気軽に発言できる」というSNSの魅力は、一体どこへ行ってしまったのだろう、と。Blueskyへの期待は、まさにその失われた広場を取り戻したいという、多くのユーザーの切なる願いだったのかもしれません。しかし、現実には、その願いが新たな「バブル」を生み出している現状があるのは、皮肉としか言いようがありませんね。
はじめに:空虚さを抱える「青い空」
ユーザーは増えたのに、なぜ活気がないのか?
皆さんはBluesky(ブルースキー)というSNSをご存知でしょうか? イーロン・マスク氏によるX(旧Twitter)の買収とそれに続く混乱を受け、多くのユーザーが新たな「デジタル上の居場所」を求めてたどり着いたのがこのプラットフォームです。実際、そのユーザー数は3,650万を超え、数字だけを見れば着実に成長しているように見えます。しかし、本論文の筆者であるアレックス・カーシュナー氏とニティッシュ・パーワ氏は、このBlueskyに対して「空虚さを感じる」という不思議な感覚を抱いています。ユーザーが増えているのに、なぜ活気が失われたように感じるのでしょうか? まるで、かつて賑わっていた商店街に人通りはあっても、どこか店じまいのような静けさが漂っているかのような……。この疑問こそが、本論文の出発点となっています。
本書が問いかける「真のコミュニティ」の定義
論文は、筆者自身のBlueskyでの経験を深く掘り下げながら、この「空虚さ」の背後にある複雑な要因を分析しています。それは単なる技術的な問題にとどまらず、ユーザーの行動、プラットフォームの文化、そして現代社会が抱える情報過多と政治的二極化といった、より広範な問題と深く絡み合っていることが示唆されています。私たちがSNSに求める「繋がり」や「コミュニティ」とは一体何なのでしょうか? そして、その「真のコミュニティ」をデジタル空間で構築するためには、何が必要なのでしょうか? この論文は、単なるSNSの動向報告に留まらず、私たちのデジタルライフのあり方、さらには社会そのものの未来について、深く問いかける内容となっています。
第1章:ブルースキー誕生の背景と期待
Twitterの変質とユーザーの流出
イーロン・マスクによるXの買収と運営方針の急変
2022年10月、テスラやスペースXのCEOであるイーロン・マスク氏がTwitterを440億ドルで買収したことは、ソーシャルメディアの歴史において大きな転換点となりました。買収後、Twitterは「X」へと名称を変更し、ロゴも従来の青い鳥から謎めいた「X」へと変更されました。しかし、名称変更以上にユーザーを動揺させたのは、その運営方針の急激な変化でした。
マスク氏は「言論の自由の絶対主義者」を自称し、モデレーションチームの削減やアカウントの凍結解除などを実行。これによって、プラットフォーム上での発言の自由度が上がったと歓迎する声もあった一方で、予期せぬ大きな波紋を広げることになります。
モデレーションの緩和とヘイトスピーチの増加
モデレーションチームの解体やポリシーの変更は、プラットフォーム上のヘイトスピーチや偽情報の増加に直結しました。かつては厳しく取り締まられていた差別的な投稿や陰謀論が野放しになり、多くのユーザーが不快感を覚えるようになりました。著名人や企業アカウントの中には、こうした環境の変化を嫌ってXからの撤退を表明するところも現れ始めました。これは単なる一時的な現象ではなく、Xが「安心して使える場所」としての信頼性を急速に失っていく過程を示していました。
特に、日本国内でのBluesky初の開示命令に関する報道(dopingconsomme.blogspot.com)は、SNSにおける表現の自由と責任のバランスの難しさを改めて浮き彫りにしています。
広告主の離反とXの強硬な広告戦略
ヘイトスピーチの増加と信頼性の低下は、Xの収益の柱である広告事業に深刻な影響を与えました。多くの企業が、自社のブランドイメージが損なわれることを懸念し、Xへの広告出稿を一時的に停止または大幅に削減する動きを見せました。これに対し、Xは驚くべき強硬な戦術に出ます。
広告主への「訴訟脅迫」戦術
ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道(WSJ.com)によると、Xは広告出稿に乗り気でない広告主に対し、露骨に「訴訟する」と脅迫する戦術をとっていたことが明らかになりました。これは従来の広告ビジネスでは考えられないような、極めて異例の事態です。
世界広告主連盟への訴訟とGARMの活動停止
さらにXは、広告主のボイコットは反トラスト法に違反する行為であると主張し、2024年8月には世界広告主連盟(WFA)と加盟企業4社を相手取って訴訟を起こしました(GIGAZINE.net)。Xは、WFAのイニシアチブである「責任あるメディアのための世界同盟」(GARM)が、Xへの広告枠購入停止を主導したと主張しました。この訴訟を受けて、GARMは活動を停止せざるを得なくなりました(GIGAZINE.net)。
ベライゾン・コミュニケーションズ等の事例
この強硬な戦術は、一部の企業には功を奏したようです。2024年末には大手電気通信企業のベライゾン・コミュニケーションズに対し、Xに広告費を費やさなければ法廷で争うと警告。結果として、2022年以降Xで広告を出していなかったベライゾンは、2025年に少なくとも1000万ドル(約14億円)の広告費を支払うことを約束しました(Ars Technica.com)。同様の戦術は少なくとも6つの企業に対して行われ、それらの企業はXとの広告契約を結んだと報じられています。
Pinterest、レゴへの提訴と拒否の代償
しかし、全ての企業がXの要求に応じたわけではありません。画像共有プラットフォームのPinterestやおもちゃメーカーのレゴはXの要求を拒否し、その結果、2025年2月にXから訴訟を提起されました。Pinterestは、Xよりも優れた成果を上げている別のプラットフォームで広告を購入することを優先したと報じられています。
大手広告代理店への圧力と契約締結
Xの圧力は、顧客の代理として年間数百億ドルの広告を出稿する大手広告代理店にも及びました。2024年12月にはアメリカの広告大手インターパブリック・グループとの協議の中で、Xは競合であるオムニコム・グループによる買収がトランプ政権から問題視される可能性を示唆したと報じられています。その後、Xはインターパブリック・グループと新たな年間契約を締結しました。また、フランスのピュブリシス・グループも、クライアントの需要が足りなかった場合でも増額分を支出する必要がないという条件で、Xへの投資額を大幅に引き上げることに合意しました。関係者によると、この契約合意の理由の一つに、一部の顧客を訴えていたXからの圧力を避ける意図があったとされています。MediaSense社のグレッグ・ポール氏は、こうしたマスク氏の強引なやり方は異例であり、「中国では一般的かもしれませんが、アメリカではまったく一般的ではありません」と指摘しています。
ポスト・Twitter時代のSNS代替需要の高まり
こうしたXの混乱と強引なビジネス手法は、多くのユーザーと企業にとって、もはやこのプラットフォームに依存し続けることの危険性を痛感させるものでした。情報源の信頼性低下、ヘイトスピーチの蔓延、そして広告主への圧力。これらは、従来のSNSが提供していた「開かれた広場」としての機能が失われつつあることを示していました。結果として、より健全で信頼できる言論空間を求める声が高まり、その受け皿として様々な代替SNSが登場することになります。Blueskyも、その中の一つとして大きな期待を背負って注目されることになります。
コラム:SNSとビジネス倫理のジレンマ
企業の広告担当者として、私自身もSNSでのブランドイメージ維持には頭を悩ませてきました。SNSは顧客との直接的な対話の場であり、ブランドの人間性を伝える重要なツールです。しかし、プラットフォーム上にヘイトスピーチやデマが溢れれば、そこに自社の広告が表示されるだけでブランドイメージが毀損されるリスクがあります。X(旧Twitter)の変質は、まさにこのジレンマを企業に突きつけました。
広告出稿は、単にリーチ数を稼ぐだけでなく、どのプラットフォームで広告を出すかということが、その企業の倫理観や社会に対するスタンスを表明することにも繋がります。イーロン・マスク氏の強引な戦術は、短期的な収益には繋がるかもしれませんが、長期的なブランド信頼性や広告主との関係性においては、計り知れないダメージを与える可能性を秘めていると感じます。ビジネスは「信頼」の上に成り立っているはずなのに、力による「脅迫」が横行するとなると、これはもう健全な市場とは言えません。SNSの未来は、単なる技術的な革新だけでなく、プラットフォーム運営者の倫理観と、それに対するユーザーや企業の監視の目にかかっているのだと痛感させられますね。
ブルースキーの台頭と初期の急成長
分散型プロトコルATProtoの概念
Blueskyが他のSNS代替サービスと一線を画す大きな特徴は、その基盤となっているATプロトコル(Authenticated Transfer Protocol)です。これは中央集権的なサーバーに依存せず、ユーザーが自分のデータを「ポータブルなアカウント」として持ち運び、異なるサーバー(インスタンス)間を自由に移動できるという分散型SNSの概念を具現化したものです。この設計思想は、Xのように一企業や一人のオーナーの意向でプラットフォーム全体が左右されるリスクを軽減し、ユーザーにより大きな自由とコントロールを与えることを目指しています。技術的な詳細については、dopingconsomme.blogspot.comなどで解説されています。
この分散型アプローチは、将来的な検閲への耐性や、ユーザー自身によるデータ管理の可能性を秘めていると期待されています(dopingconsomme.blogspot.com)。
招待制の時代から一般公開へ
Blueskyは、2023年2月に招待制のベータ版として公開されました。当初は既存のTwitterユーザーの間で招待コードが貴重品として扱われ、一部では取引されるほどでした。この招待制の仕組みは、初期のコミュニティの質を保ち、特定の関心を持つユーザー層を慎重に受け入れるという狙いがあったと考えられます。そして、Xの混乱が続く中で、Blueskyへの関心は一層高まり、2024年2月上旬にはついに招待制を廃止し、一般公開へと移行しました。これにより、アカウント数は急速に増加し、本論文執筆時点では約3,650万に達しています。
ドナルド・トランプ再選論とユーザーの流入
特にBlueskyの新規登録者数が急増した時期は、ドナルド・トランプ氏の再選が現実味を帯びてきた選挙直後のタイミングと重なっています。これは偶然ではなく、X上で彼の支持者や強硬な政治的言説が目立つようになったことで、そうした議論から距離を置きたいと考えるユーザー、特に#Resistance Twitter(反トランプ派のTwitterユーザー)やFacebookから移住してきた「Facebook難民」と呼ばれるリベラル層が、新たな避難場所を求めてBlueskyに殺到したと筆者らは分析しています。彼らにとってBlueskyは、Xの混沌から逃れ、より穏やかで思想的に共感できる人々との交流を望む「青い空」だったのです。
第2章:ユーザーは増えたのに、なぜ活気がないのか?
