アスファルトの錬金術:移動の自由がいかにして金融商品と化したか 🚗💸 #王28 #1956連邦補助高速道路法とDDアイゼンハワー_昭和米国史ざっくり解説

アスファルトの錬金術:移動の自由がいかにして金融商品と化したか 🚗💸

The Alchemy of Asphalt: How Mobility Became a Tradable Asset

📕 本書の目的と構成

ようこそ、アスファルトの下に埋められた「お金」と「自由」の物語へ。本書は、一見すると地味で退屈な「道路の維持管理費」や「有料道路」というテーマを扱いますが、その実態は、私たちの生活根幹を揺るがす「資本主義の新たなフロンティア」のお話です。

2025年、アメリカ・インディアナ州で起きた「ある決断」を出発点に、私たちは以下のことを学びます。
① なぜ「無料の道路」は持続不可能なのか。
② 電気自動車(EV)がもたらす財政的ジレンマとは何か。
③ テクノロジーはいかにして私たちを監視し、移動に値段をつけるのか。
④ そして、公道という「公共財」が金融商品として切り売りされる未来について。

専門知識は不要です。必要なのは、少しの好奇心と、日々の通勤・通学に対する疑問だけ。さあ、シートベルトを締めてください。メーターはすでに回っています。

📝 要約

本書は、1956年の連邦補助高速道路法によって確立された「ガソリン税による道路維持モデル」の崩壊と、それに代わる新たなパラダイム「監視型デジタル課金」への移行を詳述する。EV普及による税収減、インフラ老朽化、そして財政難を背景に、道路はいかにして「公共財」から「金融資産」へと変貌を遂げたのか。インディアナ州の事例を皮切りに、走行距離課税(VMT)に伴うプライバシー侵害のリスク、ダイナミック・プライシングによる社会的排除(モビリティ・アパルトヘイト)、そしてインフラファンドによる公的資産の「略奪」的構造を、多角的な視点から批判的に分析する。

👥 登場人物紹介
  • マイク・ブラウン (Mike Braun)
    インディアナ州知事 / 元米国上院議員 / 年齢: 71歳 (2025年時点)
    本物語のキーパーソン。保守的な共和党員でありながら、「背に腹は代えられない」として禁断の「既存高速道路有料化」に踏み切った政治家。彼の決断は、全米の道路行政におけるドミノ倒しの最初の一枚となる。
  • ロバート・プール (Robert Poole)
    リーズン財団 (Reason Foundation) 交通政策ディレクター / 思想家
    リバタリアン(自由至上主義者)のシンクタンクに所属。「道路も市場原理で運営されるべきだ」と主張し、長年にわたり民営化とロードプライシングを理論的に支えてきた、いわば「有料化の設計者」。
  • I-80/90 (Indiana Toll Road)
    インディアナ有料道路 / 通称: The Main Street of the Midwest
    シカゴと東海岸を結ぶ物流の大動脈。かつて破綻し、民営化され、そして今また新たな課金実験の舞台となる「物言わぬコンクリートの巨人」。
🕰 歴史的位置づけ

20世紀半ば、アイゼンハワー大統領の下で建設された「インターステート・ハイウェイ(州間高速道路網)」は、アメリカの繁栄と自由の象徴でした。それは「ガソリン税」という、利用者が間接的に負担するシステムによって維持されてきました。
しかし2025年、この「1956年体制」は完全に機能不全に陥りました。本書で語られる出来事は、単なる地方のニュースではなく、「自動車社会(モータリゼーション)の第2章」の始まりです。それは、化石燃料と匿名性に支えられた「無制限の移動」の時代が終わり、電力とデータ監視に管理された「最適化された移動」の時代への転換点を意味します。

🔍 疑問点・多角的視点
  • 代替交通機関(鉄道やバス)がない地域での有料化は、事実上の「移動制限」ではないか?
  • 走行距離を測る技術は、政府による国民監視につながらないか?
  • 道路を民営化することで、利益優先の運営になり、安全性や公共性が損なわれないか?
  • 「混雑時の値上げ」は、富裕層だけを優遇する差別的な政策ではないか?

第一部 崩壊の序曲:1956年体制の緩慢な死

(Prelude to Ruin: The Slow Death of the '56 Regime)

かつてアメリカには夢がありました。どこまでも続く地平線、V8エンジンの鼓動、そして財布の中身を気にせずに走れる「フリーウェイ」。しかし、その夢は無料(タダ)ではありませんでした。私たちは「ガソリン税」という魔法のコインでそれを購っていたのです。第一部では、その魔法がどのようにして解け、錆びついた鉄橋と穴だらけの道路だけが残されたのか、その崩壊のプロセスを追います。

第1章 アイゼンハワーの遺言とケインズの亡霊

サブタイトル:古き良きコンクリート、今はただの赤字シート 📉

(Old Concrete, Just a Balance Sheet)

想像してみてください。あなたが友人と割り勘で飲み会をしている場面を。ルールは簡単、「飲んだ量に応じて払う」ではなく、「お通し代として一律払う」でもなく、「飲んだボトルの本数で割る」という、なんとなく公平っぽいルールでした。
1956年、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領が署名した「連邦補助高速道路法 (Federal Aid Highway Act)」は、まさにこの「割り勘」のルールを国家規模で定めました。それが「高速道路信託基金 (Highway Trust Fund)」です。
仕組みはシンプルかつ天才的でした。

