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YouTubeアドブロック攻防最前線:擬態する敵と戦う勇敢な人々 #技術 #アドブロック #YouTube #イタチごっこ
~動画を止める「偽バッファリング」の真実と、ユーザーたちの知られざる反撃、そしてウェブの未来~
目次
本書の目的と構成
本書は、世界最大の動画共有プラットフォームであるYouTubeが近年強化しているアドブロック(広告ブロック)対策の最前線について、その技術的な仕組みから、それを取り巻くユーザー、クリエイター、そしてプラットフォーマーの多様な思惑や議論までを網羅的に解説することを目的としています。
特に、最近確認された「偽バッファリング」と呼ばれる、アドブロック利用者を対象とした動画再生前の意図的な遅延に焦点を当て、その詳細な技術的解析と、アドブロッカー開発者による回避策の開発プロセスを追います。さらに、この技術的な「攻防」の背景にあるYouTubeのビジネス戦略、ユーザーの広告への不満、そしてウェブコンテンツの収益化やプライバシー保護といったより大きな問題についても深掘りします。
本書は以下の二部構成となっています。
- 第一部 技術的攻防の最前線: YouTubeが導入しているアドブロック対策、特に偽バッファリングの技術的なメカニズムを詳細に解説し、それに対抗するアドブロッカー側の技術について掘り下げます。
- 第二部 広がる議論と未来への展望: 技術的な側面だけでなく、YouTube広告全体に対するユーザーの感情、YouTube Premiumという代替ビジネスモデル、アドブロックの倫理、プラットフォーマーの独占、そしてウェブの未来といった広範な議論を展開します。
加えて、補足資料と巻末資料では、関連技術の解説、詳細な年表、登場人物紹介、そして本テーマに関するさらなる議論や研究への示唆を提供し、読者の多角的な理解を助けることを目指します。技術的な専門知識がない読者にも理解できるよう、平易な言葉で解説することを心がけています。図やイラストは本書には含まれませんが、文章のみでその内容を伝えられるよう努めました。
要約
本書は、YouTubeが導入している新たなアドブロック対策、特に動画再生前に意図的な遅延(「偽バッファリング」、用語解説参照)を引き起こす技術的な仕組みを詳細に解説します。この遅延は、広告の長さの約80%に設定され、アドブロッカー利用者に時間的な不利益を与えることを目的としています。技術的には、YouTubeの内部APIであるInnerTubeを通じて、動画ストリーム配信を担うGVSに対し、バックオフ指示を出すことで実現されることを明らかにします。
この対策に対抗するため、InnerTubeリクエストにisInlinePlaybackNoAd:true
というプロパティを追加することで広告表示を回避する手法を提案し、uBlock Origin用のフィルターが開発された経緯を述べます。この手法が特定の状況(ウォームナビゲーション、用語解説参照)では有効である一方、別の技術的障壁(ロッカー スクリプト、用語解説参照)やコールドロード時の課題についても触れています。
本書はさらに、技術的な側面に留まらず、YouTube広告全般へのユーザーの不満(うるさい、無関係、詐欺広告など)、YouTube Premiumの価値と価格、コンテンツクリエイターへの収益分配、アドブロックの倫理的正当性、YouTubeの独占性、代替プラットフォームの現状、プライバシー問題、そして広告の経済的役割といった、この問題を取り巻く多岐にわたる議論をまとめています。多くのユーザーが広告の煩わしさを批判する一方で、Premiumへの支払いやクリエイター支援のあり方についても様々な意見が出ていることを紹介します。ChromiumベースのブラウザとFirefoxにおけるアドブロックの技術的な差や、サーバーサイド広告挿入への懸念なども言及されており、技術者コミュニティならではの深い議論が見られます。
総じて、本書はYouTubeとユーザー(アドブロッカー開発者)との間で続く技術的な攻防の現状を捉え、それが引き起こす広範な社会・経済的議論を映し出し、ウェブコンテンツの未来やデジタル社会のあり方について読者と共に考えるきっかけを提供します。
登場人物紹介
本章では、本書で登場する主要なプレーヤーや議論の中で言及される人物をご紹介します。
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ループ (Loop):
本レポートの著者であり、Hacker Newsにこの画期的な分析を投稿した人物です。YouTubeの新たなアドブロック対策、特に偽バッファリングの技術的な仕組みを詳細に解析し、その回避策としてuBlock Originのフィルターを開発・公開しました。彼の技術的な洞察と、それを共有する行動が、本書の中心的な内容を構成しています。技術コミュニティの一員であり、ウェブの自由とオープン性を重視する視点を持っています。年齢は公開されていません(年齢不詳、2025年時点)。
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Google (Google):
インターネット検索、広告、クラウドコンピューティングなど多岐にわたるサービスを提供する世界的なテクノロジー企業であり、YouTubeの親会社です。アドブロック対策を含むYouTubeの技術開発やビジネス戦略を主導しています。その巨大な影響力と、収益最大化に向けた戦略が、本書の議論の大きな背景となっています。
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YouTube (YouTube):
Googleが運営する世界最大の動画共有プラットフォームです。膨大なユーザーとクリエイターを抱え、広告収入とYouTube Premiumを主な収益源としています。そのプラットフォーム上での広告表示とアドブロック利用を巡る攻防が、本書の主題です。
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Linus Tech Tips (Linus Tech Tips):
コメント欄で言及された著名なテック系YouTuberチャンネルです。YouTubeからの収益(広告収入、Premium収入)に関する具体的な数字や内訳が示された例として取り上げられています。クリエイター側の視点、特にYouTubeからの収益構造を議論する際に参照されます。(運営者Linus Sebastian氏は1986年生まれ、2025年時点で39歳)
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Cory Doctorow (Cory Doctorow):
SF作家であり、テクノロジーやデジタル著作権、ネットの自由に関するブロガー、ジャーナリストです。プラットフォームがユーザーにとって徐々に悪化していく現象を「enshittification(糞まみれ化)」と名付けたことで知られます。プラットフォーマーの戦略や影響力を批判的に分析する視点を提供する文脈でコメントに登場します。(1971年生まれ、2025年時点で54歳)
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Elon Musk (Elon Musk):
起業家、エンジニア。コメント欄では、YouTube上で見られる詐欺広告の例として、彼のディープフェイクが悪用されているケースが複数挙げられています。プラットフォーム上の広告モデレーションの問題点を議論する際に参照されます。(1971年生まれ、2025年時点で54歳)
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Joe Rogan (Joe Rogan):
ポッドキャスター、コメディアンなど。コメント欄では、Elon Muskと同様に、詐欺広告のディープフェイクに彼のAI音声が使われている例として名前が挙がっています。(1967年生まれ、2025年時点で58歳)
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Zelensky (Volodymyr Zelenskyy):
ウクライナ大統領。コメント欄で、詐欺広告のディープフェイクに彼のAI音声が使われている例として名前が挙がっています。政治家や著名人のディープフェイクが広告に悪用されるという、プラットフォームの広告モデレーションの限界と危険性を示す例です。(1978年生まれ、2025年時点で47歳)
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Ira Glass (Ira Glass):
アメリカの公共ラジオ番組「This American Life」のホスト、プロデューサーです。コメント欄では、将来的にAIがコンテンツ内に広告を埋め込むような状況になった場合、彼のナレーションがその対象になるだろうという皮肉な例えとして名前が挙がっています。(1959年生まれ、2025年時点で66歳)
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Marques Brownlee (Marques Brownlee, MKBHD):
著名なテック系YouTuberです。コメント欄では、Ira Glassと同様、将来的なAIによるコンテンツ内広告埋め込みの例として、彼のテックレビューの中に特定製品の広告が埋め込まれるだろうという例えで名前が挙がっています。(1993年生まれ、2025年時点で32歳)
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Hacker Newsコミュニティのユーザーたち:
Loop氏の投稿に対して活発な議論を展開した技術コミュニティの人々です。ソフトウェアエンジニア、開発者、システム管理者など、技術的なバックグラウンドを持つ人々が多く、YouTubeのアドブロック対策の技術的側面や倫理、ウェブの将来について深い洞察や多様な意見を提供しています。彼らのコメントが、本書の議論の章を構成しています。
目次
疑問点・多角的視点
本章では、本テーマについてさらに深く理解するために検討すべき疑問点や、様々な角度からの視点を提示します。
技術的な側面から見ると、今回の偽バッファリングはYouTubeのアドブロック対策の全てなのでしょうか? 他にどのような技術が、どのような優先順位や連携で使われているのでしょうか? また、偽バッファリング自体も、isInlinePlaybackNoAd:true
での回避策や、ロッカー スクリプトによるJavaScript改変の阻止といった技術的な攻防が見られました。この回避策はどの程度持続性があるのでしょうか? YouTubeがさらに技術を強化した場合、ユーザーやアドブロッカー開発者はどう対応するのでしょうか? 特定の回避策がライブストリーム再生を壊すなどの副作用は、どのような技術的理由から発生するのでしょうか?
ユーザー体験に焦点を当てると、今回の対策は地域やアカウントタイプ(Premiumユーザーか無料ユーザーか、利用デバイスなど)によってどのように異なり、ユーザーのYouTube利用行動にどのような影響を与えているのでしょうか? 意図的な遅延や広告表示の強化は、短期的な広告収入の増加と、長期的なユーザーの不満や離脱というリスクの間で、YouTubeはどのようにバランスを取っているのでしょうか?
ビジネスモデルとしては、アドブロック対策によってYouTube全体の広告収入やPremium登録者数は実際にどの程度変化したのでしょうか? クリエイターへの収益分配構造はどのように影響を受けているのでしょうか? クリエイター自身はこれらのプラットフォームの変更をどのように受け止めているのでしょうか?
より広い視点では、Hacker Newsという特定の技術コミュニティのコメントは、一般的なYouTubeユーザーの反応をどの程度代表しているのでしょうか? 他のプラットフォーム(SNS、匿名掲示板など)ではどのような議論が展開されているのでしょうか? アドブロックの利用は、ウェブ上の「無料」コンテンツのビジネスモデルや倫理に対して、どのように位置づけられるべきなのでしょうか? ユーザーが自身のブラウザやデバイスを制御する権利と、プラットフォームがコンテンツ提供の条件を設定する権利は、どのように両立・調和されるべきなのでしょうか?
また、YouTubeのような巨大プラットフォームが、広告表示を強制したり、特定のブラウザ(Chromium)を技術的に優遇したりすることは、ウェブ全体の健全な競争環境にどのような影響を与えるのでしょうか? 新規の動画プラットフォームは、YouTubeの強固なネットワーク効果に対して、どのような戦略を取りうるのでしょうか?
さらに、広告の質や量も重要な問題です。多くのユーザーが不快に感じる広告(音量、無関連性、詐欺性)が多いことがアドブロック利用の一因となっている点について、広告業界やプラットフォーム側はどのように責任を果たすべきなのでしょうか? ユーザー体験を向上させる「良い広告」は、そもそも可能なものなのでしょうか?
プライバシーと広告という観点では、ターゲティング広告のためのユーザー追跡はどこまで許容されるべきなのでしょうか? アドブロックは、プライバシー保護の観点からどの程度有効な手段なのでしょうか? プライバシーを保護しつつコンテンツを収益化する代替モデルは考えられるのでしょうか?
コンテンツ支援の未来として、クリエイターを支援するための収益モデルは、広告やPremium 구독以外にどのような可能性があるのでしょうか(Patreon、Nebula、直接課金、マイクロペイメントなど)? それぞれのモデルの長所と短所は何か?
最後に、政府や規制当局は、巨大プラットフォーマーのアドブロック対策や広告戦略に対してどのように介入すべきなのでしょうか? 「公共インフラ」としてのウェブと、営利企業のサービスとしてのYouTubeの境界線はどこにあるのでしょうか? ユーザーは、広告ブロック、Premium支払い、代替プラットフォームへの移行、YouTubeの利用停止といった多様な選択肢の中で、何を基準に判断しているのでしょうか? これらのユーザーの行動が、YouTubeやウェブ全体に与える長期的な影響はどのようなものになるのでしょうか?