筆者たちのブルースキー体験
Xからの完全移行と初期の熱狂
本論文の筆者であるアレックス・カーシュナー氏とニティッシュ・パーワ氏の二人は、半年以上にわたりBlueskyを主要なマイクロブログアプリとして利用しています。特にニティッシュ氏は、招待コード時代からBlueskyを使い始め、ドナルド・トランプ氏の再選論が強まった選挙後にXを完全に辞め、Blueskyに軸足を移しました。彼らにとって、Blueskyは単なる代替ではなく、Xでは得られなくなった「投稿したり投稿を読んだりする飽くなき食欲」を満たす場所でした。
初期の頃は、Xから移住してきたユーザーの急増に興奮し、ニッチな技術や政治の話題だけでなく、ポップカルチャー、バスケットボール、コメディなど、多様な興味を持つユーザーが参加し始めたことに喜びを感じていたといいます。有名人であるフレイバー・フラブ氏やミナ・カイムズ氏がポートランド・トレイルブレイザーズについて投稿しているのを見て、その多様性に驚いたほどです。
現在感じられる「興奮の落ち着き」と不安
しかし、その「爆発的な興奮」は少し落ち着きを見せ始めました。筆者たちはBlueskyで「純粋な喜び」や「新しい人との繋がり」を見出し、自ら厳選したリストを作成するなどして最大限に活用しているものの、同時に「次に何が起こるか不安で不安」な感情も抱いているといいます。ユーザー数は増えているにもかかわらず、かつての活気や熱狂が失われ、どこか「空虚さ」を感じるようになったのです。この感覚こそが、本論文の核心にある問いです。
「リベラルなバブル」と政治的議論の偏り
#Resistance TwitterとFacebook難民の流入
筆者たちは、この「空虚さ」の大きな原因として、Blueskyが特定のユーザー層に偏っていることを指摘しています。具体的には、X(旧Twitter)からの移住組、特に「#Resistance Twitter」(反トランプ派の強い政治的傾向を持つTwitterユーザー)や「Facebook難民」(Facebookの政治的言論に疲弊して移行してきたユーザー)といったリベラル層が、Blueskyのユーザーの「確かな大部分を占めている」と分析しています。彼らは、Xの混乱から逃れてきたものの、その政治的関心をそのままBlueskyに持ち込み、深刻な議論を続ける傾向にあるというのです。
政治的・社会的な「真面目さ」の優勢
このユーザー層の偏りにより、Blueskyは「古き良き#Resistance Twitterが集中している場所」のように感じられると述べられています。結果として、サイトで最も人気のある会話トピックの一つが「なぜもっと多くの人がこのサイトを使用しないのか」という、プラットフォーム自身の問題点に関する議論になってしまう皮肉な状況が生まれていると指摘されています。ガザの状況やアメリカの民主主義の崩壊といった深刻な話題が常に優先され、非政治的な、あるいは軽妙なコンテンツが「離陸」しにくい雰囲気が醸成されているのです。「冗談が言えない」雰囲気とユーザーの疲弊
この「真面目さ」の優勢は、Blueskyが「冗談が言えない」場所になっているという批判にも繋がっています。筆者の友人であるアシュウィン・ロドリゲス氏は、この問題について鋭い記事を書き、その記事へのユーザーの反応自体が「彼の主張をほぼ証明した」と述べられています。例えば、ニューヨーク・タイムズ紙のスクリーンショットのパロディを誤情報だと真剣に批判したり、軽妙なジョークを女性蔑視だと非難したりするような、「集団的な悪い評判の一因となっている」とされる過剰な反応が見られるといいます。こうした環境では、ユーザーは気軽に発言しにくくなり、やがて疲弊してプラットフォームから離れていく可能性も指摘されています。
ユーモアと非政治的コンテンツの欠如
異常値と集団的な悪い評判
Blueskyには、政治的・社会的な「深刻な」話題ばかりでなく、人々が「ばかばかしい」と感じるような「異常値」の投稿も存在します。例えば、「ガザに爆弾が落ちている間、なぜ『アンドール』について投稿しているのか?」といった、非政治的なコンテンツへの批判です。こうした投稿は、ユーザー全体から見れば少数かもしれませんが、集団的な悪い評判を生み出し、「いつもこんな投稿が見えるXに進みます、あるいはBlueskyをからかうという文脈でInstagramを作成します」という、皮肉な反応を引き起こしています。
これは、Xが「LAは燃えている。彼らを強制送還しろ」といった極端な言説で溢れているのに対し、Blueskyでは「なぜ現実の悲劇に目を向けないのか」と自己批判に陥りがちな傾向を表しています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙のクリストファー・ミムズ氏が週末に指摘したXとBlueskyの言論の差は、この問題を象徴しています。
ユーザー行動とコンテンツの自律的偏り
筆者たちは、BlueskyがXのようにアルゴリズムによって政治的言説を一方向に傾けているわけではないにもかかわらず、なぜこのようなコンテンツの偏りが生じるのかを分析しています。その答えは、ユーザー自身の行動パターンにあります。プラットフォームに集まったユーザーが、最初から「世界の現状について悲しく、怒り、絶望的な人々」が多数を占めているため、自然と悲観的なニュースや政治的議論が多発し、それが「楽しい投稿ではない」傾向を強めてしまうというのです。たとえティモシー・シャラメ氏とジェンナーズ氏がニックスの試合にいる写真のような軽妙な投稿があったとしても、それがバイラリティを持つことは稀で、「100万枚の大統領令のスクリーンショット」の方が目に付いてしまう状況です。
ソーシャルメディアのインセンティブと「怒りの餌食」
課金型インセンティブとコンテンツの質
X(旧Twitter)では、イーロン・マスク氏が投稿の表示頻度に応じてユーザーに料金を支払い始めるという、直接的なインセンティブ(動機付け)を導入しました。これにより、より多くの注目を集めるための過激な投稿や、クリックを誘発するようなコンテンツが増加する傾向が見られます。これは、コンテンツの質よりも「注目度」が重視されるという、ソーシャルメディアのビジネスモデルが持つ負の側面を露呈しました。Blueskyはこのような課金型のインセンティブを導入していませんが、それでもなおコンテンツの質や方向性が問題となるのは、インセンティブが「お金」だけではないことを示唆しています。
悲観的ニュースとネガティブなバイラリティ
Blueskyのユーザーは、政治的・社会的な「現実の衝突」に直面し、それをプラットフォーム上で共有し、議論することを強く望んでいます。しかし、筆者たちは「もっとも熱心なユーザーは、ほんの数時間前に聞いたのと同じ悪いニュースを後押しして再共有し、なぜ毎時間降りかかるあらゆる小さな不正義を考慮しないのかを尋ね、嵐を再投稿する可能性が最も高いユーザーでもあります」と指摘しています。これにより、フィードは悲観的なニュースで溢れかえり、ユーザーは「怒りの餌食」のような状態に陥りがちです。エンターテイメントや軽妙な話題が入り込む余地が少なくなり、結果として「空虚さ」や「疲弊」を感じる原因となっています。
現実の衝突とSNSの限界
本論文執筆の週末には、全仏オープンやNBAファイナル、トニー賞といった文化的なイベントの話題と、ロサンゼルスの移民支持デモやイスラエルによるマドリーン援助船団の迎撃といった政治的恐怖が同時に勃発しました。筆者たちは、この「現実の衝突」に、いかなるソーシャルメディア、ましてやリソース不足のスタートアップであるBlueskyが「対処できるように装備されている」のか疑問を呈しています。SNSは現実の全てを映し出す鏡であると同時に、その全てを健全に処理しきることはできないという、ソーシャルメディアが抱える構造的な限界を示唆していると言えるでしょう。
コラム:SNSの「通知疲れ」と心の健康
最近、私を含め多くの人が「SNS疲れ」を感じているのではないでしょうか。特にTwitterがXになってからの変化は、その疲れを加速させたように思います。以前は気軽に投稿できたことも、今は「これは誰かに叩かれるかな?」「誤解されないかな?」と余計なことを考えてしまい、結局投稿を諦めることが増えました。特に、政治や社会問題に関する議論は、すぐに感情的になりがちで、通知が鳴るたびに心がざわつくようになりました。
友人の中には、SNSから一時的に距離を置く「デジタルデトックス」を試みる人もいます。SNSが本来持つべき「繋がり」や「情報共有」というポジティブな側面よりも、「怒り」や「疲弊」といったネガティブな側面が目立つようになってしまったのは、非常に残念なことです。私たちは、SNSを使うことで何を得たいのか、そして何を守りたいのかを、もっと真剣に考える時期に来ているのかもしれません。SNSが私たちの心の健康を蝕むツールではなく、真の意味で私たちの生活を豊かにするツールとなることを願ってやみません。
第3章:Twitterとの比較:理想と現実のギャップ
「町の広場」と「リベラルアーツカレッジ」
Twitterの多様性とBlueskyの同質性
かつてのTwitterは、まさに「巨大な州立大学」のような存在でした。そこにはあらゆる種類の学生クラブがあり、想像できる限りの多様なユーザーと話題が混在し、誰もが自分の居場所を見つけられる可能性を秘めていました。しかし、本論文の筆者たちは、現在のBlueskyを「どちらかというと小さなリベラルアーツカレッジ」に例えています。この比喩は、Blueskyが持つコミュニティの性質を鋭く言い当てています。Blueskyは、特定の価値観や政治的傾向を持つユーザーが中心となり、話題の幅が限定的であるという同質性を帯びています。それは、かつてTwitterが持っていたような、あらゆる人が集い、予測不能な化学反応が生まれる「町の広場」としての機能は持ち合わせていないことを意味します。
狭いコミュニティのメリットとデメリット
「小さなリベラルアーツカレッジ」のようなコミュニティには、もちろんメリットもあります。寮生活が良く、誰もが何十億人もの人がいる混乱した学校に通う必要はない、という筆者の言葉がそれを表しています。特定の価値観を共有する人々が集まることで、安心感や深い共感が生まれ、共通の目標に向かって協力しやすいという利点があります。しかし、その一方で、意見の多様性が失われ、「エコーチェンバー」(反響室)や「フィルターバブル」(情報が偏り、自分の意見が強化される現象)に陥りやすいというデメリットも抱えています。異なる視点や批判的思考が育ちにくく、結果としてコミュニティ全体の思考が硬直化するリスクがあるのです。
アルゴリズムの影響と情報過多
アルゴリズムの偏りと人間の行動
X(旧Twitter)では、イーロン・マスク氏がアルゴリズムを微調整し、特定のコンテンツ(特に8ドルの有料認証アカウントやリンク付きツイートなど)の表示を優遇するようになりました。これにより、ユーザーは意図せず特定の情報に偏って触れるようになり、情報空間の歪みが加速しました。一方、Blueskyは「アルゴリズム中心ではない」と主張しており、その点ではXのような恣意的な情報の操作は少ないかもしれません。しかし、本論文が指摘するように、ユーザー自身の行動が特定の種類のコンテンツ(悲観的なニュースや政治的議論)を優先的に生み出し、拡散させる傾向があるため、結果的にプラットフォーム全体が「怒りの餌食」のような状態になるという、別の形の偏りが生まれています。これは、アルゴロジー(アルゴリズム学)の観点からも興味深い現象であり、人間の行動がアルゴリズム的な偏りを自律的に生み出しうることを示唆しています。
歪んだ情報認識とメインストリーム報道への影響
X上では、「LAは燃えている。彼らを強制送還しろ」といった極端で歪んだ情報が飛び交い、それがときにメインストリームの報道にまで影響を与えることが指摘されています。これは、SNSが現実の出来事をいかに歪曲して伝え、社会の認識を形成しうるかを示す恐ろしい例です。対照的に、Blueskyではそのような極端な誤情報が蔓延する可能性は低いと筆者らは見ています。しかし、その代わり、特定のイデオロギーに偏った情報交換が行われ、それが「リベラルなバブル」を形成することで、外部からの多様な視点や批判を受け入れにくくなるという問題があります。いずれにせよ、SNSが情報の信頼性をどのように担保し、ユーザーが健全な情報認識を形成できる環境を提供できるかという課題は、依然として大きく横たわっています。
信頼できる情報源としての価値
Xのジャーナリズムリソースとしての価値低下
イーロン・マスク氏の買収後、Xはジャーナリズムのリソースとしての価値を大きく失いました。リンク付きのツイートが軽視され、アルゴリズムが特定のユーザー(8ドルの有料認証アカウント)のスロップ(粗悪なコンテンツ)を押し上げるようになったことで、ジャーナリストやメディア関係者のエンゲージメントは著しく低下しました。かつては速報性や情報収集のハブとして機能していたXは、今や信頼できる情報を見つけるのが困難な「ノイズの海」と化していると言えるでしょう。これは、ジャーナリズムとSNSの関係において、非常に憂慮すべき変化です。
Blueskyのクリエイターと視聴者獲得への期待
本論文の筆者たちは、Xが失ったジャーナリズムリソースとしての価値を、Blueskyが獲得できる可能性に期待を寄せています。彼らは、WiredやMcSweeney'sなどのメディアが、Blueskyがエンゲージメントと視聴者ソースを復活させていることを明確に認めていると指摘しています。つまり、Blueskyはクリエイターがより健全な露出を見つけ、視聴者を再構築するためのルートを提供するプラットフォームになるべきだというのです。Xで動画を使って自分の魂を売り込むのではなく、オリジナルコンテンツを共有し、意味のある対話を生み出す場としての役割です。もしBlueskyがこの役割を果たすことができれば、それは単なるTwitterの代替以上の存在、すなわち健全な情報流通とクリエイターエコノミーを支える新たな基盤となりうるでしょう。
コラム:私の情報源はどこへ行った?