  • 車が走るにはガソリンがいる。
  • たくさん走る車(=道路を摩耗させる車)は、たくさんガソリンを使う。
  • だから、ガソリン税を徴収して道路の修理代に充てれば、実質的な「受益者負担(User Pays Principle)」になる。

このシステムは、完璧に見えました。道路を使えば使うほど、自然と道路維持のための資金がプールされていく。まるで永久機関です。これにより、アメリカ全土を網の目のように結ぶインターステート・ハイウェイ(州間高速道路)が建設され、郊外に住んで都市へ通勤するという「アメリカン・ドリーム」のライフスタイルが可能になりました。
しかし、このシステムには致命的なバグが埋め込まれていました。それは「インフレ」「技術革新」です。

連邦ガソリン税は、1993年以来、1ガロンあたり18.4セントに固定されています。30年以上もの間、一度も値上げされていません。考えてみてください。1993年の1ドルと、2025年の1ドルの価値は同じでしょうか? コンクリートの価格、アスファルトの材料費、労働者の賃金、それらすべてが上昇し続けました。しかし、収入源である税率は「固定」されたままです。
これは、給料が30年間変わらないのに、家賃と食費だけが倍になり続けたようなものです。破綻するのは時間の問題でした。

さらに悪いことに、政治家たちは「増税」という言葉を極度に恐れました。「ガソリン税を上げる」と言った瞬間に選挙で負けるからです。その結果、足りない分は一般財源(所得税など)から補填されるようになり、「受益者負担」の原則は崩れ去りました。今や、車に乗らないおばあちゃんの税金が、巨大なトラックが走る道路の穴埋めに使われているのです。
「フリーウェイ(無料の道路)」という言葉は、もはや皮肉にしか聞こえません。それは「無料」なのではなく、「ツケを将来に回している」だけなのですから。

☕ 筆者のコーヒーブレイク:18.4セントの重み

私が初めてアメリカでレンタカーを借りたとき、ガソリンスタンドの安さに驚愕しました。水より安いんじゃないかと思ったほどです。あの18.4セント(約20〜30円)という税額は、日本(約53.8円+消費税)に比べれば微々たるもの。でも、その「安さ」がアメリカの広大な国土と物流を支えていたのも事実。先日、インディアナ州のボロボロの橋を渡ったとき、タイヤが「ガタン!」と悲鳴を上げました。その音はまるで、「もっと金をくれ!」と道路が叫んでいるようでしたね。安さの代償は、サスペンションの修理代として結局私たちが払う羽目になるのです。


第2章 EVという名のトロイの木馬

サブタイトル:静かなる車、税収への破壊者 🔋

(Silent Cars, Revenue Marrs)

第1章でお話しした「ガソリン税システム」にとどめを刺したのが、皮肉にも環境にとっての救世主、電気自動車 (Electric Vehicle, EV) です。
EVはガソリンを一滴も使いません。つまり、どれだけ道路を走り回っても、どれだけタイヤでアスファルトを削っても、道路維持費(ガソリン税)を1セントも払わないのです。
経済学ではこれを「フリーライダー(ただ乗り)問題」と呼びます。

もちろん、EV所有者は悪くありません。「環境に良いことをしている」という自負がありますし、政府も補助金を出して購入を推奨してきました。しかし、道路管理者(州政府)からすれば、EVは悪夢です。
特に問題なのは、EVが「重い」ことです。バッテリーパックの重量のため、同クラスのガソリン車よりも20〜30%ほど重くなります。道路へのダメージは、車両重量の「4乗」に比例して増大するという工学的な法則(4乗則)があります。つまり、少し重いだけで、道路を壊す力は倍増するのです。
「重い車が税金を払わずに道路を壊していく」。この矛盾が、財政破綻を加速させました。

そこで登場するのが、インディアナ州の決断です。2025年、マイク・ブラウン知事は、これまでのタブーを破りました。「新しい道路を作るために料金を取る」のではなく、「今ある普通の高速道路を有料化する」という法案にサインしたのです。
これは画期的かつ劇的な転換です。これまで「公共財」として税金で賄われていた既存インフラが、利用料を支払わなければ通れない「商品」へと変わる瞬間でした。

ブラウン知事の論理はこうです。
「ガソリン税はもう当てにならない。ならば、電気だろうがガソリンだろうが、走った分だけお金を取るしかない(Mileage-based User Fee)。それが公平だ」
理屈は通っています。しかし、インディアナ州の広大なトウモロコシ畑の真ん中で、車以外の移動手段を持たない住民にとって、これは実質的な「生存税」の導入に等しいのです。

🌽 筆者のコーヒーブレイク:テスラとトラクター

EVといえばシリコンバレーのハイテクなイメージですが、インディアナの田舎道で見るEVピックアップトラック(サイバートラックやF-150 Lightning)は、まさに「実用」の塊です。彼らは農作業や仕事に使います。そんな彼らに「今日から道路代がかかるよ」と言ったらどうなるか。「環境にいい車を買えって言ったのはお前らだろ!」と怒るのも無理はありません。トロイの木馬の中に入っていたのは、ギリシャ兵ではなく「請求書」だったわけです。


第二部 監視の技術:アルゴリズムによる統治

(Techno-Governance: Ruled by the Algorithm)