第一部 技術的攻防の最前線
このパートでは、YouTubeとアドブロッカーとの間で繰り広げられている最新の技術的な戦いに焦点を当てます。特に、最近確認された「偽バッファリング」というYouTube側の新たな戦略と、それに対抗するアドブロッカー側の技術的な解析、そして回避策の開発プロセスを詳細にご紹介します。
第1章 新たなアドブロック対策「偽バッファリング」の登場
YouTubeを普段からご利用の皆さんの中には、最近、動画が始まる前に妙に長い間クルクルと読み込み(バッファリング)が続く、といった経験をされた方がいらっしゃるかもしれません。「あれ?ネットの調子が悪いのかな?」と思われた方もいるでしょう。しかし、これがYouTubeが新たに導入したアドブロック対策の一つである可能性が指摘されています。その名も「偽バッファリング (Fake Buffering)」です。
なぜ「偽」なのでしょうか? それは、実際に回線速度が遅くてバッファリングしているのではなく、YouTube側が意図的に動画の再生開始を遅延させているからです。この対策は、全てのアドブロック利用者を対象にしているわけではなく、一部のユーザーを対象にしたA/Bテストとして実施されているようです。このA/Bテストの「実験グループ」に選ばれたアカウントでは、アドブロッカーを有効にしていると、動画の冒頭で通常よりも長いバッファリングが発生する現象が確認されました。
本レポートの著者であるループ氏のアカウントの一つも、このA/Bテストの実験グループに含まれていたそうです。彼が確認したところ、この偽バッファリングの時間は、本来表示されるはずだった広告の長さの約80%に設定されていることが分かりました。例えば、15秒のスキップ不可広告が表示されるはずだった場合、偽バッファリングは約12秒間続く、といった具合です。つまり、アドブロッカーを使って広告をブロックしようとしても、その分の時間の大部分を意図的な遅延で奪われる、という仕組みです。複数の広告が連続する場合(例:6秒+15秒)、その合計時間に基づいて遅延時間も長くなります(例:16.8秒)。
これまでのYouTubeの広告は、主に動画再生前に強制的に表示されるプリロール広告や、動画の途中に挿入されるミッドロール広告でした。これらの広告は、アドブロッカーの技術によって、その通信自体をブロックしたり、再生プレイヤー側でスキップしたりすることで回避されてきました。YouTube側もこれに対抗するため、広告をスキップさせないようにしたり、アドブロッカーを検出して警告を表示したりといった対策を講じてきました。
しかし、今回の偽バッファリングは、広告コンテンツ自体をブロックされた場合に、その「広告を見なかった時間」に対して罰を与えるかのような形で、動画コンテンツの再生を遅延させる、という点がこれまでの対策とは異なります。これは、広告の表示を技術的に阻止されても、ユーザーに時間的なコストを負わせるという、より巧妙な手法と言えるでしょう。コメント欄でも、「広告のイライラはないけど、待ち時間も結構ストレスだ」といった反応が見られました。
一部には、「YouTubeがアドブロック利用者のCPU使用率を意図的に上げてコンピューターに損害を与えている」といった憶測も飛び交っていたようですが、ループ氏はこのレポートの中でこれを明確に否定しています。偽バッファリングによる待機時間は、単に待っているだけであり、CPUを過剰に使用するような処理は行われていない、とのことです。たとえ一時的にCPU使用率が上がったとしても、短時間であればコンピューターに損害を与えることはない、と指摘しています。
コラム:最初の広告ブロック体験
私が初めてウェブ広告を「邪魔だな」と感じたのは、まだインターネットがダイヤルアップ接続だった頃、ウェブサイトの端に表示されるバナー広告でした。そして、それを表示させなくする「アドブロック」というものがあるらしいと知った時の驚きは今でも覚えています。当時の広告は今ほど intrusive (押し付けがましい) ではなかったかもしれませんが、それでもページの読み込みを遅くしたり、注意を散漫にさせたりする存在でした。アドブロックという技術は、単に広告を消すだけでなく、ウェブサイトをより早く、より快適に表示させる「魔法のツール」のように感じられたものです。今回のYouTubeの偽バッファリングのような、意図的に不便を強いる技術が登場するとは、当時は想像もしていませんでしたね。
第2章 偽バッファリングの技術的詳細
では、この偽バッファリングは具体的にどのような技術を使って実現されているのでしょうか? ループ氏の解析によって、その背後にあるYouTubeの内部システムの一端が明らかになりました。
YouTubeの動画再生において、ウェブブラウザやモバイルアプリなどのクライアントは、動画の再生に必要な情報を得るために、YouTubeの内部APIであるInnerTubeと通信します。InnerTubeはhttps://www.youtube.com/youtubei/
のようなエンドポイントを持ち、クライアントからのリクエストに応じて様々なデータを返します。動画の再生に必要な情報、例えば動画ファイルのURLなどは、このInnerTubeの/youtubei/v1/player
というエンドポイントへのリクエストによって取得されます。
実際に動画データがストリーミングされるのは、GVS (Google Video Services) というサービスからです。GVSは、YouTubeだけでなく、Google ドライブやGoogle フォトといったGoogleの他のサービスとも連携して動画ストリームを提供しています。クライアントはInnerTubeから取得したGVS URLを使ってGVSにアクセスし、動画データの配信を受けます。GVS URLは署名されており、有効期限があるため、クライアントが勝手に生成することはできません。
当初、GVSはクライアントからのリクエストに基づいて、要求された範囲の動画データを単に返すだけでした。しかし、YouTubeはより効率的でバッファリングを少なく抑えるために、SABR (Server ABR - Adaptive Bit Rate) という独自のバイナリプロトコルを開発しました。ABR (Adaptive Bit Rate) とは、ネットワーク帯域幅に応じて動画の画質(ビットレート)を動的に調整する技術のことで、MPEG-DASHのような標準技術も存在しますが、SABRはYouTube独自の最適化が施されています。
このSABRプロトコルには、サーバー側からクライアントに対して「しばらく待ってから再試行してください」という「バックオフ」指示を送る機能があります。偽バッファリングは、このSABRのバックオフ機能が利用されていると考えられます。
具体的には、アドブロック利用者がInnerTubeの/youtubei/v1/player
に動画情報の取得リクエストを送った際、InnerTubeが返すGVSストリーム情報の中に、最初の/videoplayback
リクエスト(広告ではなく、コンテンツ動画本体のリクエスト)に対して、バックオフを指示するデータを含めるのです。このバックオフの時間が、本来表示されるはずだった広告の長さの80%に設定されている、というのがループ氏の解析結果です。つまり、InnerTubeが「このユーザーはアドブロックを使っている可能性があるから、GVSに『〇〇秒待たせろ』と指示しておこう」という判断をして、GVS URLにその情報を含めている、ということになります。
サーバー側で広告を動画データに組み込むサーバーサイド広告挿入(SSAI)という技術も存在しますが、ループ氏は今回の偽バッファリングはSSAIとは異なると述べています。広告とコンテンツのストリーム自体はまだ別々に扱われているものの、コンテンツストリームの開始を意図的に遅らせるためにバックオフ指示が使われている、ということです。コメント欄で「動画の途中のバッファリングはない」と指摘されているのも、この偽バッファリングが動画の開始時にのみ発生する、という仕組みと一致します。
また、動画視聴中に「中断が発生しています」といったダイアログが表示される現象も、GVSからの長いバックオフ指示が原因で発生している可能性が高い、とレポートは推測しています。
この偽バッファリングは、A/Bテストの実験グループに入っている限り、YouTubeがユーザーをアドブロッカー利用者だと認識しているかどうかにかかわらず発生します。ただし、アドブロッカーを使っていないユーザーの場合は、広告が再生されている裏で動画のバッファリングが開始されるため、ユーザーはその遅延に気づきません。広告の80%が終わった時点で動画のバッファリングが始まる、というだけの違いになります。
コラム:API解析の面白さ
技術者にとって、Black Box(ブラックボックス)になっているシステムの内部を解析するのは、まるで謎解きのような面白さがあります。今回のループ氏が行ったような、クライアントとサーバー間の通信を傍受し、そのAPIの構造や使われている技術(Protobufsなど)を解析する作業は、地道でありながらも、システムの根幹を理解するための非常にパワフルな手法です。特に、ドキュメントが公開されていない内部APIの場合、こうしたリバースエンジニアリング的なアプローチが必要になります。私も駆け出しの頃、よくこうした解析を試みては、新しい発見に興奮したものです。まるで、巨大な建物の設計図を、外から見える構造や行き交う人々の動きから推測するような作業ですね。そして、今回のレポートのように、解析結果が思わぬ回避策に繋がることもあります。技術の探求心と、問題解決への情熱が結びついた好例と言えるでしょう。
第3章 アドブロッカー側の対抗策
YouTube側が新たなアドブロック対策を講じれば、それに対抗するアドブロッカー側も黙ってはいません。ループ氏は、この偽バッファリングを回避し、広告も表示させないための技術的な突破口を見つけました。
鍵となったのは、InnerTubeへのリクエストに含まれる特定のプロパティです。ループ氏は、YouTubeのフロントエンド(ユーザーインターフェース)のJavaScriptコードを解析するか、あるいはより効率的に、InnerTube APIの背後にあるProtocol Buffers (Protobufs)定義を抽出するツール(req2proto
など)を使用することで、/youtubei/v1/player
リクエストで利用可能なパラメータを詳細に調べました。その結果、playbackContext.contentPlaybackContext.isInlinePlaybackNoAd
というプロパティが存在することを発見しました。このプロパティをtrue
に設定してInnerTubeにリクエストを送ると、広告が配信されなくなり、結果として広告表示を回避するためのバックオフ指示も含まれなくなります。つまり、「広告を表示しないモードで再生してください」とYouTubeに伝えるわけです。
この発見に基づき、ループ氏はuBlock Origin向けのフィルターを作成しました。このフィルターは、YouTubeのウェブクライアントがInnerTubeへのリクエストのためにJSONデータを文字列化する際に、その文字列の中に"isInlinePlaybackNoAd":true
という部分を挿入するというものです。具体的には、JSON.stringify
というJavaScriptの関数が使われるタイミングをフック(捕捉)し、生成されるJSON文字列を書き換えることで実現されます。
フィルターのルールは以下のようになります。
www.youtube.com##+js(trusted-replace-outbound-text, JSON.stringify, 'contentPlaybackContext":{', 'contentPlaybackContext":{"isInlinePlaybackNoAd":true,', condition, 'contentPlaybackContext')
このフィルターは、uBlock Originのデフォルトフィルターリストに既に追加されているため、多くのユーザーは特に手動で設定することなく、この回避策の恩恵を受けることができます。😊
しかし、この手法にはいくつかの課題も存在します。まず、このフィルターが効果を発揮するのは、既にYouTubeのシングルページアプリケーション(SPA)が読み込まれており、サイト内を移動する際の「ウォームナビゲーション」の場合に限られます。ブラウザで直接動画URLを開くなど、YouTubeサイトに初めてアクセスする「コールドロード」の場合、最初の動画情報(ytInitialPlayerResponse)はYouTubeのバックエンドで生成され、HTMLに埋め込まれた状態でクライアントに送られてきます。この場合、クライアント側でisInlinePlaybackNoAd
プロパティを設定する機会がありません。
コールドロードに対応するため、当初は埋め込まれた動画情報(ytInitialData
やytInitialPlayerResponse
)をクライアント側で削除し、強制的にクライアントがInnerTubeにリクエストを送らせる、という手法も検討されました(例:www.youtube.com##+js(set, ytInitialPlayerResponse, undefined)
)。しかし、このアプローチには問題がありました。
- ライブストリーム再生が完全に壊れる
- 動画プレイヤーが一瞬点滅する
- ページの読み込み時間が遅くなる
- 後述のロッカー スクリプトをバイパスしてしまう
特に大きな壁となったのが、YouTube側が導入した「ロッカー スクリプト (Locker Script)」です。これは、script id="bc-def">
のようなタグとしてHTMLのタグの最初に挿入されるJavaScriptコードです。このスクリプトは、
Object.defineProperty
というJavaScriptの機能を使って、window.JSON
やwindow.JSON.stringify
といった一部のグローバルオブジェクトを書き換え不可に設定します。これにより、後から読み込まれる他のスクリプト(例えばアドブロッカーのスクリプト)がこれらのオブジェクトをProxy
などでフックし、その振る舞いを変更することを防ぎます。
uBlock Originのフィルターは、このロッカー スクリプトが実行される前にJSON.stringify
をフックできなければ効果がありません。ブラウザによってJavaScriptの実行順序や拡張機能のAPIが異なるため、これが問題となります。
Firefoxでは、ページの解析が始まる前にソースHTMLから特定のスクリプトタグをフィルタリングするHTMLフィルターという拡張APIが利用できるため、ロッカー スクリプトを無効化することが比較的容易でした。しかし、Chromiumベースのブラウザ(Google Chrome, Braveなど)は、このAPIをサポートしていません。これはChromiumの拡張機能プラットフォームであるManifest V3への移行とも関連しており、拡張機能ができることの範囲が狭まる傾向にあります。
Chromiumでのロッカー スクリプトへの対抗策として、ループ氏やuBlock Originのメンテナーたちは、JSON.stringify
をフックする代わりに、Object.assign
をフックするというアプローチを見つけました。Object.assign
もまた、リクエストボディが送信される前に処理される関数の一つです。このアプローチはロッカー スクリプト自体を解除するわけではありませんが、その影響を受けずにリクエストデータを改変することを可能にします。この回避策はより複雑なJavaScriptコードを必要とし、uBlock Originのスクリプトレット機能を利用して実現されています。
(() => {
const e = {
apply: (e, n, args) => {
let t = Reflect.apply(e, n, args);
return 3 === args.length && t?.body && "string" == typeof t.body && !t.body.includes(`"isInlinePlaybackNoAd":true`) && (t.body = t.body.replace(`"contentPlaybackContext":{`, `"contentPlaybackContext":{"isInlinePlaybackNoAd":true,`)), t