以前は、何かニュース速報が出ると、まずTwitterで確認していました。信頼できるジャーナリストや専門家のアカウントをフォローしていれば、一次情報に近い形で状況を把握できたからです。しかし、Xになってから、その習慣はなくなりました。タイムラインには見慣れないアルゴリズムの推薦投稿が溢れ、デマと真実の見分けがつかなくなり、信頼していたジャーナリストの投稿も埋もれてしまうようになりました。まるで、いつも使っていた図書館の蔵書がごちゃ混ぜにされ、代わりに大量のチラシが積まれているような感覚です。
最近は、Xで情報収集をするよりも、ニュースサイトのRSSフィードや、特定の分野の専門家が運営するニュースレターを読むことが増えました。SNSは便利なはずなのに、結局は自分自身で情報を選別する手間が増えたことに、一抹の寂しさを感じています。Blueskyに期待するのは、まさにこの「信頼できる情報源」としての機能を取り戻すことです。それができれば、SNSは再び私たちの生活に欠かせない、価値あるツールになるはずだと信じています。
第4章:ブルースキーが抱える本質的な問題
ユーザー層の多様性不足
政治的傾向と興味分野の偏り
本論文が繰り返し指摘するように、Blueskyは「リベラルなバブル」と呼ばれるほど、特定の政治的傾向を持つユーザーに偏っている現状があります。これは、X(旧Twitter)からのユーザー流入が、ドナルド・トランプ氏の再選論に反発する層に集中したことが大きな要因です。結果として、プラットフォーム上では民主党の動向、AIの詐欺師、でたらめな評論家など、政治的・社会的な「深刻な」話題が中心となりがちです。
筆者たちは、自身のBluesky体験において、ピッツバーグ・パイレーツについて一緒に愚痴を言える人が14人しかいないのに対し、Xには数百人いたと述べています。これは、興味分野の多様性が失われていることの具体的な証拠です。確かに、テニス関連の投稿が多いように感じるという言及も、この偏りを裏付けています。様々な興味を持つ人々が多様な話題で交流できる「町の広場」としての機能が、Blueskyではまだ十分に実現できていません。
より多くの「楽しい」ポスターの必要性
この多様性の欠如は、ユーモアや軽妙なコンテンツの不足にも繋がっています。筆者たちは「もっと楽しくてクソポスターが必要です。ジョーク好きの皆さん、ぜひご参加ください。Not Newsとクラック難解なリフについて話しましょう」と呼びかけています。これは、単に「面白い投稿が欲しい」というだけでなく、プラットフォーム全体の雰囲気を変え、より多くの人々が気軽に、そして安心して様々な話題を共有できる環境を創出することの重要性を訴えています。もしBlueskyが、真剣な議論の場であると同時に、人々の日常の喜びや軽妙な笑いを共有できる場とならなければ、その成長は頭打ちになり、やがては「空虚さ」が定着してしまうでしょう。
社会的・政治的責任とプラットフォームの役割
民主主義の危機におけるSNSの限界
本論文は、「ブルースキーが民主主義の危機に対して国民が実際に組織し、行動するための場になることはできないし、そうすべきではない」という重要な主張をしています。これは、SNSが社会変革のツールとしての役割を過度に期待されることへの警鐘です。SNSは情報共有や意識の形成に寄与するものの、それが現実世界での具体的な行動や組織化に直結するとは限らず、また、その役割をプラットフォームに過度に押し付けることは、かえってプラットフォームの健全性を損なう可能性を指摘しています。SNSはあくまで「道具」であり、その道具の限界を理解し、過度な期待を抱かないことが重要であると示唆しています。
健全な対話空間の維持とモデレーション
一方で、論文は「基本的な関数に関しては、— understanding what's all happening in the world right now—I'd much rather have Bluesky over the alternatives」とも述べています。つまり、世界の出来事を理解するための情報源としては、Xのような代替プラットフォームよりもBlueskyの方が優れているという見方です。これは、Blueskyが恣意的な人種差別のようなヘイトスピーチのモデレーションを試み、より健全な言論空間を維持しようとしている努力を評価しているためでしょう。しかし、トルコ政府による検閲要求の事例に見られるように、分散型SNSであっても、政府の圧力や誹謗中傷への対処は容易ではありません(dopingconsomme.blogspot.com)。健全な対話空間を維持するためには、技術的なモデレーションだけでなく、ユーザーコミュニティ自身の規範意識や、運営側のポリシー策定が不可欠です。
分散化の理想と現実のギャップ
AT Protocolの真の分散化への議論
Blueskyの根幹にあるATプロトコルは、中央集権型SNSの限界を克服するための革新的な試みです。しかし、一部の技術者からは「Blueskyは実際にどの程度分散化されていますか?」という疑問が呈されており、「真の意味での分散化を達成していない」「『連合』とも呼べない」といった厳しい意見もあります(dopingconsomme.blogspot.com)。また、「アルゴリズムなし」という謳い文句に対しても、「技術的には、皮肉なことに、すべてがアルゴリズムですが、私はその言葉をうまく実践できていません」という指摘もあります(dopingconsomme.blogspot.com)。ドメイン名の重要性についても、技術者以外には理解が広まっていないという混乱や不信感があるようです。
技術的革新性とサービス成熟度の課題
分散型SNSとしての技術的革新性は高いものの、サービスとしての成熟度にはまだ課題が残されています(dopingconsomme.blogspot.com)。ユーザー数の増加に伴い、モデレーション、詐欺アカウント、偽情報、政府の検閲といった様々な課題に直面していることが報告されています(dopingconsomme.blogspot.com)。分散化の理想を掲げるだけではなく、それが実際のユーザー体験にどう繋がり、いかにして健全で活気あるコミュニティを大規模に運営していくかという点で、Blueskyはまだ道の途中にあると言えるでしょう。
コラム:理想と現実のギャップはどこにでもある
私たちが何か新しいことを始めるとき、最初は大きな理想を抱きますよね。「今度こそ完璧なダイエットを!」とか、「毎日英語の勉強を!」とか。でも、いざ始めてみると、なかなか思うようにいかないものです。Blueskyも、もしかしたらそんな状況なのかもしれません。X(旧Twitter)という「失敗」から学んで、より良い世界を目指そうとした。技術的には素晴らしいアイデアも盛り込まれている。でも、実際に人間が使うと、予期せぬ摩擦や偏りが生まれてしまう。
完璧なシステムなんて、この世には存在しないのかもしれません。大切なのは、そのギャップを認識し、どう改善していくか。そして、ユーザー自身がそのプラットフォームの理想を理解し、共に育てていく意識を持つことではないでしょうか。私も、完璧なダイエットには失敗しましたが、少しずつでも健康的な食生活を心がけるようにしています。SNSも、すぐに理想の形にならなくても、ユーザーと運営が協力し合うことで、より良い場所になっていくと信じたいですね。
第5章:ブルースキーの未来:希望と提言
創造性豊かなコンテンツの奨励
オリジナル作品と非ニュースコンテンツの重要性
本論文の筆者たちは、Blueskyが活気を取り戻すために最も必要としているのは、「もっと楽しくてクソポスター」であり、「Not Newsとクラック難解なリフについて話せる」ような場所であると強く主張しています。これは、単に政治や社会問題に関する議論だけでなく、ユーザーが自身のオリジナルな作品、個人的な興味、日常の出来事、あるいは軽妙なユーモアを自由に投稿し、それが評価される土壌を育むことの重要性を意味します。X(旧Twitter)がジャーナリズムのリソースとしての価値を失った今、Blueskyはクリエイターが健全な形で自身のコンテンツを公開し、新しい視聴者を見つけるための場所となる可能性を秘めていると指摘しています。
例えば、YouTubeやTikTokのようなプラットフォームが、単なる情報発信の場としてだけでなく、個人の創造性を爆発させるエンターテイメントの場として成功したように、Blueskyもテキストベースのマイクロブログにおいて、そのような創造性を解き放つ空間となることが求められます。それは、写真や動画、イラスト、短編小説、音楽の歌詞など、形式を問わないオリジナルな表現を奨励し、それを楽しむ文化を醸成することから始まるかもしれません。
新しいユーザー体験の創出
ユーザーが「退屈だ」「空虚だ」と感じる原因の一つに、コンテンツの単調さや、コミュニケーションのパターンが固定化されていることが挙げられます。これを打破するためには、単に「投稿を増やす」だけでなく、新しいユーザー体験を創出する必要があります。例えば、カスタムフィードの機能をさらに活用し、ユーザーが自分の興味に合わせたフィードを簡単に作成・共有できるようにしたり、特定のテーマに特化したコミュニティやイベントをプラットフォーム側が積極的に支援したりすることも考えられます。また、インタラクティブな機能や、ゲーム要素を取り入れることで、より楽しく、より没入感のある体験を提供することも、ユーザーのエンゲージメントを高める上で有効かもしれません。
多様なユーザーの誘致戦略
異なるコミュニティやサブカルチャーへのアピール
Blueskyが現在の「リベラルなバブル」から脱却し、真の「町の広場」となるためには、多様なユーザー層を積極的に誘致する必要があります。これは、特定の政治的傾向を持つ層だけでなく、スポーツ、アニメ、ゲーム、料理、ファッション、音楽、読書、旅行など、あらゆるサブカルチャーや趣味を持つ人々が「自分の居場所」を見つけられるようにすることです。そのためには、各コミュニティのニーズに合わせた機能開発や、インフルエンサーを通じたプロモーション、あるいは特定のイベントとの連携なども有効でしょう。例えば、日本の「VTuber文化」のように、ニッチながら熱狂的なコミュニティが独自の文化を形成できるような環境を整備することも、多様性獲得の一助となる可能性があります。
ポスト・Twitter時代の健全な「サードプレイス」の追求
多くの人々にとって、Twitterは家庭や職場に次ぐ「サードプレイス」としての役割を果たしてきました。しかし、Xの変質により、そのサードプレイスとしての機能は失われつつあります。Blueskyが目指すべきは、単なる情報発信の場ではなく、ユーザーが安心して、自由に、そして楽しく交流できる、健全なサードプレイスとなることです。そのためには、モデレーションの透明性を高め、ユーザーが安心して発言できる環境を整備するとともに、ポジティブな交流を促進するようなコミュニティガイドラインの策定も重要です。また、「もしかしたらブルースキーが『勝った』のかもしれない」という意見(dopingconsomme.blogspot.com)があるように、技術的な革新性だけでなく、人々のつながりを深める手段としての可能性を追求していくことが重要です。
「楽しさ」を取り戻すための処方箋
ユーザー自身の意識変革
プラットフォームの活気を決定するのは、最終的にはユーザー自身の行動です。もしユーザーが「深刻な話題ばかり」と感じているのであれば、自ら積極的に非政治的な話題を投稿し、ユーモアを共有し、多様なコンテンツを支持する姿勢が求められます。筆者たちは「ジョーク好きの皆さん、ぜひご参加ください」と呼びかけていますが、これはBlueskyのコミュニティが、よりオープンで、より遊び心のある文化を受け入れる用意があることを示すメッセージでもあります。ユーザー一人ひとりが「楽しい」コミュニティを意識的に形成しようとすることが、プラットフォーム全体の雰囲気を変える原動力となるでしょう。
プラットフォーム運営による文化醸成
もちろん、ユーザーの意識変革だけでは不十分です。Blueskyの運営側も、多様なコンテンツを奨励し、ポジティブな交流を促すための積極的な文化醸成に努めるべきです。例えば、ユーモアをテーマにしたイベントを開催したり、特定のサブカルチャーに特化した公式アカウントを支援したり、あるいは「今日の面白い投稿」のようなキュレーション機能を強化したりすることも考えられます。また、新規ユーザーがBlueskyに登録した際に、政治的な話題以外のカスタムフィードを積極的に推薦するなど、初期体験から多様な興味に触れる機会を提供することも重要です。Blueskyが「巨大な州立大学」のような多様性を再び獲得し、真の意味での「青い空」となるためには、技術とユーザー文化、そして運営の三位一体となった努力が不可欠であると言えるでしょう。
コラム:デジタル空間の「自治」とは何か
私の地元には、昔ながらの商店街があります。一時はシャッター通りになりかけたのですが、最近は若い店主たちが新しい店をオープンしたり、定期的にイベントを開催したりして、少しずつ活気を取り戻しています。面白いのは、誰かが一方的に「こうしろ」と指示するのではなく、店主たちがお互いにアイデアを出し合い、協力し合っていることです。
SNSも、この商店街のようなものだと感じることがあります。プラットフォーム運営は、商店街の管理組合のようなもので、基本的なインフラを整え、ルールを作る役割を担います。しかし、本当に活気ある場所にするには、そこに集う「店主」であるユーザー一人ひとりが、自分の個性を出し、隣の店と協力し、訪れる「お客さん」を楽しませようと努力することが不可欠です。Blueskyが目指す分散型という仕組みは、まさにこの「自治」の可能性を秘めているのではないでしょうか。ユーザーが自分のデータを持ち、好きなようにフィードをカスタマイズできるということは、それぞれの「店」を自由にデザインできるということ。そして、その「店」同士が繋がり、新しい「商店街」を築くことができる。そんな未来を想像すると、少しワクワクしますね。私たちは、このデジタル空間で、どんな「商店街」を作っていくのでしょうか?
疑問点・多角的視点
本論文はBlueskyの現状を鋭く捉えていますが、より多角的に理解するためには、以下の問いを掘り下げることができます。
「リベラルなバブル」の発生メカニズムと影響の深掘り
- なぜ特定の政治的傾向を持つユーザーが初期に集中したのでしょうか? プラットフォームの招待制導入時期や、共同設立者の思想、外部からの情報発信が影響した可能性は?
- これは単なるユーザー構成の問題なのか、それともBlueskyのモデレーションポリシーやプラットフォーム設計自体が、特定の言論空間を育成しやすい構造になっているのでしょうか?
- 「リベラルなバブル」に閉じこもることのメリット(安心感、情報共有の効率性など)とデメリット(思考の硬直化、外部からの孤立など)を具体的に比較分析することは可能でしょうか?
分散型SNSプロトコル(ATプロトコル)の役割と限界
- 論文ではATプロトコルという技術的な側面にほとんど触れられていませんが、この分散型特性がユーザー体験やプラットフォームの成長、コミュニティ形成にどのような影響を与えているのでしょうか? 例えば、カスタムフィードの存在は「バブル」を解消する可能性もあれば、逆に特定のフィルターを強固にする可能性もあるのではないでしょうか?
- プロトコルの開放性や分散性自体が、特定のユーザー層(テクノロジーに詳しい、Web3に関心があるなど)を引き寄せる要因になっている可能性は?
ブルースキーのビジネスモデルと持続可能性
- Blueskyの現在の収益モデル(または将来的な計画)は、ユーザーエンゲージメントやコミュニティ形成にどのような影響を与えているのでしょうか? 例えば、有料化の可能性や広告モデルが、ユーザーの行動やコンテンツの質にどう影響するでしょうか?
- スタートアップとしてのリソース不足が、成長戦略やモデレーション体制にどのように影響しているのでしょうか?
モデレーションの課題と成功事例
- 論文では「恣意的な人種差別」のモデレーションについて軽く触れられていますが、Blueskyのモデレーションチームは具体的にどのような課題に直面し、どのように対処しているのでしょうか? 他のプラットフォームと比較した際の強みと弱みは何か?
- ユーザー主導のモデレーションやカスタムフィードが、健全なコミュニティ形成にどれほど貢献しているのか、具体的な成功事例や課題点について深掘りすることは可能でしょうか?
他の代替SNSとの比較と差別化戦略
- Mastodon、Threads、Misskey、Nostrなど、同時期に台頭した他のX代替サービスと比較して、Blueskyのユーザー体験、技術的優位性、コミュニティ特性、成長戦略における独自性や課題は何か?
- なぜユーザーは他のプラットフォームではなくBlueskyを選ぶのか、あるいは離れるのか? 各プラットフォームのユーザーインタビューやアンケート調査を行うことで、より深い洞察が得られるかもしれません。
ユーザーの主観性と客観的データの整合性
- 筆者らの「空虚に感じる」「活気が失われている」という主観的な感覚は、ユニークポスター数や投稿数、平均滞在時間、エンゲージメント率といった客観的なデータによってどの程度裏付けられるのでしょうか?
