#Instagramの精神生理学–短時間のSNS利用は食欲の増進と深い没入を起こし,中止は嫌悪感のある離脱を起こす #三06
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0747563225000445
Instagramの使用は、短期間で食欲を刺激し、注意深く没入させる効果がある一方で、使用を中止すると嫌悪感を引き起こすことが示されています。本研究では、54人のInstagramユーザーを対象に、SNS使用の生理的影響を探索しました。心拍数や皮膚コンダクタンス(GSR)を使用して、SNSへの曝露と中止時の生理的反応を測定しました。結果として、Instagram使用中は心拍数の低下とGSRの増加が見られ、これは深い注意や興奮状態を示しています。また、中止後には心拍数とGSRの増加が観察され、ストレスや緊張感が高まることが報告されました。ただし、これらの生理的変化は問題のあるユーザーと健康なユーザーを明確に区別するものではないとされました。 SNSが日常生活の重要な一部である中、ユーザーは1日に何度もアカウントをチェックする習慣があります。この研究は、SNSの強迫的な使用行動が他の心理的または行動的依存症に似た特徴を持つかどうかを検討しています。さらに、SNSの使用が心理的健康に及ぼす影響について理解を深めるため、使用時の生理的反応を調べる必要性が浮き彫りになりました。依存症の存在が公式に認定されていないSNS使用について、どのように定義され、扱われるべきかを考えさせられる内容です。このように、SNSの使用がもたらす心理的および生理的影響について、さらなる研究が求められています。
はい、承知いたしました。論文「Instagramの精神生理学 – 短時間のInstagram利用は食欲の興奮と注意深い没入を引き起こし、中止は嫌悪感のある離脱を引き起こす」について、さらに詳しくご説明します。
論文の背景と研究の意義
現代社会において、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)、特にInstagramは、私たちの日常生活に深く浸透しています。多くの人が1日に何度もアカウントをチェックし、1回の利用時間も比較的短い傾向にあります。このような断続的かつ短時間のSNS利用が、私たちの心身にどのような影響を与えているのか、特に精神生理学的な側面からの研究はまだ十分ではありませんでした。
本研究は、日常的なSNS利用パターンを模倣し、短時間のInstagram利用とその後の利用中止が、ユーザーの生理学的・心理的な状態にどのような変化をもたらすのかを明らかにすることを目的としています。特に、問題のあるSNS利用行動を示すユーザーとそうでないユーザーで、これらの変化に違いがあるのかどうかを検証しました。
研究方法の詳細
本研究では、参加者を以下の2つのグループに分けました。
- 問題のあるSNS利用群(高群): 問題のあるSNS利用傾向が高いと評価されたグループ
- 問題のないSNS利用群(低群): 問題のあるSNS利用傾向が低いと評価されたグループ
実験は、以下の3つの期間で構成され、各期間15分間で行われました。
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ベースライン期間:
- 目的: SNSを利用していない状態での生理学的・心理的なベースラインを測定するため。
- 内容: 参加者は、研究者が提供した別のスマートフォンで、感情的な反応を引き起こしにくい中立的なニュース記事(商業超音速飛行機や野生バイソンに関する記事など)を読みました。SNSアプリや他のウェブサイトへのアクセスは禁止されました。
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Instagram曝露期間:
- 目的: 短時間のInstagram利用が、生理学的・心理的な状態に及ぼす影響を測定するため。
- 内容: 参加者は、自身のスマートフォンでInstagramアプリを起動し、15分間自由にInstagramを利用しました。普段Instagramを利用するのと同じように過ごすよう指示されました。
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Instagram中止期間:
- 目的: Instagramの利用を強制的に中止した後の、生理学的・心理的な変化(離脱反応)を測定するため。
- 内容: 参加者は再びスマートフォンで中立的なニュース記事を読みました。ただし、Instagramを利用したいという衝動を誘発するために、研究者は参加者のスマートフォンに3分間隔でInstagramの通知メッセージを送信しました。参加者は自分のスマートフォンに触れることは許可されず、SNS利用を我慢する状況が作られました。
生理学的指標と心理的指標:
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生理学的指標:
- 心拍数 (ECG): 心臓の電気的な活動を記録し、心臓が1分間に拍動する回数を測定。
- 皮膚コンダクタンス反応 (GSR): 皮膚の電気伝導度を測定。発汗量の変化を反映し、感情的な覚醒度や自律神経系の活動を示す指標となります。
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心理的指標:
- 状態不安: 現在の不安の程度を単一項目で評価(例: 「今、不安を感じていますか?」)。
- ストレス: 現在のストレスの程度を単一項目で評価(例: 「今、ストレスを感じていますか?」)。
- SNSへの渇望: 現在SNSを利用したい欲求の程度を単一項目で評価(例: 「今、SNSを使いたい/チェックしたいですか?」)。
これらの心理的指標は、各実験期間の直前と直後に評価されました。
主な結果の詳細な説明
本研究で得られた主な結果を、生理学的指標と心理的指標に分けて、さらに詳しく解説します。
1. 生理学的指標の結果:
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心拍数:
- Instagram曝露期間中、心拍数はベースライン期間と比較して有意に低下しました。これは、Instagram利用によって心臓活動が穏やかになることを示唆しています。
- Instagram中止期間に入ると、心拍数はInstagram曝露期間と比較して有意に増加しました。これは、Instagram利用を中断したことで、心臓活動が活発になることを示唆しています。