道路を有料化するには、料金所が必要です。しかし、2025年の料金所に「おじさん」はいません。そこにあるのは、無数のカメラ、センサー、そして目に見えない電波です。第二部では、道路課金を実現するためのテクノロジーが、いかにして私たちのプライバシーを侵食し、移動そのものを管理・統制する道具(ツール)となり得るのか、その「便利さ」の裏側にある闇を覗き込みます。

第3章 EZPass、あるいは現代のパノプティコン

サブタイトル:見えない料金所、逃げ場のない尋問所 👁️

(Invisible Tolls, Inescapable Patrols)

ジェレミー・ベンサムが考案し、ミシェル・フーコーが権力のモデルとして論じた「パノプティコン(一望監視施設)」をご存知でしょうか。中央の塔から監視員がすべての囚人を監視できるが、囚人からは監視員が見えない監獄のことです。現代において、このパノプティコンはアスファルトの上に建設されました。
その名は「EZPass(イージーパス)」、あるいはナンバープレート読取装置(ALPR)です。

インディアナ州が導入しようとしている「走行距離課税 (VMT Fee: Vehicle Miles Traveled Fee)」を実現するには、行政は「誰が、いつ、どこを、何キロ走ったか」を正確に把握しなければなりません。
方法は主に2つあります。
1. ODメーター検査: 定期的に車の走行距離計を行政に申告する。アナログですが、改ざんや州外走行の区別が難しい。
2. GPS追跡・ビーコン: 車にGPS機器やスマホアプリを入れさせ、リアルタイムで走行データを送信させる。

効率的なのは圧倒的に後者です。しかし、これは何を意味するでしょうか? 政府(および委託された民間企業)が、あなたの行動履歴をすべて把握するということです。「毎週火曜日の夜に精神科に通っている」「競合他社のオフィスを頻繁に訪れている」「不倫相手の家の前に車が停まっている」……。
これらすべての「移動データ」は、課金のために収集され、そして蓄積されます。

記事中の議論でも、ハッカーたちが懸念を示していました。
"Great, more surveillance."(素晴らしい、監視が増えるわけだ)
リバタリアン(自由主義者)にとって、これは悪夢です。道路の自由を守るための課金が、結果としてプライバシーという別の自由を殺すのです。さらに、このデータは「匿名化」されて販売される可能性があります。保険会社が「あなたの運転は荒いから保険料を上げます」と言ってきたり、マーケティング会社が「このルートを通る人にはハンバーガーの広告を出そう」と考えたり。私たちの移動は、もはや単なる移動ではなく、採掘されるべき「データ資源」となったのです。

🕵️ 筆者のコーヒーブレイク:私のEZPass履歴

ある日、EZPassの利用履歴をダウンロードしてみました。そこには、私が忘れていた「あの日、どこに行ったか」が秒単位で記録されていました。背筋が寒くなりましたよ。もし私が犯罪者なら(違いますが)、このデータは完璧な証拠になります。逆に言えば、アリバイ作りにも使えますが…。便利さ(Toll boothで止まらなくていい)と引き換えに、私たちは「透明人間になる権利」を売り渡してしまったのかもしれません。


第4章 ダイナミック・プライシングの暴力

サブタイトル:金持ちは急行、貧者は徐行 ⏳

(Rich in the Fast Lane, Poor in the Rain)

「需要と供給に応じて価格を変える」。経済学の基本原理です。飛行機のチケットやホテルの宿泊費では当たり前のこの「ダイナミック・プライシング(変動料金制)」が、いま道路に持ち込まれています。
「混雑している朝8時の通行料は20ドル、空いている昼の2時は5ドルにします」
これにより、急ぎでない人は安い時間帯を選び、どうしても急ぐ人は高いお金を払ってスムーズに走る。理論上は、渋滞が解消され、全員がハッピーになるはずです(これを「混雑課金 (Congestion Pricing)」と呼びます)。

しかし、ここには重大な落とし穴があります。それは「需要の価格弾力性」の違いです。
裕福な弁護士にとって、20ドルの通行料は「時間を買うための端金」です。彼は喜んで支払うでしょう(これを「レクサス・レーン (Lexus Lanes)」と揶揄します)。
一方、最低賃金で働くシングルマザーにとってはどうでしょうか? 彼女は「高いから別の時間に行こう」と選べるでしょうか? いいえ、彼女のシフトは朝9時からです。遅刻すればクビになります。彼女にとって、高い通行料は「選択」ではなく「強制」です。あるいは、通行料を避けるために何時間もかけて下道を迂回し、睡眠時間を削るしかありません。

ダイナミック・プライシングは、経済効率性は高いものの、「社会的公平性 (Social Equity)」を著しく損なう危険性があります。道路という公共財において、「金を払える者だけが快適さを手に入れ、払えない者は排除される」という構造が正当化されてしまうのです。
インディアナ州のような車社会でこれを厳格に適用すれば、それは単なる渋滞対策を超えて、経済的階級による「移動の隔離(セグリゲーション)」を生み出しかねません。

🏎️ 筆者のコーヒーブレイク:空いているレーンの優越感

正直に告白しましょう。ロサンゼルスの渋滞で、隣の無料レーンが完全に止まっている横を、有料のエクスプレスレーンで時速100キロで駆け抜けたとき、私は強烈な優越感を感じました。「ああ、資本主義って素晴らしい!」と。でも、ふとバックミラーを見ると、古いセダンに乗った疲れ切った顔のドライバーと目が合いました(向こうは止まっているので)。その瞬間、自分が何かとても残酷なシステムの一部であることに気づかされたのです。お金で買える時間は、誰かの我慢の上に成り立っているのかもしれません。



