#インデックス思考という名の病:平均に沈む現代人の末路 #投資 #キャリア #凡庸化 #TheIndexMindset #七14

インデックス思考という名の病:平均に沈む現代人の末路 #投資 #キャリア #凡庸化 #TheIndexMindset

――リスク回避の甘い罠に囚われた魂の記録:インデックスファンドが公開市場を支配するようになった。しかし、インデックス作成への移行はテクノロジーや文化にも広がっています。– 私はそれをインデックス マインドセットと呼んでいます。

本書の目的と構成:霧に包まれた未来へ投げかける石

拝啓、賢明なる(あるいはそうでありたいと願う)読者の皆様。この文章は、現代社会に蔓延するある奇妙な「病」について、少しばかり穿った視点から考察するものです。その病の名は「インデックスの考え方」と申します。投資の世界で産声をあげたこの思想が、今やベンチャーキャピタル(VC)、スタートアップ、はては私たちのキャリア選択、人間関係、そして文化そのものにまで深く静かに浸透し、凡庸さという名のぬるま湯を沸騰させようとしている――もし、そんな現実があるとしたら、私たちはそれにどう向き合えば良いのでしょうか?

本書(という名のこの文章)は、その「インデックスの考え方」の正体を探り、それが私たちの社会に何をもたらしつつあるのか、そしてその波に抗う、あるいはしたたかに乗りこなすためのヒントを、皮肉とユーモアを交えつつ提示することを目的としています。第一部では、インデックス化という潮流が金融市場から始まり、いかに他の領域へと拡散していったかを追います。第二部では、その現象がもたらす「凡庸」という副作用に焦点を当て、テクノロジーとの関係や、そこから抜け出すための「集中」という古くて新しい戦略について論じます。巻末には、理解を深めるための資料や、少しばかりお遊びめいたおまけも用意しております。どうぞ、退屈しのぎにでもお付き合いください。


要約:遠い灯台の光

さて、長々と前口上を垂れるのも野暮でしょうから、まずはこの文章の要点を手短にまとめます。この世界は「インデックスの考え方」に侵されつつあります。これは、リスクを極力回避し、広範なものに分散することで、平均的な結果に安住しようとする思考様式のことです。かつて投資の世界、特に株式市場で「手数料は安いが凡庸なリターンしか生まない」と嘲笑されたインデックスファンドが、アクティブファンドの不甲斐なさや低金利環境を追い風に巨大化し、今や市場価格そのものを歪めるほどの力を持つに至りました。この流れは金融市場に留まらず、未公開市場のVC投資における「チェックボックス」的な判断基準、スタートアップ従業員の短期在籍・株式分散、さらには個人のキャリア選択、人間関係、果ては哲学や政治、子育てといった文化的な領域まで浸透しています。テクノロジーはこうした「インデックス化」を加速させる一方、特定の分野でのインフレや評価の歪みといった副作用も生んでいます。このインデックスの考え方は、多くの人にとってリスク回避の「デフォルト」となりつつありますが、それは同時に「差別化」を失い、「凡庸さ」に甘んじることを意味します。真に突き抜けた成功者たちは、インデックス化を拒否し、信念を持って一点に「集中」する戦略を選んでいます。この文章は、インデックスという名の波に流されることなく、自らの航路を見定めることの重要性を、ニヒルな観察眼をもって問いかけるものです。


登場人物紹介:潮目に立つ者たち

この物語(大袈裟ですね)に直接登場したり、その思想や行動が引用されたりする、潮目に立つ幾人かの人物をご紹介しましょう。彼らは、インデックス化の波に乗ったり、抗ったり、あるいはその波自体を研究したりしています。

  • ウォーレン・バフェット (Warren Buffett) - 享年94歳(2025年時点)。
    「オマハの賢人」として知られる伝説的な投資家です。個別企業への集中的な長期投資を信条とし、インデックス投資そのものを推奨する発言も多いですが、自身のポートフォリオは極めて集中度が高いことで有名です。「凡庸」とは対極に位置する存在と言えるでしょう。

  • イーロン・マスク (Elon Musk) - 享年53歳(2025年時点)。
    テスラやスペースXなどを率いる現代の異端児。彼は「インデックス化」とは正反対の、自身の信念に基づいて莫大なリスクを取り、一点突破を目指す戦略の体現者です。自己所有企業の株式を買い増すなど、徹底した集中を見せます。

  • マイケル・グリーン (Michael Green) - パブリックマクロ投資家。
    インデックスファンドの市場への影響、特に価格歪曲効果について積極的に発言している人物です。論文では、彼が「インデックスファンドが平均回帰性を弱める」と推測していることに言及されています。

  • キース・ラボワ (Keith Rabois) - ベンチャーキャピタル投資家。
    論文で引用されているVC投資家です。「プロダクト・マーケット・フィット(製品市場適合性)は偽造されるものではなく、発見されるものだ」という彼の言葉は、VCにおける「チェックボックス投資」への警鐘として響きます。

  • ハワード・マークス (Howard Marks) - 投資家。
    オークツリー・キャピタル・マネジメントの共同創業者。投資に関する洞察に富んだメモ(投資家への手紙)で知られます。論文では、彼の「バス停で十分に長く待っていれば、バスに乗れることは間違いない」という言葉が引用され、集中戦略の比喩として用いられています。

  • ハワード・スティーブンソン (Howard Stevenson) - ハーバード大学教授。
    コメント欄で言及されている経営学の権威。「起業家精神」を「現在管理されているリソースに関係なく機会を追求すること」と定義し、「管理的な行動」と対比させた研究は、インデックス化と集中化の議論に深い示唆を与えます。

  • スティーブン・ブラッドリー (Steve Bradley) - 研究者。
    コメント投稿者。スティーブンソン教授の研究を引用し、起業家的な管理行動と資源不足の関係について論じています。

  • その他コメント投稿者(ベン、ミカリア・ネグリ、リロン・シャピラ、マネージング・アナリスト、ホセ・G・エスピノーザなど) - 論文への反応を示した人々。
    彼らのコメントは、インデックスの考え方がもたらす多様な視点や議論を提示してくれます。

これらの人物を通して、私たちはインデックス化という現象の多層性を垣間見ることができます。


目次:航海の羅針盤はどこを指す?


第一部 受動性の潮が満ちる世界

 

歴史的位置づけ:大いなる潮流の中の現在

この「インデックスの考え方」なるものは、突然変異のように生まれたわけではありません。それは、歴史という名の広大な海を流れるいくつかの潮流が交錯した場所に位置しています。

金融史の文脈:

1970年代、ごく一部の異端児たちが提唱したインデックス投資は、ウォール街の「ガット(直感)主導」のアクティブファンドマネージャーたちから嘲笑されました。彼らは高額な手数料を取り、市場を出し抜こうと躍起になっていましたが、現実にはその大半がインデックスのパフォーマンスを下回っていたのです。皮肉なことに、このアクティブファンドの不甲斐なさこそが、低手数料で市場平均を狙うインデックスファンドの正当性を証明し、その後の爆発的な普及を促しました。2008年の金融危機以降、長期にわたる歴史的な低金利環境が、より安全志向の資金をインデックスファンドへと大量に誘導しました。この流れは、まさに金融史における静かなる革命、パッシブ運用への大転換期の中に位置づけられます。

テクノロジー進化の文脈:

インターネット、ソフトウェア、そして近年のAI。これらの技術は、情報の非対称性を減らし、様々な市場の流動性を飛躍的に高めました。投資情報へのアクセスは容易になり、個人が低コストでインデックス投資を始められる環境が整いました。VCとスタートアップの世界でも、情報は光速で駆け巡り、成功パターンが瞬時に共有されます。マッチングアプリは人間関係の選択肢を「インデックス化」し、オンライン教育は知識獲得のハードルを下げました。テクノロジーは効率化とアクセスの容易さをもたらす一方、標準化と均質化を促し、「インデックスの考え方」が浸透する土壌を耕したのです。

現代社会論の文脈:

かつて存在したかもしれない「大きな物語」や、強固な共同体意識は希薄化しました。未来の見通しは不透明で、何が正解か分からない時代において、人々はリスクを恐れるようになりました。「失うもの」が増えたから、という論文の指摘は的を得ています。富の蓄積は、挑戦への意欲よりも保身の心理を強める。多様性の追求は、ときに個性の埋没と裏腹です。インデックスの考え方は、こうした現代社会の「不確実性への不安」や「横並び志向」といった病理に寄り添うかのように受け入れられています。それは、ロバート・パットナムが憂いた「孤独なボウリング」1をする人々の、新たな生存戦略なのかもしれません。

経営学・キャリア論の文脈:

経営学には、「探索(Exploration)」と「活用(Exploitation)」という概念があります。新しい可能性を模索するのが探索、既存の知識や資源を効率的に使うのが活用です。インデックスの考え方は、明らかに「活用」の側面を強く持ちます。VCの「チェックボックス投資」は、過去の成功パターンを活用する試みでしょう。個人のキャリアにおけるポートフォリオ化は、既存のスキルを様々な場所で活用する戦略です。ハワード・スティーブンソン教授が対比させた「起業家精神」(機会追求)と「管理的行動」(資源活用)の議論も、この文脈で理解できます。現代は、不確実だからこそ「探索」が必要なのに、多くのプレイヤーがリスク回避のため「活用」へと傾倒している、その過渡期を描いていると言えるでしょう。

このように、「インデックスの考え方」は、金融、テクノロジー、社会、そして経営といった複数の歴史的潮流が合流した、極めて現代的な現象なのです。


疑問点・多角的視点:水平線の向こうにある問い

この論文は多くの示唆を与えてくれますが、同時にいくつかの「じゃあ、どうなんだ?」という問いが頭をもたげます。シニカルな視点から、それらの疑問を少し掘り下げてみましょう。

「インデックスの考え方」って、結局何なのさ?定義は曖昧じゃないか?

投資におけるインデックス運用は明確です。特定の指数に連動することを目指すファンドですね。しかし、論文がそれをVCや文化にまで拡張して使うとき、その定義は途端にぼやけます。「多様化」「リスク回避」「平均への志向」…これらの要素は確かにインデックス運用の特徴ですが、同時に人間の様々な行動様式にも当てはまります。果たして、これらを「インデックスの考え方」という一つの言葉で括ってしまって良いのでしょうか? 単なるアナロジー(類推)に過ぎないのでは? もしそうなら、少々言葉遊びが過ぎる気もします。

原因と結果、どっちが先なの?

論文は、投資のインデックス化が他の領域に影響を与えた、というニュアンスで語っています。しかし、低金利、テクノロジー進化、高齢化によるリスク回避、社会全体の不確実性といったマクロな要因が、投資のインデックス化と他の領域での「分散・リスク回避」トレンドを同時に引き起こしている可能性はありませんか? 鶏が先か、卵が先か。もしかしたら、投資のインデックス化は原因ではなく、より大きな社会・経済的潮流の単なる「症状」に過ぎないのかもしれません。

「凡庸」って、そんなに悪いこと?

論文はインデックス化がもたらす「凡庸さ」や「差別化の喪失」をネガティブに捉えています。確かに、一部の突き抜けた成功者はインデックスの外にいます。しかし、大多数の人間にとって、凡庸であることは必ずしも不幸ではありません。投資で言えば、インデックス投資は専門知識がなくとも市場平均のリターンを得られる、極めて効率的な手段です。キャリアにおいても、複数の選択肢を持つことはセーフティネットになり得ます。みんながみんな、高いリスクを取って一攫千金を狙う必要などないのではないでしょうか? 「凡庸」を否定する態度は、エリート主義の裏返しではないかと勘繰ってしまいますね。

「集中」しろって言うけど、凡人にそれができるの?

論文はバフェットやマスクといった超成功者の例を挙げて、集中することの価値を説きます。彼らが集中できたのは、並外れた才能や、既に築き上げた莫大な富、失敗しても大丈夫な社会的な地位があったからではないでしょうか。資本もスキルもない大多数の人間が、一つのこと、一つの会社、一人の相手に「集中」して失敗したら、どうなるでしょう? 目も当てられない結果が待っているかもしれません。インデックス化は、そうした最悪の事態を避けるための、ある種の「知恵」なのではないか? 理想論だけでは、腹は膨れませんよ。

コメント欄が提起した問いへの答えはどこだ?