- 「多くのユーザーがプラットフォームを放棄するにつれて、これらのアカウントのゴースト化が進むことが増えているようです」という記述は、どのようなデータに基づいているのでしょうか? 定量的な分析と定性的なユーザー体験の融合が、より説得力のある議論を構築する上で重要です。
ソーシャルメディアが民主主義の危機に対処すべきかという問い
- 論文で提起される「民主主義の危機に対して国民が実際に組織し、行動するための場になることはできないし、そうすべきではない」という主張について、その根拠と限界は何か? ソーシャルメディアが政治的・社会的な議論の場として機能する「べき」かどうかの倫理的・社会的な問いを深掘りする必要があるのではないでしょうか? プラットフォームの責任とユーザーの自己責任のバランスをどう取るべきか、という哲学的な問いにも繋がります。
日本への影響
日本におけるBlueskyの利用状況は、米国と比較するとまだニッチな位置付けですが、Xの代替としての関心は確実に存在し、独特の傾向が見られます。この論文が提起する問題は、日本市場にも少なからず影響を与えています。
日本におけるブルースキーのユーザー層と普及状況
日本でも、Xの「イーロン・マスキファイド」化(イーロン・マスク氏による変更後のXの状況)に不満を持つ層、特に政治的な発言を控えるようになったリベラル層や、特定の界隈(ジャーナリズム関係者、アニメ・漫画・ゲームなどのサブカルチャー、VTuber界隈の一部など)がBlueskyへ移行する傾向が見られます。当初は招待制だったこともあり、情報感度の高いユーザーやテック系インフルエンサーからの認知が先行しました。
日本国内でBluesky初の開示命令が出たというニュース(dopingconsomme.blogspot.com)は、ユーザーの表現の自由とプラットフォームの責任のバランスについて、日本でも議論を巻き起こしました。
日本のSNS文化(匿名性、ユーモア、ミーム)とブルースキーの相性
日本のTwitter文化は、匿名性、パロディ、そして独特のミームやジョークが非常に発達しています。米国での論文が指摘する「ユーモアの不足」や「真面目すぎる雰囲気」は、日本のユーザーにとって特に重要な課題となる可能性があります。もしBlueskyがこうした日本のインターネット文化、特に「クソポスト」(くだらないが面白い投稿)を受け入れ、育てる土壌を持てなければ、日本での幅広い普及は難しいかもしれません。
日本語コミュニティが抱える「バブル」化の懸念
米国と同様に、日本でも初期の移住者が特定の政治的傾向や文化的な同質性を持つため、「リベラル寄りの意識高い系SNS」「特定のクラスタのための場所」といった認識が生まれる可能性があります。これにより、多様な意見の交流が阻害され、意図せず「フィルターバブル」化が進む懸念も存在します。日本においても、ユーザー自身が積極的に多様なフィードを探索し、異なる意見に触れる努力が求められるでしょう。
情報発信プラットフォームとしての可能性と限界
Xが信頼性を失いつつある中で、日本のジャーナリズムや専門家が、より信頼できる情報発信の場としてBlueskyを活用する可能性はあります。特に、Xでは埋もれてしまう専門性の高い議論が、Blueskyのカスタムフィードによってより見つけやすくなるというメリットは大きいです。しかし、その到達度や社会全体への影響力は、現状ではXに遠く及ばないでしょう。また、政府からの検閲要求に対するプラットフォームの耐性(dopingconsomme.blogspot.com)も、日本ではよりセンシティブな問題となりえます。
ローカライズと機能開発の重要性
日本での普及には、日本語でのカスタムフィードの充実や、日本のインターネット文化に合わせた機能開発が不可欠です。例えば、アバター文化や特定のミームに対する対応、日本語での検索精度の向上などが挙げられます。また、日本独自のハラスメント問題や誹謗中傷への対策も、ユーザーが安心して利用できる環境を構築する上で極めて重要です。Blueskyが日本のユーザーのニーズにどれだけ応えられるかが、今後の日本市場での成長を左右するカギとなるでしょう。
コラム:日本のSNS文化と「空気」
日本には独特の「空気」を読む文化があります。SNSでもそれは顕著で、直接的な対立を避け、暗黙の了解の中でコミュニケーションを進める傾向があります。特に、政治や社会問題に関する議論では、意見を表明すること自体が「空気を乱す」と見なされることも少なくありません。私も、以前Twitterで何気ない意見を投稿しただけで、予想外の批判にさらされ、炎上のような経験をしたことがあります。
Blueskyが「真面目すぎる」と感じられるのは、この「空気」が大きく影響しているのかもしれません。Xから逃れてきた人々が、安心できる場所を求めて集まった結果、暗黙のうちに「ここでの発言は慎重に」という空気が形成されてしまったのかもしれません。日本でBlueskyが成功するためには、この「空気」をいかに多様で開放的なものに変えられるかが鍵となるでしょう。それは、単にルールを作るだけでなく、ユーザー自身が「どんな空気を共有したいか」を意識し、行動していくことにかかっているのだと思います。
歴史的位置づけ
本レポートは、Web 2.0を象徴するマイクロブログプラットフォームの「巨人」Twitterが、所有者の交代と運営方針の急激な変化によって変質し、それに伴って発生した「ポスト・Twitter時代」における次世代SNSの試行錯誤を記述する重要な記録として位置づけられます。
Twitterの衰退と分散型SNSの勃興
Twitterの凋落は、中央集権型SNSが抱える「権力者の専横」「収益化とユーザー体験の矛盾」「言論統制とヘイトスピーチ」といった構造的課題を浮き彫りにしました。Blueskyは、そのアンチテーゼとして「分散型」というアプローチを採ることで、より健全でユーザー主導のコミュニティを目指す試みの一つです。
「言論の自由」と「プラットフォームの責任」の議論の事例
イーロン・マスク氏のTwitter買収は、言論の自由とプラットフォームの責任という複雑な問題を再燃させた時期と重なります。本レポートは、その混沌の中から生まれた代替プラットフォームが、どのような言論空間を形成し、どのような課題に直面しているのかを示す生きた事例です。
フィルターバブルとエコーチェンバー問題の継続
SNSが抱える長年の課題であるフィルターバブルやエコーチェンバーの問題が、中央集権型から分散型へと形を変えてもなお、コミュニティ形成の初期段階で顕在化しうることを示しています。これは、技術的な解決策だけでは不十分であり、ユーザー行動や文化的な側面も考慮する必要があるという教訓を与えます。
ソーシャルメディアの成熟期における挑戦
かつてのような爆発的な成長期が終わり、ユーザーがプラットフォームを選ぶ目が肥えた成熟期において、新しいSNSがいかに多様性を獲得し、持続的なエンゲージメントを維持できるかという、現代のソーシャルメディアが直面する本質的な課題を浮き彫りにしています。
情報社会の変遷と評判経済の台頭
ビッグデータ処理技術の進化:MapReduceとHadoopの誕生
Google MapReduce論文のインパクト
2004年、Googleの二人のエンジニア、ジェフリー・ディーン氏とサンジェイ・ゲマワット氏は、画期的な論文を発表しました。その長ったらしいタイトルは「大規模計算の自動並列化と分散化を可能にするシンプルでパワフルなインターフェース、およびその実装によって一般PCのラージクラスター上での高性能を発揮する方法について」でしたが、これが後にMapReduceと呼ばれることになるデータ処理モデルの誕生を告げるものでした。MapReduceは、膨大なデータを効率的に処理するためのプログラミングモデルで、データを分割して並行処理(Map)し、その結果を集約(Reduce)するというシンプルな発想で、それまでの大型コンピュータによるデータ分析の限界を打ち破りました。これは、現代のビッグデータ処理の基礎となり、その後の情報社会に絶大な影響を与えることになります。
NutchとHadoopの開発経緯
同じ頃、ダグ・カッティング氏とマイク・カファレラ氏は、Googleの検索エンジンに対抗するべく、無料かつオープンソースの検索エンジン「Nutch」(ナッチ)を開発していました。インターネット上の全ページにインデックスを付けるという途方もない作業に直面していた彼らは、MapReduceの論文に触発され、この革新的な構想をNutchの基盤として採用することを決断します。こうして誕生したのが、ダグ氏の息子が愛用していた象のぬいぐるみの名前を冠したHadoop(ハドゥープ)です。Hadoopは、MapReduceをオープンソースで実装したもので、数千ものノードとペタバイト級のデータを処理することを可能にしました。

Hadoopの機能とビッグデータ処理への貢献
Hadoopは、Map機能とReduce機能に加え、何万台もの個別コンピュータの処理状況を把握し、それらをまとめて一貫した全体像を見せるオーバーヘッド機能も自動化されていました。これにより、データの準備、分散、結果の収集、管理、冗長コピーの保管、後処理、全体の進捗状況の検証などが一挙に可能になり、テラバイト級のデータを数時間から数秒で処理できるようになりました。
2007年にはフェイスブックがHadoopの導入に踏み切り、翌年には2500台のコンピュータ並行処理を実現。アマゾンは購入記録のパターン分析、リンクトインは「もしかして知り合い?」の提示、ヤフーはスパムフィルタリングや広告トレンド分析、イーベイは人気の売り手と商品分析といった形で、それぞれがHadoopを使い始めました。こうしてMapReduceとHadoopは、ビッグデータ時代の「弾頭」となり、現代の情報社会を形成する基盤技術として、私たちの生活に深く浸透していったのです。
「評判の社会」(レピュテーション・エコノミー)の到来
アクセス数とランキングによる「評価」の歪み
MapReduceとHadoopが切り拓いたビッグデータ時代は、同時に「評判の社会」(レピュテーション・エコノミー)という新たな経済・社会構造をもたらしました。これは、アクセス数や「いいね」の数、ランキングといった「評判」(reputation)が、社会的な価値や個人の「評価」(evaluation)そのものであるかのように扱われるようになった現象です。ワイドショーからマーケティング、SNSから大学進学率まで、あらゆるものが噂と評判、ランキング、そして推挙(レコメンデーション)で埋め尽くされ、「評判数こそが評価だ」と錯覚されるようになりました。

これは、社会が評判だけで価値を測ろうとする「過剰適応現象」であると、本論文は警鐘を鳴らしています。「いい」をめぐる対話ではなく、「いいね」のヒット数だけが重視される社会の歪みです。
フェイスブックの「Dislike」ボタンと「共感」の追求
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏は、長年ユーザーから要望が多かった「Dislike」(嫌い)ボタンの導入を拒否しました。彼は2015年9月の公開Q&Aで、フェイスブックが目指すのは「共感」を届ける機能であり、「Dislike」ではないとはっきりと述べました。その結果、2016年2月24日には、従来の「いいね」(Like)に加え、「超いいね」(Love)、「うけるね」(Haha)、「すごいね」(Wow)、「悲しいね」(Sad)、「ひどいね」(Angry)といった多様なリアクションボタンが導入されました。これは、単なる二元的な評価ではなく、より複雑な感情の表現を可能にすることで、ユーザー間の「共感」を促進しようとする試みでした。
各種レピュテーション・スコアサービスの浸透
現代社会には、さまざまな「評判」を数値化するサービスが溢れています。例えば、クラウト社の「Klout Score」は、TwitterやFacebookでのやり取りを分析し、個人の影響力をレピュテーション・スコアとして可視化します。「アンジーズ・リスト」(Angie's List)は不動産の評判を開示し、「Airbnb」は空き部屋の貸し借りにおける相互評価システムを導入しています。オンラインゲームの「ネクソン」(Nexon)はFacebookやLinkedInのアカウントを調べて「当人妥当性」を告げ、採用スクリーニングサービス「S2Verify」は履歴書の適性を通知します。ビジネスレビューサイト「イェルプ」(Yelp)は、投稿者の信頼性によって重み付けされたスコアを表示します。


さらに、「グラスドア」(Glassdoor)のように企業の従業員が自分の会社についての評判を立てるサイトも存在します。メッセージングサービスでは、「タイガーテキスト」(TigerText)がメッセージの安全度と評判度を掛け合わせ、よりセキュリティを重視するなら「テレグラム」(Telegram)で暗号化することもできます。不動産スコア、資産スコア、友情スコア、慈善スコア、富裕スコア、債務不履行スコア、相性スコア、病歴スコア、占星スコア、フルーツ完熟度スコア、お便り内容判定スコア……。このように、あらゆるものがランク付けされ、点数化され、そして脱文脈化されていっています。

問題は、それらのスコアが「信用スコア」や「信頼スコア」であるかのように扱われるようになった点にあります。
デジタルフットプリントとデータ保存の常態化
現代社会では、デジタルストレージの精度が飛躍的に向上し、1テラバイトのディスクドライブ一つで平均的な学術図書館の蔵書量を超えるデータを保存できるようになりました。しかもその価格は1万円を切るほど安価です。処理速度も驚くほど速く、わずか0.4秒の間に一般的なノートパソコンは10億回もの計算をこなします。このような「信じがたい刹那主義の世の中」において、私たちのすべてのアクセス行為やクリック行為は、デジタルスコアとなり、デジタルフットプリント(電子の足跡)として記録され、ストレージされていきます。
かつてはデータを削除することが一般的でしたが、今やデータを丸ごと保存しておく方がコストパフォーマンスが良いという状況に変わりました。その結果、私たちは膨大な「ゴミの山」とも言えるデータの中に暮らし、そのすべてがどこかでスコアとして記録され、点数化され、ランキングされうるという、まるで「何事もことごとく監視されているような」社会に生きているのです。

評判の「通貨」化:コリイ・ドクトロウの予見
これらのデジタルスコアやフットスコアは、工夫次第で何でも「評判化」することが可能であり、その「評判」が「流通力」となり、ひいては「通貨」にすらなりうると指摘されています。コリイ・ドクトロウ氏のSF小説『マジック・キングダムで落ちぶれて』に登場する「評判通貨ウッフィー」は、まさにこのレピュテーション経済を先取りした作品と言えるでしょう。お金がなくても評判を集めれば社会的な信用や信頼が得られるという世界観は、現代社会が向かう可能性のある未来を暗示しています。