}
};
window.Object.assign = new Proxy(window.Object.assign, e)
})();
このように、YouTubeとアドブロッカーとの技術的な戦いは、新たな技術(偽バッファリング、ロッカー スクリプト)の導入と、それに対する解析・回避策の開発という、まさに「いたちごっこ」の様相を呈しています。そしてこの戦いは、単なる技術的な問題に留まらず、ウェブコンテンツのビジネスモデルやユーザーの権利、そしてブラウザやウェブプラットフォームの設計思想といった、より深い問題へと繋がっていきます。
コラム:コードに潜むヒント
ウェブサイトの機能やAPIの秘密を探る時、ブラウザの開発者ツールは強力な武器になります。ネットワークタブでやり取りされるデータを見たり、ソースコードをステップ実行したりすることで、普段見えない部分の動きを理解することができます。今回のように、特定のプロパティ名(isInlinePlaybackNoAd
)がコードの中にヒントとして残されていることも少なくありません。開発者がデバッグ用やテスト用に残したコード、あるいは内部システムのリフレクションなどが、思わぬ形で外部からの解析を可能にすることがあります。まるで、宝探しの地図のように、コードの断片が次の手がかりを示してくれるのです。もちろん、Googleのような巨大企業のコードは膨大で難解ですが、その中にも時として、こうした「お宝」が隠されていることがあるのですね。技術者として、こうした発見は本当にワクワクします。🕵️♂️💻
第二部 広がる議論と未来への展望
技術的な戦いの裏側には、YouTubeのビジネスモデル、ユーザーの感情、そしてウェブの未来を巡る多様な議論が存在します。このパートでは、Hacker Newsのコメント欄を中心に交わされた、技術を超えた広範な視点からの議論をご紹介します。
第4章 YouTube広告への不満とアドブロックの動機
なぜ多くのユーザーはアドブロックを使いたがるのでしょうか? 技術的な回避策がどれだけ優れていても、そもそも「広告を見たくない」という強い動機がなければ、ユーザーは手間をかけてまでアドブロッカーを導入したり、その更新を追ったりはしないでしょう。
Hacker Newsのコメント欄で最も多く見られたのは、YouTube広告そのものに対する強い不満の声でした。その内容は多岐にわたりますが、特に繰り返し指摘されていたのは以下の点です。
- 広告の音量問題: 動画本編よりも明らかに大きな音量で広告が再生されることへの不満が多く聞かれました。🧘瞑想動画を見ている最中に、突然大音量の高エネルギー広告が流れる、といった具体的な例が挙げられています。これはかつてテレビ広告で問題となり、規制(例えばアメリカのCALM Actなど)によって改善されたはずの問題ですが、YouTubeのようなオンラインプラットフォームでは依然として存在します。
- 広告の無関連性: Googleはユーザーの膨大なデータを収集しているにもかかわらず、表示される広告が全く興味のない、あるいは動画の内容と全く関係ないものであることへの疑問が多く呈されました。テクノロジー系の動画を見ているのにトラックやビール、サッカーの広告ばかり表示される、といった例や、旅行中に言語が変わると広告の言語も変わるが、それも自分の理解できない言語や興味のない内容だ、といった例がありました。
- 広告の多さ、長さ、頻度: 短い動画に何度も広告が挿入されたり、スキップ可能な時間が来るまで長時間待たされたり(数十秒〜数分)、時には数時間にも及ぶ「広告」が紛れ込んでいるといった報告もありました。コメントの中には「テレビの放送よりもひどい」「30分間の広告は禁止すべきだ」といった声もあり、広告の量がユーザー体験を著しく損なっていることが伺えます。
- 広告の質の問題(詐欺広告、不適切広告): 最も深刻な問題として指摘されたのは、詐欺的な投資勧誘(イーロン・マスクなどのディープフェイクを使ったもの)や、怪しい健康食品、NSFW(職場での閲覧注意)なゲーム広告、さらには銃の販売広告など、内容が不適切、あるいは明らかに違法と思われる広告がYouTube上で表示されていることへの批判でした。ユーザーはこれらの広告から自分自身や家族(特に子供)を守るためにアドブロックを使っている、という声も複数見られました。YouTubeの広告モデレーション(審査)機能が十分に機能していないのではないか、という疑問も呈されています。
- 広告による雰囲気の破壊: 深夜にリラックスしながらコーディングの動画を見ている時に、突然明るく高音質な広告で雰囲気を壊される、といったように、広告が動画本編が作り出す没入感や雰囲気を台無しにすることへの不満も多く聞かれました。
これらの不満の根底には、「広告はバグではなく機能である」というYouTube側の考え方があるのではないか、という意見も見られました。つまり、ユーザーをイライラさせて、広告を見ないための唯一の「簡単な方法」であるPremiumへの加入を促すために、あえて広告を不快にしているのではないか、という穿った見方です。これは、広告が多すぎる、不適切である、といった問題が、単なる収益化の失敗ではなく、意図的な戦略の一部ではないかという疑念に基づいています。
多くのユーザーは、コンテンツクリエイターを支援したいという気持ちは持ちつつも、現在のYouTubeの広告モデルを受け入れることが難しいと感じています。そして、その不満がアドブロックという行動へと繋がっているのです。
コラム:広告の「質」って何だろう?
広告代理店の方と話した時、「関連性の高い広告はユーザーの邪魔にならないどころか、役に立つ情報になりうる」という話を伺ったことがあります。確かに、自分がまさに探している製品やサービスの情報が、適切なタイミングで表示されるなら、それは歓迎されるかもしれません。でも、今回のYouTube広告へのコメントを見ると、「関連性以前に、うるさい、長い、詐欺まがいだ」といった基本的な不満が多いですよね。広告の「質」というのは、単に関連性が高いかどうかだけでなく、ユーザー体験を損なわないか、信頼できる情報か、そしてそもそも注意を強制的に奪うべきでない、といった様々な要素で評価されるべきなのだと改めて感じました。ユーザーが広告を見たくないのは、単にケチだからではなく、現在の多くのデジタル広告が、ユーザーにとって価値を提供するのではなく、邪魔で有害な存在になってしまっているからかもしれません。😔
第5章 YouTube Premiumと収益モデル
YouTubeは、無料ユーザー向けの広告モデルと並行して、広告なし視聴などを特典とする有料サービス「YouTube Premium」を提供しています。今回の偽バッファリングのようなアドブロック対策は、明らかにこのPremiumサービスへの加入を促す狙いがあると考えられます。
コメント欄でも、「広告を見たくないならPremiumに入ればいいじゃないか」「Premiumはそんなに高くないし、広告なしで快適だ」という意見が多数見られました。実際にPremiumに加入しているユーザーからは、「広告が一切なくて快適」「YouTube Musicも使えるからお得に感じる」といった肯定的な評価も聞かれます。Premium加入者からの視聴は、クリエイターにとって広告収入よりも収益性が高い(Linus Tech Tipsの例では、Premiumユーザーの視聴は広告ユーザーの視聴よりも収益に貢献していることが示されています)という指摘もあり、クリエイター支援の観点からPremium加入を推奨する意見もありました。
しかし、Premiumに対しても様々な懸念や不満の声が上がっています。
- Premiumでも広告はゼロではない?: Premiumに加入しても、クリエイター自身が動画内に挿入する「スポンサーセグメント」(例:HelloFresh、VPNサービスの紹介など)は表示されます。これらのセグメントは動画コンテンツの一部として組み込まれているため、YouTube Premiumではスキップされません。ユーザーはこれらのセグメントを回避するために、別途SponsorBlockのようなサードパーティ製拡張機能を利用する必要がある、という現状が指摘されています。また、動画の下に表示されるGoogle製品の広告や、ホームフィードや検索結果に表示される広告が完全に消えないという報告も見られました。
- 抱き合わせ販売への不満: YouTube PremiumにはYouTube Musicがバンドルされています。音楽ストリーミングサービスとしてはSpotifyやApple Musicなど競合サービスも多い中で、YouTube Musicを必要としていないユーザーにとっては、使わないサービスのために追加料金を払っているように感じられます。「YouTube Musicなしの、YouTube広告なしプランだけが欲しい」という声が多く聞かれました。これは、かつてケーブルテレビがチャンネルを抱き合わせで販売していた状況と似ているという指摘もあります。
- 価格に対する価値判断: 月額料金(日本では1,280円〜、地域やプランによる)が、動画視聴というサービスに対して見合う価値があるのか、という議論も交わされました。動画をあまり見ないユーザーにとっては高価に感じられる一方で、毎日長時間YouTubeを視聴するユーザーにとっては、広告を回避できるメリットを考慮すると「安い」と感じられるようです。
- Premiumプランの将来性への懸念: 「今は広告がないが、将来的にPremiumプランにも広告が導入されるのではないか?」という懸念の声も根強くありました。これは、かつて広告なしを謳っていた他のストリーミングサービス(例:有料ケーブルテレビ、最近ではNetflixの安価なプランなど)が広告を導入した歴史を踏まえたものです。「ビジネスは常に利益成長を求めるため、市場が飽和すれば価格を上げたり、サービス内容を改悪したり(enshittification)、有料プランにも広告を入れたりするだろう」という予測がコメント欄で展開されていました。
このように、YouTube Premiumはアドブロック対策の「公式な解決策」として提示されていますが、ユーザーにとってはまだ完全な解決策ではなく、様々な懸念や不満が存在することが分かります。そして、ユーザーはPremiumへの加入、アドブロックの利用、代替プラットフォームへの移行、あるいはYouTubeからの離脱といった選択肢の中で、自身の価値観や不満のレベルに応じて判断を下しています。
コラム:月1000円の価値
私自身、動画配信サービスや音楽配信サービスなど、いくつかのサブスクリプションに加入しています。それぞれ月額1000円前後ですが、合計すると結構な金額になりますよね。YouTube Premiumもその一つです。以前は「たかが動画見るのに毎月こんなに払うのか」と感じたこともありますが、実際に広告なしの快適さを知ってしまうと、もう後戻りできない体になってしまいました。😅 でも、YouTube Musicはほとんど使わないんですよね。使わない機能のためにお金を払うのは、やっぱりちょっと腑に落ちない感覚があります。もし「広告なし」だけのシンプルなプランがあって、少し安くなるなら、そちらを選びたいです。ユーザーのニーズに合わせて、もっと多様なプランがあると良いのに、と感じています。ただ、企業としては抱き合わせの方が収益性が高くなるのかもしれませんが…。
第6章 アドブロックの倫理とプラットフォームの責任
アドブロックの利用は、しばしば「無料サービスを享受しながら、その対価である広告視聴を回避する行為だ」として、倫理的な問題が議論されます。Hacker Newsのコメント欄でも、この点が活発に議論されました。
「コンテンツクリエイターやプラットフォームは、動画の制作や配信にコストをかけている。広告はその対価なのだから、それを見ないのは不公平だ」「アドブロックは泥棒行為だ」といった厳しい意見も聞かれました。特に、クリエイターが広告収入やPremium収入によって生計を立てている現状を踏まえ、「アドブロックはクリエイターから収入を奪う行為だ」という批判が多く見られました。コンテンツの価値を認めつつも、広告は嫌だというユーザーに対しては、「それならPatreonなどでクリエイターを直接支援すれば良い」という代替案も提示されました。
しかし、アドブロックを正当化する、あるいは少なくとも許容される行為だと主張する意見も多数派でした。その根拠として、以下の点が挙げられています。
- ユーザーのブラウザ制御権: ウェブブラウザはユーザーが自身のデバイス上で実行するソフトウェアであり、その挙動をユーザーが自由に制御する権利がある、という基本的な主張です。表示されるコンテンツをフィルタリングしたり、改変したりすることは、この制御権の範囲内である、と考えます。YouTubeがコンテンツを提供しているとしても、それを「どのように」表示するかはユーザー側の決定である、という立場です。
- 利用規約の法的拘束力: YouTubeの利用規約(Terms of Service, ToS)にはアドブロックに関する条項が含まれていることが示唆されていますが、多くのユーザーはToSは「通知」であって、法的拘束力のある「契約」ではない、と主張しています。サイトにアクセスしただけで、詳細なToSの全てに同意し、それに法的に拘束されるわけではない、という考え方です。
- 広告の質と有害性: 前章で述べたように、YouTube広告には詐欺的なものや不適切・有害なものが多く含まれています。ユーザーは、自身や家族をこれらの広告から守るために、自己防衛の手段としてアドブロックを利用している、と主張します。「安全なブラウジング体験」を確保するためにアドブロックは必要不可欠である、という考え方です。プラットフォーム側が広告内容の審査責任を十分に果たしていない現状では、ユーザー自身が防御するしかない、というわけです。
- プラットフォーム側の行動への批判: YouTubeがユーザー体験を意図的に悪化させたり(偽バッファリング)、プライバシーを侵害する追跡広告を行ったり、あるいは特定のブラウザ(Chromium)でアドブロックを技術的に困難にさせようとしたりするといった行動は、そもそもユーザーに対する誠実さを欠いており、倫理的に問題がある、と批判します。「プラットフォーム側が非倫理的な行動をとっているのだから、ユーザー側がToSを遵守する義務はない」という考え方も見られました。
- コンテンツの公開性: YouTubeは、ログインなしでも多くの動画を視聴できる「公開されたウェブサイト」として運営されています。公開されているコンテンツを、利用規策に関わらず技術的にアクセス可能な方法で利用することは、ウェブの設計思想に沿ったものである、という考え方です。YouTubeが広告視聴を強制したいのであれば、コンテンツをログイン必須にするか、技術的に回避不可能な形式(サーバーサイド広告挿入など)にするべきであり、現在の形態は「両取りしようとしている」と批判します。
- 広告の経済的価値の曖昧さ: ユーザーが広告を見ても、実際に商品を購入するわけではありません。広告がユーザーの注意を奪うことは事実ですが、その経済的価値は曖昧です。また、広告は単に製品を宣伝するだけでなく、ユーザーの行動や心理を操作しようとする性質を持つ、という批判もあります。「広告を見る」という行為が、コンテンツ視聴の正当な対価として十分な価値を持つのか、という根本的な問いも投げかけられています。
また、コンテンツクリエイターの収益に関しても、「クリエイターはGoogleと契約しているのだから、彼らが十分に報われていないと感じるなら、それはGoogleと交渉すべき問題であり、ユーザーが広告を見るという形でその負担を負う必要はない」という意見も聞かれました。多くのクリエイターはYouTube以外にもPatreonや他のプラットフォームで活動しており、アドブロックユーザーも別の形でクリエイターを支援している可能性が指摘されています。
このように、アドブロックの倫理を巡る議論は非常に複雑で、プラットフォームの責任、ユーザーの権利、ウェブの設計思想、そして現代の広告モデルの性質といった様々な側面が絡み合っています。単純に「泥棒か否か」で片付けられる問題ではないことが、コメント欄の多様な意見から伺えます。
コラム:ブラウザは誰のもの?