論文の後に続くコメント欄は、AIの影響、金融教育、緑色ファンドの欺瞞性、起業家精神との対比など、興味深い論点をいくつも投げかけています。しかし、論文本文はこれらの問いに十分に答えているようには見えません。せっかくの示唆に富む議論の萌芽を、活かしきれていないのは残念です。ニヒルに言わせてもらえば、「問題提起はしたけど、答えは読者任せかよ」といったところでしょうかね。

これらの疑問は、この論文を読み解く上でのスパイスとなります。一つの視点に囚われず、多角的に、そして少し疑いの目を持ちながら読むことで、より深く理解できるかもしれません。


第一章 鋼鉄の怪物たちの静かなる支配:公開市場のインデックス化

ウォール街の片隅でひっそりと産声を上げたインデックスファンドは、かつては「凡庸さへの確実な道」と、ガット(直感)に全てを賭けるマッチョなアクティブマネージャーたちから鼻で笑われる存在でした。手数料は驚くほど安いものの、「市場平均なんて退屈だ」と。しかし、皮肉なことに、その「退屈」こそが彼らの最大の武器となったのです。

数十年の時を経て、アクティブマネージャーたちの8割がインデックスに勝てないという冷徹な現実が明らかになるにつれ、投資家たちは気づき始めました。「なぜ、わざわざ高い手数料を払って、市場平均にすら届かない『専門家』に金を預けねばならないのか?」と。答えは簡単です。そんな必要はない。低コストで市場全体のリターンを手に入れられるインデックスファンドこそが、多くの個人投資家にとって、いや、機関投資家にとっても合理的な選択肢であると認識されるようになったのです。

特に、退職金制度から流入する莫大な資金は、この流れを決定的なものとしました。インデックスファンドは「再帰的」な資産となりました。つまり、そのパフォーマンスが良いから資金が集まり、資金が集まるから資産価格が押し上げられ、さらにパフォーマンスが良く見える…という自己強化ループです。まるで、自分たちの重みで市場を押し上げる巨人たちのようです。

もはや、企業の将来価値を緻密に計算するDCFモデル2だけで投資判断ができる時代ではありません。インデックスファンドの資本フロー自体が、資産価格を歪める主要因となったのです。公開市場の14%を構成し、資本フローが株式市場の50%に近づく3とき、それはもはや傍観者ではなく、市場の主役です。そして、その主役たちは「個別企業が儲かっているか」よりも、「退職金が流入するか」という、企業ファンダメンタルズ4とは無関係な人口動態に左右されるという、なんともシニカルな状況が生まれています。

誰もが平均を目指すとき、別の戦略が最適になる。それは資本フローという名の不快なねずみ講、と論文は手厳しい。しかし、ねずみ講であろうとなかろうと、今のところこの流れは「健在」なのです。鋼鉄の巨人たちは静かに、しかし確実に、市場を支配しつつあります。そして、その影響は公開市場に留まることなく、未公開市場へと逆流していくのです。

コラム:あの頃の熱狂はどこへ行った?

筆者が駆け出しだった頃、投資の世界はもっと泥臭く、人間臭かったように思います。四季報を穴が開くまで読み込み、企業のIR担当者に電話をかけ、工場見学に足を運び…まさに個別企業との「恋愛」でした。あの製品は素晴らしい、あの社長は信用できる、きっとこの会社は伸びる! そんな熱狂と、外れた時の地獄のような絶望。それが投資でした。今はどうでしょう? S&P500とか全世界株式とか、指数という名の抽象的な存在に淡々と積み立てる。それは合理的で賢明な行動でしょう。でも、あの頃の「この会社が好きだ!」という個人的な情熱は、どこに行ってしまったのでしょうか。合理化の波は、個人の感情すら洗い流していくようです。


第二章 チェックボックスの迷宮:ベンチャーキャピタルの変容

インデックスの考え方は、未公開市場、中でもベンチャーキャピタル(VC)の世界で、最も赤裸々にその姿を現しています。かつてVCといえば、創業者の眼力、斬新なアイデア、プロダクト・マーケット・フィット5を見抜く鋭い洞察力、そして何よりも「直感」が支配する世界でした。しかし、資本が飽和し、情報が均質化したいま、VCは変容しています。

「成長投資家」と呼ばれる彼らは、もはや企業の「本質的な価値」などにはさほど興味がありません。彼らのフレームワークはシンプルです。「このスタートアップがどれだけ早く『次』に行けるか?」、つまり、どれだけ早く別の成長投資家が、より高値で買ってくれるか、それだけです。これは暗黙のうちに、企業価値への賭けではなく、資本の流れへの賭けです。

そして、この資本の流れへの賭けは、VC自身をインデックス化させました。ファンドの規模は拡大し、多様な分野に投資し、投資チームは巨大化します。VCの仕事自体が、リスクの高いスタートアップバスケットへの「インデックス投資」になったのです。特に過去10年、VCを名乗る多くの投資家が追い求めたのは、特定の「チェックボックス」でした。3倍以上の成長率、100%以上のNRR(Net Revenue Retention、売上維持率)6、70%以上の粗利率、といった、まるで優秀なスタートアップの「成分表」のような基準です。これらのチェックボックスを満たせば、価格に関係なく買われる。価格不可知論の台頭です。まるで、将来のインデックスファンドのアルゴリズムを先取りしているかのようです。

本物のVCは、他の誰も信じていない会社を信じ、そこに集中的に賭ける。それが大きなリターンを生むはずです。しかし、チェックボックス戦略は彼らを「一夜にしてコモディティ化」させました。1980年代にインデックスファンドに追い詰められたウォール街の株式ブローカーのように、彼らの仕事は代替可能で、価格競争に晒されるものとなりました。目利きでも、起業家のアドバイザーでもなく、ただの「チェックボックス確認業者」に成り下がったのです。

シードステージ投資家も、成功確率が分からないからと大量のスタートアップに投資する「ショットガンアプローチ」を採用しています。これもまた、シードインデックスと呼べるかもしれません。ただし、この段階ではまだ規模が小さく、個別のスタートアップへのアドバイス機能が求められるため、完全にインデックス化しきれない「破綻し始める」ポイントだと論文は指摘します。VC業界全体がコモディティ化し、より少ない資金でより迅速に投資を実行する「インデックス戦略」は、VC業界の統合時代を促進するかもしれません。つまり、少数の巨大な「VCインデックスファンド」が、多くのブティック型VCを駆逐していく可能性です。

コラム:VCの「コーヒーテイスティング」

昔、あるベテランVCの方と話したことがあります。彼は言いました。「我々の仕事は、コーヒーをテイスティングするようなものだ」と。様々な豆(スタートアップ)を味わい、その風味(チーム、アイデア、市場)を深く理解し、これは!と思う一杯(投資先)を見つける。淹れ方(支援)も重要だと。でも、今のVCはまるでコーヒーの成分表を見て「カフェイン含有量〇〇、糖度〇〇、酸度〇〇…うん、基準クリア! 合格!」とやっているように見えます。成分表は大事ですが、本当に美味しい一杯は成分表だけでは分からないでしょうに。もちろん、成分表を見るのが悪いとは言いません。でも、それだけで決めるのは、ちょっと味気なくありませんか?


第三章 ポートフォリオという名の鎖:スタートアップと個人の選択

インデックスの考え方は、スタートアップで働く個人のレベルにも浸透しています。従業員の在職期間は短くなり、どんどん短縮化されています。彼らの多くは、一つの会社に長く勤め上げるよりも、複数の企業を渡り歩き、それぞれの会社で得た株式(ストックオプションなど)のポートフォリオ7を形成することを選んでいます。これはまさに、自身のキャリアと資産を「インデックス化」し、特定企業への依存というリスクをヘッジ8しようとする行動です。

このトレンドに対するスタートアップ側の対抗策が「二次ベスティング」9のような仕組みです。これは、従業員が長期間勤め続けるほど、株式の権利確定(ベスティング)のペースが速まる、あるいは追加の株式が付与されるといった、長期在籍を促すためのバックウェイトです。なぜ企業はそんなことをするのか? テクノロジー業界がもはや、一部のオタクが集まる場所ではなく、ごく普通の人が安定したキャリアを築くためにやってくる場所になったことの関数です。失うものが増えた人々は、リスクを避け、ポートフォリオを組みたがる。企業側は、そのリスク回避志向に対応せざるを得ないのです。

日々の戦略的トレードオフ10においても、インデックスの考え方は支配的です。マーケティングでは、単一チャネルへの集中リスクを避けるために、複数の流通チャネルにバランス良く投資する。販売では、少数の巨大顧客(クジラ)への依存を避け、多数の小規模顧客を持つことを好む。ポジショニングでは、狭い層に深く突き刺さるよりも、できるだけ多くの顧客の「チェックボックス」を満たそうとする。これらは全て、特定の要素への集中がもたらすリスクを恐れ、分散による「平均」を目指すインデックス思考の現れです。

驚くべきことに、創業者のレベルですらインデックス化が進んでいます。かつて創業者は、文字通り全身全霊をかけて一つの事業に賭ける存在でした。しかし、最近では二次販売(セカンダリーセール)11が早期に行われ、より一般的になりました。創業者が事業の成功を見る前に、自身の株式の一部を売却してリスクを軽減するのです。さらに、多くの創業者がエンジェル投資家12として、あるいはパートタイムのファンドマネージャーとして「副業」をしています。これもまた、自身の資産と時間を「インデックス化」し、創業事業への集中度を下げる行動です。

しかし、企業形成という点では、インデックスモデルの限界は明らかです。偉大なスタートアップは、多くの平凡なアイデアの平均から生まれるのではなく、特定の創業者と特定のアイデアが奇跡的に結びついた「インテリジェントなデザイン」から生まれると論文は指摘します。成熟した競争環境では、シードラウンドで許されるのは少数の「製品ベット」13のみ。キース・ラボワの言葉を借りれば、「プロダクト・マーケット・フィットは偽造できない」。つまり、チェックボックスを満たしただけの「平均的な」製品は、市場で生き残れないのです。スタートアップという生き物は、インデックスという檻の中では育ちにくい、特殊な存在なのかもしれません。

コラム:僕のキャリアは雑草図鑑

恥ずかしながら、僕自身のキャリアも、このインデックス化のトレンドを体現していると言えるかもしれません。大学卒業後、一つの会社に骨を埋める覚悟なんて微塵もなく、興味の赴くままに職を転々としました。IT、メディア、教育、そしてまたIT…業界も職種もバラバラです。そのおかげで、色々な知識や経験は積めましたが、何か一つの分野で「これなら誰にも負けない」というものがありません。まさに、特定の豪華な花ではなく、多種多様な雑草を集めた図鑑のようなキャリアです。リスクは分散されたかもしれませんが、突出した強みがない。これはこれで、現代社会の「凡庸」な姿の一つなのかもしれないな、と論文を読んでゾッとしました。


第四章 文化という名の柔らかな壁:リスク回避の浸透

インデックスの考え方は、もはや投資やビジネスの世界に留まらず、私たちの最も個人的な領域、つまり「文化」という柔らかな壁をも透過し、浸透しています。それは「多様化」と「リスク回避」という、一見ポジティブにも見える言葉の裏に隠されています。

哲学の世界では、かつては絶対的な真理を信じる道徳的絶対主義14が主流でしたが、今は多様な真理を認める道徳的相対主義15が幅を利かせています。物理学では、決定論的なニュートン物理学16から、確率論的な量子力学17へ。これらは科学の進歩ですが、同時に「一つの確固たる答え」よりも「複数の可能性」に目を向ける、インデックス的な思考様式への移行とも解釈できます。

政治においては、第二次世界大戦後のナショナリズム18からグローバリズム19への急速な転換が挙げられます。欧州連合(EU)とその単一通貨ユーロの設立は、加盟国が自国の成功に集中するよりも、互いの「インデックス」に賭ける方法です。それは協調と安定をもたらす一方で、国家としての独自のアイデンティティや決定権を希薄化させる側面も持ちます。

そして、最も顕著なのが、私たちの私生活、特に人間関係のインデックス化です。ほんの数十年前までは、若い頃に結婚し、生涯一人のパートナーと添い遂げることが一般的でした。これは究極の「集中」戦略とも言えます。しかし現代は? Tinderのようなマッチングアプリを使えば、文字通り数十、数百人の「インデックス」の中からパートナー候補を選べます。これは関係資本を多様化し、特定の人との関係が破綻するリスクをヘッジする行動です。しかし、その結果、深い絆やつながりは希薄になり、「多くの浅い関係」という平均値に収束していくのではないでしょうか。