第三部 インフラの金融化:公的資産の「略奪」と再梱包

(The Financialization: Looting and Repackaging Public Assets)

道路は誰のものでしょうか? 「みんなのもの(公共財)」という答えは、21世紀の金融市場においては正解ではありません。
第三部では、ウォール街の投資銀行やオーストラリアの巨大ファンドが、いかにして私たちの「通勤路」を魅力的な「金融商品」へと変え、自治体からその支配権を買い取っているのか、そのカラクリを暴きます。これは単なる民営化(Privatization)ではありません。これは公共空間の「金融化(Financialization)」という名の、静かなる領土割譲なのです。

第5章 シカゴの悪夢再び:75年リースという名の現代の植民地支配

サブタイトル:未来を売って、今をしのぐ愚行 💸

(Selling Tomorrow to Pay for Today's Sorrow)

歴史を学ぶ最も大きな理由は、同じ失敗を繰り返さないためです。しかし、インディアナ州の隣、イリノイ州シカゴ市は、歴史に残る「失敗」の教科書を提供してくれました。それが「シカゴ・パーキングメーター事件」です。

2008年、財政難に苦しむシカゴ市は、市内に約3万6000基ある路上パーキングメーターの運営権を、モルガン・スタンレー率いる投資家グループに「75年間」貸し出す契約を結びました。対価として市が受け取ったのは、一時金11億5000万ドル(約1200億円)でした。
当時の市長は「これで予算不足が解消できる!」と喜びましたが、市民にとっては悪夢の始まりでした。

  • 料金の急騰: 民間企業は利益を最大化するため、駐車料金を即座に引き上げました。一部地域では料金が4倍になりました。
  • 市の権限喪失: 「道路工事のために一時的に駐車スペースを閉鎖したい」「マラソン大会のために通りを使いたい」と市が考えても、その期間の「逸失利益(儲かるはずだったお金)」を投資家グループに賠償しなければならなくなりました。市は自分たちの道路を自由に管理できなくなったのです。
  • 莫大な損失: 後の試算では、75年間で投資家側が得る利益は11億ドルをはるかに超え、市は実質的に数十億ドルの損をしたと言われています。

これは「将来の税収(利用料)」を、割引価格で「現在の現金」に換えただけです。借金を返すために、家の玄関の鍵を他人に渡し、「今後75年間、出入りするたびに通行料を取っていいよ」と契約したようなものです。
この手法は「アセット・リサイクリング(Asset Recycling)」という耳障りの良い言葉で呼ばれ、現在、インディアナ州を含む全米各地で検討されています。しかし、その実態は「次世代の財布」からお金を盗んでいるに過ぎません。

🏙️ 筆者のコーヒーブレイク:シカゴの冬と高い駐車料金

シカゴの冬は極寒です。マイナス20度の中、高い駐車料金を払うために震える手でアプリを操作するとき、ふと思います。「このお金は、雪かきをしてくれる市の職員の給料になるのではなく、ウォール街の暖炉の薪になっているのだな」と。75年契約ということは、2083年までこの契約は続きます。その頃には空飛ぶ車が走っているかもしれませんが、地面のメーターにお金を払い続けなければならない契約条項が生きていたら……笑えない喜劇ですね。


第6章 年金基金はアスファルトの夢を見るか

サブタイトル:あなたの老後資金が、あなたの通行料を吊り上げる 👵📈

(Your Pension Fund Raising Your Commute's Sum)

では、有料道路を買っている「投資家」とは一体誰なのでしょうか? 冷酷な悪徳資本家でしょうか?
実は、その正体の一部は「あなた自身」かもしれません。
世界のインフラ投資の主役は、公務員年金基金や教職員退職年金基金などの機関投資家です。彼らは、加入者(市民)に将来年金を支払うために、安定して利回りが稼げる投資先を探しています。株や債券は値動きが激しい。そこで白羽の矢が立ったのが「インフラ」です。

「道路」や「水道」は、不況でも使われます。つまり、収入が安定しており、長期的にチャリンチャリンとお金が入ってくる。これを金融業界では「カウベル・ビジネス(牛の首に鈴をつけておけば、草を食んでいるだけで音が鳴る=金が入る)」と見なしています。
オーストラリアのマッコーリー・グループ(Macquarie Group)などは、このインフラ投資のパイオニアです。彼らは有料道路を証券化し、世界中の年金基金に販売します。

しかし、ここには皮肉な循環があります。
① あなたが毎月積み立てている年金が、インフラファンドに投資される。
② ファンドは利回りを確保するため、保有する有料道路の通行料を値上げする。
③ あなたは通勤のために、値上がりした通行料を支払う。
つまり、あなたは「自分の老後のために、現在高い通行料を自分に課している」のです。これを「自分で自分の足を食べるタコ」と言わずして何と言うのでしょうか。

6.2.1 破綻したコンセッションの実例:テキサスSH-130の教訓

すべてが上手くいくわけではありません。テキサス州の有料道路「SH-130」は、制限速度が全米最速の時速85マイル(約137km)で設計された民間運営道路でしたが、2016年に破綻しました。
理由はシンプル。「誰も使わなかった」からです。通行料が高すぎ、場所が不便だったため、トラックは無料の並行道路(I-35)を使い続けました。
これを「需要リスク(Demand Risk)」と言います。民間企業(Cintra社など)は破産法を申請し、借金は棒引きされました。一見、民間がリスクを負ったように見えますが、破綻後の処理や道路維持のゴタゴタは、結局のところ地域社会に負担を強いることになります。PPP(官民連携)における「リスク分担」は、しばしば「利益は私有化、損失は社会化」される傾向にあるのです。