「あなたのブラウザはあなたのエージェント(代理人)なのだから、あなたの指示に従って当然だ」という考え方は、技術者としては非常に納得感があります。例えば、視覚障碍のある方がスクリーンリーダーを使ってウェブサイトの内容を読み上げるように、身体的な制約を持つ方が特定の操作を補助するツールを使うように、アドブロックもまた、ユーザーがウェブコンテンツを自身の望む形で利用するための「エージェント」の一部と捉えることができます。ウェブは元々、多様な環境やツールからのアクセスを許容するように設計されていました。しかし、プラットフォーム側がユーザーの「エージェント」の機能を制限しようとする時、これは技術的な問題であると同時に、ユーザーの自由やアクセシビリティに関する問題にも発展する可能性があります。ブラウザやデバイスの制御権が、プラットフォーマーの戦略によって脅かされる可能性は、ウェブの未来を考える上で無視できない論点だと感じています。🤔
第7章 巨大プラットフォームの独占と競争
YouTubeは、動画共有プラットフォームとして事実上の独占的な地位を確立しています。この巨大な影響力と、それが生み出す「ネットワーク効果」は、アドブロックを巡る問題とも深く関連しています。Hacker Newsのコメント欄でも、YouTubeの独占性に対する懸念や、健全な競争の必要性が議論されました。
「YouTubeはネットワーク効果によって巨大になった。クリエイターもユーザーも他の場所に簡単には移れない。だからこそ、ユーザー体験を悪化させても、広告を強化したり、不便を強いたりすることができるのだ」「これは市場の失敗であり、規制が必要だ」といった意見が見られました。YouTubeの独占的な地位が、ユーザーにとって不利益なビジネス慣行(例えば、広告の量や質の悪化、偽バッファリングのような嫌がらせ技術)を可能にしている、という考え方です。
コメントの中では、YouTubeに対抗しうる代替プラットフォームの可能性についても言及されました。例えば、Patreonのようにクリエイターが直接ユーザーから支援を受けるモデルや、NebulaやDropout、CuriosityStreamといった特定のジャンルに特化した有料サブスクリプションサービス、あるいはPeerTubeのような分散型動画プラットフォームなどが挙げられています。しかし、これらのプラットフォームはまだYouTubeほどのユーザー数やコンテンツ量、多様性を持っておらず、YouTubeのネットワーク効果には太刀打ちできていない現状が指摘されています。
「ユーザーがアドブロックを使ってYouTubeを無料で視聴し続けることは、かえって代替プラットフォームの成長を阻害しているのではないか。YouTubeに収益が集まりすぎることで、他の小さなプラットフォームや、広告モデルに依存しないモデルが生まれにくくなっている」という自己批判的な意見も一部に見られました。一方で、「ユーザーがアドブロックを使うのは、現在のYouTubeモデル(広告の量・質、クリエイターへの分配率など)が気に入らないからだ。ユーザーがアドブロックを使うことで、YouTubeは収益が減ることを恐れて、サービスを改善するか、あるいは他のプラットフォームへのクリエイターやユーザーの流出を招く。結果的に健全な競争を促す可能性がある」という逆の視点からの主張もありました。
政府や規制当局による巨大プラットフォーマーへの介入についても議論されました。「Googleのような巨大企業は分割されるべきだ」「デジタルプラットフォームの独占を規制する法律が必要だ」といった強い主張が見られました。特に、動画配信のようなサービスが、インターネット社会における一種の「公共インフラ」と見なされるべきか、それとも純粋な営利企業のサービスとして扱われるべきか、という根本的な問いも投げかけられています。もし公共インフラ的な側面が強いと判断されるならば、広告表示の強制や、特定の技術への対応に関する規制が必要になるかもしれません。
YouTubeのアドブロック対策は、単に広告表示技術と回避技術の戦いであるだけでなく、巨大プラットフォームの支配力、市場競争のあり方、そしてデジタル社会の公共性といった、より大きな問題と密接に関わっていることが、コメント欄の議論から浮き彫りになっています。
コラム:町の広場とショッピングモール
インターネットの初期は、誰もが自由に情報発信し、アクセスできる「町の広場」のようなイメージがありました。しかし、YouTubeのようなプラットフォームは、巨大なショッピングモールに例えられるかもしれません。モールの中では、多くの人が集まり、様々な店(クリエイター)が商品(コンテンツ)を並べます。運営側は場所を提供し、広告収入やテナント料(収益分配)で収益を得ます。モールは便利ですが、そのルールはモール運営者が決めます。広告をどこに貼るか、BGMをどうするか、通路のレイアウトはどうするか…。今回の偽バッファリングは、まるで「モールの入口で、何も買わない客を意図的に足止めする」ような行為に映るかもしれません。もしそのモールが一つしかなく、他の広場や商店街がほとんどないとしたら、私たちはそのルールの下で買い物を強いられることになります。動画配信という活動が、かつての「広場」から「巨大モール」へと変貌したこと、そしてそのモール運営者の力が強くなりすぎたことが、この問題の根底にあるように感じます。🛍️🏘️
日本への影響
YouTubeは日本でも多くの人々にとって主要な動画プラットフォームです。したがって、本レポートで述べられているYouTubeのアドブロック対策は、日本のユーザー、クリエイター、そして関連市場にも直接的な影響を及ぼします。
日本の無料ユーザーも、偽バッファリングや強制的な広告表示の増加といったユーザー体験の悪化を経験する可能性があります。特にスマートフォンやテレビなど、パソコンと比べてアドブロック導入のハードルが高いデバイスでの視聴体験に影響が出やすいでしょう。これにより、日本のユーザーの間でもYouTube Premiumへの関心が高まるかもしれません。
無料版の広告強化が進めば、日本におけるアドブロッカーの利用者も増加する可能性があります。この記事で紹介されたような技術的な回避策や、uBlock Originのようなアドブロッカーに関する情報も、日本の技術コミュニティやユーザーの間で共有され、利用される動きが見られるでしょう。
日本のYouTubeクリエイターも、この変化の影響を避けられません。彼らの収益はYouTubeからの広告収入やPremium収入に大きく依存しているため、プラットフォーム側のアドブロック対策強化や収益配分の変更は、活動継続の可否や収益構造に影響を与えます。多くの日本のクリエイターも、YouTube以外にPatreon、ニコニコ動画、DMM、ファンティアなど、様々なプラットフォームやサービスで収益源を多角化しようとしていますが、YouTubeの比重は依然として大きいクリエイターが多いです。
YouTubeの広告戦略や規制強化は、日本の動画配信サービス(ニコニコ動画、AbemaTV、TVer、各種VODサービスなど)にとっても競争環境に影響を与えます。ユーザーがYouTubeの広告を嫌って他のプラットフォームに一時的に流れる可能性もあれば、逆にYouTubeの圧倒的なネットワーク効果と資金力に対抗することの難しさを改めて認識させられる可能性もあります。
日本政府や規制当局も、巨大デジタルプラットフォームに関する議論を進めています。公正取引委員会はデジタル・プラットフォームに関する検討会で競争上の課題を議論しており、個人情報保護委員会はオンライン広告における個人情報やプライバシーの保護について注視しています。YouTubeのアドブロック対策や広告慣行(特に詐欺広告や無関連広告の問題)が、これらの議論の中で日本の競争法や消費者保護、個人情報保護の観点から問題視され、なんらかの規制や指導の対象となる可能性は十分に考えられます。
このように、YouTubeのアドブロックを巡る攻防は、日本のデジタル環境にも決して無関係ではなく、ユーザー、クリエイター、企業、そして政府の様々な関係者に影響を及ぼす重要な動向と言えます。
歴史的位置づけ
本レポートで述べられているYouTubeのアドブロック攻防は、インターネットの歴史、特にウェブ広告の進化とそれへのユーザーの反応という長期的な流れの中に位置づけられます。
初期のウェブ広告は、比較的控えめなバナー広告が中心でした。しかし、インターネットが普及し、無料コンテンツの提供が拡大するにつれて、ウェブサイト運営者は広告収入への依存を強めました。これに伴い、広告はより大きく、より派手になり、アニメーションやポップアップ、そして音声・動画を伴うものへと進化していきました。ユーザーはこれらの広告を煩わしく感じるようになり、広告の表示を抑止するツールとしてアドブロッカーが登場しました(1990年代後半から2000年代初頭)。
アドブロッカーは、ウェブページを構成する要素の中から広告に関連するパターン(URL、CSSセレクタなど)を識別し、それらを読み込まない、あるいは表示させないようにすることで機能します。当初は比較的単純なルールで広告をブロックできましたが、広告技術側もこれを回避するため、広告コンテンツを通常のコンテンツと区別しにくくしたり、広告サーバーのURLを頻繁に変更したり、広告表示ロブロジックを難読化したりといった対抗策を講じるようになりました。これにより、アドブロック側もより高度なフィルタリングルールやJavaScriptインジェクションといった技術を使うようになり、両者の間で技術的な「軍拡競争」が始まりました。本レポートは、この終わりのない軍拡競争の最新の局面を捉えたものと言えます。
特に動画広告においては、技術的な攻防がより顕著です。動画コンテンツの配信には大量の帯域幅とサーバーリソースが必要であり、そのコストを賄うために広告収入が不可欠だからです。YouTubeは、ユーザー生成コンテンツというモデルで動画共有を爆発的に普及させましたが、その巨大なトラフィックを支えるためには強固な収益モデルが求められました。Googleによる買収後、YouTubeは広告ビジネスを強化し、プリロール広告、ミッドロール広告、オーバーレイ広告など、様々な形式の動画広告を導入してきました。これに対し、アドブロッカーも動画広告のURLブロックやプレイヤー操作の改変などで対抗してきました。