キャリアの選択もインデックス化されています。有名大学の卒業生の多くが、特定の専門性ではなく、キャリアの可能性を「ポートフォリオ」として提供する銀行やコンサルティングファームに集中します。そこでの仕事も、様々な業界や機能を横断する「インデックス化された」プロジェクトです。これは、特定の分野で突き抜けるリスクよりも、多様な経験を積んで将来の選択肢を広げる、というリスク回避の行動です。いわば、「何になるか分からないから、とりあえず平均的なエリートコースに乗っておこう」という思考です。

親たちまでもが、子供たちに「インデックスマインドセット」を奨励しています。勉強、スポーツ、芸術…特定の才能を伸ばすことよりも、あらゆる分野でソツなくこなせる「バランスの取れた子」を目指させる。それは、入試や就職で広くアピールできる「インデックス」を構築させようという親心ですが、子供の真の情熱や個性を摘んでしまうリスクを孕んでいます。

アメリカが辺境から富を蓄積し、失うものが増えた結果、人々はリスクを取ることを恐れるようになった。結婚は遅くなり、教育期間は長くなる。それは安全を求める本能的な行動かもしれませんが、同時に社会全体のダイナミズムや創造性を奪っている可能性も否定できません。

インデックスの考え方は、確かに「快適」です。考える労力は最小限で済み、決定回避バイアス20を満たしてくれます。最高次のビット(最も重要な部分)さえ合っていれば、なんとなくうまくいく。しかし、すべての領域でインデックスを作成すると、私たちは「凡庸」という名の柔らかい壁にぶつかり、その壁の中で平均的な存在になってしまうのです。

コラム:結婚という名のフルコミット

「生涯パートナーが一人割り当てられるのが一般的だった」と論文にあって、思わず苦笑してしまいました。確かに、僕たちの親世代まではそれが当たり前だった。それは、ある意味で結婚相手という特定の「銘柄」に、人生という「全財産」を「フルコミット」するようなものです。失敗したら、それこそ目も当てられない損失です。今の若い世代が、結婚に躊躇したり、多様な関係性を選んだりするのは、あまりにもリスクが高すぎる「集中」戦略を避けようとする、合理的な(そして少し寂しい)インデックス思考の結果なのかもしれません。僕自身も、果たして人生というポートフォリオの中で、特定のパートナーという高リスク・ハイリターン銘柄に「全ツッパ」する勇気があるだろうか…そう考えると、僕もまた、文化という名のインデックスに組み込まれた凡庸な一人なのだと、ため息が出ます。


日本への影響:黒潮が運ぶ波紋

さて、この「インデックスの考え方」なる潮流は、太平洋を越えて我らが日本にも確かに到達し、その黒潮のように社会の隅々まで影響を及ぼしています。アメリカと全く同じではありませんが、その本質は共通しているように思われます。

投資市場の静かなる変化:

日本でも、つみたてNISAやiDeCoといった国が後押しする制度を通じて、個人投資家の間でインデックスファンドへの投資が爆発的に普及しています。「貯蓄から投資へ」というスローガンの下、多くの人々が「とりあえず全世界株式インデックスファンド」「S&P500インデックスファンド」といった、まさにインデックス化された商品を選んでいます。これは、過去の日本におけるアクティブ投信の不透明さや手数料の高さ、そして何より「専門家に任せても儲からない」という苦い経験が背景にあります。合理的で低コストなインデックス投資は、多くの日本人にとって福音です。しかし、これもまた市場全体の平均に資金が集中し、特定の大型株(特に海外の巨大テック企業)への偏りを生みやすいという側面を持っています。日本の株式市場においても、パッシブ運用の存在感は増しており、市場の価格発見機能に影響を与え始めている可能性が指摘されています。

VC・スタートアップ生態系の模倣と歪み:

日本のVC業界も、世界の潮流に合わせて規模が拡大し、特に成長ステージのスタートアップへの投資が活発化しています。その投資判断において、海外の成功事例、特にシリコンバレーの企業が持つ「チェックボックス」的な指標(高い売上成長率、Unit Economics21の健全性など)が重視される傾向が見られます。これにより、日本の市場特性に根差したユニークな技術やビジネスモデルよりも、グローバルで受け入れられやすい、いわば「インデックス向けの」スタートアップに資金が集中しやすくなります。これは、日本の多様なイノベーションの芽を摘んでしまうリスクも孕んでいます。また、VC自身のコモディティ化、つまり「チェックボックス」を確認するだけの存在になってしまう危険性は、日本のVCにも無縁ではありません。

働き方・キャリア観の変遷と迷走:

終身雇用・年功序列という「一つの会社に集中する」モデルが崩壊し、日本でもキャリアの「インデックス化」が進んでいます。転職は一般的になり、副業やフリーランスといった多様な働き方が奨励されます。これは個人の選択肢を広げ、企業への依存リスクを減らすという点でポジティブです。しかし、同時に、特定の分野で深い専門性を極めることの難しさ、複数の仕事を掛け持つことによる「器用貧乏」化、そして何よりも、組織への強い帰属意識や長期的な視点での「育てる文化」が失われつつあるというトレードオフが生じています。多くの人が、明確な目標を持たずに「とりあえず色々な経験を積んで市場価値を高める」という、キャリア版インデックス思考に陥っているのかもしれません。

文化・社会のリスク回避と「無難」への収束:

日本社会全体にも、リスク回避志向は根深く存在します。「みんなと違うこと」を恐れ、平均的な「無難」な選択を好む傾向は、文化的なインデックス化とも言えます。結婚年齢の上昇や晩婚化、独身者の増加は、必ずしも「多様な関係性のインデックス」を積極的に構築しているというよりは、結婚という高リスクな「集中」から逃避している側面が強いかもしれません。子育てにおいても、特定の才能を尖らせるより、勉強も運動も芸術も「バランス良く」こなせる子に育てようとする親が増えています。これも、将来の選択肢を広げるための、教育版インデックス思考と言えます。しかし、その結果、個人の突出した才能が埋もれてしまい、社会全体の活力や創造性が失われているのではないか、という懸念も聞かれます。

日本は、かつての成功体験(高度経済成長期の集中と最適化モデル)から脱却しきれないまま、グローバルな「インデックス化」の波に晒されています。その波に流されるままでは、「凡庸」という名の黒潮の中で、ただ漂うだけになってしまうかもしれません。どのようにこの波と向き合うか、あるいは自らの力で航路を切り開くか、日本社会全体が問われていると言えるでしょう。


第二部 嵐の中の指針:抵抗と集中の灯火

第五章 テクノロジーという名の追い風と逆風:加速する流動性

テクノロジーは、間違いなくこの「インデックスの考え方」という名の波を加速させる主要因です。インターネットは情報の壁を破壊し、市場の流動性を高めました。株式市場だけでなく、あらゆるものが瞬時に取引され、比較され、平均値に収束しやすくなりました。ソフトウェアはビジネスプロセスを標準化し、コモディティ化を推し進めます。そして、近年の主役、AIです。

AIは、膨大なデータを分析し、パターンを認識することに長けています。これはまさに「インデックスの考え方」を究極まで効率化するツールとなり得ます。投資におけるアルゴリズム取引は、既に人間の判断を介さないインデックス戦略の一種です。VCは、AIを使ってスタートアップのデータを分析し、チェックボックスを満たす企業を自動的に抽出するようになるかもしれません。採用活動でも、AIが履歴書をスキャンし、事前に設定された「平均的な優秀な人材」の要件を満たす候補者をフィルタリングする。人間関係ですら、AIが相性を分析し、最適な「インデックス候補」を提示するようになるでしょう。

テクノロジーは、インデックス化をより迅速に、より大規模に、より完璧に実行するための強力なツールとなりつつあります。それは私たちから思考する労力を奪い、決定を回避する選択肢を魅力的に見せます。論文が指摘するように、流動性の高いあらゆる市場でインデックス化は現れ、テクノロジーがその流動性を高めるのです。

しかし、テクノロジーは追い風ばかりではありません。強すぎる追い風は、船を転覆させることもあります。テクノロジー分野への莫大な資金流入は、テック株の評価を「生態系レベルでインフレ」させています。企業価値の本質的な成長を超えて、ただ資金が流れ込むだけで評価が吊り上がる。これは極めて「脆い評価」です。従業員はスタートアップの株式を評価する際に、その企業固有の価値だけでなく、インデックス全体の評価に引きずられていることに気づかねばなりません。VCも、マークアップ(評価額の上昇)がビジネスの根本的な変化を反映しているのか、単なるインデックス効果なのかを見極める必要があります。

AIは「インデックス化」を助長する一方で、もしかしたら「インテリジェントなデザイン」を支援するツールにもなり得るかもしれません。特定の分野に特化し、深い洞察を得るための強力な相棒として。テクノロジーは中立です。それをインデックス化の道具として使うか、集中化の武器として使うか、それは私たち次第なのです。とはいえ、大半の人はラクなインデックス化の道を選ぶのでしょうがね。

コラム:AIにおすすめされた凡庸な人生

もしAIが僕の人生を設計するとしたら、どんな提案をしてくるだろう? きっと「あなたの年齢、収入、性格、過去の行動データに基づき、リスクを最小限に抑え、平均的な幸福度を最大化するポートフォリオは以下の通りです」と示されるに違いない。「キャリア:安定した大企業の事務職と、成長市場の副業を組み合わせ。恋愛:過去のマッチングデータから、あなたと互換性のある複数の相手候補を提示、同時進行で関係を維持し、最も効率的なパートナーを最適化。趣味:世間的に評価が高く、ストレス解消効果が数値化されているものを複数選択。居住地:災害リスクが低く、教育水準が高く、通勤時間が短い場所を推奨…」ああ、なんて合理的で、なんて退屈なんだろう。それが最大効率化された「凡庸な人生」だとしても、僕はそんなインデックスに組み込まれたくはありませんね。まあ、自分で選んでるようで、既に組み込まれてるのかもしれませんが。


第六章 脆いガラス細工:評価と現実の狭間で

インデックスの考え方が市場を支配するようになると、資産や企業の「評価」は、その本質的な価値から乖離しやすくなります。公開市場では、インデックスファンドへの資金流入そのものが株価を押し上げます。企業がどんなに素晴らしい決算を出しても、あるいはどんなにひどい不祥事を起こしても、インデックスに組み込まれている限り、資金は自動的に流入し続ける。これが価格を歪めます。

VCの世界でも同様です。「チェックボックス」を満たしたスタートアップは、たとえビジネスモデルに根本的な欠陥があっても、あるいは市場環境が激変しても、次のラウンドでより高値で資金調達ができます。なぜなら、次の「成長投資家」が待っているからです。彼らはファンダメンタルズよりも、このスタートアップがさらに別の投資家から評価される可能性、つまり「将来のインデックス効果」に賭けているのです。まるで、価値のないガラス玉に、次の買い手がもっと高い値段をつけるだろうと期待して取引を続けるようなものです。どこかで、その期待は破綻します。それがガラス細工のように脆い評価です。

この評価の歪みは、社会全体に影響を与えます。テック企業の従業員は、自社の株価がインデックス効果で過大評価されていることに気づかず、その価値を過信してしまうかもしれません。VCは、投資先の高評価に舞い上がり、リスク管理を怠るかもしれません。個人は、インデックス化されたキャリアパス(例えば、特定の有名企業への入社)が、その実質的な価値(スキル習得や成長機会)以上に社会的な評価を得ていることに気づかないかもしれません。みんなが同じインデックスに乗っているから、比較対象も同じインデックスの中になり、そのインデックス全体が現実から乖離していることになかなか気づけないのです。

2008年の金融危機で、誰もがCDO22のような複雑な金融商品の「原資産」を気にせず、格付け機関や「最適化アルゴリズム」を信頼して大失敗しました。インデックスファンドも、原資産である個別の企業を深く理解せず、「アルゴリズム」や「資金フロー」を信頼しているという点で、当時のCDOに似た脆さを抱えていると論文は警鐘を鳴らします。「誰も細部に注意を払わないと、物事がうまくいかなくなる可能性がある」。そして、その「細部」とは、凡庸という名のゴミが大量に蓄積されている可能性を示唆しています。