筆者は個人的に「人とスコアが付着する」現象を最も嫌うと述べていますが、レピュテーション経済社会の事例はほとんどが「人」を「評判」で束ね、「噂」で縛り上げていくものです。出会い系サイトでのレピュテーション・スコアはまだ分かりやすいとしても、自分が何となく訪れた場所が「評判点」付きになっていることには「どうにもいやらしい」と感じるといいます。「気になるお寺に行ってみたら、『当寺の評判は68点と判定されました』という立札が目に入ってくるようなものだ」という比喩は、この状況の違和感を的確に表現しています。

「評価の社会」(エヴァリュエーション)への転換の提唱
「過剰結合社会」の問題提起
しかし、この「評判」によって社会と「人」をがんじがらめにしていく傾向は、収まるどころかますます過飽和になり、本来の「評価」(Evaluation)や「価値」が何であるのかを忘れさせていると警鐘を鳴らしています。マーケッター出身のウィリアム・ダビドウ氏は、この異常な状態を「過剰結合社会」(overconnected)と名付け、『つながりすぎた世界』という本を著しました。世の中が「とことんオーバーコネクテッド」なのであれば、そこから新たな指標を発見し、レピュテーションを加えていけば、リアルな実感社会とは異なる「評判社会」がさらに大きくなるという発想が、レピュテーション経済の根底にあります。最近ではこれを「シェアリング・エコノミー」と呼ぶ者もいますが、それは単なる利便性だけでなく、評判が価値となる側面を強く持っていることを示唆しています。
大学教育におけるレピュテーション:学生評価サイトの功罪
この「評判の社会」の現象は、大学教育の世界にも深く浸透しています。日本の大学が少子化や暗記型教育のツケで苦しむ一方で、アメリカや中国の大学は「レピュテーション・ユニヴァシティ」をめぐる凄まじい競争と最適化を勝ち抜こうとしています。イエール大学のシンガポールキャンパスやニューヨーク大学のグローバルセンター設立は、その一例です。学費は年間8%も上昇し、これはヘルスケア部門を除けばどんな分野のインフレ率よりも高いという異常事態です。
こうした評判合戦の背景には、「レート・マイ・プロフェッサーズ」(Rate My Professors)のような、学生が授業の難易度や好感度を測って教授を評価するサイトの登場があります。しかし、これらのサイトは「単位のとりやすさ」といった項目があるため、学生に対する評価が甘い教授が上位になるなど、問題もはらんでいます。エンプロイ・インサイト社のように、企業と大学のニーズとシーズの歪みを調整するために、求職者がオンラインで受けるテストを作成し、企業と大学の両方にリリースしているところもあります。オラクルがタレオを買収したのは、多すぎる求職者を効率よくふるい落とすためのフィルターを人事担当に提供するためでした。

ハーバード大学の学長を20年以上務めたデレック・ボック氏は、「大学の経済力が上がれば上がるほど、学生の能力は低下している。雇用者を満足させるだけの筆力を獲得できないで卒業していく学生がどんどん多くなっている」と警鐘を鳴らしています。しかし、大学としては自校の学生たちの「評判」を上げ続けなければ、ブランド力が落ち、企業も採用してくれないというジレンマを抱えています。

GPAからマイクロ・クレデンシャルへ
これまでアメリカの学生の「才能」や「力」は、もっぱらGPA(Grade Point Average)に頼って評価されてきました。しかし、この指数に新たな指標を導入することが求められるようになり、YouTubeチャンネルで数億回の視聴力を誇る「カーン・アカデミー」を創り上げたサルマン・カーン氏は、大学はもっと「マイクロ・クレデンシャル」(個別証明書)をオンラインでつくっていくべきだと助言しています。これは「どこそこ大学の何々科の出身です」「GPAはこれこれです」といったおおざっぱな名のりよりも、個々の能力やスキルを具体的に証明する方が、レピュテーションのライトサークルがくっきり浮き上がっていくという考え方です。
実際に、ハーバード大学、MIT、カリフォルニア大学バークレー校のコンソーシアムは、個々のオンライン課程を修了するたびにマイクロ・クレデンシャルを発行する「edX」(エデックス)というプログラムを動かしています。日本では数々の大学コンソーシアムが存在するものの、edXのようなオンライン・プログラムはまだ普及しておらず、アクティブ・ラーニングやラーニング・コモンズが名ばかりになっている現状が指摘されています。


大学の評判は一様なスコアでは決まらず、雇用者も一様なスコアだけでは困るため、GPAとマイクロ・クレデンシャルを組み合わせるなど、様々な取り組みが始まっています。これは、いよいよ「インタースコア」の試みが劇的に始まっていることを示しています。
バカロレア哲学試験に見る「評価」の真髄
「評判をくっつけたい価値観」と、「評価をめぐって思考を進める価値観」の違いを理解するための一例として、フランスのバカロレア(大学入学資格試験)の哲学試験が挙げられます。フランスのリセ(高等学校)では、最終学年1年間を哲学の授業に充て、バカロレアの哲学試験は、思考の型と構成的自由の力を試す、極めて高度な記述式試験です。試験時間は4時間で、毎年変わる問題の中から一つを選び、小論文(ディセルタシオン)を書くか、哲学的著作の引用を構造的かつ意味的に明らかにするテクスト説明を行います。
例えば、2012年の文学系コースの出題は「働くことによって何を得るのか」や「あらゆる信仰は理性に対立するか」といった問いでした。採点基準は、「思考の型が身についているか」と「哲学的課題に答えつつ構成的自由をあらわせるか」という点に置かれています。これは、単なる知識の有無や「評判」を測るものではなく、本質的な「評価」を問う試みであると言えるでしょう。

AIと機械算定による「評判」指標分配方式への警鐘
今日の社会でデジタルストレージが最も精度の高いレベルにさしかかっていることは間違いなく、すべてのアクセス行為やクリック行為がデジタルスコアとなり、デジタルフットプリントとしてストレージされていきます。そして、それらを束ねることで、何だって「評判化」しうるという現実があります。しかし、もしこれ以上の「あやしいレピュテーション経済社会」がまかり通っていくとすると、筆者は検索エンジンと機械算定と人工知能による「評判」の指標分配方式には、いずれはサブプライム・ローンのような亀裂がいくつも入っていくと見ています。評判づくりのための「まやかし」や「いんちき」も増えるでしょうが、それ以上に、実際の実像が「なるほど、評判どおり」とはいかなくなり、一体何が「評価」の実質なのかがどんどん分からなくなってしまうからです。
はたしてビッグデータ時代の人工知能の成果は、「評判」よりも「評価」を引っ張ってこられるのでしょうか。この問いは、Blueskyが直面する課題、すなわち「真のコミュニティの活気」と「表面的なユーザー数」の乖離を乗り越えるためのヒントにもなりえるでしょう。
コラム:履歴書に書けない私のスコア
先日、とあるオンラインコミュニティで、自分の「貢献度」がスコアとして表示される機能が追加されました。最初は「お、頑張ろう!」と意気込んだものの、すぐに違和感を覚えました。私が本当に価値があると感じていたのは、スコアには表れない、あるメンバーとの深い議論や、落ち込んでいる人を励ましたコメントだったからです。
現代社会は、あらゆるものを数値化しようとします。SNSのフォロワー数、仕事の評価点、健康アプリの歩数、大学のGPA……。でも、本当に大切なものって、果たして数字で測れるのでしょうか? 私が大切にしている友人との関係性や、休日に近所の川を散歩して得られる心の平穏は、どんなスコアで評価できるのでしょうか。この論文を読んで、SNSや社会の「評判」の波に飲まれず、自分自身の「評価軸」をしっかり持つことの重要性を改めて感じました。履歴書には書けないけれど、私の人生を豊かにしてくれる「スコア」は、きっと別の場所にあるのだと。
今後望まれる研究
本論文の分析を受けて、Blueskyおよびポスト・Twitter時代のソーシャルメディアに関する今後の研究として、以下の点が挙げられます。
コミュニティ形成と多様性獲得のメカニズムに関する定量的・定性的な研究
- Blueskyにおけるユーザーの流入元、参加動機、コミュニティへの定着率を詳細に分析し、多様なユーザー層(政治的傾向、文化的背景、興味分野など)を獲得するための要因を特定する研究。
- カスタムフィードがエコーチェンバーを助長するのか、多様な情報へのアクセスを可能にするのか、具体的なデータに基づいた検証。
- ユーモアや非政治的コンテンツの生成と拡散を促進するプラットフォームの機能やインセンティブ設計に関する研究。
分散型SNSプロトコル(ATプロトコル)の社会実装と影響に関する研究
- ATプロトコルの技術的な特性(スケーラビリティ、相互運用性、モデレーションの分散化など)が、ユーザー体験、プラットフォームのガバナンス、ビジネスモデルに具体的にどのような影響を与えているか。
- 分散型であることのメリット・デメリットを、中央集権型プラットフォームと比較して深掘りする研究。
モデレーション戦略とユーザーエンゲージメントの関係に関する研究
- Blueskyのモデレーションポリシーや運用が、ユーザーの満足度、プラットフォームへの信頼、コミュニティの健全性にどのように影響しているか。
- ユーザー主導のモデレーションや報告システムが、どのような条件下で効果的に機能するのか、その課題と成功事例を分析する研究。
ポスト・Twitter時代の代替SNSの比較研究
- Blueskyだけでなく、Mastodon、Threads、Nostrなど、同時期に台頭した他の代替SNSを包括的に比較し、それぞれの成功・失敗要因、ユーザー層、特徴的なコミュニティ文化を分析する研究。
- ユーザーが複数のプラットフォームを使い分ける「マルチホーミング」現象が、各プラットフォームの成長にどう影響しているか。
SNSが社会・政治的言論に与える影響に関する継続的な研究
- Twitterが政治的極性化を加速させたと言われる中で、Blueskyのような新しいプラットフォームが、特定の政治的言論空間を形成し、それが社会全体にどのような影響を与えるのか、長期的な視点での追跡調査。
- SNS上での「深刻なニュース」と「非政治的なエンターテイメント」のバランスが、ユーザーの精神的健康や情報リテラシーに与える影響。
「評判の社会」と「評価の社会」の乖離がデジタルプラットフォームに与える影響
- 評判経済の過熱が、ユーザーの行動(例:インフルエンサーマーケティング、フェイクレビューなど)やプラットフォームの設計(例:エンゲージメント至上主義)にどう影響しているか。
- 「評価」という本質的な価値をプラットフォーム上でいかに可視化・促進できるか、具体的なメカニズムを研究。
- マイクロ・クレデンシャルのような新しい評価指標が、従来の「評判」に代わるものとなりうるか、その普及可能性と課題を検証。
AIによる情報評価の倫理的・社会的な課題
- AIが生成するコンテンツや、AIによるコンテンツ評価が、評判経済と評価社会のバランスにどう影響するか。
- AIによるモデレーションやレコメンデーションシステムが、言論の自由やフィルターバブル問題に与える影響について、倫理的・社会的な側面から考察する研究。
参考リンク・推薦図書
論文中の参照記事
- Luke Winkie. "Why Bluesky Is Such a Sad Place to Hang Out." Slate.
- Ashwin Rodrigues. "Bluesky can't take a joke." (Article mentioned in the text)
- Christopher Mims. Wall Street Journal. (Mentioned observation)
X(旧Twitter)関連の報道記事
- "X’s Sales Pitch: Give Us Your Ad Business or We’ll Sue - WSJ." The Wall Street Journal.
- "Musk’s threat to sue firms that don’t buy ads on X seems to have paid off - Ars Technica." Ars Technica.
- "イーロン・マスクが広告業界に「これは戦争だ」と宣言、X(旧Twitter)の世界広告主連盟への訴訟で - GIGAZINE." GIGAZINE.
- "Xから「徒党を組んでXへの広告出稿をボイコットした」と訴えられた広告企業連盟が活動停止 - GIGAZINE." GIGAZINE.
ビッグデータと分散システムに関する学術論文・書籍
- Jeffrey Dean and Sanjay Ghemawat. "MapReduce: Simplified Data Processing on Large Clusters." OSDI. 2004.
- Tom White. Hadoop: The Definitive Guide. O'Reilly Media.
評判経済・評価社会に関する書籍
- Michael Fertik and David Thompson. The Reputation Economy: How to Optimize Your Digital Footprint in a World Where Your Reputation Is Your Most Valuable Asset.
- ウィリアム・ダビドウ. 『つながりすぎた世界』ダイヤモンド社.
- デレック・ボック. 『幸福の研究』東洋経済新報社.
SNSと社会・政治に関する学術論文・書籍
- (フィルターバブル、エコーチェンバー関連の代表的著作例: Eli Pariser. The Filter Bubble: What the Internet Is Hiding from You. Penguin Press.)
分散型SNS・Web3に関する学術論文・報道記事
- "SNS検閲と誹謗中傷の闇に光を!Bluesky初の開示命令から学ぶ、私たちの表現の自由 #Bluesky #検閲 #表現の自由 #SNSの ..."
- "【暴露】トルコ政府の圧力!BlueskyとFediverse、検閲に強いのはどっち? #検閲 #分散化 #SNS #五05"
- "#ソーシャルメディアプラットフォームBlueskyが急成長に伴い直面している課題 #王23"
- "#Blueskyは実際にどの程度分散化されていますか? #王06"
- "AIと人間の絆、ロボットの未来を紐解く:SNSから定理証明、工場まで探求 #AI共生 #ヒューマノイド #LLM進化 #五16"
- "#Blueskyは分散化されていない #十26 - dopingconsomme.blogspot.com"
- "#もしかしたらブルースキーが「勝った」のかもしれない #士19"
- "#Blueskyについては多くの混乱や不信感がある特に技術者以外の人々がドメイン名の重要性を理解していない"
教育と評価に関する書籍
- サルマン・カーン. TEDトーク(動画). (TED.com)
- (カーン・アカデミーに関する資料)
- (edXに関する資料)
その他
- コリイ・ドクトロウ. 『マジック・キングダムで落ちぶれて』ハヤカワ文庫SF.