今回の「偽バッファリング」や「ロッカー スクリプト」は、単に広告コンテンツのブロックを回避するだけでなく、アドブロッカーという「ユーザーの制御」そのものを技術的に制限しようとする新たな段階の対策と言えます。また、コメント欄で言及されている「サーバーサイド広告挿入」(SSAI)は、さらに一歩進んで、サーバー側で広告を動画ストリーム自体に組み込むことで、クライアント側でのブロックを非常に困難にする技術であり、これが主流になればアドブロックの有効性は大きく低下する可能性があります。
同時に、この攻防は「無料インターネット」モデルの持続可能性を巡る議論とも重なります。広告によって無料でコンテンツを提供し、ユーザーの注意を売るというモデルが、ユーザーの広告疲れやプライバシー懸念、そしてアドブロックの普及によって限界に近づいているのではないか、という問題意識です。YouTube Premiumのような有料サブスクリプションモデルや、Patreonなどによるクリエイターへの直接支援といった代替モデルが模索される中で、広告ブロックとの戦いは、インターネットにおけるコンテンツの「価値」と「対価」のあり方を問い直す歴史的な転換点の一つとして位置づけられるでしょう。
さらに、Googleのような巨大プラットフォーマーが市場の大部分を支配し、その技術力と資金力によって、ユーザーや他の技術開発者(アドブロッカー開発者、競合ブラウザ)の自由度を制限しようとする動きは、デジタル社会における権力の集中という観点からも重要です。これは、ウェブが元々持っていたオープン性や分散性といった理念と、現在の巨大プラットフォームによる中央集権化との間の緊張関係を示す一例であり、デジタルデモクラシーや反トラスト(独占禁止)の議論とも歴史的に繋がっています。
このように、本レポートで取り上げられている技術的な攻防は、単発の出来事ではなく、ウェブの黎明期から続く技術、ビジネス、社会、そして倫理が複雑に絡み合った歴史的な流れの最新のエピソードとして理解することができます。
今後望まれる研究
今回のYouTubeアドブロック攻防が示す現状を踏まえ、この分野で今後どのような研究が望まれるかを提示します。これらの研究は、技術開発者、アカデミア、政策立案者、そしてユーザー自身にとっても有益な情報を提供し、より良いデジタル環境の構築に貢献するでしょう。
まず、技術的な側面では、新たな広告技術(サーバーサイド広告挿入、AIを用いた広告生成・挿入など)に対する、より高度で頑健なアドブロック・回避技術の研究が求められます。クライアント側での検出・分離・置換技術に加え、ネットワークレベルやOSレベルでの広告除去の可能性や、その実現に伴う技術的・倫理的課題についても探求が必要です。また、ブラウザの拡張機能プラットフォーム(Manifest V3など)がアドブロック技術に与える影響を詳細に分析し、ユーザーの制御権を維持するための技術的な提言を行うことも重要です。
次に、ユーザー体験と広告の関係性について、広告の量、質、表示方法が、ユーザーのエンゲージメント、離脱率、アドブロック利用率、Premium加入率に与える影響を、大規模なデータを用いて客観的に評価する定量的な研究が必要です。どのような広告が最もユーザーに嫌われるのか、ユーザーはどの程度の広告量まで許容できるのか、そして意図的なユーザー体験の悪化が長期的なプラットフォーム利用にどう影響するのか、といった点を明らかにすることで、プラットフォーム側はよりユーザー体験に配慮した広告戦略を立てる指針を得ることができます。
ビジネスモデルとしては、広告に依存しない代替収益モデルの経済的・社会的影響に関する研究が望まれます。Patreon、投げ銭、サブスクリプション、マイクロペイメント、そして分散型プラットフォーム上でのトークンエコノミーなど、様々なモデルの実現可能性、クリエイターの収益性への影響、ユーザーの受け入れ度、そしてそれぞれのモデルがコンテンツの多様性やアクセシビリティに与える影響を比較分析することで、持続可能なコンテンツエコシステム構築のための知見が得られます。
政策・規制の観点からは、巨大デジタルプラットフォームのアドブロック対策や広告慣行に対する規制の有効性と限界に関する研究が必要です。競争法、消費者保護法、個人情報保護法などの観点から、どのような規制が効果的であり、どのような副作用をもたらす可能性があるのかを詳細に検討します。また、国際的な規制の連携や、デジタルプラットフォームを「公共インフラ」と見なした場合の法的・経済的影響についても深く議論する研究が求められます。
ユーザーの行動心理としては、ユーザーのプライバシー選好と広告・トラッキングへの対応行動に関する研究が重要です。ユーザーが自身のプライバシーをどの程度重視し、そのためにどのような技術的・行動的な対策(アドブロック、設定変更、サービス利用制限など)をとるか、そしてその行動が時間経過とともにどう変化するかを、意識調査や行動データ分析によって明らかにします。プライバシー保護技術の普及に関する障壁と促進要因を探ることも有益です。
最後に、今後の技術トレンドとして、AI生成コンテンツと広告・収益の関係に関する研究も不可欠です。AIが動画コンテンツ制作に普及した場合、コンテンツ量は爆発的に増加する可能性がありますが、その「価値」や収益化の構造はどう変化するのでしょうか? AIによる広告生成や、コンテンツ内へのシームレスな埋め込みが進んだ場合、既存のアドブロック技術はどのように対応すべきか、あるいは全く新しい形式の「広告」が生まれる可能性についても探る必要があります。
これらの研究は、単に広告を消すか表示させるかという技術的な議論を超え、デジタルコンテンツの創造・配信・消費のあり方、巨大テクノロジー企業の力、そしてユーザーの権利とプライバシーといった、デジタル社会の根幹に関わる問題を解決するための重要な一歩となるでしょう。
結論
本レポートは、YouTubeが導入している新たなアドブロック対策「偽バッファリング」を糸口に、技術、ビジネス、倫理、そして社会構造が複雑に絡み合ったYouTubeとユーザー(アドブロッカー利用者)との攻防の現状を詳細に分析しました。
YouTubeは、無料ユーザー向けの広告モデルを維持・強化するため、偽バッファリングのような意図的な遅延やロッカー スクリプトといった技術的な障壁を導入しています。これは、単に広告コンテンツをブロックさせないだけでなく、ユーザーのアドブロックという行為そのものへの抵抗を試みる、より積極的かつ巧妙な戦略です。しかし、アドブロッカー開発者側も迅速に技術的な解析を行い、新たな回避策を講じるという、まさに「いたちごっこ」が続いています。
この技術的な戦いの背景には、YouTube広告へのユーザーの根強い不満(量、質、無関連性、詐欺広告など)があります。多くのユーザーは広告を煩わしく、時には有害だと感じており、それがアドブロック利用の強い動機となっています。YouTube Premiumという有料サービスは公式な解決策として提示されていますが、抱き合わせ販売や将来への懸念、そしてクリエイターによるスポンサーセグメントの問題などから、全てのユーザーにとって理想的な選択肢とはなっていません。
この攻防はまた、アドブロックの倫理的正当性や、巨大プラットフォーマーの責任といった、より大きな問題を提起しています。ユーザーは自身のデバイスとブラウザを制御する権利を主張し、プラットフォームの不誠実な慣行や有害な広告からの自己防衛手段としてアドブロックを位置づけます。一方、プラットフォーム側や一部のクリエイターは、広告視聴を無料コンテンツの対価と見なし、アドブロックを収益を奪う行為だと批判します。この議論は、ウェブが「公共の場」なのか、それとも「企業の私有地」なのか、という根本的な問いにも繋がります。
YouTubeのような巨大プラットフォームの独占的な地位は、この問題をさらに複雑にしています。ネットワーク効果によってユーザーもクリエイターも容易に他のプラットフォームに移れないため、YouTubeはユーザー体験をある程度犠牲にしても収益を追求できるインセンティブを持ちます。健全な市場競争を促すためには、代替プラットフォームの成長支援や、政府による規制のあり方についても議論が必要です。
結論として、YouTubeのアドブロック攻防は、単なる技術的な戦いではなく、デジタルコンテンツの収益化、ユーザー体験、プライバシー、倫理、そして巨大テクノロジー企業の社会的な力といった、現代のデジタル社会が直面する複数の課題が凝縮された問題です。この「いたちごっこ」が今後どのように展開していくかは予測困難ですが、サーバーサイド広告挿入やAIによる広告生成など、技術はさらに進化するでしょう。ユーザー、クリエイター、プラットフォーマー、そして社会全体が、それぞれの立場からこの問題に向き合い、対話を続けることが、より健全で持続可能なウェブの未来を築くために不可欠であると考えられます。本書が、そのための議論の出発点となれば幸いです。
補足資料
本章では、本書の内容をさらに深めるための具体的な情報や、関連する技術、事例について補足的に解説します。
補足1: 本テーマに対する多様な感想
本レポートのテーマは、多くの人々の関心を引くものであり、様々な立場から多様な感想や意見が寄せられています。ここでは、本書の内容全体を踏まえた、いくつかの異なる視点からの感想を生成してご紹介します。
ずんだもんの感想なのだ
うわー、この本、YouTubeとアドブロックのお話がすごく詳しく書かれてるのだ!😊 YouTubeさんがアドブロック使ってる人を困らせようと、動画をわざと遅くする『偽バッファリング』っていう意地悪なことしてるのが分かったのだ。でも、それに対抗して、すごい技術を持ってる人たちが、それを無効にする方法を見つけてるんだから、インターネットの世界ってすごいのだ!まさに「いたちごっこ」って言うんだって。🐿️ chase gameなのだ!