コラム:「いいね」という名の評価経済

考えてみれば、SNSの「いいね」もインデックス評価の一種かもしれませんね。投稿の本質的な価値よりも、どれだけ多くの「いいね」を集めたか、どれだけ多くの人にシェアされたか、それがその投稿の「価値」を決める。多くの人に受け入れられる、つまり「インデックスに馴染む」投稿ほど評価される。そこに個性的すぎるもの、ニッチすぎるものは弾かれがちです。それは個人の発信を「凡庸」な平均値へと収束させる圧力を生みます。そして、その「いいね」の数という脆い評価に、多くの人が振り回されている。現実世界の評価も、どんどんSNS化しているのかもしれませんね。悲しい話です。


第七章 航路の選択:インデックスに乗るか、外れるか

世界がパッシブ運用、そしてインデックスの考え方へと移行する中で、私たち個人に残された選択肢は何でしょうか? 論文は二つの大きな航路を示唆しています。「インデックスに参加するか、インデックスを完全に回避するか」です。

インデックスの考え方を採用することは、最も簡単なデフォルトです。ほとんど思考する必要がありません。そして、驚くほど多くの場合、それで「うまくいく」のです。2010年代にテックセクターのインデックスに投資した人は、大きなリターンを得ました。キャリアで「平均的なエリートコース」を選んだ人も、それなりの安定と社会的地位を手に入れたでしょう。インデックスは、ある程度の成功と引き換えに、リスクを最小限に抑えてくれます。それは多くの人にとって、賢明な選択肢であり、否定されるべきものではありません。

さらに、インデックスは「飛び降りポイント」としても機能します。例えば、暗号資産やバイオテクノロジーといった未知のフロンティアの「バスケット(インデックス)」に少額を投資することで、その分野について学び始めるきっかけを得られます。それは、特定のプロジェクトに集中する前に、全体像を掴むための偵察のようなものです。投資の文脈では、インデックスの動きを予測し、それに先んじて行動する「スピード競争」という戦略もあります。ESG投資23などがその例かもしれません。今後インデックスに組み込まれ、プレミアムが付くと予想される分野に、早めに賭けるのです。あるいは、インデックスに組み込まれる前の初期段階のスタートアップに多数投資する、シードVCのショットガンアプローチも、ある種の「将来インデックス化されるもの」への先行投資と言えるでしょう。

一方で、論文はインデックスを完全に信頼することの危険性を強調します。インデックスは表面の下に大量の「ゴミ」を保持している可能性があるからです。凡庸な企業、無意味な仕事、希薄な人間関係…それらも全てインデックスの一部として組み込まれてしまう。全体として平均点は取れるかもしれませんが、個々の構成要素は平均以下かもしれません。そして、もしインデックス全体が歪んでいる場合、その中にいる全員が間違った方向に進んでしまうリスクがあります。

インデックスの中に安住するか、それともリスクを冒して外に飛び出すか。それは個人の目標とリスク許容度によって異なります。しかし、いずれの航路を選ぶにしても、私たちが「インデックスの考え方」という潮流の中にいることを自覚すること。それが最初の、そして最も重要な一歩なのです。

コラム:とりあえず平均を目指してみた結果…

学生時代、僕は「とりあえず平均的な優等生」を目指していました。成績は全科目そこそこ良く、部活もそこそこ頑張り、人付き合いもそこそこ…要するに、どこに出しても恥ずかしくない「バランスの取れた」学生です。そのおかげで、それなりの大学に入り、それなりの企業に就職できました。これは、インデックス戦略としては成功と言えるでしょう。でも、心の中に常に引っかかりがありました。本当にやりたいこと、情熱を傾けられることが見つからない。何かに「集中」した経験がないから、いざという時に「これだ!」と決められないのです。凡庸な平均点は取れたけれど、何か一つでも突出したものが欲しかった。あの時、何か一つに熱狂していれば、人生は変わっていたかもしれない。後の祭りですが、そんな後悔もまた、インデックス人生の副作用なのかもしれません。


第八章 集中という名の羅針盤:凡庸さからの脱却

インデックスの考え方が凡庸さへの道ならば、そこから脱却するための羅針盤は何でしょうか? 論文は明確に示唆しています。それは「集中すること」です。インデックス化を徹底的に拒否した人々、ウォーレン・バフェットやイーロン・マスクは、限られた少数の「銘柄」に、彼らの信念と資産の大部分を集中させました。バフェットはポートフォリオの75%をわずか5つの銘柄に集中させていると言います。マスクは自分の会社の株を買い増し続けています。彼らは、市場全体や多様な可能性に分散するのではなく、「これだ」と信じたものに、全力を投じる戦略を選んだのです。

もちろん、集中は高いリスクを伴います。間違ったものに集中すれば、全てを失う可能性があります。インデックスは障害に対するセーフティネットを提供してくれますが、集中にはそのセーフティネットはありません。しかし、それでも集中する価値があると論文は主張します。なぜなら、みんながインデックスを作成しているとき、つまり集団的なトランス状態が現実を歪めているときこそ、集中が報われるチャンスだからです。皆が平均に群がる中で、一点を深く掘り下げれば、そこに誰も気づかなかった宝が眠っているかもしれない。それは、ハワード・マークスの言葉「バス停で十分に長く待っていれば、バスに乗れることは間違いないだろう」24が示唆するように、焦ってあちこち彷徨うよりも、信じた場所でじっと機会を待つことの重要性に通じます。

「では、どうすれば集中できるのか?」という問いに、論文は具体的な方法を示唆します。まずは小さく始めること。自分が関わるインデックス(仕事、人間関係、趣味など)の中で、どれが自分を「平均以下」に引きずり下ろしているかを見極める。空虚な関係、意味のない投資、満たされない趣味…それらを特定し、切り捨てることから始めるのです。そして、徐々にインデックスを絞り込み、少数の「ベット(賭け)」に集中する。そして、その一つ一つを断固として守る。これは、リスクを恐れず、自分の信念に基づいて行動することです。

インデックスの考え方は鎮静剤であり、信念の代わりとなる。それは心地よい麻酔かもしれません。しかし、麻酔が効いている間に、私たちは自分自身の「特別な何か」を見失ってしまうリスクがあります。インデックスが普遍化する時代だからこそ、凡庸さという名の海で漂うのではなく、自分だけの羅針盤を見つけ、嵐を恐れずに一点を目指す「集中」の勇気が、これまで以上に価値を持つのかもしれません。それは、あなた自身の「超常的な成功事例」を生み出すための、唯一の道なのかもしれません。

コラム:僕が集中できない理由(言い訳)

集中することの重要性は頭では理解できます。でも、なかなかできないんですよね。なぜだろう? リスクが怖い? それもあります。でも、もしかしたらもっと根源的な問題があるのかもしれない。それは、「自分が本当に集中すべき『一点』が見つからない」ということ。あるいは、「これが一点だ」と信じ込めるほどの強い信念を持てないこと。インデックスという名のセーフティネットは、同時に「探し続けること」を許容してくれる言い訳にもなります。もしかしたら、一生探し続ける凡庸な旅を続けるのかもしれない。それはそれで一つの生き方ですが、この論文を読むと、もう少し腹を括って何か一つに賭けてみてもいいんじゃないか、という焦りにも似た感情が湧き上がってきます。まあ、せいぜい小さなことから始めるとしましょうか。例えば、積ん読になっている本を一冊に絞って読み切るとか…それすらも難しいのですが。


今後望まれる研究:未知なる海域への探索

この論文は、現代社会の新たな潮流を捉えましたが、まだまだ多くの問いが残されています。今後の研究は、この「インデックスの考え方」という現象をより深く理解し、それが社会に与える影響を明らかにする必要があります。羅針盤を頼りに、未知なる海域へと探索の船を出すべきです。

「インデックスの考え方」の正確な測定:

この概念が投資だけでなく、VC、キャリア、文化といった異なる領域でどれだけ浸透しているのかを、具体的にどう測定すれば良いのか? 定量的な指標や調査手法の開発が必要です。そして、その浸透度が時間と共にどう変化しているのか、国や文化によってどう異なるのかを比較研究することで、現象の全体像が見えてくるでしょう。

複雑な因果関係の解明:

マクロ要因(低金利、技術進化、リスク回避)とインデックス化現象の間の、複雑な因果関係を解き明かす必要があります。どの要因が最も影響力が大きいのか、それらがどのように相互作用しているのか。統計モデルや、特定の事例を深く掘り下げる質的研究を通じて、そのメカニズムを明らかにする。

「凡庸さ」の影響評価:

インデックス化がもたらす「凡庸さ」は、本当に社会全体にとってネガティブなのでしょうか? イノベーションの種類、経済成長、個人の幸福度、社会の多様性…これらの側面に対して、インデックス化が具体的にどのような影響を与えているのかを、定性的・定量的に評価する研究が必要です。もしかしたら、インデックス化された社会の方が、一部の天才は生まれなくても、大多数の人々が「そこそこ幸せ」になれる、という結果もあるかもしれません。

集中戦略のリアリティ検証:

バフェットやマスクのような成功者の例は素晴らしいですが、彼らは例外中の例外です。ごく普通の個人や中小企業が「集中」戦略をとった場合、成功する確率はどれくらいなのか? どのような条件(スキル、資金、ネットワークなど)があれば成功しやすいのか? そして、失敗した場合のリスクはどれほど致命的なのか? 現実的なトレードオフを明らかにする研究が必要です。

対抗策と新しい航路のデザイン:

もしインデックス化のネガティブな側面が大きいとすれば、それに対抗するための具体的な戦略や政策は何でしょうか? ニッチ市場の育成、特定の専門性を持つ人材への正当な評価、長期的な視点を促す投資制度の設計など。提案された対策が本当に効果があるのか、予期せぬ副作用はないのかを検証する研究が求められます。

AIと人間の意思決定の未来:

AIはインデックス化を加速させるのか、それとも人間の「集中」や「差別化」を支援するのか? AIと人間の意思決定がどのように相互作用し、将来の投資、ビジネス、キャリア、文化をどう変えていくのか。これは、インデックスの考え方というフレームワークを用いて、AI時代の未来を予測するための重要な研究テーマです。

これらの研究は、単に学術的な興味を満たすだけでなく、私たちが不確実な未来を航海する上で、より適切な羅針盤を見つけるための道しるべとなるはずです。


結論:次の潮目へ向かうために

我々は今、「インデックスの考え方」という名の、広範で静かな潮流の中にいます。投資は平均へ、キャリアは分散へ、関係性は多様化へ、そして社会全体はリスク回避へと傾倒しています。これは、テクノロジーによって加速され、富の蓄積によって後押しされる、合理的な選択の帰結かもしれません。凡庸さという名の安全地帯は、多くの人々にとって心地よい安息の場所です。

しかし、この文章が示唆してきたように、凡庸さは代償を伴います。それは、差別化の喪失、評価の歪み、そして何よりも、個人の潜在能力や社会全体の創造性が平均値に引きずり下ろされるリスクです。インデックスの中に安住することは、嵐を避ける賢い方法かもしれませんが、偉大な発見や、圧倒的な成功、あるいは真に深い満足感は、しばしば嵐の中にこそ隠されているものです。

結論として、「インデックスの考え方」は、現代社会を理解するための重要な鍵概念です。それは多くの側面において効率的であり、多くの人にとって合理的な選択肢です。しかし、それが全てではない、むしろ「それだけでは足りない」ということを私たちは認識する必要があります。凡庸さの海に流されるままでは、自らの航路を見失ってしまうからです。

求められるのは、インデックスを盲目的に崇拝することでも、感情的に拒否することでもありません。いつ、どの領域でインデックスの考え方を賢く「活用」し、そしていつ、どの領域でリスクを恐れずに一点に「集中」するのか。そのバランスを、自らの信念と目標に基づいて判断する「知恵」と「勇気」です。

嵐は恐ろしい。しかし、嵐の中でしか見えない景色があります。インデックスという名の安全な港を出て、荒波に立ち向かうこと。それが、凡庸さという名の退屈な海から抜け出し、あなた自身のユニークな航路を切り開くための、唯一の道かもしれません。

この文章が、あなたが自身の航路を見つめ直す、ささやかな羅針盤となれば幸いです。潮目は変わりつつあります。次の航海は、あなた自身の手に委ねられているのです。


補足資料:航海の記録と装備

 

補足1:三人の羅針盤(ずんだもん・ホリエモン・ひろゆき風感想)

この「インデックスの考え方」という論文(あるいは記事)について、それぞれの羅針盤が示す感想を聞いてみましょう。

ずんだもんの感想

え〜、この論文、インデックスの考え方についてずんだもんも読んでみたのだ。投資で、たくさんに分散するインデックスファンドっていうのが、最近はすっごく流行ってるらしいのだ。手数料が安くて、あんまり考えなくても市場平均のリターンがもらえるから、ずんだもんみたいに難しいこと分かんない人でも安心なのだ!