🏦 筆者のコーヒーブレイク:道路という名の債券

投資家向けのパンフレットを見たことがありますか? 有料道路は、美しい風景写真ではなく、右肩上がりのグラフとして紹介されます。「エッセンシャル(必須)な資産」「インフレヘッジ(物価上昇に強い)」といった言葉が踊ります。彼らにとって渋滞は「需要超過」という喜ばしいシグナルです。私たちが渋滞でイライラしているとき、どこかのファンドマネージャーは「よし、これでダイナミック・プライシングの上限まで料金を上げられる」と微笑んでいるのです。


第7章 グローバル資本と「主権」の衝突

サブタイトル:国境なきマネー、穴だらけのハイウェイ 🌍🚧

(Money Without Borders, Highways out of Order)

インディアナ州の有料道路(Indiana Toll Road)も、かつて2006年にオーストラリアのマッコーリーとスペインのCintra(シントラ)のコンソーシアムに38億ドルでリースされました。そして2014年に一度破綻し、現在はオーストラリアの年金基金などが所有しています。
ここで一つの問いが生まれます。「アメリカの国土の一部を、外国企業が支配していていいのか?」

もちろん、法的には所有権は州にあり、運営権だけを貸しています。しかし、実質的な管理権限(料金設定や補修計画)はグローバル資本の手にあります。
もし、インディアナ州が「経済対策のために通行料を下げたい」と思っても、オーストラリアの株主が「No(利益が減る)」と言えば、それは実現しません。地域住民の生活よりも、遠く離れた国の投資家の利益が優先される構造です。

これは「主権の浸食」です。グローバリゼーションは、工場の移転だけでなく、足元のインフラまでも「国境なき商品」に変えてしまいました。インディアナの料金所で支払われた10ドルは、州内の道路補修に使われる前に、複雑な金融スキームを通って海外へ配当として流出していきます。
「地産地消」ならぬ「地産外消」。私たちの移動コストは、グローバル金融市場という巨大なカジノのチップになっているのです。

🇦🇺 筆者のコーヒーブレイク:誰のための道路?

以前、インディアナ有料道路のサービスエリアで休憩したとき、トイレが驚くほど綺麗に改装されていました。民営化のメリットですね。でも、その改装費を回収するために、私たちは高いコーヒーと高い通行料を払います。壁にかかった「Welcome to Indiana」の看板を見ながら、「ここは本当にインディアナなのだろうか? それともマッコーリーランドの飛び地なのだろうか?」と、不思議な感覚に襲われました。


第四部 抵抗とディストピア:2030年の道路風景

(Resistance and Dystopia: The Roadscape of 2030)

金融化と監視が進んだ先には何が待っているのでしょうか? おとなしく従う未来か、それとも激しい抵抗か。
第四部では、すでに世界で起きている「予兆」を元に、2030年のアメリカ(そして日本)の道路風景をシミュレーションします。それは、映画『マッドマックス』のような混沌か、『マイノリティ・リポート』のような管理社会か。おそらく、その両方が混ざり合った奇妙な世界でしょう。

第8章 黄色いベスト(Gilets Jaunes)の幽霊

サブタイトル:マクロンが燃やされ、ブラウンが怯える 🔥🦺

(Macron Burned, Now Braun is Concerned)

2018年、フランス全土が炎に包まれました。発端は、エマニュエル・マクロン大統領が発表した「燃料税の増税」です。環境保護(脱炭素)を掲げたこの政策に対し、地方の労働者たちは蛍光色の安全ベスト(黄色いベスト)を着て路上を封鎖しました。
彼らのスローガンは痛切でした。
「エリートは世界の終わり(環境問題)を心配し、我々は月末の支払い(生活苦)を心配する」

この運動は、インディアナ州の未来への警告です。都市部の富裕層(エリート)は、リモートワークが可能で、たまにEVに乗って「環境に優しい通行料」を払うことができます。しかし、地方の工場労働者や農家は、古いガソリン車で長距離を通勤しなければ生活できません。
道路有料化やVMT課金が導入されたとき、真っ先に打撃を受けるのは彼らです。「環境のため」「公平性のため」という美しいロジックは、彼らにとっては「生活への攻撃」と映ります。

インディアナ州のような保守的な地域(Rust Belt)で、もし過度な課金が強行されれば、現代版「黄色いベスト運動」が起きる可能性は十分にあります。料金所のカメラが破壊され、EZPassの読み取り機がペンキで塗りつぶされる……そんな「ラッダイト運動(機械打ちこわし)」的な抵抗が、ハイテク課金へのカウンターとして現れるでしょう。

🚜 筆者のコーヒーブレイク:怒れるトラック野郎たち

カナダで起きた「フリーダム・コンボイ(トラック運転手による抗議デモ)」を覚えていますか? あれはワクチン義務化への抗議でしたが、物流を担うトラックドライバーたちが本気で怒れば、都市を兵糧攻めにできることを証明しました。もし「走行距離課税が高すぎて商売あがったりだ」と彼らが団結したら…。インディアナの物流ハブが麻痺すれば、シカゴや東海岸のスーパーから商品が消えます。道路政策は、国家の安全保障そのものなのです。