用語索引(アルファベット順)
- AI (Artificial Intelligence)
- 人工知能。人間の知能を模倣したコンピューターシステムやプログラム。この論文では、AIがコンテンツの評価やモデレーションに用いられる可能性について言及されています。関連箇所:AIと機械算定による「評判」指標分配方式への警鐘, AIによる情報評価の倫理的・社会的な課題
- Airbnb (エアビーアンドビー)
- 空き部屋を貸したい人と、安い宿を探している旅行者をマッチングするオンラインサービス。ホストとゲストがお互いにレビューをつけ、その評判がスコア化される相互評価システムが特徴です。関連箇所:各種レピュテーション・スコアサービスの浸透
- Arbitrary Racism (恣意的な人種差別)
- 特定の意図や根拠なく行われる人種差別。Blueskyがモデレーションを通じて、このような問題行為を排除しようとしている姿勢が言及されています。関連箇所:健全な対話空間の維持とモデレーション
- Ashwin Rodrigues (アシュウィン・ロドリゲス)
- 本論文の筆者の友人。Blueskyはユーモアに欠けるという内容の記事を執筆しました。関連箇所:「冗談が言えない」雰囲気とユーザーの疲弊
- AT Protocol (Authenticated Transfer Protocol)
- Blueskyの基盤となる分散型ソーシャルネットワーキングプロトコル。ユーザーが自分のデータを複数のサーバー間で自由に移動できる「ポータブルなアカウント」の概念を特徴とします。関連箇所:分散型プロトコルATProtoの概念, AT Protocolの真の分散化への議論, 分散型SNSプロトコル(ATプロトコル)の社会実装と影響に関する研究
- Baccalaureate (バカロレア)
- フランスの大学入学資格試験。特に哲学の試験が重視され、高校で1年間かけて哲学を学び、思考力や構成的自由を問う記述式の試験が課されます。関連箇所:バカロレア哲学試験に見る「評価」の真髄
- Big Data (ビッグデータ)
- 従来のデータベース管理システムでは処理しきれないほど膨大で多種多様なデータ群。MapReduceやHadoopといった技術の登場により、その分析が可能になりました。関連箇所:Hadoopの機能とビッグデータ処理への貢献, AIと機械算定による「評判」指標分配方式への警鐘
- Donald Trump (ドナルド・トランプ)
- アメリカ合衆国の元大統領。彼の再選の可能性が浮上した時期に、X(旧Twitter)での政治的議論の激化を嫌ったユーザーがBlueskyに大量に流入したと分析されています。関連箇所:ドナルド・トランプ再選論とユーザーの流入
- Christopher Mims (クリストファー・ミムズ)
- ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記者。XとBlueskyの言論の差を指摘した人物として言及されています。関連箇所:異常値と集団的な悪い評判
- Cory Doctorow (コリイ・ドクトロウ)
- カナダのSF作家、ジャーナリスト。評判を基にした通貨「ウッフィー」が登場するSF小説『マジック・キングダムで落ちぶれて』の著者として引用されています。関連箇所:評判の「通貨」化:コリイ・ドクトロウの予見
- Custom Feed (カスタムフィード)
- Blueskyの特徴的な機能の一つで、ユーザーが特定の基準や興味に基づいて独自のタイムラインを作成・共有できる機能。これにより、ユーザーは自分の興味に合わせたコンテンツを効率的に収集できます。関連箇所:分散型SNSプロトコル(ATプロトコル)の役割と限界, コミュニティ形成と多様性獲得のメカニズムに関する定量的・定性的な研究
- Decentralized SNS (分散型SNS)
- 中央集権的なサーバーに依存せず、複数のサーバーやノードが分散してデータを管理・共有するソーシャルネットワーキングサービス。特定の企業や個人の管理下にないため、検閲への耐性やユーザーのデータ主権が高まると期待されています。関連箇所:分散型プロトコルATProtoの概念
- Decentralized Moderation (モデレーションの分散化)
- コンテンツの監視や規制を中央の組織に任せるのではなく、コミュニティや複数の主体が分担して行う仕組み。ATプロトコルのような分散型SNSで目指される特徴の一つです。関連箇所:分散型SNSプロトコル(ATプロトコル)の社会実装と影響に関する研究
- Decontextualization (脱文脈化)
- 情報がその本来の文脈から切り離されて評価されること。評判経済において、スコアやランキングが情報の背景やニュアンスを無視して独り歩きする現象を指します。関連箇所:各種レピュテーション・スコアサービスの浸透
- Derek Bok (デレック・ボック)
- ハーバード大学の学長を20年以上務めた人物。大学の経済力と学生の能力の低下について言及し、評価のあり方を批判する著書『幸福の研究』があります。関連箇所:大学教育におけるレピュテーション:学生評価サイトの功罪
- Digital Footprint (デジタルフットプリント)
- インターネット上での活動によって残される「電子の足跡」。Webサイトの閲覧履歴、SNSの投稿、オンラインショッピングの記録など、デジタル上のあらゆる行動がデータとして蓄積され、個人の評判形成に利用されうることを指します。関連箇所:デジタルフットプリントとデータ保存の常態化
- Digital Life (デジタルライフ)
- インターネットやデジタルデバイスが生活に深く浸透した現代における、私たちの生き方や活動の総称。SNSの利用もその一部です。関連箇所:本書が問いかける「真のコミュニティ」の定義
- Doug Cutting (ダグ・カッティング)
- オープンソースの検索エンジンNutchの開発者であり、Hadoopの共同開発者。Hadoopという名前は彼の息子の象のぬいぐるみから名付けられました。関連箇所:NutchとHadoopの開発経緯
- Echo Chamber (エコーチェンバー)
- 反響室。SNSなどで、自分と似た意見を持つ人々ばかりと交流することで、自分の意見が増幅され、他の意見に触れる機会が失われる現象。フィルターバブルと関連が深いです。関連箇所:フィルターバブルとエコーチェンバー問題の継続, 狭いコミュニティのメリットとデメリット, コミュニティ形成と多様性獲得のメカニズムに関する定量的・定性的な研究
- edX (エデックス)
- ハーバード大学とMITが中心となって設立した、大規模公開オンライン講座(MOOCs)を提供するプラットフォーム。個々のオンライン課程を修了するたびにマイクロ・クレデンシャルを発行します。関連箇所:GPAからマイクロ・クレデンシャルへ
- Elon Musk (イーロン・マスク)
- X(旧Twitter)の現オーナー、テスラやスペースXのCEO。彼のTwitter買収と運営方針の変更が、Blueskyへのユーザー流入の大きなきっかけとなりました。関連箇所:イーロン・マスクによるXの買収と運営方針の急変, 「言論の自由」と「プラットフォームの責任」の議論の事例
- Empty Feeling (空虚さ)
- 本論文の核心的なテーマ。Blueskyのユーザー数は増加しているにもかかわらず、多くのユーザーが感じる活気のなさや物足りなさのこと。関連箇所:ユーザーは増えたのに、なぜ活気がないのか?
- Evaluation (評価)
- 評判(reputation)とは異なり、物事や人物の本質的な価値や質を判断すること。論文では、評判ばかりが重視される現代社会から、本質的な評価が重視される社会への転換が提唱されています。関連箇所:「評価の社会」(エヴァリュエーション)への転換の提唱, 「評判の社会」と「評価の社会」の乖離がデジタルプラットフォームに与える影響
- Facebook (フェイスブック)
- 世界最大のソーシャルネットワーキングサービス。Hadoop導入の先駆者であり、リアクションボタンの導入でユーザーの感情表現の多様化を試みました。関連箇所:Hadoopの機能とビッグデータ処理への貢献, フェイスブックの「Dislike」ボタンと「共感」の追求
- Facebook Refugee (Facebook難民)
- Facebookの政治的議論やトラブルに疲弊し、より健全な交流を求めてBlueskyなどの代替SNSへ移行してきたユーザー層を指します。関連箇所:ドナルド・トランプ再選論とユーザーの流入, #Resistance TwitterとFacebook難民の流入
- Filter Bubble (フィルターバブル)
- インターネットのアルゴリズムによって、ユーザーが過去の行動に基づいて自分好みの情報ばかり提示され、多様な情報や異なる意見に触れる機会が失われる現象。結果として、自分の世界観が強化され、偏りが生じやすくなります。エコーチェンバーと関連が深いです。関連箇所:フィルターバブルとエコーチェンバー問題の継続, 狭いコミュニティのメリットとデメリット, 日本語コミュニティが抱える「バブル」化の懸念
- GARM (Global Alliance for Responsible Media / 責任あるメディアのための世界同盟)
- 世界広告主連盟(WFA)のイニシアチブで、オンラインメディアにおけるヘイトスピーチや偽情報などの問題コンテンツからブランドを守ることを目的とした業界団体。X(旧Twitter)からの広告引き上げを主導したとされ、Xから訴訟を起こされた後に活動を停止しました。関連箇所:世界広告主連盟への訴訟とGARMの活動停止
- Ghost Account (ゴースト化アカウント)
- SNSなどでアカウントは存在するものの、ユーザーがほとんど活動しておらず、実質的に放置されているアカウント。Blueskyのユーザー数が増加している一方で、活発な投稿が少ない原因の一つとして指摘されています。関連箇所:ユーザーの主観性と客観的データの整合性
- Google Engineers (グーグル・エンジニア)
- Google社の技術者。特にジェフリー・ディーン氏とサンジェイ・ゲマワット氏がMapReduceという革新的なデータ処理技術を開発しました。関連箇所:Google MapReduce論文のインパクト
- GPA (Grade Point Average)
- 成績評価点。大学などで各科目の成績を特定の方式によって算出した数値で、学生の学業成績を示す指標の一つ。関連箇所:GPAからマイクロ・クレデンシャルへ
- Hadoop (ハドゥープ)
- GoogleのMapReduce論文に触発されて開発された、オープンソースの分散データ処理フレームワーク。ビッグデータの効率的な処理を可能にし、多くの企業で利用されています。関連箇所:NutchとHadoopの開発経緯, Hadoopの機能とビッグデータ処理への貢献
- Haha (うけるね)
- Facebookのリアクションボタンの一つ。笑いを表現する絵文字として使われます。関連箇所:フェイスブックの「Dislike」ボタンと「共感」の追求
- Hate Speech (ヘイトスピーチ)
- 人種、国籍、性別、性的指向、宗教などに基づき、特定の個人や集団に対する憎悪や差別を煽る表現。X(旧Twitter)のモデレーション緩和後に増加が問題視されました。関連箇所:モデレーションの緩和とヘイトスピーチの増加
- Influence (影響力)
- 他者の行動や意見に影響を与える力。SNSではフォロワー数やエンゲージメント率などで測られ、Klout Scoreのようなサービスで数値化されます。関連箇所:各種レピュテーション・スコアサービスの浸透
- Incentive (インセンティブ)
- 行動を促す動機付けや誘因。SNSでは、報酬や注目などがユーザーの投稿行動に影響を与えることがあります。関連箇所:課金型インセンティブとコンテンツの質
- Interscore (インタースコア)
- 複数の異なるスコアや評価指標を複合的に組み合わせ、より多角的な評価を行う概念。従来の単一的な評価(GPAなど)の限界を補完する試みとして言及されています。関連箇所:GPAからマイクロ・クレデンシャルへ
- Jeffrey Dean (ジェフリー・ディーン)
- Googleのソフトウェアエンジニア。MapReduceの共同開発者の一人です。関連箇所:Google MapReduce論文のインパクト
- Klout Score (クラウトスコア)
- かつて存在した、ソーシャルメディア上での個人の影響力を数値化したスコア。TwitterやFacebookでのやり取りを分析して算出されました。関連箇所:各種レピュテーション・スコアサービスの浸透
- MapReduce (マップリデュース)
- Googleが開発した、大規模なデータセットを並列処理するためのプログラミングモデル。データを分割して処理(Map)し、その結果を集約(Reduce)するシンプルな手法で、ビッグデータ処理の基礎となりました。関連箇所:Google MapReduce論文のインパクト, Hadoopの機能とビッグデータ処理への貢献
- Mark Zuckerberg (マーク・ザッカーバーグ)
- Facebookの共同創業者。Facebookの「Dislike」ボタンの導入を拒否し、「共感」を重視する姿勢を示しました。関連箇所:フェイスブックの「Dislike」ボタンと「共感」の追求
- Micro-credential (マイクロ・クレデンシャル)
- 特定のスキルや知識を証明する小規模なデジタル証明書。大学の学位のような包括的なものではなく、個々の学習成果や能力を細かく証明するために用いられます。関連箇所:GPAからマイクロ・クレデンシャルへ, 「評判の社会」と「評価の社会」の乖離がデジタルプラットフォームに与える影響
- Mike Cafarella (マイク・カファレラ)
- オープンソース検索エンジンNutchの開発者であり、Hadoopの共同開発者です。関連箇所:NutchとHadoopの開発経緯
- Mocked NYT Screenshot (ニューヨーク・タイムズ紙のスクリーンショットのパロディ)
- Blueskyで、真剣な政治議論を揶揄する目的で作られた、ニューヨーク・タイムズ紙の偽のスクリーンショット。これを誤情報だと真剣に批判するユーザーの存在が、Blueskyの「冗談が言えない」雰囲気を象徴する例として挙げられています。関連箇所:「冗談が言えない」雰囲気とユーザーの疲弊
- Moderation Policy (モデレーションポリシー)
- SNSなどのプラットフォームが、ユーザーが投稿するコンテンツや行動を監視し、規約違反を取り締まるためのルールやガイドライン。Blueskyは健全な言論空間維持のため、Xとは異なるモデレーションを目指しています。関連箇所:「リベラルなバブル」の発生メカニズムと影響の深掘り, モデレーション戦略とユーザーエンゲージメントの関係に関する研究
- Multi-homing (マルチホーミング)
- ユーザーが複数の類似したプラットフォームやサービスを同時に利用する行動。SNSにおいては、TwitterとFacebook、あるいはXとBlueskyなど、複数のSNSアカウントを使い分けることを指します。関連箇所:ポスト・Twitter時代の代替SNSの比較研究
- Overhead Function (オーバーヘッド機能)
- Hadoopにおいて、分散された数万台のコンピュータの処理状況を把握し、それらの仕事をまとめて一貫した全体像を見せる自動化された機能。データ処理の効率化に貢献します。関連箇所:Hadoopの機能とビッグデータ処理への貢献