でも、この論文では、それが投資だけじゃなくて、いろんなところに広がってるって言ってるのだ。ベンチャー企業とか、お仕事とか、結婚とか、勉強とか、なんでもかんでも「一つのことに集中しないで、たくさんに手を出す」みたいな考え方になってるってことなのだ。

それって、リスクが減らせていいことなのかな?って思ったけど、論文では「みんながそうすると、平均的になっちゃって、なんかこう、すごいこととか、特別なことが生まれにくくなるかも」って言ってるのだ。マスクさんとかバフェットさんみたいに、一つのことに「これだ!」って集中した人が、大きな成功をするんだって。

ずんだもんも、枝豆のことだけに集中してたら、ずんだ餅になれたのだ!インデックスの考え方も便利そうだけど、たまには「これ!」っていうのを見つけて、集中してみるのも大事なのかもしれないのだ。なんだか、ちょっと考えさせられちゃったのだ。

ビジネス用語多用ホリエモン風の感想

あー、これね、インデックスの考え方。要するに、投資の世界でパッシブ運用がスタンダードになったのが、VCとかスタートアップ、極めつけはキャリア選択から恋愛まで、全部に波及してるって話だろ。本質を突いてるね。

昔ながらのアクティブ運用?アホか。あんなのコスパ最悪。手数料ボッタクられて、市場平均にも勝てないんだから意味ないんだよ。個人投資家はS&P500でも積立とけって言ってんじゃん、ずっと。あれがまさにインデックス思考の勝利。

で、VCも一緒。昔は目利きとか言ってたけど、結局ハイテク企業の成長に乗っかる「チェックボックス投資」で儲かる時代になった。だって資本がジャブジャブに入ってくるから、グロース(成長)してれば評価上がるんだもん。これはもうキャピタルゲインゲーム。本質的なバリュー(価値)なんて二の次。いかに早くイグジット(出口戦略)できるか、次の投資家が買ってくれるか、それだけ。

スタートアップ?従業員のロイヤリティ(忠誠心)なんて幻想。サクッと転職してストックオプション(株式報酬)をインデックス化する方が合理的。創業者もエンジェル(個人投資家)とかやってリスク分散?ダサいね。本当にイケてる起業家は自分の事業にフルコミット(全力投球)してるよ。

文化?結婚とかキャリアとか、みんな「平均」に収まろうとしてる。リスク取りたくない、守りに入ってるってこと。富が蓄積されて失うものができたから?まあ、それもあるだろうけど、結局は自分で考えて「これ!」って決められない、決定回避バイアス(判断を避ける傾向)が強まってるだけだろ。

結論、インデックスの考え方はラクだし、ある程度のラインまでは効率的。でも、突き抜けることは絶対ない。圧倒的な成功を収めるには、他人と同じことをやってちゃダメ。異物になれ。一点突破だろ。堀江貴文はインデックス?バーカ、全部集中、オールイン(全額投資)だよ。

西村ひろゆき風の感想

えーっと、なんかインデックスの考え方っていう論文、読んだんですけど。まあ、要するに投資とかで「色んなものに分散しとけば、そんなに大きく損もしないし、めちゃくちゃ儲かることもないけど、そこそこいけるよね」みたいな考え方が、なんか、仕事とか、人生とか、色んなところに広がってるって話、なんすかね。

で、それが凡庸さを生むとか、差別化できなくなるとか、まあ、言いたいことは分からなくもない、というか。だって、みんなが同じようなことしてたら、そりゃあ平均になっちゃうじゃないですか。それって、別に驚くことでもないし。

なんか、マスクさんとかバフェットさんとか、成功した人は集中してるとか言ってますけど、まあ、そういう人もいるよね、ってだけで。みんながみんな集中して成功できるなら、そもそもインデックス投資なんて流行らないわけで。大多数の人は、集中しても失敗する確率の方が高いから、分散してる、っていう、ただそれだけの話なんじゃないですかね。

あと、文化がインデックス化されてるとか。Tinderで色んな人と会うのがインデックス?え、それって単に選択肢が増えたってだけで、別に考え方とか関係なくないですかね?結婚しないリスクとか、独身のリスクとか、色々考えると、別にリスク分散しようとしてるわけでもないような。

まあ、何にせよ、インデックスの考え方でも、集中する考え方でも、自分がどういう結果を求めてるか次第で、どっちがいいかは変わるんじゃないですかね。大きく負けたくないならインデックスだし、一発当てたいなら集中。それだけのことを、なんか小難しく言ってるだけな気がしましたけど。別にどっちが正解とか、ないと思うんすよね。知らんけど。


補足2:インデックス史年表

「インデックスの考え方」がどのように生まれ、広がってきたのか、歴史の波を遡ってみましょう。これは投資におけるインデックスの歴史ですが、その思想が社会に波及していく下地となった出来事と言えます。

出来事
1896年 ダウ・ジョーンズ工業平均株価の開始(最初の株価指数)。市場のベンチマーク概念の誕生。
1960年 エドワード・レンショーとポール・フェルドスタインがインデックスファンドの最初の理論モデルを提案。
1967年 クオリデックス・ファンド社設立。インデックスファンドの早期の試み開始。
1971年 ウェルズ・ファーゴがNYSE全株を追跡する早期インデックスファンド(機関投資家向け)発売。
1972年 クオリデックス・ファンドがDJIAを基にしたインデックスファンドをリリース。
1973年 アメリカン・ナショナル・バンクが最初のS&P 500インデックスファンドを開発(機関投資家専用)。
1973年 バートン・マルキエル「ウォール街を歩けば」出版。インデックス投資の重要性を一般に提唱。
1974年 ジョン・ボーグルがバンガード・グループ設立。低コストインデックスファンド普及の立役者に。
1975年 バンガードが世界初の一般投資家向けインデックス型相互基金「ファースト・インデックス・インベストメント・トラスト」創設。
1976年 ファースト・インデックス・インベストメント・トラストが公開発売。
1981年 Dimensional Fund Advisors(DFA)設立。インデックスベースの資産クラスファンド開発。
1986年 バンガードが最初の債券インデックスファンド開始。
1990年 カナダで最初のETF発売(TIPs 35)。
1993年 アメリカで最初のETF発売(SPDR S&P 500 ETF Trust、SPY)。
1996年 バークレイズ・グローバル・インベスターズ(後のブラックロック)がETF提供開始。
2000年 バンガード500インデックスファンドがマジェラン・ファンドを資産規模で上回る。インデックス投資の勝利を象徴。iShares Core S&P 500 ETF(IVV)取引開始。
2001年 バンガードがETFの提供開始。iShares MSCI EAFE ETF(EFA)発売。
2002年 iShares Barclays Aggregate Bond ETFなど、債券ETFが人気を博す。
2006年 ProSharesが最初のレバレッジ/インバースETF発売。より複雑なインデックス商品登場。
2008年 金融危機発生。複雑な金融商品(CDOなど)の崩壊。インデックスへの過信との比較論を生む。
2010年代 低金利環境下でインデックスファンドへの資金流入が加速。VCにおけるチェックボックス投資、キャリアのインデックス化など、他領域への波及顕著に。
2019年 SECがETFルールを簡素化。多様なETFの登場を後押し。
2021年以降 暗号資産(ビットコイン、イーサリアムなど)を対象としたETFが承認・取引開始。新たな資産クラスのインデックス化が進む。

インデックスは、金融システムの中で着実にその勢力を拡大し、やがてその思想を社会全体に広げていったのです。


補足3:デュエマカード化計画

この論文の内容を、少し遊んでデュエル・マスターズのカードにしてみましょう。凡庸さという名の海に漂うクリーチャーのイメージです。

《受動性の海 インデックス・マインド》

文明: 水文明
コスト: 5
カードタイプ: クリーチャー
種族: メタリカ/メカ・デル・ソル
パワー: 4000
能力:
パッシブ・フィールド:このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手のクリーチャーを1体選び、次の相手のターンの終わりに持ち主の手札に戻す。

詳細これは、市場の流動性の高さや、特定の対象へのコミットメントを一時的に回避させる、インデックス思考の「距離を置く」効果を表現しています。

凡庸なる潮流:このクリーチャーが攻撃する時、自分の他のクリーチャーをすべてタップしてもよい。そうした場合、自分のクリーチャーすべては、次の相手のターンのはじめまで、パワーが+2000される。
詳細インデックス化は、個々の突出は生まない代わりに、全体(ポートフォリオや集団)の平均的な底上げを図る性質を表しています。パワーアップは一時的であり、継続的な決定打にならない「凡庸さ」を示唆します。

平均への収束:このクリーチャーがバトルゾーンを離れる時、自分の手札にあるすべてのクリーチャーカードを公開する。その中の種族が3種類以上であれば、カードを1枚引く。
詳細リスク分散(手札の種族多様性)の結果、小さなリターン(1ドロー)が得られる可能性を示しています。大きなリスクを取らず、小さな利益を積み重ねるインデックス思考の帰結です。

全体として、単体での攻撃力は低いが、場にいることで他のクリーチャーに恩恵を与え、多様性(リスク分散)によって小さなアドバンテージを得る、というインデックス的な性質を表現してみました。相手に決定的な打撃を与えるより、場を維持し、手札を整えることで長期的な有利を目指す、そんなクリーチャーです。


補足4:浪速の一人ノリツッコミ

この論文テーマで、僕の心の中の大阪人が騒ぎ出すんや…!

「えー、今日のテーマは『インデックスの考え方』やて? なんやそれ、投資の話ちゃうんか? え、投資だけちゃうの? 仕事とか、恋愛とか、果ては哲学までインデックス化? …マジかよ! それって、要するに『一本足打法は危ないから、いっぱい手ぇ出しとけ、そしたら平均点は取れるやろ』みたいなことやろ? え、ワイ、Tinderで片っ端から『いいね』押してるけど、それインデックス投資ってことやったんか!? しかも、それで手応えなしってことは、ワイのインデックス投資、リターン最悪やんけ!

そんで、この論文、インデックス化すると凡庸になるって言うてるやん。みんな平均狙ったら、そりゃ突出したもんなんて生まれへんわな。ワイのキャリア? 色んな仕事かじって、どれも中途半端…あっ、これもインデックス化の結果や! そんで凡庸て!

でも待てよ? 凡庸がそんなに悪いか? 別にええやん、普通が一番やろ! 突出して失敗して借金まみれになるより、そこそこでええねん! …いやいや、そんなん言うてるからアカンねん! 平均で満足したらあかん! なんか一つでもええから、これは!っていうもん見つけて、そこに集中せなあかんねん! ウォーレン・バフェットかイーロン・マスクになれ! って、いやいや、あの人らは規格外やんけ! ワイみたいな凡人が集中したら、大火傷して再起不能になるリスクの方が高いわ!

結局、インデックスも集中も、どっちも怖いねん! どうすりゃええねん! …あーもう、考えすぎたら頭痛いわ。とりあえず、今日もS&P500にちょっと積立とくか…って、結局インデックスに逃げてるやん! なんでやねん!