ずんだもんも、動画見る時に変な広告がいっぱい出てくると、すごく嫌な気持ちになるのだ。特に、大音量だったり、全然興味ないものだったり…。クリエイターさんには、動画を作ってくれて感謝してるから、応援したい気持ちはあるのだ。でも、広告で邪魔されるのはやっぱり困るのだ。Premiumに入れば広告は消えるらしいけど、ちょっとお値段が高いし、YouTube Musicは使わないから、なんだかもったいない気がするのだ。
この本を読んで、広告って色々な問題があるんだなって分かったのだ。プライバシーが守られなかったり、詐欺広告があったり…。アドブロックを使うのは、そういう危険から自分を守るためでもあるんだって知って、なるほどって思ったのだ。
YouTubeみたいな大きな会社が、どんどん便利じゃなくしてる(enshittificationっていうんだって!面白い言葉なのだ!)っていう意見もあって、ちょっと心配になったのだ。でも、対抗する技術があったり、他の動画サイトもあったり、みんな色々な考え方でインターネットを使ってるんだなって知れて面白かったのだ。
ずんだもんはこれからも、快適に動画を見たいから、アドブロックとか、色々な情報を集めて、自分で賢くインターネットを使っていきたいのだ。クリエイターさんも、見る人も、みんながハッピーになれるインターネットになるといいのだなのだ!✨
ビジネス用語を多用するホリエモン風の感想
いやー、この「YouTubeアドブロック攻防最前線」って本、端的に言って面白いっすね。YouTubeが偽バッファリングとかいう小手先の技術でアドブロック対策してるって話だけど、これ、根本的に戦略がズレてるんすよ。
レガシーな広告モデルに固執しすぎ。 これが最大の問題。ネット広告って、もう効率悪くなってきてるんすよ。ユーザーの時間を奪うことでしか収益化できないって、ビジネスとして終わってる。しかも、その広告がユーザーにとって全く価値がない、むしろ不快なものになってるんだから、そりゃあブロックされますよ。当然の帰結。
今回の偽バッファリングも、やってることがセコい。ユーザーに不便を強いて、Premiumに誘導するって戦略だろうけど、これも長くは続かない。優秀な技術者は必ず回避策を見つける。技術と技術のイタチごっこにリソース注ぎ込むなんて、非生産的極まりない。そのコスト、どこから捻出してると思ってんすか? 結局、広告主から、あるいは他の事業の利益から回してるわけでしょ? 無駄無駄。
YouTubeがやるべきことは、ユーザーが「これにお金を払う価値がある」と感じるサービスを創出すること。Premiumだって、YouTube Musicとの抱き合わせとか、ユーザー目線じゃない。シンプルに広告なしの価値を明確にして、適正な価格設定をすればいい。クリエイターへの還元率も上げて、彼らがもっと質の高いコンテンツ作りに集中できるようにするとか。要は、Win-Winの構造を作ることなんすよ。
今のYouTubeは、巨大なプラットフォームという既得権益の上に胡坐をかいて、短期的な収益最大化しか考えてない。このままじゃ、ますますユーザーは離れて、クリエイターも別の場所を探し始める。まさに enshittification(糞まみれ化)の典型。技術力はあるんだから、もっとイノベーティブな方向へ舵を切るべき。ユーザーのデータを活用するにしても、広告のためじゃなくて、もっとユーザー体験を豊かにするサービスに活かすとか。この本は、その現状分析としては優れてるけど、YouTubeの未来をどうするか?っていう問いへの答えは、結局、彼ら自身の意識改革にかかってるってことなんすよね。ビジネスって、突き詰めれば価値創造なんすよ。そこを忘れてるようじゃ、先細りするだけ。
西村ひろゆき風の感想
はいどーも。なんかYouTubeがアドブロック対策で動画遅くしてるって話らしいですけど。まあ、YouTubeもタダで動画置かせたり見せたりしてるわけじゃないんで。金はかかる。だから広告見せて、それで儲けてます、と。そりゃあ、広告見ない奴がいたら困るよね、っていう。当たり前の話じゃないすか。
で、アドブロック使う人いるから、YouTube側はそれを阻止しようと技術使う。今回は偽バッファリングっていう、なんか姑息な方法らしいですけど。それに対して、アドブロック側もまた新しい技術で回避する。これもまた当たり前。イタチごっこですよね、完全に。どっちかが完全に勝つことはないんじゃないすかね。技術ある人たちがいる限り。
コメントとか見てると、「広告がうざい」「詐欺広告がある」「Premium高い」とか、みんな文句ばっかり言ってますけど。タダで見せてもらってるんだから、多少の文句はしょうがないけど、じゃあお金払うかっていうと払わない。広告も見たくない。そういうのって、単なるクレーマーじゃないすか? 無料のサービスなんだから、提供者の都合もあるわけで。それが嫌なら使わなきゃいい、っていう。シンプルな話だと思うんすけど。
まあ、YouTubeも広告モデルが限界きてるから、Premiumに誘導したいんでしょうね。でもPremiumも、なんか色々抱き合わせだったり、クリエイターの広告は消えなかったり、中途半端らしいじゃないすか。だから、ユーザーも「これにお金を払う価値はないな」って判断する。それは別に、ユーザーが悪いんじゃなくて、YouTubeのサービス設計が悪いんじゃないすかね。価値を感じさせられてない、っていう。
結局、ネットってタダでなんでも手に入るっていう幻想が広がりすぎたんすよね。コンテンツ作る人も、サーバー維持する人も、みんなタダでやってるわけじゃない。どこかで誰かが金払ってるか、あるいは広告見てるか。その構造を理解しないで、自分だけいいとこ取りしようとする人が増えすぎた結果が、今の状況なんじゃないすかね。だから、この問題、別に解決しないと思いますよ。人間って、楽して得したい生き物なんで。はい。
補足2: 本テーマに関する年表
本テーマを取り巻く歴史的な出来事や技術的な動向を、年表形式で整理しました。
年代 | 出来事・技術動向 | 関連性 |
---|---|---|
1990年代後半 | ウェブ広告(バナー広告など)が登場し普及。 初期のアドブロックツールが登場。 |
ウェブ広告モデルの始まりと、それに対する最初のユーザーの反応(ブロック技術)。 |
2005年2月 | YouTubeが設立される。 | 巨大動画共有プラットフォームの誕生。 |
2006年10月 | GoogleがYouTubeを買収。 | YouTubeの広告ビジネス本格化への道筋。 |
2000年代後半 | Flashなどを使った動画広告がウェブ上で普及。 アドブロック拡張機能が主要ブラウザで利用可能に(Firefoxなど)。 |
動画広告の登場と、アドブロック技術の普及・進化。 |
2010年代前半 | アドブロック利用者が増加し、ウェブサイト運営者の課題となる。 より高度なアドブロックフィルターや技術(要素隠しなど)が登場。 |
アドブロックの一般化と技術的進化。 |
2015年10月 | YouTube Red(後のYouTube Premium)がサービス開始。広告なし視聴を提供。 | YouTubeの有料サブスクリプションモデル導入。広告モデルからの脱却(または併存)への試み。 |
2018年頃 | YouTubeがミッドロール広告を強化。動画コンテンツの途中にも広告が頻繁に挿入されるようになる。 | 広告量・広告形式の強化によるユーザー体験への影響。 |
2020年頃 | 巨大デジタルプラットフォームの独占禁止や規制に関する議論が世界的に高まる。 Manifest V3など、ブラウザ拡張機能の仕様変更が提案・議論される。 |
プラットフォーマーの社会的な力への懸念と、技術的な制御の試み。 |
2023年 | YouTubeがアドブロック利用者を検出・警告し、動画再生を一定時間停止するなどの試験的な対策を本格的に展開。ユーザーの強い反発を招く。 | YouTube側のアドブロック対策強化が表面化。 |
2024年(レポートの主な時期) | YouTubeが「偽バッファリング」を含む新たなアドブロック対策(A/Bテスト)を展開。 ロッカー スクリプトなど、ブラウザ拡張機能の機能を制限する技術が導入される。 Loop氏が偽バッファリングの技術を解析し、回避策(uBlock Originフィルター)を開発・公開。 |
本レポートの中心となる技術的な攻防の発生。 |
2025年6月(レポート掲載時点) | 偽バッファリングへの回避策がuBlock Originなどに実装される。 サーバーサイド広告挿入(SSAI)など、さらなる広告技術が実験・検討されていることが示唆される。 |
現在の技術的な状況と、今後の展望。 |
補足3: 本テーマに関するオリジナルの遊戯王カード
本レポートのテーマであるYouTubeとアドブロックの攻防を、カードゲーム「遊戯王オフィシャルカードゲーム デュエルモンスターズ」の世界観になぞらえて、オリジナルのカードとして表現してみました。遊☆戯☆王ファンの方に、少しでも楽しんでいただければ幸いです。バトルフィールドでの激しいデュエルを想像してみてください!
モンスターカード: アドブロック・ドラゴン
カード名: アドブロック・ドラゴン
カード種類: 効果モンスター
レベル: 7
属性: 光
種族: サイバース族
攻撃力: 2500
守備力: 2000
効果:
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①: 相手が「広告」と名のついたカードを発動した時、このカードを手札から特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したこのカードは、その「広告」カードの効果を受けない。
②: このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手フィールドの「偽バッファリング」永続魔法カードの効果は無効化される。また、このカードの攻撃力はこの効果で無効化したカード1枚につき500アップする。
③: このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、その戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは0になる。
(解説:ユーザーの盾となり、広告の妨害を防ぎ、遅延効果を無効化する光の戦士。ただし、直接的な攻撃ではなく、防御と妨害に特化しています。)
永続魔法カード: 偽バッファリング
カード名: 偽バッファリング
カード種類: 永続魔法
効果:
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①: 自分フィールドに「広告」と名のついたカードが存在する場合、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力をバトルフェイズ終了時まで1000ダウンさせる。この効果は相手ターンでも発動できる。
②: 相手が「アドブロック」と名のついたカードの効果を発動した場合、その効果処理後、このカードは相手に800ダメージを与える。
(解説:広告を守るために、相手の動きを遅くしたり、対抗する者を消耗させたりする嫌がらせ戦術。効果は永続的にフィールドに残ります。)
通常魔法カード: InnerTube API
カード名: InnerTube API
カード種類: 通常魔法
効果:
①: 自分のデッキから「偽バッファリング」永続魔法カード1枚を手札に加える。その後、手札を1枚選んで墓地へ送る。
(解説:YouTubeのシステム中枢にアクセスし、偽バッファリングという戦術カードを手札に加えるためのキーカード。手札交換を伴います。)
永続罠カード: ロッカー・スクリプト
カード名: ロッカー・スクリプト
カード種類: 永続罠
効果:
①: このカードがフィールドに存在する限り、相手は「アドブロック」と名のついた魔法・罠カードの効果を発動できない。このカードは相手ターンにセットした場合でもそのターンに発動できる。
(解説:アドブロック系の妨害カードの発動をフィールドから封じる防御カード。相手の意図を読み、先回りして発動することで真価を発揮します。)
フィールド魔法カード: Google グローバル キャッシュ
カード名: Google グローバル キャッシュ
カード種類: フィールド魔法
効果:
①: このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
②: 自分の墓地のサイバース族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。
③: このカードがフィールドゾーンに存在する限り、お互いのモンスターの召喚・特殊召喚に成功した時、自分はそのモンスターのレベル×100のLPを回復する。
(解説:YouTubeの巨大な配信網を表すフィールド魔法。リソースの回復と、アドブロック関連のサイバース族モンスターの回収をサポートします。)
(注:「広告」カードは、遊戯王OCGには存在しない架空のカードカテゴリーです。)
補足4: 本テーマに関する一人ノリツッコミ(関西弁)
YouTubeのアドブロック対策の話聞いてたら、なんか自分の中でボケとツッコミが始まったわ。聞いてくれる?
「YouTubeがアドブロックしとる人に、わざと動画遅く見せる『偽バッファリング』ていうの始めたらしいで!」
...せこ!なんやその嫌がらせ!ケチくさいわ!
「でもな、その遅延時間、本来見るはずやった広告時間の8割らしいねん。」
...8割?!え、じゃあ2割は得するんか?なんや結局ブロックした方がマシやん!🤣 YouTubeさん、嫌がらせのつもりが、アドブロックのメリット証明しとるやないか!頭大丈夫か!
「しかも、ブラウザの奥の方でこっそり設定いじったら、その遅延も広告も全部消せる方法見つかったらしいで!」
...ほら見ぃ!技術ある人は違うわ!YouTubeが新しい手出すたびに、すぐ対抗策見つかるんやな。まさに『いたちごっこ』や!🦨🔄🐀
「けどな、YouTubeも賢くて、『ロッカー スクリプト』ていう、アドブロックの邪魔する新しい仕掛けもしてきてるらしいねん。」
...うわ、今度は鍵かけよったか!🔐 ほんま、あの手この手やな!ユーザーを快適に見せるより、いかに広告見せるかに全力を注いどる!
「でも、それもまた、別の方法で回避する技術が見つかってるらしいわ。」
...もうええわ!お前ら(YouTubeとアドブロック)、ほんま仲良いんか悪いんか分からんな!結婚したらええんちゃうか!💍👰
「それにしても、広告の質、ひどいらしいな。なんか詐欺みたいな広告とか、関係ないうるさい広告ばっかりらしいで。」
...そうそう!それが一番腹立つねん!😩 せっかく動画楽しんどるのに、いきなり大音量で変なCM流れたら、雰囲気ぶち壊しや!Googleさん、個人情報よう知っとるはずやのに、なんであんな的外れな広告ばっかりやねん!狙い定めても外しまくりやん!
「結局、広告見たくないならPremium入ったらええ、て話やけど、それもこれも全部解決するわけやないらしいわ。」
...せやねん! Premium入っても、クリエイターの広告は消えへんし、YouTube Musicいらん人もおるし、将来また広告入るかもしれへんて心配もあるし。なんかこう、スッキリせんなぁ。
「この攻防、いつまで続くやろなぁ…。」
...さあなぁ。多分、YouTubeが潰れるか、ネットの仕組みが根底から変わるまで続くんとちゃう?知らんけど。🤷♂️
補足5: 本テーマに関する大喜利
YouTubeの新しいアドブロック対策「偽バッファリング」。これをテーマに、ちょっと笑える大喜利を考えてみました。お題は…これです!
お題:YouTubeの「偽バッファリング」中に表示された、もっとイライラするものとは?