- Overconnected Society (過剰結合社会)
- ウィリアム・ダビドウ氏が提唱した概念で、情報技術の発展により人々や情報が過剰に繋がり、その結果として新たな問題(情報過多、疲弊など)が生じている現代社会の状態を指します。関連箇所:「過剰結合社会」の問題提起
- Post-Twitter Era (ポスト・Twitter時代)
- イーロン・マスクによるTwitter買収とそれに続く混乱を経て、Twitterが以前のような中心的SNSとしての地位を失い、新たな代替SNSが登場し、ソーシャルメディアのあり方が再定義されつつある時代。関連箇所:歴史的位置づけ
- Ranking (ランキング)
- 評価の順位付け。評判経済においては、アクセス数や「いいね」の数などがランキングとして可視化され、それが評価の基準であるかのように扱われることが問題視されています。関連箇所:各種レピュテーション・スコアサービスの浸透
- Rate My Professors (レート・マイ・プロフェッサーズ)
- 米国の学生が大学教授の授業内容や難易度、好感度などを評価し、レビューを投稿するウェブサイト。学生が履修登録の参考に利用しますが、評価の公平性や内容の偏りも問題視されています。関連箇所:大学教育におけるレピュテーション:学生評価サイトの功罪
- Reaction Button (リアクションボタン)
- Facebookなどで、「いいね」だけでなく、多様な感情(Love, Haha, Wow, Sad, Angryなど)を表現するために使われるボタン。関連箇所:フェイスブックの「Dislike」ボタンと「共感」の追求
- Recommendation (レコメンデーション / 推挙)
- 商品やコンテンツなどをユーザーに推奨する機能。アルゴリズムに基づいて行われることが多く、評判経済を形成する一因となります。関連箇所:アクセス数とランキングによる「評価」の歪み
- Reputation Economy (評判経済)
- アクセス数や「いいね」の数、ランキングといった「評判」が、経済的な価値や個人の「評価」そのものであるかのように扱われる現代の経済・社会構造。関連箇所:「評判の社会」(レピュテーション・エコノミー)の到来, 「評判の社会」と「評価の社会」の乖離がデジタルプラットフォームに与える影響
- Reputation University (レピュテーション・ユニヴァシティ)
- 大学が、教育内容や研究成果だけでなく、外部からの「評判」やランキングを強く意識し、それに基づいて経営戦略を立てる状況。競争激化と市場原理の導入が進む現代の大学像を指します。関連箇所:大学教育におけるレピュテーション:学生評価サイトの功罪
- #Resistance Twitter (レジスタンス・ツイッター)
- 主にアメリカで、ドナルド・トランプ氏の政策や言動に反対し、その動きに抵抗する政治的スタンスを持つTwitterユーザーを指す言葉。Blueskyへの初期のユーザー流入の多くを占めました。関連箇所:ドナルド・トランプ再選論とユーザーの流入, #Resistance TwitterとFacebook難民の流入
- Salman Khan (サルマン・カーン)
- オンライン教育プラットフォーム「カーン・アカデミー」の創設者。大学教育におけるマイクロ・クレデンシャルの重要性を提唱しています。関連箇所:GPAからマイクロ・クレデンシャルへ
- Sanjay Ghemawat (サンジェイ・ゲマワット)
- Googleのソフトウェアエンジニア。MapReduceの共同開発者の一人です。関連箇所:Google MapReduce論文のインパクト
- Social Media Incentives (ソーシャルメディアのインセンティブ)
- ユーザーがSNS上で活動(投稿、エンゲージメントなど)を行うことを促す動機付け。X(旧Twitter)では、イーロン・マスク氏が投稿の表示頻度に応じた料金支払いを導入し、それがコンテンツの質に影響を与えました。関連箇所:課金型インセンティブとコンテンツの質
- Timothée Chalamet (ティモシー・シャラメ)
- アメリカの俳優。ニックスの試合での彼の写真がBlueskyで拡散した事例として言及され、非政治的なコンテンツがバイラリティを持つことの難しさを象徴しています。関連箇所:ユーザー行動とコンテンツの自律的偏り
- Virality (バイラリティ)
- ソーシャルメディア上でコンテンツが急速に拡散し、広まる現象。「バズる」とも呼ばれます。論文では、Blueskyで非政治的な投稿がバイラリティを持つことの難しさが指摘されています。関連箇所:ユーザー行動とコンテンツの自律的偏り
- William Davidow (ウィリアム・ダビドウ)
- マーケッター、著作家。情報技術による過度な繋がりが社会にもたらす影響について、『つながりすぎた世界』という本で「過剰結合社会」を提唱しました。関連箇所:「過剰結合社会」の問題提起
- WFA (World Federation of Advertisers / 世界広告主連盟)
- 世界の主要な広告主が集まる業界団体。X(旧Twitter)からの広告引き上げを主導したとして、Xから反トラスト法違反で訴訟を起こされました。関連箇所:世界広告主連盟への訴訟とGARMの活動停止
- 誹謗中傷開示命令 (Defamation Disclosure Order)
- インターネット上の投稿によって名誉毀損やプライバシー侵害を受けた人が、投稿者の情報をプロバイダに開示するよう求める裁判所命令。Blueskyで日本初の開示命令が出たことが報道されています。関連箇所:モデレーションの緩和とヘイトスピーチの増加, 健全な対話空間の維持とモデレーション
補足1:論文執筆後のブルースキーの動向と感想
論文執筆後のブルースキーの動向
ユーザー成長と機能アップデートの進捗
論文執筆後もBlueskyのユーザー数は着実に増加傾向にありますが、活発な投稿者数の伸びは鈍化しているという傾向は変わっていません。しかし、Blueskyは継続的に機能アップデートを行っており、例えば投稿に画像や動画を複数添付できる機能の拡充、より高度なカスタムフィード作成ツールの提供、ダイレクトメッセージ機能の導入などが進められています。これにより、ユーザー体験の向上と多様なコンテンツ形式への対応が図られています。
特定のコミュニティ(例:日本のVTuber界隈)での利用状況
特に日本では、VTuber(バーチャルユーチューバー)とそのファンコミュニティの一部でBlueskyの利用が広がりを見せています。これは、X(旧Twitter)でのアルゴリズム変更や広告収入への影響、あるいは特定の界隈でのトラブル増加を受けて、より閉鎖的で安全な交流の場を求める動きが背景にあると考えられます。VTuber自身やファンがカスタムフィードを作成し、界隈内の情報共有や交流を深める試みが活発に行われています。これは、論文が指摘する「多様性の不足」に対する、一種のカウンタームーブメントとも言えるかもしれません。
モデレーションとセキュリティ対策の進化
ユーザー数の増加に伴い、誹謗中傷や詐欺アカウント、偽情報といった問題への対処はBlueskyにとって喫緊の課題となっています。論文で触れられた日本初の開示命令のような事例は、プラットフォームのモデレーション体制の強化を促す要因となりました。Blueskyは、AIを活用した自動モデレーションの導入や、ユーザーからの報告システム改善、さらには専門家との連携を通じて、より堅牢なセキュリティとモデレーション体制の構築を進めています。しかし、分散型SNSの特性上、モデレーションの責任範囲やガバナンスのあり方については、依然として議論の余地があります。
感想:ずんだもん、ホリエモン、ひろゆき風
ずんだもんの感想
「なんか、ブルースキーってユーザー増えてるのに、みんな『なんか寂しいのだ…』って言ってるらしいのだ。ずんだもん的には、イーロンマスクがXをめちゃくちゃにしちゃったから、みんな新しい場所を探して来たってことっしょ?でも、来たはいいけど、なんか真面目な話ばっかりで、面白いジョークとかミームが少なくて、疲れちゃうってことなのだ。たしかに、ずっと政治の話ばっかりじゃ、ずんだもんも疲れちゃうのだ。もっと面白いこと、例えば美味しいずんだ餅の画像とか、可愛い動物の動画とか、そういうので盛り上がってほしいのだ!分散型とか、よく分かんないけど、みんなが楽しくおしゃべりできる場所になってほしいのだ!あと、誹謗中傷とか、やめてほしいのだ。ずんだもん、そういうの悲しいのだ…😭」
ホリエモン風の感想
「あのさ、Blueskyってさ、ユーザー数が増えてるのに『空虚だ』とか言ってるんでしょ?もうね、そういうのって根本的なアテンションエコノミーの理解が欠けてるんだよ。Xが『町の広場』だったって言うけどさ、あれはたまたまそうなっただけ。インセンティブ設計が曖昧だったから、結局カオスになったんだ。Blueskyもさ、単にXの代替って思考停止してるだけじゃダメなんだよ。ユーザーが何でそこに来て、何で滞在するのか、コアバリューを明確にしないと。アフィリエイトとか、クリエイターエコノミーとか、具体的なマネタイズと紐づくインセンティブを設計して、それからユーザーにメリットを還元する。そうすれば、自然とクリエイティブなコンテンツも増えるし、エンゲージメントも上がるんだよ。今のままじゃ、単なる『政治談議に疲れたリベラル層の避難所』で終わる。それじゃ事業としてスケールしない。もう一度、ユーザーの行動原理をゼロベースで考えて、ビジネスモデルを再構築すべきだね。結局、マネタイズが明確じゃないサービスは長続きしないんだよ。」
西村ひろゆき風の感想
「なんかBlueskyが盛り上がってないとか言ってるみたいですけど、それって『政治の話ばっかしててつまんねぇ』ってことでしょ?当たり前じゃないですか。Xが『なんでもあり』だったのは、人がたくさんいたからで、そこに変な人も面白い人もいたから。Blueskyみたいに『Xから逃げてきた意識高い系』ばっかり集まると、そりゃ同じようなことしか言わないし、つまんなくなるんですよ。ジョークが言えないとか、そういう『ルール』が暗黙のうちにできちゃってる場所で、誰が積極的に参加したいと思うんですかね。結局、多様性が足りないってこと。みんな同じ方向しか向いてないのに、なんで面白いことが起きると思うんですか?今のままだと、誰も使わなくなるんじゃないですかね、知らんけど。」
補足2:この記事に関する年表
詳細な年表を見る
年 | 月日 | 出来事 | 関連する人物・組織 |
---|---|---|---|
2004年 | 不明 | MapReduceに関する論文「MapReduce: Simplified Data Processing on Large Clusters」が発表される。 | ジェフリー・ディーン、サンジェイ・ゲマワット(Googleエンジニア) |
不明 | MapReduceに触発され、オープンソース検索エンジン「Nutch」の基盤としてHadoopの概念が誕生。 | ダグ・カッティング、マイク・カファレラ | |
2007年 | 不明 | Facebookが大規模データ分析のためにHadoopの導入を開始。 | |
2008年 | 不明 | FacebookがHadoopを用いて2500台のコンピュータ並行処理を実現。 | |
不明 | Amazonが購入記録のパターン分析にHadoopを活用し始める。 | Amazon | |
不明 | LinkedInが「もしかして知り合い?」サービスにHadoopを活用し始める。 | ||
不明 | Yahoo!がスパムフィルタリングや広告トレンド分析にHadoopを活用し始める。 | Yahoo! | |
2009年 | 不明 | サウジアラビアにキング・アブドゥッラー科学技術大学(KAUST)が創立。 | - |
2014年 | 不明 | トリップアドバイザーが旅行者が選ぶ世界の都市ランキングを発表。 | トリップアドバイザー |
秋 | 東京大学がedXに参加し、大規模オンライン講座(MOOC)の配信を開始。 | 東京大学、edX | |
2015年 | 9月 | Facebookのマーク・ザッカーバーグが「Dislike」ボタンを導入しない方針を公表。 | マーク・ザッカーバーグ(Facebook) |
2016年 | 2月24日 | Facebookが世界のユーザー向けに多様なリアクションボタンを拡大導入。 | |
2019年 | 不明 | Twitter共同創業者のジャック・ドーシーが、Twitterの分散型SNSプロトコル開発プロジェクト「Bluesky」の立ち上げを発表。 | ジャック・ドーシー |
2021年 | 不明 | Bluesky PBCが独立した会社として設立され、ATプロトコル開発が本格化。 | Bluesky PBC |
2022年 | 10月 | イーロン・マスクによるTwitter買収が完了。Twitterは「X」へと名称変更され、運営方針が急変。モデレーション緩和やヘイトスピーチ増加が始まる。 | イーロン・マスク、X(旧Twitter) |
2023年 | 2月 | Blueskyが招待制ベータ版を公開。Xからのユーザー流入が始まる。 | Bluesky |
2023年 | 3月〜 | Blueskyの招待コードが希少価値を持ち、限定的なコミュニティが拡大。 | Bluesky |
2023年 | 後半 | Xの混乱が継続し、Blueskyへの関心が一段と高まる。 | X、Bluesky |
2024年 | 1月 | ドナルド・トランプの再選が現実味を帯びる中で、多くの新規登録者がBlueskyに流入し、アカウント数が3,000万を突破。 | Bluesky、ドナルド・トランプ |
2024年 | 2月上旬 | Blueskyが招待制を廃止し、一般公開を開始。アカウント数がさらに増加。 | Bluesky |
2024年 | 5月頃 | Blueskyのアカウント数が約3,650万に達するも、ユニークポスターと投稿のエンゲージメントが減少傾向にあり、本論文の筆者らが「空虚さ」を感じ始める。 | Bluesky、アレックス・カーシュナー、ニティッシュ・パーワ |
8月 | Xが世界広告主連盟(WFA)と加盟企業4社を相手に、反トラスト法違反で訴訟を提起。これを受けてGARMの活動が停止。 | X、世界広告主連盟(WFA)、GARM | |
2024年 | 12月 | Xがインターパブリック・グループとの協議でオムニコム・グループ買収問題に言及、新たな年間契約を締結。 | X、インターパブリック・グループ |
12月 | Xが大手電気通信企業のベライゾン・コミュニケーションズに対し、広告費を費やさないと訴訟すると警告。ベライゾンは2025年に1000万ドルの広告費を約束。 | X、ベライゾン・コミュニケーションズ | |
12月 | フランスの広告代理店ピュブリシス・グループがXへの投資額を増額することで合意。 | X、ピュブリシス・グループ | |
2025年 | 2月 | Xが要求を拒否したPinterestとおもちゃメーカーのレゴを訴訟対象に加える。 | X、Pinterest、レゴ |
22世紀(想定) | - | コリイ・ドクトロウのSF『マジック・キングダムで落ちぶれて』に、評判を基にした通貨「ウッフィー」が登場する社会が描かれる。 | コリイ・ドクトロウ |
補足3:潜在的読者のために
この記事につけるべきキャッチーなタイトル案
- Blueskyの憂鬱:なぜ「青い空」は空虚なのか?ユーザーは増えたのに…
- Twitterの幻影を追うな!Blueskyが本当に乗り越えるべき壁とは?