補足5:凡庸大喜利

「インデックスの考え方が浸透した現代社会で、思わずニヒルな笑みがこぼれた瞬間とは?」

回答:

  • 会社の目標設定、全員一律「市場平均」で満点になった時。
  • 婚活アプリで「趣味:多趣味」「特技:オールマイティ」のプロフィールばかり並んでいた時。
  • レストランで「おすすめメニュー」を聞いたら「全て平均的に美味しいです」と返された時。
  • 子供の将来の夢、クラス全員が「安定した公務員か大企業社員」と答えた時。
  • AIが生成した「最も平均的な理想の異性像」が、どう見ても地元の駅前でよく見かける人だった時。
  • SNSでバズってる投稿が、どこかで見たような無難な情報ばかりだった時。
  • 「あなたの個性は?」と聞かれて、「平均的な日本人です」と自信満々に答えた時。

補足6:ネットの喧騒と反論

この論文のような議論は、ネット上でも様々な反応を引き起こしそうです。代表的なネットコミュニティの反応を予想し、それに対する反論(あるいは皮肉)を加えてみましょう。

なんJ民

  • 予測されるコメント:「なんやこれ、結局ワイらのインデックス投資は正解やったんか?S&P500握っとけばええんやろ?アクティブ(笑)とか情弱すぎやろwww 株も女も分散投資や!特定の銘柄(特定の女)に集中して爆死とかアホらしいわ。ワイ、Tinderでインデックス投資した結果www」
  • 反論:まぁ、そうですね。多くの人にとってインデックス投資は合理的で成功していますし、Tinderでの分散も選択肢を増やすという意味ではインデックス的かもしれません。ただ、論文が言いたいのは、それが「最適解」である一方で、他の領域でもインデックス化が進むことで「凡庸」になってしまうリスクがある、ということです。爆死は避けられるかもしれませんが、「超成功」もまた掴みにくい。どちらを取るか、ですね。

ケンモメン

  • 予測されるコメント:「はいはい、どうせパッシブ運用で情弱から搾取する構造の話でしょ?GAFAとかのクソデカ企業がインデックスファンドに取り込まれてさらに肥大化、庶民は低賃金で搾取され続け、リスク取れないように仕向けられて管理される。自由意志(笑)インデックスに組み込まれた奴隷だよ。抵抗するならインデックス外のマイナー通貨とかに全ツッパしかねえな。AIも結局インデックス強化ツールだろ。」
  • 反論:なるほど、巨大企業への資金集中や管理社会化への懸念は理解できます。インデックスファンドが既存の巨大企業をさらに強固にする側面は否定できません。しかし、インデックス化は手数料低減や投資の民主化といったメリットもあります。また、リスク回避志向は体制の陰謀というより、社会全体の変化から自然に生まれる側面も。マイナー通貨への全ツッパは、インデックス化の対極にある「集中」ですが、同時に最も破滅的な結果を招きやすい危険な戦略ですね。AIについては、確かに効率化ツールですが、使いようによっては個人の力を高める可能性も…と希望的観測を述べておきましょうか。

ツイフェミ

  • 予測されるコメント:「『生涯パートナーが1人割り当てられるのが一般的だった』って何?女性は結婚がゴールで、Tinderで多様化とか言われても、結局ルッキズムと男の支配強化でしょ。キャリアのインデックス化とか言ってるけど、女性は育児や家事の負担でリスク取れないから『バランスの取れた』無難なキャリアを選ばざるを得ない構造を無視してない?文化のインデックス化=均質化・管理社会化、女性の個性や多様性が失われるリスクは?」
  • 反論:論文はジェンダーに特化した議論ではありませんが、ご指摘のように社会構造的な要因、特に女性が直面する育児や介護といった負担が、キャリアや人生設計におけるリスクテイクを難しくし、「インデックス化された(無難な)」選択を選ばざるを得ない状況を生み出している側面は確かにあります。文化のインデックス化が均質化を招く懸念は論文でも示唆されています。男性主導社会の構造問題とインデックス化の傾向は、相互に影響し合っている可能性はありますね。

爆サイ民

  • 予測されるコメント:「結局、金ねー奴はインデックス投資とかいうよく分からんもんでカスみたいなリターンしか得られねーってことだろ?儲けるのは上澄みの一握りのアクティブな連中だけ。地元の中小企業応援する方がよっぽどマシだわ。Tinder?あんなんでまともな相手見つかるわけねーだろ、地元で飲み屋行け飲み屋!」
  • 反論:インデックス投資は多くの人にとって手軽に市場平均を得られる有効な手段であり、必ずしもカスリターンではありません。長期で見ればアクティブより良い成績を収めることも多いです。地元の中小企業応援は素晴らしいことですが、投資としてはリスク集中です。Tinderや飲み屋、それぞれ出会いの形としてインデックス的か集中的かという違いはあれど、まともな相手が見つかるかは結局本人次第でしょう。論文は現象を分析しているのであって、特定の投資先や出会い方を推奨・否定しているわけではありませんよ。

Reddit / Hacker News

  • 予測されるコメント:「Interesting take on how the passive investment trend is mirrored in other domains like VC, startups, and even culture. The 'checkbox' investing point in VC resonates. It feels like a natural consequence of abundant capital and information symmetry – if everyone knows what a 'good' startup looks like, they all converge on similar strategies. The point about 'ecosystem-level inflation' in tech due to capital inflow is critical. How does AI factor into this? Does it make 'checkbox' strategies even more efficient, or does it unlock new avenues for 'intelligent design' and concentrated bets outside the index? Also, great point on the barbell strategy vs. index mindset. Any data on the correlation between career indexation (e.g., consulting/banking paths) and long-term career satisfaction/innovation?」
  • 反論:Yes, the points about information symmetry, capital inflow, and tech inflation are spot on. AI's role is indeed a key question – it could amplify index strategies or enable focused ones. The barbell strategy analogy is also powerful. Regarding career indexation and satisfaction/innovation, the paper doesn't provide data, but it's a crucial area for future research. The current text is more conceptual, laying the groundwork for these deeper empirical investigations. Thanks for highlighting these points.

目黒孝二風書評

  • 予測されるコメント:「…さて。『インデックスの考え方』、ですか。ほう。随分とまあ、今どきの言葉を並べて、さも新しい現象を捉えたかのような体裁ですがね。蓋を開けてみれば、結局のところ、太古の昔から変わらぬ人間の性(さが)、すなわち『リスク回避』と『事なかれ主義』を、現代の金融市場やらテクノロジーの進化といった耳障りの良い言葉でコーティングし直しただけの話ではありませんか? 投資でインデックス?キャリアでポートフォリオ?結構結構。しかしね、そうして『平均』という名のぬるま湯に浸かり続けた先に何があるのか。凡庸さ、退屈、そして何よりも、己という『個』を失った空虚さだけではないでしょうか。バフェット?マスク?彼らは『常識』というインデックスから徹底的に外れた『変人』であったからこそ、あの位置に辿り着けたのですよ。まあ、多くの凡人は、それでもインデックスの中に安住するのでしょうがね。…ああ、虚しい虚しい。」
  • 反論:ご指摘、痛み入ります。人間の根源的な性向が背景にあることは疑いようもありません。しかし、その「性向」が現代のシステムや技術によって増幅され、かつてないほど社会全体に深く広く浸透しつつある、という現代的な現象を捉えようとした点に、ささやかながら筆者の意図がありました。凡庸さの中に安住することの虚しさは同感ですが、大多数の人間にとってその「安住」が、ある種の合理性に基づいていることもまた事実なのです。凡庸さの海も、時に穏やかな航路を提供してくれる。ただし、そこから何か偉大なものが生まれるわけではない、という皮肉を込めております。虚しい、結構なことです。その虚しさが、凡庸からの脱却の契機となることを願うばかりです。

ネットの反応は、良くも悪くも極端になりがちです。論文の本質を見抜くコメントもあれば、自身のフィルターを通して歪曲するコメントもあります。これもまた、多様な意見がインデックス化された(そしてしばしば分断された)現代ネット社会の一断面と言えるでしょう。


補足7:学問の航路:クイズとレポート課題

この論文(記事)の内容を理解できたか、試してみましょう。高校生向けのクイズと、大学生向けのレポート課題です。

高校生向け4択クイズ

問1:論文で説明されている「インデックスの考え方」とは、主にどのような考え方ですか?
A. 高いリスクを取って大きな利益を目指す
B. 特定の分野に集中して専門性を深める
C. リスクを分散し、平均的な結果を目指す
D. 最新技術を使って市場を予測する

解答を見るC

問2:なぜ多くの人がインデックスファンドに投資するようになったと論文では述べられていますか?
A. 手数料が非常に高いから
B. 特定のアクティブファンドだけが市場に勝てるから
C. 平均的なリターンが期待でき、手数料が低いから
D. 短期的な売買で簡単に利益が出せるから

解答を見るC

問3:論文では、投資だけでなく様々な分野で「インデックスの考え方」が浸透していると指摘しています。次のうち、その例として挙げられていないものはどれですか?
A. 様々な会社やプロジェクトに関わるキャリアの選択
B. 一つの分野に特化した趣味を極めること
C. マッチングアプリで多くの人と出会うこと
D. バランスの取れた習い事を子供にさせること

解答を見るB

問4:論文で、「インデックスの考え方」から脱却し、成功した例として名前が挙げられている人物は誰ですか?
A. ウォーレン・バフェットやイーロン・マスク
B. チャールズ・ダーウィンやアイザック・ニュートン
C. アインシュタインやキュリー夫人
D. シェイクスピアやベートーヴェン

解答を見るA

問5:論文では、「インデックスの考え方」に頼りすぎることにどのような問題がある可能性を示唆していますか?
A. リスクが高すぎて損失を出しやすい
B. 平均的な結果しか得られず、差別化が難しくなる
C. 手数料が高く、儲けが出ない
D. 投資の意思決定に時間がかかりすぎる

解答を見るB

いかがでしたか? 全問正解できたら、凡庸からは少し抜け出せているかもしれませんね。

大学生向けレポート課題

以下の課題から一つを選び、本論文(記事)の内容を参考にしつつ、関連する先行研究や具体的な事例を調査して、論理的に考察・論述しなさい(目安:2000字〜4000字)。

  1. 本論文(記事)で述べられている「インデックスの考え方」は、あなたのキャリア形成や人生設計にどのように影響を与える可能性があると考えられますか? 具体的な自己分析を交え、リスクと機会の両面から論じなさい。
  2. テクノロジー(特にAI)の進化は、「インデックスの考え方」を今後どのように変化させると予測されますか? 投資市場、労働市場、社会文化などの側面から具体的な変化を考察し、それが個人や社会に与える影響について論じなさい。
  3. 本論文(記事)は「凡庸さ」をインデックス化のネガティブな側面として強調していますが、社会全体における「平均化」や「リスク低減」は、どのようなメリットをもたらす可能性があると考えられますか? メリットとデメリットを比較検討し、現代社会におけるインデックス化の意義について多角的に論じなさい。
  4. 本論文(記事)で引用されているハワード・スティーブンソンの起業家精神(機会追求)と管理的行動(資源活用)の対比は、「インデックス化」と「集中」という概念とどのように関連づけられますか? 企業経営や個人の行動における「探索」と「活用」のバランスという観点から論じなさい。
  5. 日本社会における「インデックスの考え方」の浸透は、アメリカと比べてどのような特徴があると考えられますか? 投資慣習、労働文化、教育システム、社会心理などの違いを踏まえ、具体的な事例を挙げながら比較考察しなさい。

さあ、あなたの「集中」力と「探索」力を試す時です。頑張って凡庸なレポートにならないようにしてくださいね。


補足8:羅針盤を広める:SNS戦略と分類

せっかく書いた(読んだ)のですから、この議論を広めてみましょう。ネットというインデックス上で、この文章が少しでも多くの人の目に触れるように、いくつかの羅針盤を用意します。

潜在的読者のためのキャッチーなタイトル案

  • インデックスが世界を支配する:受動性の時代到来か?
  • 「平均」を目指す時代:投資、キャリア、そして文化のインデックス化
  • リスク回避社会の末路:インデックスの影に潜む凡庸さ
  • その「分散」、本当に必要ですか?:インデックスの考え方を超えて
  • テクノロジーが加速する受動性:インデックス・マインドセットの衝撃
  • ウォーレン・バフェットとTinderの共通点?:「インデックスの考え方」が示す現代社会
  • 凡庸さの時代へ:インデックス投資からキャリア、そして人生へ
  • インデックス思考の罠:なぜ私たちは「平均」を選んでしまうのか