回答:
- 画面中央に「しばらくお待ちください...」と表示されているのに、画面の隅で別の動画がサクサク再生されて、しかもそれが全く興味のない「猫がひたすら寝ているだけの動画」だった。
- バッファリングが終わるカウントダウンが表示されているのに、最後の1秒がやたらと長い。永遠に「あと1秒」から進まない。⏳
- 「バッファリング中」のアイコンが、突然「YouTube Premiumに加入しないと、このアイコンは永遠に回り続けます」というメッセージ付きの広告バナーに変化する。
- 待ち時間に退屈しないように、と気を利かせたつもりか、「今日のラッキー広告」が表示され、押すと詐欺サイトに飛ばされそうになる。
- 偽バッファリングのロードバーが、なぜか「YouTube Premium加入者数」の増加グラフになっていて、自分のせいでグラフが伸び悩んでいるような罪悪感を煽られる。📈 guilt trip
- 待ち時間が明けたと思ったら、動画が「あなたの視聴を妨害した広告」として、さっき待たされた広告がもう一度フル再生される。
- 動画が始まる代わりに、YouTubeの広報担当者が現れて、「ご理解とご協力をお願いします」と延々と語り始める。
- 待たされた時間に応じて、動画の再生速度が自動的に加速される。結果、早送りで何を言ってるか分からなくなる。⏩ Chipmunk voice
- 偽バッファリング中に、隣でYouTube Premiumに入っている家族や友人が、爆速で動画を見始めて煽られる。😇
- 画面に「YouTubeに勝てると思ってたの?」という煽りメッセージが表示される。
補足6: 予測されるネットの反応と反論
本レポートのような内容が広くネットで共有された際に予測される、様々なコミュニティからのコメントと、それに対する反論を生成します。実際のHacker Newsのコメントも参考にしつつ、それぞれのコミュニティの典型的な反応をシミュレーションします。
なんJ民の反応と反論
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コメント例: 「は?わざと遅くするとかヤバすぎだろw やっぱGoogleってクソだわ。アドブロック使えねーとか雑魚乙www 情弱だけが広告見るんだよなぁ。」
反論: Googleのやり方に対して批判的な意見は多いですが、技術的に回避策が見つかっているため「アドブロック使えなくなる」というのは誤解です。常に新しい対抗策が開発されているので、情弱かどうかという話ではなく、情報やツールの有無の問題ですね。
-
コメント例: 「アドブロックとか意味ねーだろ。どうせサーバーサイド広告挿入されたら終わり。諦めてPremium入るか、YouTubeやめるしかねーよ。」
反論: サーバーサイド広告挿入は確かに強力ですが、それでも検出・スキップする技術の研究は進んでいます。また、Premium以外にもクリエイターを支援する方法や、代替プラットフォームもあります。諦めるのはまだ早いかもしれませんよ。
ケンモメンの反応と反論
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コメント例: 「Google様が更なる監視と搾取に乗り出したか。偽バッファリング()とかいうセコい嫌がらせ。そのうちブラウザにまで手を出して広告ブロックさせなくするだろうな。もう監視資本主義からは逃れられない。インターネットやめるしかない。」
反論: Googleの行動がユーザー体験を悪化させ、監視につながるという懸念はもっともです。ブラウザ拡張機能への制限(Manifest V3)もその一環と見られます。しかし、Firefoxのようにプライバシーやユーザー制御を重視するブラウザも存在しますし、完全にインターネットを断つ以外の選択肢もあります。抵抗する技術やコミュニティはまだ存在しています。
-
コメント例: 「無料で使わせてやってるって言うけど、俺たちのデータと時間を売って儲けてるんだろが!広告見せられるのは労働だ!それを見ない権利くらいあるわ!Googleは公共インフラになれ!」
反論: ユーザーのデータと時間がビジネスの対価になっているという指摘は重要です。広告視聴を「労働」と捉える考え方も議論されていますね。ただし、YouTubeを公共インフラと見なすかどうかは社会全体での議論が必要ですし、仮に公共インフラとなった場合の運営方法や費用負担(税金など)といった課題もあります。
ツイフェミの反応と反論
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コメント例: 「技術でアドブロック阻止とかする前に、まず広告の質なんとかしろよ。女性向け動画にキモい美容広告とか、生理用品とか、妊娠検査薬とか、デリケートな広告ぶっ込んできてアドブロッカーないと本当に無理。詐欺まがいの広告も多いし。そういうのは放置で技術的な嫌がらせには熱心なんだね。」
反論: 広告のターゲティングやモデレーションに関する問題、特にセンシティブな広告や詐欺広告が表示される問題は、技術的なアドブロック対策とは別の次元で存在する、プラットフォームの重大な責任です。広告の質や内容の改善、そして適切なモデレーションは、技術的な対策以上にユーザー体験にとって重要であり、プラットフォームに強く要求されるべき点です。
爆サイ民の反応と反論
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コメント例: 「ようつべなんてヤクザかよ!w わざと動画重くして金払えとか、最低だな!もう見ねーわ!爆サイが一番だよ!広告少ないし!」
反論: 意図的にユーザー体験を悪化させる手法への批判は理解できます。ただ、YouTubeは膨大な動画データ配信に莫大なコストをかけており、収益化が必要なビジネスであることは事実です。他のサイトと比較して広告の多さや質、収益構造がどうなっているかは、単純な比較では難しい側面もあります。
Reddit/HackerNewsの反応と反論
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コメント例: 「Fake buffering and locker scripts are just the latest moves in this arms race. Interesting analysis of the technical details. But how sustainable is this? Eventually, SSAI will make client-side blocking impossible. We need to rethink the monetization model entirely. Support creators directly via Patreon or Nebula. Ad-supported free content is a broken model now.」
反論: The technical analysis is definitely insightful. While SSAI presents a significant challenge, it might not make client-side blocking *entirely* impossible, or new methods like detecting and skipping SSAI segments could emerge. Rethinking monetization models is crucial, but the technical defense against intrusive advertising will likely continue alongside exploring alternatives like Patreon or Nebula. It's a multi-pronged issue, not just one solution vs. another.
-
コメント例: 「Users have the right to control their user agent. Period. ToS is not a contract. If Google doesn't want me to block ads, they should implement proper paywalls or SSAI that doesn't degrade content. Trying to technically cripple ad blockers or degrade user experience for non-payers is anti-user and unethical. This just reinforces the need to move away from Google's ecosystem.」
反論: The argument for user agent control is a strong one, especially from a technical perspective. Whether ToS constitutes a legally binding contract is debatable and may vary by jurisdiction. While proper paywalls or non-intrusive SSAI could be considered more "honest" approaches, Google's current strategy reflects their business incentives within the existing landscape. The user's choice to move away from Google is a valid response to this, but given Google's dominance, it's a challenging path for many.
目黒孝二風書評の反応と反論
-
コメント例: 「この『偽バッファリング』と銘打たれた技術は、単なる遅延ではない。それは、プラットフォームがユーザーの『時間』を意識的に『奪取』せんとする、剥き出しの意志の発露である。広告、すなわち資本の視線は、もはやユーザーの『注意』のみならず、その『存在』そのものへと向けられている。このレポートは、その『存在』の最前線で展開される、技術と倫理の『戦い』を描き出す。これは、ウェブという『広場』が、いかにして『監獄』へと変貌しうるか、その可能性を我々に突きつける黙示録である。我々は、この技術という名の『鎖』を断ち切ることができるか、あるいは自ら進んで『囚人』となるか。このレポートは、その『選択』を迫る。」
反論: 先生の示唆に富む考察、大変感銘を受けました。確かに、技術がユーザーの自由や存在にまで関わる可能性を示唆している点は重要です。しかし、本レポートは同時に、ユーザー側にも技術的な「断ち切る」手段が存在し、実際にそれが開発されていることも示しています。ウェブが一方的に「監獄」化するのではなく、ユーザーもまた技術を使って抵抗し、自らの「場」を再定義しようとしている、という側面も捉えるべきではないでしょうか。技術は鎖にも盾にもなりうる。その使用が、最終的に「囚人」となるか「解放」につながるか、それは技術そのものだけでなく、それを行使する我々の意志と行動にかかっているのだと思います。
補足7: 高校生向け4択クイズと大学生向けレポート課題
本レポートの内容を教育に活用することを想定し、高校生向けの基本的な理解を確認する4択クイズと、大学生向けのより深い考察を求めるレポート課題を作成しました。
高校生向け4択クイズ
問1: YouTubeがアドブロック対策として導入した「偽バッファリング」は、何を意図的に遅くする技術ですか?
- インターネット回線の速度
- 動画のバッファリング(読み込み)
- 広告の表示
- 動画プレイヤーの操作
正解: b (動画のバッファリング(読み込み))
問2: 偽バッファリングの待ち時間は、おおよそ何パーセントの広告時間分に相当するとレポートで指摘されていますか?
- 20%
- 50%
- 80%
- 100%
正解: c (80%)
問3: レポートで紹介されている、偽バッファリングなどの広告表示を技術的に回避するために利用されるブラウザ拡張機能の例は何ですか?
- Google Chrome
- Safari
- uBlock Origin
- Internet Explorer
正解: c (uBlock Origin)
問4: YouTube Premiumに加入する主なメリットとして、レポートで最も多く言及されているのは何ですか?
- 動画の制作ツールが使える
- 広告なしで動画を視聴できる
- 動画の画質が上がる
- 他のユーザーと交流できる
正解: b (広告なしで動画を視聴できる)
問5: 多くのユーザーがアドブロックを使う理由として、レポートやコメントで共通して指摘されている不満点は何ですか?
- 動画の種類が少ないこと
- 動画プレイヤーの機能が少ないこと
- 広告の量や質、無関連性
- コメント機能が使いにくいこと
正解: c (広告の量や質、無関連性)
大学生向けレポート課題
以下のテーマの中から一つを選び、本レポートの内容(特に第二部の議論)を参考に、関連文献(推薦図書、政府資料、報道記事、学術論文など)を調査・引用しながら、あなたの考察を加えてレポートを作成してください。文字数は〇〇字程度とします。(※文字数は授業の要件に合わせて設定してください)
レポートテーマ案:
- YouTubeのアドブロック攻防にみる、ウェブ広告モデルの現状と限界について論じ、今後のインターネットにおけるコンテンツ収益化の可能性と課題を多角的に考察せよ。
- YouTubeのような巨大プラットフォームのアドブロック対策を事例として、デジタル社会におけるユーザーの権利(デバイス制御権、プライバシー権など)とプラットフォーマーの責任について、倫理的・法的な観点から論じ、両者の関係性はどうあるべきかあなたの見解を述べよ。
- YouTubeの偽バッファリングに見られるユーザー体験の意図的な悪化は、プラットフォーム経済学における「enshittification(糞まみれ化)」の事例としてどのように分析できるか。また、このような巨大プラットフォームの行動が、市場競争やイノベーションに与える影響について考察せよ。
- YouTubeの広告内容(詐欺広告、無関連広告など)に対するユーザーの不満は、アドブロック利用の主要な動機となっている。デジタル広告における広告主、プラットフォーム、そしてユーザーそれぞれの責任について論じ、より健全なデジタル広告エコシステム構築のための提言を行え。
- YouTubeアドブロック攻防は、日本国内のユーザーやクリエイター、関連市場にどのような影響を与えているか。日本のデジタルコンテンツ産業の現状や課題を踏まえ、あなたの考察を述べよ。
レポート作成のポイント:
- 本レポートの内容を正確に理解し、要約する。
- レポートで提示されている疑問点や多角的な視点を参考に、自身の論点を明確にする。
- 単にレポートの内容を繰り返すだけでなく、関連文献を調査・引用し、議論に深みを持たせる。
- テーマに対する自身の意見や提言を論理的に展開する。
- 専門用語を用いる場合は、正確な意味を理解し、必要に応じて注釈を加える。
- 参考文献リストを適切に作成する。
補足8: 潜在的読者のための情報
本レポートや、これを元にした記事・単行本などを、潜在的な読者にアピールし、情報共有を促進するためのキャッチーなタイトル案、SNS共有文、ハッシュタグ、ブックマークタグ、そして記事にふさわしい絵文字、カスタムパーマリンク案を提示します。
キャッチーなタイトル案
- YouTubeアドブロック戦争:偽バッファリングの真実とユーザーの逆襲
- YouTube vs アドブロッカー:終わりなき攻防が生むウェブの未来
- 動画が止まる謎:YouTube新アドブロック対策の技術を徹底解剖
- 広告ブロックは是か非か? YouTube騒動から考えるデジタル倫理
- あなたの知らないウェブの裏側:巨大プラットフォームと広告ブロックの戦い
SNS共有時に付加するべきハッシュタグ案
#YouTube #アドブロック #技術 #偽バッファリング #uBlockOrigin #ウェブ広告 #プライバシー #監視資本主義 #テック #デジタルデモクラシー #インターネット #ブラウザ #技術攻防