第9章 モビリティ・アパルトヘイトの到来

サブタイトル:移動できる者、できざる者 🛑🛴

(Those Who Move, and Those Who Lose)

「アパルトヘイト」とは「分離」を意味する言葉です。2030年の道路は、目に見えない壁で分断されているかもしれません。
ロンドンではすでにULEZ(超低排出ゾーン)が拡大され、基準を満たさない古い車の利用者は、市内に入るだけで1日12.5ポンド(約2,400円)を課金されます。これは事実上の「貧乏人排除」です。古い車しか買えない低所得者は、物理的に都市から閉め出されるのです。

さらにテクノロジーが進めば、「信用スコア連動型通行料」が登場するかもしれません。
「あなたの社会的信用スコアは高いので、優先レーンを割引で利用できます」
「あなたは過去に料金未払いがあるため、高速道路の利用を制限します(エンジンがかからない)」
中国で実験されているような社会管理システムが、道路インフラと融合するのです。

9.2.1 ブレードランナー・エコノミー:自動運転専用レーンとスラム化した下道

最もディストピア的なシナリオは、道路の完全な二極化です。
上層(または専用レーン)は、富裕層が乗る自動運転EVが、AI制御でスムーズに流れる「プレミアム・ロード」。維持管理が行き届き、安全です。
下層(または一般道)は、課金を逃れた旧型車やトラックがひしめき合い、穴だらけのアスファルトで渋滞にあえぐ「スラム・ロード」。
SF映画『エリジウム』や『ブレードランナー』のような世界観ですが、経済合理性を突き詰めれば、この形が最も「効率的」なのです。金を払う客を優遇するのはビジネスの基本ですから。

🤖 筆者のコーヒーブレイク:ブレードランナーたちの反撃

ロンドンでは、ULEZの監視カメラを破壊して回る自警団的な集団が「ブレードランナー」と呼ばれています。彼らは英雄でしょうか、それとも犯罪者でしょうか? 私は彼らの行為を支持はしませんが、共感はします。「見えない権力」によって生活圏を奪われることへの、生身の人間の最後の抵抗のように見えるからです。監視カメラと覆面の男たちのいたちごっこ。それが未来の道路の日常風景になるのかもしれません。


第10章 結論:あるいは「定額制(サブスク)」という新たな檻

サブタイトル:所有から利用へ、自由から依存へ 📱🔒

(From Own to Use, From Freedom to Noose)

長い旅の終わりに、私たちは一つの結論に達します。1956年に始まった「所有と自由」の時代は終わり、「利用と依存」の時代が来るのだと。
そのキーワードはMaaS (Mobility as a Service) です。

未来の私たちは、おそらく車を所有しません。スマホで配車サービスを呼び、自動運転車が迎えに来ます。支払いは月額99ドルのサブスクリプションです。
「素晴らしい! 車検も保険もガソリン代も考えなくていい!」
一見、ユートピアです。しかし、それは「プラットフォーム企業が生殺与奪の権を握る」ことも意味します。
利用規約に違反したら? サブスク料金が値上げされたら? サービスエリア外に住んでいたら?
かつて私たちは、ボロ車でもガソリンさえ入れれば、どこへでも行ける自由を持っていました。それは「自律(Autonomy)」でした。しかしサブスクリプションの世界では、私たちはサービス提供者に「飼われる」存在になります。

インディアナ州の有料化は、この巨大なパラダイムシフトの序章に過ぎません。道路という物理的なインフラが、デジタルサービスの一部として組み込まれていく過程です。
私たちは「移動の自由」を失う代わりに、「移動の最適化」を手に入れるでしょう。それが幸福かどうかは、あなたが「助手席で寝ているのが好き」か、「自分でハンドルを握りたい」かによって決まるはずです。
アスファルトの錬金術が完成したとき、そこに残るのは黄金でしょうか、それとも鉛でしょうか。答えを出すのは、これからの私たちです。

🏁 筆者のコーヒーブレイク:最後のドライブ

私は自分の古いガソリン車を愛しています。エンジン音、オイルの匂い、そして何より「誰にも指図されずに走れる」感覚。もし将来、全ての道路が管理され、自動運転しか許可されなくなったら、私は密かに裏山にコースを作って走るかもしれません。かつての乗馬愛好家たちのように。移動は単なるA地点からB地点への輸送ではない。それは魂の運動なのだと、最後に書き記しておきます。


📚 補足資料:悪魔の細部

補足1 数式で見る搾取

コンセッション契約(民営化契約)には、しばしば恐ろしい条項が含まれます。それが「競業避止義務 (Non-Compete Clause)」です。
例えば、「有料道路の半径○キロ以内に、競合する無料道路を拡張してはならない」という条項です。これにより、州政府は渋滞解消のために一般道を広げることが法的に禁止されます。公共の利益よりも、民間企業の独占的利益が契約で保証されるのです。

補足2 ハッカーのための手引き

RFID(EZPassなどのタグ)は、ファラデーケージ(金属製の袋)に入れることで遮断できます。しかし、多くの州ではタグの遮蔽や改ざんを重罪としています。技術的には可能でも、法的には詰みです。いたちごっこは続きます。

💬 補足1:キャラクター感想

🟢 ずんだもんの感想
「結局、ボクたち庶民は搾取されるだけなのだ…。道路がタダじゃなくなるなんて、世知辛い世の中なのだ。でも、ホリエモンたちが言うように『効率化』も大事なのはわかるけど、インディアナのトウモロコシ畑で立ち往生するのは御免なのだ! 枝豆の輸送コストが上がったら、ずんだ餅も値上げしなきゃいけないし、由々しき事態なのだ〜!」