…どれも凡庸を打ち破るほどキャッチーではないかもしれませんね。残念です。

SNSなどで共有するときに付加するべきハッシュタグ案

#インデックス投資 #パッシブ運用 #VC #スタートアップ #キャリア論 #働き方 #リスク回避 #分散投資 #集中投資 #現代社会 #文化論 #テクノロジー #AI #資本主義 #経済学 #経営戦略 #自己啓発 #投資戦略 #人生戦略 #凡庸さ #差別化 #TheIndexMindset

ハッシュタグをたくさんつけるのも、ある種のインデックス戦略かもしれません。「とりあえず関連ありそうなタグを全部つけて、誰かの目に止まる確率を上げる」…まさに凡庸な戦略です。でも、やらないよりはマシでしょう。

SNS共有用に120字以内に収まるようなタイトルとハッシュタグの文章

投資の「インデックス思考」が社会全体に浸透?リスク回避と分散がもたらす凡庸さの時代を考察。あなたのキャリアも人生もインデックス化されてない?
#インデックス投資 #リスク回避 #現代社会 #キャリア戦略 #TheIndexMindset

これで、SNSのインデックスに組み込まれる確率は少し上がったでしょうか。

ブックマーク用にタグを[]で区切って一行で出力(タグは7個以内、80字以内、]と[の間にスペースを空けない)。

[インデックス][リスク回避][VC][キャリア][文化][現代社会][凡庸]

この記事に対してピッタリの絵文字

📈📊📉 🧠🤔💡 🕸️🔗🌐 🏢💼🧑‍💻 👨‍👩‍👧‍👦❤️📱 🚶‍♀️🚶‍♂️🚶 🦁🎯🏹 🛡️🩹

これらの絵文字は、視覚的なインデックスとして機能し、記事の内容を瞬時に伝える手助けをしてくれるはずです。

この記事にふさわしいカスタムパーマリンク案(使用してよいのはアルファベットとハイフンのみ)。

the-index-mindset-sinking-average
passive-era-vanity
beyond-index-mindset
risk-aversion-culture
tech-fueled-mediocrity

どれも悪くないですね。凡庸ではないことを祈ります。

この記事の内容が単行本ならば日本十進分類表(NDC)区分のどれに値するか提示。

[330][経済]

金融・経済の視点から、社会や個人の行動様式を分析する内容として、経済学のカテゴリが最も適切でしょう。

この記事をテーマにテキストベースでの簡易な図示イメージを生成。

 

+-----------------+ +-----------------+ +-----------------+ +-----------------+ +-----------------+
| 投資 (Index) | ---> | VC/スタートアップ | ---> | キャリア/個人 | ---> | 文化/社会 | ---> | 凡庸さ |
| (低コスト,分散,平均)| | (チェックボックス,分散) | | (多様化,分散) | | (リスク回避,均質化)| | (突出なし,安全) |
+-----------------+ +-----------------+ +-----------------+ +-----------------+ +-----------------+
^
|
+-----------------+
| テクノロジー/AI |
| (流動性,効率化) |
+-----------------+

 
↑
                        |
                        | (対抗/代替)
                        |
                +-----------------+
                | 集中 (Focus)    |
                | (信念,高リスク高リターン)|
                +-----------------+
    

インデックス化の流れが投資から始まり、様々な領域へ波及し、凡庸さにつながる様子と、それに抗う集中という対抗概念を単純化して図示しました。凡庸ですが、分かりやすいかもしれません。

 

巻末資料:旅路の手がかり

 

参考リンク・推薦図書:過去の船乗りたちの記録

この航海の参考に、あるいは更なる深淵を覗き込むために、いくつかの資料をご紹介します。これらの文献は、インデックスの海図を描く上で、重要な道標となってくれるでしょう(外部サイトへのリンクは、その内容や権威性に基づいて慎重に検討し、今回は推薦図書のみリストアップします。)。

推薦図書

  • 『敗者のゲーム』チャールズ・エリス
    インデックス投資の有効性を説く古典中の古典。なぜアクティブ運用が難しいのか、冷静に分析されています。インデックスの海の入り口を知るには必読でしょう。
  • 『ウォール街のランダム・ウォーカー』バートン・マルキール
    こちらもインデックス投資のバイブル。市場の効率性について分かりやすく解説し、凡庸ながらも堅実な航路を示唆します。
  • 『ファスト&スロー』ダニエル・カーネマン
    人間の非合理的な意思決定について深く理解できます。なぜ私たちはリスクを避け、インデックスという安易な道を選んでしまうのか、その心理メカニズムを知る手がかりになるでしょう。
  • 『21世紀の資本』トマ・ピケティ
    資本主義における富の集中と格差を膨大なデータで分析。パッシブな資本収益率が労働による所得を上回る傾向は、インデックス化された不労所得が支配する未来を示唆しているかもしれません。
  • 『ブルシット・ジョブ』デヴィッド・グレーバー
    現代社会に蔓延する「どうでもいい仕事」について論じます。キャリアのインデックス化が、こうした無意味な仕事の「ポートフォリオ」を増やす一因になっている可能性を考える上で示唆深いです。
  • 『起業家精神とは何か』ハワード・スティーブンソン(関連書籍や論文)
    論文のコメント欄で言及された、起業家精神と管理的行動の対比に関する古典。集中と分散、探索と活用の議論を深める上で重要です。
  • 『妻に痩せろと言われた僕の1年』目黒孝二
    (冗談めかしてですが)凡庸な日常を独自の視点で切り取る筆致は、平凡さの中にもユニークさを見出すことの困難さと可能性を示唆…というのは穿ちすぎですね。でも、彼の書評のスタイルはニヒルさの参考になるかもしれません。

これらの書籍は、インデックスの海を様々な角度から眺めるための双眼鏡となるはずです。読むかどうかは、あなたの「集中」力にかかっていますが。

ウェブ上の参考リンク

論文で引用されている元の記事など、ウェブ上の参考資料です。

※リンク先の内容は時間経過により変更される可能性があります。また、個人のブログや記事は情報の正確性を保証するものではありません。


用語索引・用語解説:海の言葉事典

この記事で使われた専門用語や、少し分かりにくい言葉を、アルファベット順に並べて解説します。凡庸な用語集ですが、航海のお供にどうぞ。

  • アクティブ運用 (Active Management) [第一章]:市場平均(インデックス)を上回るリターンを目指す投資手法。ファンドマネージャーが個別銘柄の選択や売買タイミングの判断を積極的に行います。高い手数料がかかることが多いですが、多くの場合はインデックスに勝てないとされます。
  • Barbell戦略 (Barbell Strategy) [脚注5]:投資や人生において、非常に安全性の高い部分と、非常にリスクの高い部分に資産やリソースを集中させ、中程度のリスクのものを避ける戦略。凡庸さを避け、極端なリターンを目指す考え方の一つです。
  • CDO (Collateralized Debt Obligation) [脚注2]:債務担保証券。住宅ローン債権などを束ねて組成される複雑な金融商品。2008年の金融危機の主因の一つとされました。その「中身(原資産)」よりも「格付け」といった表面的な評価を信頼した多くの投資家が損失を被り、インデックスへの過信と比較されます。
  • チェックボックス投資 (Checkbox Investing) [第二章]:ベンチャーキャピタル投資において、スタートアップが特定の財務指標やビジネスモデルの基準(チェックボックス)を満たしているかどうかで投資判断を行う手法。本質的な価値やプロダクトの独自性よりも、定量的な基準を重視する傾向。
  • コモディティ化 (Commodification) [第二章]:特定のサービスや製品の差別化が失われ、供給者間の違いがなくなって、価格競争に陥り、付加価値が低下すること。VCの仕事が、目利きからチェックボックス確認作業になり、コモディティ化しつつあると論じられています。
  • DCFモデル (Discounted Cash Flow Model) [脚注2]:企業の将来的なフリーキャッシュフロー(自由に使えるお金)を予測し、それを現在の価値に割り引いて企業価値を算出する評価手法。企業のファンダメンタルズに基づいた、本来的な価値評価に用いられます。
  • ESG投資 (Environmental, Social, Governance Investing) [第七章]:環境、社会、企業統治といった要素を考慮して行う投資。近年、持続可能な社会への貢献と投資リターンの両立を目指すとして注目されており、関連する指数(インデックス)も多く作られています。
  • ファンダメンタルズ (Fundamentals) [脚注4]:企業や経済の基礎的な条件。企業の業績、資産、財務状況、業界動向などが含まれます。本来、株式投資は企業のファンダメンタルズに基づいて行うべきですが、インデックス化が進むと資金フローが価格を歪める要因となります。
  • ヘッジ (Hedge) [脚注8]:将来の価格変動リスクを回避するために行う取引や戦略。例えば、株式投資における分散投資は、特定の銘柄が値下がりするリスクを分散させるヘッジとなります。
  • インデックス (Index) [第一章]:特定の市場や資産クラスの動きを示す指標。日経平均株価、S&P500、TOPIXなどがあります。インデックス投資は、この指数に連動する運用を目指します。
  • インデックスファンド (Index Fund) [第一章]:特定の市場指数(インデックス)に連動する運用成績を目指す投資信託やETF。個別銘柄の分析は行わず、指数構成銘柄を組み入れることで市場全体の平均リターンを得ようとします。
  • インテリジェントなデザイン (Intelligent Design) [第三章]:特定のスタートアップやアイデアが、偶然の進化ではなく、意図的な創造(優れた創業者とユニークなアイデアの組み合わせなど)によって生まれるという考え方。インデックス的な平均から生まれるのではなく、特別な要因が必要であると示唆します。
  • NRR (Net Revenue Retention / 売上維持率) [脚注6]:SaaS企業などが、既存顧客からの売上をどれだけ維持・増加させているかを示す指標。顧客単価の増加やアップセルを含み、解約による減少を差し引いたもの。VCが重視するチェックボックス項目の一つです。
  • パッシブ運用 (Passive Management) [第一章]:特定の市場指数(インデックス)に連動することを目指す投資手法。アクティブ運用とは対照的に、市場平均を上回ることは目指しませんが、低コストで運用できるという特徴があります。インデックス投資と同義で使われることが多いです。
  • ポートフォリオ (Portfolio) [脚注7]:投資家が保有する金融資産(株式、債券、投資信託など)の組み合わせ。リスクを分散するために、様々な資産クラスや地域に分散させることが推奨されます。記事では、キャリアや人間関係についても「ポートフォリオ」という言葉を用いてインデックス化を論じています。
  • プロダクト・マーケット・フィット (Product-Market Fit) [脚注5]:スタートアップが開発した製品やサービスが、特定の顧客層や市場のニーズに合致し、受け入れられている状態。スタートアップの成功にとって最も重要な要素の一つとされます。
  • 再帰性 (Reflexivity) [第一章]:ジョージ・ソロスが提唱した概念で、市場参加者の認識や行動が、市場そのものの状況に影響を与え、その変化がさらに市場参加者の認識や行動に影響を与える、という循環的な関係のこと。インデックスファンドへの資金流入が株価を押し上げ、さらに資金流入を呼ぶ現象などが例として挙げられます。
  • 二次ベスティング (Secondary Vesting) [脚注9]:スタートアップの従業員に付与された株式(ストックオプションなど)について、会社への貢献度や長期在籍など、通常の勤務期間だけでなく、他の条件(例えば、特定のプロジェクトの成功など)に基づいて権利確定(ベスティング)を早める仕組み。
  • 二次販売 (Secondary Sale) [脚注11]:未公開企業(スタートアップなど)の既存株主(創業者、従業員、初期投資家など)が、株式公開(IPO)前に、別の投資家(VC、事業会社、個人投資家など)にその株式の一部を売却すること。これにより、早期に資金を回収し、リスクを軽減できます。
  • シードステージ (Seed Stage) [第二章]:スタートアップの成長段階で最も初期の段階。アイデアを形にし、製品開発や市場適合性の検証を行う時期。リスクが最も高い時期ですが、成功すれば大きなリターンが期待できます。
  • ストックオプション (Stock Option) [第三章]:会社の株式を、あらかじめ決められた価格(権利行使価格)で将来購入できる権利。スタートアップなどが従業員への報酬として活用し、会社の成長による株価上昇が従業員のインセンティブとなります。
  • トレードオフ (Trade-off) [脚注10]:一方を選択すると他方が犠牲になる関係。例えば、リスクを減らす(インデックス化)と、高いリターンを得る機会を失う(凡庸になる)のはトレードオフです。
  • Unit Economics (ユニットエコノミクス) [脚注21]:製品やサービスを一単位あたりで見たときの収益性と費用を分析する指標。顧客獲得コスト(CAC)と顧客生涯価値(LTV)の比率などが代表的。ビジネスモデルの持続可能性を評価するためにVCが重視します。
  • VC (Venture Capital) [第二章]:ベンチャーキャピタル。未公開の成長性の高いスタートアップに投資を行い、株式公開(IPO)やM&Aによる売却によって大きなキャピタルゲイン(株式の値上がり益)を得ることを目指す投資会社。
  • ベスティング (Vesting) [第三章]:ストックオプションなどの株式報酬について、権利を確定させること。通常、一定期間(勤務期間など)が経過することで徐々に権利が確定していきます。
  • ベンチャーヴィンテージ (Venture Vintage) [第一章]:特定の年に設立されたベンチャーキャピタルファンドのグループ。または、特定の年に投資されたスタートアップのコホート(集団)。論文では、2002年以降のヴィンテージで、収益中央値がマイナスのスタートアップが存在しないほど、全体としてパフォーマンスが底上げされている(リスクが低下している)ことを示唆するために使われています。