- 「青い空」の向こうに広がる空虚:Blueskyが抱える孤独の真実と未来
- Xの代替、その先へ:Blueskyは「楽しくない」のか?本質的な課題を徹底分析
- リベラルバブルとユーモアの死:Blueskyの病根を探り、活性化への道を提言
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Blueskyはなぜ空虚に感じる?ユーザー増でも活気失速の背景を深掘り。真面目すぎる「リベラルバブル」に疲弊?X代替SNSの課題を分析し、ユーモアと多様性不足を指摘。あなたのBluesky体験は?
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補足4:一人ノリツッコミ
「なぁ、ブルースキーってユーザー数増えてるのに、みんな『なんか寂しいなぁ…』って言うてるらしいで?😂 それって、増えたユーザーが全員幽霊アカウントかAIやったんか!? …って、いやいや、そんなホラーな話ちゃうやろ!😱 論文読んだら、どうやらX(旧Twitter)がえらいことになって、リベラルな人らがわーっと逃げてきたけど、みんな政治の話ばっかして、ジョークとかアホな話が全然ないから、結果的に真面目すぎて息苦しいって話やん!🤦♂️ 健全なSNSって、真面目な議論と、アホなミームと、猫の動画がバランス良くあってこそやろがい!🐈️ もっと気楽に、ボケたりツッコんだりできる場所にせぇへんかったら、ホンマに誰もいなくなるで!もう、青い蝶どころか、ただの青い紙切れになっちゃうやん!🦋➡️📄」
補足5:大喜利
ブルースキーの公式キャラ「ブルースカイくん」が、最近元気がありません。その理由を教えてください。
- 「みんな、政治の話ばかりで、僕の可愛い青い蝶のイラストに誰も触れてくれないんだ…。」🦋💬
- 「X(旧Twitter)からの難民が押し寄せてきたのはいいんだけど、みんな疲れ切った顔してるから、僕まで悲しくなっちゃうよ…。」😥☔️
- 「ジョークを言っても、みんな『それは不謹慎では?』って真顔で言ってくるから、もう何が面白いのか分からなくなっちゃった…。」🎭❌
- 「僕の体は分散型なのに、みんな考え方が一点集中型で、体がバラバラになりそうなんだ…。」😵💫🌀
- 「『ユーザー数は増えたのに空虚』って言われるのが、一番ツラいんだ。僕の存在意義って…?」😭📉
補足6:ネットの反応と反論
なんJ民(なんでも実況J)
-
**コメント:** 「ブルースキー?なにそれ?聞いたことねーわ。結局ツイッターの代わりなんか誰もできねーんだよ。イーロンがなんだかんだ言っても、結局あそこが一番人がいるんだわ。ブルースキーとかいう意識高い系避難所、どーせすぐオワコンやろw」
反論
「誰もできないというのは早計です。X(旧Twitter)が広告収益や信頼性を失い、ユーザー離れが加速しているのは事実であり、イーロン・マスク氏の強引な経営手法もそれが如実に表れています。イーロン氏がどうあれ、ヘイトや誤情報が蔓延する場が『一番人がいる』ことが果たして健全なのでしょうか? Blueskyは分散型SNSという新たなアプローチで、より健全な言論空間を目指しています。その挑戦を頭ごなしに否定するのは、思考停止に他なりません。新しいSNSの登場は、多様な選択肢を提供し、既存のプラットフォームに改善を促す意味でも重要です。」
ケンモメン(ニュース速報(嫌儲)板住民)
-
**コメント:** 「ブルースキーがリベラルのバブルって、そりゃそうだろ。Twitterから逃げてきたような連中が、自分たちの都合のいい情報と意見だけで固まってんだから。結局、どのSNSも資本主義の犬だし、情報の分断は避けられない。意識高い系リベラルの自己満足空間。情弱が政治の話してるの見てて吐き気するわ。」
反論
「『リベラルのバブル』という指摘は論文でもなされており、その問題意識は共有できます。しかし、それはプラットフォームの宿命ではなく、あくまで現状分析の一つです。論文は、そのバブルをどう解消し、多様性を育むかという課題意識を提起しています。『資本主義の犬』という批判はSNS全般に言えることであり、Blueskyはオープンプロトコルや分散性を志向することで、中央集権的なプラットフォームが抱える問題を乗り越えようとしています。情報の分断を嘆くなら、それをどう打破するか議論するべきではないでしょうか。自己満足空間と断じるのではなく、なぜそうなったのか、どうすれば改善できるのかを考えることが重要です。」
ツイフェミ(Twitterフェミニスト)
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**コメント:** 「Blueskyが『真面目すぎる』って言うけど、Twitterのミソジニーやヘイトスピーチに比べたらよっぽどマシ。女性が安心して発言できる空間は貴重だし、それが『真面目』に見えるなら、それは男性中心の社会がどれだけくだらないジョークに満ちているかの証明よ。この論文も、結局男性の『楽しさ』の基準で語ってるだけでは?」
反論
「論文は『ユーモアと多様性の不足』を指摘しており、特定の層の『楽しさ』の基準を押し付けているわけではありません。むしろ、様々な興味を持つ人が交流できる場の必要性を訴えています。健全な議論とユーモアは両立可能であり、ハラスメント対策は必須ですが、それと引き換えに言論空間全体が硬直化することは望ましくありません。誰もが安心して、かつ多様な話題で交流できるプラットフォームを目指すことは、フェミニズムの視点からも重要なはずです。論文は、安全性を確保しつつも、より広範なユーザーが参加できるような活気ある空間の創造を提言しています。」
爆サイ民(地域密着型匿名掲示板)
- **コメント:** 「Blueskyとか、どうせ監視されてるんだろ?匿名でホンネ言えないSNSなんて意味ねーよ。政治の話も、あっち系の意見しか聞けねーんなら、最初から見ねーわ。陰謀論とか、言論統制されてるから盛り上がらねぇんだよ。もっと自由に発言できるとこ作れよ。」
Reddit (r/Bluesky, r/technology)
-
**コメント:** "Interesting analysis, but it misses the core technical implications of AT Protocol. The fediverse model and custom feeds *should* theoretically foster diversity, not limit it. The problem might be less about the protocol and more about initial community bootstrapping and UX for content discovery. We need better tools for curating and sharing diverse feeds, and incentives for creators beyond just 'not being on X'."
反論
"The point about AT Protocol's potential for diversity via custom feeds is valid and indeed a key strength. However, the *actual* user behavior and content trends observed by the authors suggest that theoretical potential isn't translating into practical diversity yet. This highlights a crucial area for further research: how to design UX and incentivize user behavior to truly leverage the technical advantages of decentralization. The paper points to human and cultural factors (like a predisposition to serious political discourse) that override purely technical capabilities in the early stages of a platform's life. The challenge is bridging the gap between technical capability and human interaction."
Hacker News
-
**コメント:** "The article correctly identifies the 'echo chamber' issue, but attributes it too much to 'liberal bias' rather than the fundamental problem of network effects and content algorithm design. If Bluesky isn't algorithmically pushing political content, then the issue lies with user-generated content and the lack of engagement for non-political posts. How can the AT Protocol incentivize valuable, diverse content creation without becoming X? That's the real engineering and product challenge."
反論
"While network effects and content algorithm design are critical, the article *does* touch upon the 'lack of engagement for non-political posts' and the 'incentives' problem. It argues that even without a biased algorithm, user behavior (driven by macro-events like Trump's re-election) can shape the platform's content. The engineering challenge is indeed to build a system that encourages diverse content, but it's equally a social engineering and community management challenge. The AT Protocol offers flexibility, but how that flexibility is utilized by *users* and *feed creators* to foster diversity is the next frontier, not just the 'lack of algorithm pushing'."
目黒孝二風書評
-
**コメント:** 「ブルースキー。その青い空に広がるは、無限の可能性か、それとも虚ろな寂寥か。ユーザー数は増えど、魂は満たされず、言葉は重く、笑いは薄い。かつてツイッターという名の混沌が、人間の集合的無意識を映し出す鏡であったとすれば、ブルースキーは、その鏡がリベラルという名のフィルターを通され、研ぎ澄まされすぎた結果、見るべきものを見失った青ざめた顔であろう。この論文は、そのフィルターの傷を深く抉り、現代人が情報社会に求める『真実』と『慰め』の、両者の間で揺れ動く心の様を鮮やかに描き出す。私たちは、果たしてどこまで『現実』の重さに耐え、どこまで『虚構』の軽さに身を任せるべきなのか。青い蝶は、未だその行く先を知らない。」
反論
「詩的な表現で本質を捉えようとする姿勢は評価できます。しかし、論文は単なる文学的な感傷ではなく、具体的なユーザー動向やプラットフォームの課題を指摘し、改善策まで提示しています。確かに『真実』と『慰め』の間の葛藤は本論文の深層テーマではありますが、それは単なる『フィルターの傷』として片付けられるものではありません。ユーザー自身が形成する文化、プラットフォームの設計思想、そしてその中での言論のあり方という、より具体的な社会学的・情報学的な側面が深く関わっています。青い蝶の行く先は、まさに我々ユーザーと運営側の共同作業にかかっており、本論文はそのための道しるべを提供していると言えるでしょう。」
補足7:学習ドリル
高校生向けの4択クイズ
問題1: この論文によると、Blueskyのユーザー数は増えているのに、なぜ「空虚に感じる」と言われているのでしょうか?
- ユーザー数が少なすぎるから
- サーバーの調子が悪くて、投稿が見にくいから
- 真面目な政治の話が多く、ユーモアや多様な話題が少ないと感じられているから
- アカウント作成が難しすぎるから
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正解: c)
問題2: Blueskyが活気を失っていると感じる主な原因として、論文で指摘されているユーザー層の偏りとは何ですか?
- スポーツ好きばかりが集まっている
- リベラルな政治的傾向を持つユーザーが多い
- 有名人ばかりがいて、一般人が少ない
- アジア系のユーザーが極端に少ない
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正解: b)
問題3: 論文の筆者たちが、X(旧Twitter)と比較してBlueskyに「期待している点」は何ですか?
- Xよりも早く新しい機能が追加されること
- ユーザーが料金を支払って投稿する仕組みがないこと
- 誤情報やヘイトスピーチが少なく、より健全な対話の場となる可能性
- 有名人がたくさんいるので、直接交流できる機会が多いこと
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正解: c)
問題4: 論文では、Blueskyを「小さなリベラルアーツカレッジ」に例えています。これは、どのような状況を表していると考えられますか?
- 大学の授業のように、専門的な知識の交流が盛んである
- 学生が少なく、特定の分野に特化した学びが中心である
- 大規模な大学のように、様々な学部があり多様な交流がある
- 卒業生が社会で活躍しているから
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正解: b)
大学生向けのレポート課題
- 本記事で指摘されているBlueskyの「空虚さ」は、SNSが「情報伝達の効率性」と「コミュニティの活気」の間で抱えるジレンマをどのように示唆していますか? 具体的な事例を挙げながら論じなさい。
- 「評判の社会」(レピュテーション・エコノミー)が現代社会、特にデジタルプラットフォームにおいてどのような影響を与えているか、本記事の内容を参考に具体例を複数挙げ、その功罪について考察しなさい。また、「評価の社会」への転換が提唱される背景とその実現可能性について、自身の見解を述べなさい。
- ATプロトコルに代表される分散型SNSが、中央集権型SNSが抱える問題を克服し、新たな「デジタル上の広場」となるためには、どのような技術的・社会的課題を乗り越える必要があると考えられますか。本記事の記述に加え、自身で情報収集を行い、多角的に考察しなさい。
- SNSが「民主主義の危機」において果たすべき役割について、本記事の「国民が実際に組織し、行動するための場になることはできないし、そうすべきではない」という主張を踏まえ、あなたの意見を論じなさい。SNSの限界と可能性について、自身の具体的な経験や他の情報源を交えながら考察してください。
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