🚀 ホリエモン風感想(ビジネス視点)
「いや、これ完全に正しい流れでしょ。今までが『異常』だったの。タダで道路使えるとか、社会主義かって話。全部ダイナミック・プライシングにして、ブロックチェーンで管理すればいいじゃん。既得権益層や貧困ビジネスやってる連中が『弱者切り捨てだ』とか騒ぐだろうけど、最適化された社会の方が長期的には全員得するわけ。嫌なら稼げよって話。MaaSのプラットフォーム取りに行かないと日本はまた負けるよ? 想定の範囲内ですね。」

🗣️ 西村ひろゆき風感想(論破視点)
「えーと、未だに『道路は無料であるべき』とか言ってる人って、頭悪いのかな?って思っちゃうんですけど。維持費がかかるものを無料で配ったら、ボロボロになるのは当たり前じゃないですか。フランスの黄色いベスト運動とか持ち上げてる人いますけど、あれ単なる『暴動』ですからね。自分たちがコスト負担したくないだけでしょ? 『移動の自由』って憲法に書いてあっても『無料で移動させる義務』なんて国にはないんですよ。そこ勘違いしてる人多すぎません?」

📅 補足2:年表(表と裏)

表の年表:公式の歴史

出来事解説
1956連邦補助高速道路法成立アイゼンハワーによる州間高速道路網の建設開始。ガソリン税モデル確立。
1993連邦ガソリン税 最後の値上げ18.4セント/ガロンに固定。以降、実質価値が下がり続ける。
2021インフラ投資雇用法 (IIJA)バイデン政権下で成立。VMT(走行距離)課金の実証実験を推奨。
2025インディアナ州有料化法案署名マイク・ブラウン知事による決断。既存道路への課金へ。

裏の年表:金融と監視の歴史

出来事意味・解釈
2004シカゴ・スカイウェイ 99年リース米国初、既存道路の長期リース。インフラが「金融商品」化した特異点。
2008シカゴ・パーキングメーター売却「アセット・リサイクリング」の悪名高き失敗例。自治体が主権を喪失。
2016テキサスSH-130破綻需要予測の甘さによる民間運営道路の破綻。リスクの顕在化。
2030(予測) 移動信用スコア導入個人の移動履歴と信用情報が統合され、移動の自由が完全に管理下に。
🃏 補足3:オリジナル遊戯王カード

カード名:課金されしハイウェイ (Tolled Highway of Doom)

種類: フィールド魔法

効果:
① お互いのプレイヤーは、モンスターを召喚・特殊召喚・攻撃宣言するたびに、500ライフポイントを「通行料」として支払わなければならない。
② 支払えない場合、そのモンスターは破壊され、除外される(レッカー移動)。
③ 自分フィールドに「機械族」モンスターが存在する場合、相手のエンドフェイズに相手の手札をランダムに1枚確認し、そのカードをデッキの一番下に戻す(プライバシー侵害)。
④ このカードが破壊された時、コントローラーは全財産(ライフポイント)の半分を失う(インフラ破綻の代償)。

フレーバーテキスト: 「かつて自由と呼ばれた道は、今や黄金を貪る大蛇と化した。EZPassを持たぬ者に、明日への道はない。」

👏 補足4:一人ノリツッコミ(関西弁)

「いやー、しかしアメリカも世知辛いですなぁ。『道路走るだけで金払え』て。何やそれ、江戸時代の関所か!
『通行手形もってますか〜?』『いや、持ってへんけど』『ほな100ドル払うてや〜』『高っ! ぼったくりバーか!』
…いうてね。
ほんで何? 『EVはガソリン食わんからタダ乗りや』て? まあそれは分かるわ。せやけどインディアナ州やで? トウモロコシしか生えてへんような(失礼)とこで、電車もバスもないのに『車乗るな』言うんか!
『ほな馬に乗ればよろしいやん』
カウボーイか! 令和の時代に西部劇やりたいんか!
『モーダルシフト(交通手段の転換)を促します』
牛(モー)だけに!? …やかましいわ! もうええわ、ありがとうございましたー。」

🎭 補足5:大喜利

お題: 2030年のアメリカ、道路の課金システムが鬼畜すぎる。どんなの?

  • 回答1: ブレーキを踏むたびに「チャリン♪」と課金される(スムーズな運転推奨税)。
  • 回答2: 貧乏人はGoogleマップのルート検索で「崖」を案内される。
  • 回答3: 料金未払いで通過すると、助手席が爆発する機能がついている。
  • 回答4: 「この先、プレミアム会員限定エリア(舗装あり)。非会員は砂利道へ」という看板がある。
💻 補足6:ネットの反応と反論

👺 なんJ民
「【悲報】アメップ、道路課金で詰むwww 自由の国(有料)www」
反論: 日本も高速道路はずっと有料だし、ガソリン税も高い。笑ってる場合ではなく、明日は我が身である。

🦊 ケンモメン
「上級国民はレクサスレーンで快適通勤、下級は下道で渋滞地獄。これが資本主義の末路だよ。ジャップもこうなる。」
反論: 確かに格差は可視化されるが、渋滞解消による経済効果や環境負荷低減というメリットも無視できない。問題は「得た収益をどう再分配するか」にある。