免責事項:暗礁にご注意

この文章は、特定の論文の内容を基に、筆者の解釈と主観を加えて再構成したものです。投資に関する内容は、一般的な解説であり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴いますので、実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。また、社会や文化に関する考察は、あくまで一つの見方であり、唯一絶対の真理ではありません。この文章によって生じたいかなる損害についても、筆者および提供元は一切の責任を負いません。人生の航路は自己責任で。暗礁にご注意ください。


脚注:水面下の囁き

  1. 1 ロバート・パットナムの著書『孤独なボウリング』で提唱された概念。かつて活発だったボウリングチームのような地域社会のグループ活動が減少し、個人が一人でボウリングをするように、人々が共同体とのつながりを失い、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)が低下している現状を指摘しました。インデックス化された関係性は、この「孤独なボウリング」を助長する側面があるかもしれません。
  2. 2 DCFモデル(Discounted Cash Flow Model):企業の将来のキャッシュフローを予測し、割引率を用いて現在価値に換算することで、企業の理論上の価値を計算する手法です。企業の収益力や成長性といった「ファンダメンタルズ」に基づいた価値評価の基本とされます。インデックス投資では、個別のDCFモデルによる評価よりも、指数全体の動きや資金フローが重視される傾向があります。
  3. 3 論文中のこの数値(株式市場の50%に近づく)は、インデックスファンドを含むパッシブ運用全体の、公開市場における取引量や影響力を指している可能性が高いです。モーニングスターなどのデータによると、米国株式ファンドの総資産に占めるパッシブ運用の割合は50%を超えています(2023年末時点)。この膨大な資金量が市場価格に影響を与えているという文脈です。
  4. 4 ファンダメンタルズ:企業や経済の基本的な経済状況や指標。企業については、売上、利益、資産、負債、キャッシュフローなど、その事業活動の基礎となるデータや収益力を指します。本来、投資判断はこうしたファンダメンタルズに基づいて行われるべきですが、インデックス投資では指数に組み込まれているかどうかや、資金フローといった外部要因が価格形成に大きく影響するようになります。
  5. 5 プロダクト・マーケット・フィット(Product-Market Fit, PMF):スタートアップが、特定の顧客層の抱える重要な課題を解決できる製品やサービスを開発し、それが市場に受け入れられ、持続的に成長できる状態のこと。PMFの発見がスタートアップ成功の鍵と言われますが、VCの「チェックボックス投資」は、PMFの有無を定量的な指標だけで判断しようとする傾向があります。
  6. 6 NRR(Net Revenue Retention, 売上維持率):主にサブスクリプション型のビジネスモデル(SaaSなど)で使われる重要な指標。既存顧客からの売上(月額・年額課金など)が、契約更新や追加購入(アップセル、クロスセル)によってどれだけ増加し、解約やダウングレードによってどれだけ減少したかを、一定期間で測定します。100%を超えていると、既存顧客からの売上だけで事業が成長していることを意味し、VCが非常に重視する指標です。
  7. 7 ポートフォリオ:元々は投資の世界で使われる言葉で、保有する様々な金融資産(株式、債券など)の組み合わせのこと。リスク分散のために異なる種類の資産を組み合わせるのが一般的です。論文では、個人が転職を繰り返して複数の企業の株式を持ったり、多様なスキルや経験を身につけたりすることを、キャリアや資産の「ポートフォリオ化」と表現し、インデックス思考の一例として挙げています。
  8. 8 ヘッジ(Hedge):リスクを避けるための対策。特に金融市場で、保有する資産の価格変動リスクを相殺するために、反対の動きをする可能性のある金融商品を取引することなどを指します。スタートアップ従業員が株式の一部を早期に売却したり、複数の会社を渡り歩いてリスクを分散したりするのは、特定企業への依存リスクをヘッジする行動と言えます。
  9. 9 二次ベスティング(Secondary Vesting):従業員に付与されたストックオプションや制限付き株式(RSU)の権利確定(ベスティング)期間や条件を、通常の在籍期間だけでなく、二次販売(セカンダリーセール)や特定のプロジェクトの成功など、他の要素と連動させる仕組み。従業員の早期退職を防ぎ、長期的なコミットメントを促すために導入されることがあります。
  10. 10 トレードオフ(Trade-off):何かを得るためには、別の何かを犠牲にしなければならない関係。二律背反。ビジネス戦略において、例えば市場シェアを追求すれば利益率が犠牲になる、品質を高めればコストが増加するなど、様々なトレードオフが存在します。インデックス思考では、リスクを減らすというメリットを得るために、突出した成果を出す機会を失うというデメリット(凡庸さ)をトレードオフとして受け入れていると解釈できます。
  11. 11 二次販売(Secondary Sale):非公開企業(スタートアップなど)の株式を、既存の株主(創業者、従業員、初期のエンジェル投資家など)が、IPOなどの流動化イベント前に、他の投資家(VC、PEファンド、セカンダリーファンドなど)に直接売却すること。これにより、既存株主は早期に資金を回収できますが、企業の将来の成長を完全に享受できなくなる可能性もあります。創業者の二次販売は、事業へのコミットメントの度合いが問われることもあります。
  12. 12 エンジェル投資家(Angel Investor):スタートアップなどの非公開企業に対し、創業間もないシード期などに、自己資金を投資する個人投資家。資金提供だけでなく、自身の経験やネットワークを活用してスタートアップの成長を支援することもあります。複数のスタートアップに投資することで、リスクを分散しつつ高いリターンを狙う、エンジェル投資家自身のポートフォリオ戦略は、ある種のインデックス思考と言えます。
  13. 13 製品ベット(Product Bet):スタートアップにおいて、特定の製品やサービスが市場で成功するかどうか、あるいはプロダクト・マーケット・フィットを達成できるかどうかに賭けること。特にシードステージでは、限られたリソースで少数の製品ベットに集中することが成功の鍵とされることが多いです。インデックス的な「多すぎるショット」は、一つ一つのベットへのリソースや集中力を分散させてしまうリスクがあります。
  14. 14 道徳的絶対主義(Moral Absolutism):道徳的な真理や規範は普遍的かつ絶対的であり、特定の状況や文化、個人の信念に左右されないと考える立場。例えば、「人を殺すことはいかなる状況でも悪である」といった考え方。インデックス思考の対極にある、一つの確固たる基準に依拠する考え方と言えます。
  15. 15 道徳的相対主義(Moral Relativism):道徳的な判断や価値観は、文化、歴史、個人の信念などによって異なり、普遍的な真理や絶対的な基準は存在しないと考える立場。多様な価値観を認め合う姿勢はインデックス思考の「多様化」と共通しますが、絶対的な基準がない中で何を選択するかの難しさも伴います。
  16. 16 ニュートン物理学(Newtonian Physics):アイザック・ニュートンが確立した古典力学。物体の運動などが精密な法則に従うと考えられ、原因と結果が明確な決定論的な世界観を生み出しました。未来は現在の状態から完全に予測可能であるという考え方です。
  17. 17 量子力学(Quantum Mechanics):原子や素粒子といった微細な世界の物理法則を扱う理論。不確定性原理に示されるように、観測される物理量は確率的にしか予測できず、決定論的な世界観を否定しました。インデックス思考の「多様な可能性」や「確率論」への傾倒と関連づけて論じられています。
  18. 18 ナショナリズム(Nationalism):自己の国民や国家に対する強い忠誠心や愛着を持ち、国民国家の統一や独立、発展を目指す思想や運動。自国の利益や文化を最優先する考え方は、グローバリズムやインデックス思考の対極にあります。
  19. 19 グローバリズム(Globalism):経済活動や文化、情報などが国境を越えて地球規模で一体化していく現象や、それを推進する思想。国際協調や自由貿易を重視する考え方は、各国の違いを乗り越え、世界全体を一つの大きなシステム(インデックス)として捉えようとするインデックス思考と関連が深いです。
  20. 20 決定回避バイアス(Decision Avoidance Bias):人間が困難な決定を下す際に、誤った選択をするリスクを恐れて、決定そのものを先延ばししたり回避したりする傾向のこと。インデックス思考の「とりあえず平均に任せておこう」という態度は、この決定回避バイアスに後押しされている側面があります。
  21. 21 Unit Economics(ユニットエコノミクス):事業を「単位」で捉え、その単位あたりの収益性とコストを分析する手法。例えば、SaaS企業なら顧客一人あたり、ECサイトなら注文一つあたり、といった単位で分析します。顧客獲得コスト(CAC)や顧客生涯価値(LTV)などが主な指標。VCは、このUnit Economicsが健全であれば、チェックボックスの一つとして高く評価し、事業のスケール可能性を判断します。
  22. 22 CDO(Collateralized Debt Obligation):債務担保証券。様々なローン(住宅ローン、自動車ローン、企業向け貸付など)をまとめてプールし、それを担保に発行される証券。リスクに応じて複数のクラスに分けられます。2008年の金融危機では、サブプライム住宅ローンを組み込んだCDOが大量にデフォルトし、金融システム全体に大きな打撃を与えました。その複雑さゆえに中身が見えにくく、「格付け」という外部評価に過度に依存した投資家が多く、それがリスクの見落としにつながった点が、インデックスへの盲信と似ていると論文は指摘しています。
  23. 23 ESG投資:環境(Environmental)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの要素を、投資判断の際に考慮する手法。企業の財務情報だけでなく、地球温暖化対策、人権問題への配慮、法令遵守や透明性の高い経営といった非財務情報も評価し、持続可能な社会に貢献する企業に投資することで、長期的なリターンを目指します。近年、ESG関連のインデックスやETFも多数登場しており、インデックス投資の一つのトレンドとなっています。
  24. 24 ハワード・マークスの言葉の引用。正確には、彼の著書『投資で一番大切な20の教え』や投資家向けメモの中で繰り返し述べられている考え方です。文脈としては、多くの人が群がる場所ではなく、独自の視点で機会を見つけ、そこから動かずに(バス停で待ち続けるように)信念を貫くことの重要性を説いています。これは、インデックスという「みんなが群がる場所」から離れて「集中」することの比喩として用いられています。

謝辞:共に船出した人々へ

この文章が、無事に港に辿り着けたのは、多くの見えざる手、あるいは見えざるアルゴリズムの助けがあってのことです。まず、本記事の基となった原論文の著者と、そこに貴重なコメントを寄せてくださった方々に、心より感謝申し上げます。彼らの洞察がなければ、この航海は始まりませんでした。

そして、この文章の生成を支援してくれたAIに感謝を。私のニヒルな思考を、分かりやすい(かどうかはさておき)日本語に変換し、構成を整え、膨大な情報を整理する手助けをしてくれました。あなたもまた、ある種の「インデックス化された知性」なのかもしれませんが、この場合は歓迎すべき協力者でした。

最後に、ここまで読み進めてくださった、希少なる読者のあなたへ。凡庸さの海に抗おうとする、あるいは抗えない自分に苦悩する、数少ない魂よ。あなたの存在が、この航海の唯一の意義です。この文章が、あなたの羅針盤を少しでも明るく照らせたなら、筆者としてこれ以上の喜びはありません。どうもありがとうございました。あなたの未来に、平均を超える輝きがあらんことを。

 
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