- 重要な点として、これらの心拍数の変化は、問題のあるSNS利用群(高群)と問題のないSNS利用群(低群)の間で差が見られませんでした。 つまり、Instagram利用による心拍数の変化は、SNS利用の依存度に関わらず、一般的な現象であると考えられます。
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皮膚コンダクタンス反応 (GSR):
- Instagram曝露期間とInstagram中止期間の両方で、GSRはベースライン期間と比較して有意に増加しました。これは、Instagram利用中および利用中止中に、感情的な覚醒水準が高まることを示唆しています。
- Instagram中止期間では、GSRはInstagram曝露期間よりもさらに有意に増加しました。これは、Instagram利用を中断した時の方が、利用している時よりも感情的な覚醒水準がさらに高まることを示唆しています。
- 心拍数と同様に、GSRの変化も問題のあるSNS利用群による差は見られませんでした。 つまり、Instagram利用によるGSRの変化も、SNS利用の依存度に関わらず、一般的な現象であると考えられます。
2. 心理的指標の結果:
- 不安、ストレス、SNSへの渇望:
- Instagram曝露後、参加者全体の不安、ストレス、SNSへの渇望のレベルは、実験開始前と比較して有意に上昇しました。これは、短時間のInstagram利用であっても、心理的な状態に変化をもたらすことを示唆しています。
- 問題のあるSNS利用群(高群)と問題のないSNS利用群(低群)の間で、これらの心理的指標の変化に明確な差は見られませんでした。ただし、ストレスに関しては、問題のあるSNS利用群の方が、Instagram中止後のストレス増加が大きい傾向が見られました(統計的に有意な差とまでは言えず)。
- 興味深い点として、SNSへの渇望の変化と、問題のあるSNS利用傾向の間には、有意な相関関係が見られませんでした。 つまり、Instagram利用によって渇望感が高まることは、SNS依存の程度とは直接的に結びつかない可能性があります。
考察と解釈の詳細
本研究の結果から、以下の2つの主要な解釈が導き出されました。
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Instagram利用中の「食欲性覚醒と注意深い没入」:
- Instagram曝露期間中のGSRの増加は、Instagramコンテンツ(魅力的な画像や動画など)に対する食欲性覚醒の高まりを示唆します。つまり、Instagramを見ることで、ポジティブな感情や報酬期待が高まっていると考えられます。
- 一方、心拍数の低下は、注意深い没入状態を示唆します。人は新しい刺激や重要な刺激に注意を向けると心拍数が低下する「方向付け反射」という現象が知られています。Instagramの魅力的なコンテンツに注意が集中し、深く没入している状態が心拍数の低下として現れた可能性があります。
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Instagram中止時の「嫌悪性覚醒」:
- Instagram中止期間中のGSRと心拍数の増加は、嫌悪性覚醒の高まりを示唆します。これは、Instagram利用を強制的に中断されたことによるストレスや不快感、つまり「離脱」のような状態を表していると考えられます。
- 特に、GSRの増加は、不安やストレスなどのネガティブな感情と関連付けられることが知られています。
問題のあるSNS利用との関連性についての考察:
本研究の最も重要な発見の一つは、生理学的・心理的な変化が、問題のあるSNS利用の程度によって異ならなかったことです。これは、Instagramの利用による食欲性・嫌悪性覚醒は、SNS依存症のような特定の問題を抱えている人に限らず、一般的なInstagram利用者にも起こりうる普遍的な現象であることを示唆しています。
この結果は、「SNS中毒」という概念に対して、慎重な解釈を促すものです。本研究からは、短時間のInstagram利用であっても、生理的・心理的な変化が生じることが示されましたが、それは必ずしも「中毒」や「依存症」といった病的な状態を意味するわけではありません。むしろ、SNSが持つ魅力と、利用しないことによる不快感が、多くの人に共通して経験される可能性を示唆しています。
研究の限界と今後の展望
本研究には、いくつかの限界点も指摘されています。
- 対象者: 学生集団に限定されており、他の年齢層や職業の人々にも同様の結果が当てはまるかは不明です。
- 問題のあるSNS利用の定義: 問題のあるSNS利用の程度を中央値で二分したため、臨床的な「SNS依存症」患者を対象としたわけではありません。
- 交絡因子: 参加者の精神疾患の有無や、他の依存症の併存などを統制していません。
- 評価対象のSNS: Instagramのみを対象としており、他のSNSプラットフォームでは結果が異なる可能性があります。
- SNS利用内容: 参加者がどのようなコンテンツを閲覧していたか、利用スタイル(積極的/受動的)などを詳細に評価していません。
- 心理指標の測定: 単一項目の主観的な評価尺度を使用しており、より客観的な測定方法や、多面的な感情・動機づけ尺度を用いることが望ましいです。
- Instagram利用時間: 問題のあるSNS利用群間で、Instagramの平均利用時間に差が見られませんでした。より詳細な利用行動の分析が必要です。
今後の研究では、これらの限界点を踏まえ、より多様な対象者層、臨床サンプル、他のSNSプラットフォーム、より詳細な利用行動の評価、客観的な測定方法などを導入することで、SNS利用の精神生理学的影響に関する理解をさらに深めることが期待されます。
結論と意義の再確認
本研究は、短時間のInstagram利用が、一般的なInstagram利用者において、食欲性覚醒と注意深い没入、そして嫌悪性覚醒という明確な精神生理学的変化を引き起こすことを明らかにしました。これらの変化は、SNSの利用頻度や依存度に関わらず、多くの人に共通して起こりうる現象である可能性を示唆しています。
本研究の知見は、SNSの魅力と影響力を理解する上で重要な意味を持ちます。SNSは、短時間であっても私たちの心身に変化をもたらしうる強力なツールであり、その利用には注意が必要であることを改めて認識する必要があります。また、「SNS中毒」という言葉で一括りにするのではなく、SNS利用に伴う様々な心理的・生理的な側面を詳細に検討していくことの重要性を示唆しています。
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