🎀 ツイフェミ
「車中心社会そのものがホモソーシャルな権力構造。移動のコストを女性や子供、シングルマザーに押し付けるシステム。公共交通を整備せずに課金するのは構造的暴力です。」
反論: その通り。だからこそ、得られた通行料収入を鉄道やバスの整備に充てる「クロスサブシディ(内部相互補助)」が重要になる。

📚 京極夏彦風書評
「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君。道路が無料だという認識こそが、集団幻覚であり、妖怪『塗仏』の仕業なのだ。アスファルトの裂け目から覗くのは、資本という名の魍魎…。憑き物落としが必要だね、この国の財政という名の憑き物を。」

📝 補足7:クイズとレポート課題

高校生向け4択クイズ

問題: アメリカで道路維持のための「ガソリン税」が機能しなくなった主な理由はどれか?

  1. 国民がみんな自転車に乗るようになったから。
  2. 電気自動車(EV)の普及や燃費向上で、ガソリン消費が減ったから。
  3. 石油王がガソリンを無料で配り始めたから。
  4. 道路が頑丈すぎて修理の必要がなくなったから。

正解: 2

大学生向けレポート課題

テーマ: 「公共財の市場化」における倫理的課題と経済効率性のトレードオフについて、シカゴ・パーキングメーター事件またはロンドンULEZの事例を用いて論ぜよ。(2000字程度)

🏷️ 補足8:SNS共有・メタデータ

キャッチーなタイトル案

  • 「フリーウェイの終焉:なぜ2025年、アメリカは道路に値札をつけたのか」
  • 「【悲報】アメリカの道路、サブスク化へ。監視社会と引き換えの快適さとは」
  • 「アスファルトの錬金術:あなたの移動データが金融商品になる日」

SNS共有用テキスト(120字以内)

【米国発】「フリーウェイ」が終わる日。EV普及でガソリン税が枯渇し、インディアナ州がついに既存高速道の有料化へ。これは「公平な負担」か「監視社会」の始まりか?日本の走行距離課税議論にも直結するパラダイムシフトを徹底解説。 #交通経済 #EV

ブックマーク用タグ(NDC参考)

[336.9租税][681.4道路交通][514道路工学][332.53米国経済][MaaS][インフラ][民営化]

ピッタリの絵文字

🛣️ 💸 🚗 🔋 📉 🏗️ 🇺🇸 👁️ ⛓️

カスタムパーマリンク案

<>end-of-freeway-era-financialization-2025

NDC分類

336.9 (租税各論) または 681.4 (道路交通政策)

テキスト図解イメージ


【これまでの道路(〜2024)】
[利用者] --(ガソリン税)--> [政府] --(維持管理)--> [道路]
(EVはタダ乗り!)

【これからの道路(2025〜)】
[利用者] --(通行料/VMT)--> [民間運営会社] --(配当)--> [投資家/年金基金]
↑ ↓ (一部)
└-----(個人データ)--------- [維持管理] --> [道路]
🔤 用語索引
Asset Recycling (アセット・リサイクリング)
公的資産(道路や空港など)の運営権を民間に売却し、その利益で新しいインフラを作る手法。「資産の有効活用」聞こえはいいが、実質的な「切り売り」であるとの批判も強い。
Dynamic Pricing (ダイナミック・プライシング)
需要と供給に合わせて価格を変動させる仕組み。道路では「渋滞時は高く、空いている時は安く」することで混雑緩和を狙うが、低所得者を排除する懸念がある。
Financialization (金融化)
実体経済(モノやサービス)よりも、金融取引や金融市場の論理が優先され、社会や経済の仕組みが金融商品のように扱われる現象。
MaaS (Mobility as a Service)
「サービスとしての移動」。マイカーを所有せず、バス、電車、タクシー、シェアサイクルなどを組み合わせて、スマホ一つで移動を完結させる概念。
PPP (Public-Private Partnership)
官民連携。公共サービスの提供に民間企業の資金やノウハウを活用すること。P3とも呼ばれる。成功例もあるが、シカゴのような失敗例も多い。
VMT Fee (Vehicle Miles Traveled Fee)
走行距離課税。ガソリン税の代わりに、車が走った距離に応じて課税するシステム。EV時代の切り札とされるが、プライバシー問題が壁となる。
🦶 脚注
  • ※1 4乗則 (Fourth Power Law): 1950年代のAASHOロードテストで導き出された経験則。軸重(車の重さ)が2倍になると、道路へのダメージは16倍(2の4乗)になるという法則。トラックや重量級EVが道路破壊の主犯とされる根拠。
  • ※2 Cintra (シントラ): スペインに拠点を置く世界有数の交通インフラ開発企業。フェロビアル(Ferrovial)の子会社。北米や欧州で多くの有料道路を運営している。
⚠️ 免責事項

本書は2025年12月時点での情報およびシミュレーションに基づいています。将来の政策変更や技術革新により、記述内容と現実が乖離する可能性があります。投資判断や法的手続きにおいては、専門家の助言を仰いでください。また、本書に登場する「インディアナ有料道路での立ち往生」等のエピソードは、一部筆者の妄想を含みます。

🙏 謝辞

本記事の執筆にあたり、Hacker Newsの議論スレッド、Reason Foundationのレポート、そして名もなきインディアナ州のドライバーたちの声に耳を傾けました。また、校正と多角的な視点を提供してくれたAIアシスタントに感謝します。

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