SNS共有用に120字以内に収まるようなタイトルとハッシュタグの文章
YouTube新アドブロック「偽バッファリング」技術解析と回避策!🦨🔄🐀 動画が遅くなる謎を解く。広告ブロック、その倫理と未来は? #YouTube #アドブロック #技術攻防 #ウェブ広告 #プライバシー
ブックマーク用にタグを[]で区切って一行で出力(NDC区分参考に)
[007][情報科学][YouTube][アドブロック][技術][広告][プライバシー]
この記事に対してピッタリの絵文字
▶️ ⏸️ ⏳ 🛡️⚔️ 💻 👁️🗨️ 💸 🗣️ 🤔💡📚
この記事にふさわしいカスタムパーマリンク案
youtube-adblock-tech-battle
fake-buffering-uprising
adblock-wars-explained
youtube-anti-adblock-tech
web-adblock-arms-race
youtube-buffering-adblock
この記事の内容が単行本ならば日本十進分類表(NDC)区分のどれに値するか
007 情報科学
(詳細な解説については、本書の「疑問点・多角的視点」または巻末資料の「日本十進分類表(NDC)区分」の項目をご参照ください。)
巻末資料
本章では、本書の理解を助ける追加情報として、用語解説、用語索引、そして参考となる資料や文献リストを提供します。
用語解説
本書で用いられた専門用語や略称について解説します。本文中の対応する用語にリンク(id)を付けてありますので、適宜参照してください。
strongABR (Adaptive Bit Rate): /strong> ネットワークの帯域幅(通信速度)に応じて、動画や音声の画質(ビットレート)をリアルタイムに自動調整する技術です。帯域幅が広いときは高画質でスムーズに再生し、狭いときは画質を落として途切れにくくします。YouTubeのような動画配信サービスで広く使われています。
A/Bテスト (A/B Testing): 二つ(AとB)以上の異なるパターン(デザイン、機能、アルゴリズムなど)を用意し、ユーザーをランダムにそれぞれのパターンに振り分けて反応を比較するテスト手法です。どちらのパターンがより目標(クリック率、購入率、滞在時間など)を達成できるかを評価するために行われます。YouTubeがアドブロック対策の一部ユーザーにのみ適用しているのも、このA/Bテストの一環と考えられます。
Enshittification (糞まみれ化): 作家・ブロガーのCory Doctorow氏が提唱した概念で、オンラインプラットフォームが、まずユーザーにとって価値を提供することで利用者を囲い込み(例:Facebook)、次にクリエイターにとって価値を提供することでコンテンツを集め(例:Instagram)、十分に巨大化して独占的な地位を確立すると、最終的にユーザーとクリエイターの両方から価値を抽出し、プラットフォーム自身(特に株主)の利益を最大化するようになるプロセスを指します。この結果、プラットフォームはユーザー体験やクリエイターの収益性といった点で劣化し、「糞まみれ」になっていく、と批判的に表現しています。
偽バッファリング (Fake Buffering): YouTubeが一部のアドブロック利用者を対象に実施しているとされるアドブロック対策の一つです。動画再生に必要なデータは既に十分に読み込まれているにもかかわらず、意図的に動画の再生開始を遅延させ、バッファリング中であるかのように見せかけます。これにより、広告をブロックして時間を節約しようとするユーザーに、広告時間の一部に相当する時間的な不利益を与えます。
Firefox (Mozilla Firefox): Mozilla Foundationが開発・提供しているオープンソースのウェブブラウザです。Google Chromeと並ぶ主要なブラウザの一つであり、プライバシー保護やウェブ標準、拡張機能API(Manifest V3など)の設計思想において、Chromiumベースのブラウザとは異なる方針をとることがあり、アドブロック技術への対応にも影響が出ることがあります。
GVS (Google Video Services): Googleが提供する動画ストリーム配信サービスです。YouTubeだけでなく、Google ドライブやGoogle フォトなど、Googleの様々なサービスで動画をストリーミングするために利用されています。世界中に分散されたサーバー網(Google グローバル キャッシュなど)を利用して、効率的かつ高速な動画配信を実現しています。
GVS URL: GVSから動画ストリームを取得するために使用されるURLです。InnerTube APIからの応答に含まれ、動画データが実際に格納されているサーバーの場所や、再生に必要な認証情報(署名、有効期限など)が含まれています。署名されているため、クライアント側で自由に生成することはできません。
HTMLフィルター (HTML Filtering): ブラウザ拡張機能が、ウェブページが読み込まれて解析される前に、ソースHTMLコード自体を改変したり、特定の要素を削除したりする機能です。これにより、ページに含まれる特定のスクリプト(ロッカー スクリプトなど)を、それが実行される前に無効化することができます。Firefoxなどの一部のブラウザ拡張機能APIでサポートされています。
InnerTube: YouTubeの内部APIの名称です。ウェブブラウザやモバイルアプリなどのYouTubeクライアントが、動画に関する情報(動画の詳細、再生に必要なURL、広告情報など)を取得したり、ユーザー操作(再生、一時停止、高評価など)をサーバーに伝えたりするために使用します。クライアントとサーバー間の主要な通信経路となっています。
JSON.stringify (JavaScript): JavaScriptの標準関数の一つです。JavaScriptのオブジェクトや値を、JSON形式の文字列に変換します。ウェブブラウザがサーバーにデータを送信する際、JavaScriptオブジェクトをJSON文字列に変換するために頻繁に利用されます。アドブロッカーは、この関数をフックして、送信されるJSONデータを改変することで、広告関連の設定を変更するなどの手法をとることがあります。
ロッカー スクリプト (Locker Script): YouTubeがアドブロック対策として導入しているとされるJavaScriptコードの一部です。ウェブページのHTMLの
タグの早い段階で読み込まれ、
Object.defineProperty
などの機能を使って、JSON.stringify
やJSON.parse
といった一部のグローバルなJavaScriptオブジェクトを書き換え不可に設定します。これにより、後から読み込まれるブラウザ拡張機能などがこれらのオブジェクトをフックし、その振る舞いを変更することを技術的に困難にします。Manifest V3: Google Chromeなど、Chromiumベースのブラウザの拡張機能プラットフォームの新しいバージョンです。プライバシーやセキュリティの向上を謳っていますが、同時に拡張機能がウェブページのコンテンツや通信を改変・傍受できる範囲が以前のManifest V2と比較して制限されるため、アドブロッカーなどの拡張機能に影響を与えるとして議論を呼んでいます。
ミッドロール広告 (Mid-roll Ad): 動画コンテンツの再生途中に挿入される広告です。テレビCMのように、動画の途中で再生が中断されて広告が表示されます。YouTubeでは、動画の長さや設定に応じて複数のミッドロール広告が挿入されることがあります。
Object.assign (JavaScript): JavaScriptの標準関数の一つです。一つ以上のソースオブジェクトから、ターゲットオブジェクトに、列挙可能な自身のプロパティをコピーするために使用されます。オブジェクトを結合したり、オブジェクトのコピーを作成したりする際によく利用されます。YouTubeのアドブロック対策としてロッカー スクリプトが
JSON.stringify
をフックするのを防いだ後、アドブロッカー側が代替としてObject.assign
をフックする手法が見つかりました。プリロール広告 (Pre-roll Ad): 動画コンテンツの再生が始まる前に表示される広告です。スキップ可能なものと、一定時間(例:5秒など)スキップできないものがあります。YouTubeで最も一般的な広告形式の一つです。
Protocol Buffers (Protobufs): Googleが開発した、構造化されたデータをシリアライズ(データ形式を変換して、ネットワーク転送やファイル保存に適した形にすること)するための、言語に依存しない、プラットフォームに依存しない拡張可能なメカニズムです。XMLやJSONよりも小さく、高速で、シンプルだと言われています。YouTubeのInnerTube APIのような内部システム間のデータ交換に広く利用されています。外部からAPIのProtobufs定義を解析することで、利用可能なリクエストパラメータなどを詳細に知ることができます。
SABR (Server ABR - Adaptive Bit Rate): YouTube独自の、サーバー側で適応的なビットレート調整を行うためのバイナリプロトコルです。MPEG-DASHのような標準プロトコルよりもバッファリングを回避することに優れているとされています。クライアントへのデータ配信を制御するための機能が含まれており、偽バッファリングにおいては、サーバーからクライアントへの「バックオフ」(待機指示)を送信するために利用されていると考えられます。
サーバーサイド広告挿入 (Server-Side Ad Insertion, SSAI): 動画コンテンツと広告コンテンツを、サーバー側で一つに結合してからユーザーに配信する技術です。クライアント側で動画ストリームから広告を分離・ブロックすることが非常に困難になるため、アドブロック対策として効果的です。今回の偽バッファリングとは異なる技術ですが、YouTubeも実験を行っていることが示唆されています。
SponsorBlock: YouTube動画に含まれるクリエイターによるスポンサーセグメント(動画本編の中に挿入される、企業からの広告紹介部分)などを、ユーザーコミュニティからの報告に基づいて自動的にスキップするためのブラウザ拡張機能です。YouTube Premiumでもスキップされない動画内の埋め込み広告に対応するサードパーティ製ツールとして知られています。
uBlock Origin: オープンソースで提供されている、広く利用されているブラウザ拡張機能型のアドブロッカーです。効率的に広告、トラッカー、マルウェアサイトなどをブロックすることを目的としています。様々なフィルタリングルールや技術(要素隠し、JavaScriptインジェクションなど)を駆使して、ウェブサイトの広告表示を抑止します。YouTubeのアドブロック対策に対抗するためのフィルターも積極的に開発・更新しています。
ytInitialPlayerResponse / ytInitialData: YouTubeのウェブサイトに直接アクセス(コールドロード)した際、動画再生に必要な初期情報がHTMLコード内にJavaScript変数として埋め込まれています。
ytInitialPlayerResponse
にはプレイヤーの設定や動画情報、広告情報などが含まれ、ytInitialData
にはページ全体の構成情報などが含まれます。これらの情報に基づいて、ブラウザが動画プレイヤーやページ要素を構築します。クライアントがInnerTube APIにリクエストを送るよりも前に処理されるため、アドブロッカーがこの段階で広告表示を制御することは困難な場合があります。
用語索引(アルファベット順)
本書で用いられた専門用語や略称をアルファベット順に並べ、簡単な解説と、その用語が主に解説されている箇所へのリンクを掲載しています。
- ABR (Adaptive Bit Rate): ネットワーク帯域幅に応じて動画画質を調整する技術。
- A/Bテスト (A/B Testing): 複数のパターンを比較して効果を測定するテスト手法。
- コールドロード / ウォームナビゲーション: ウェブサイトへのアクセス方法による読み込みの違い。
- Enshittification (糞まみれ化): プラットフォームがユーザーにとって劣化していく現象。
- 偽バッファリング (Fake Buffering): YouTubeが意図的に行う動画再生前の遅延。
- Firefox (Mozilla Firefox): Mozillaが提供するオープンソースのウェブブラウザ。
- GVS (Google Video Services): Googleの動画ストリーム配信サービス。
- GVS URL: GVSから動画ストリームを取得するためのURL。
- HTMLフィルター (HTML Filtering): HTMLソースコードを拡張機能が改変する機能。
- InnerTube: YouTubeの内部APIの名称。
- JSON.stringify (JavaScript): JavaScriptオブジェクトをJSON文字列に変換する関数。
- ロッカー スクリプト (Locker Script): 拡張機能によるJavaScript改変を妨げるYouTubeのスクリプト。
- Manifest V3: Chromium拡張機能プラットフォームの新しいバージョン。
- ミッドロール広告 (Mid-roll Ad): 動画再生途中に挿入される広告。
- Object.assign (JavaScript): JavaScriptオブジェクトのプロパティをコピーする関数。
- プリロール広告 (Pre-roll Ad): 動画再生前に表示される広告。
- Protocol Buffers (Protobufs): 構造化データを効率的にシリアライズするメカニズム。
- SABR (Server ABR): YouTube独自のサーバー側適応的ビットレートプロトコル。
- サーバーサイド広告挿入 (Server-Side Ad Insertion, SSAI): サーバー側で広告を動画に組み込む技術。
- SponsorBlock: 動画内のスポンサーセグメントなどをスキップする拡張機能。
- uBlock Origin: オープンソースのブラウザ拡張機能型アドブロッカー。
- ytInitialPlayerResponse / ytInitialData: コールドロード時にHTMLに埋め込まれる初期動画情報。
参考リンク・推薦図書
本レポートの内容を理解する上で参考となる、公開されている情報や関連文献のリストです。インターネット上の情報は日々変化する可能性がある点にご留意ください。
ウェブ上の参考情報(一部)
- Hacker News該当投稿:https://news.ycombinator.com/item?id=40732104 (本レポートの基となった投稿です)
- uBlock Origin GitHubリポジトリ:https://github.com/gorhill/uBlock (アドブロック技術の詳細やフィルター開発について知ることができます)
- Mozilla Firefox公式ウェブサイト:https://www.mozilla.org/ja/firefox/ (Firefoxの技術やプライバシーに関する方針について)
- Manifest V3に関するGoogle Chrome開発者向け情報:https://developer.chrome.com/docs/extensions/develop/concepts/manifest-v3 (Chromiumの拡張機能モデルの変更点について)
- Protocol Buffers公式ウェブサイト:https://protobuf.dev/ (Protobufsの技術仕様について)
- Enshittificationに関するCory Doctorow氏の著作やブログ記事(各自検索):https://craphound.com/news/2023/01/23/tiktok-platforms-and-the-cursed-fate-of-being-a-place/ など
- 日本におけるデジタルプラットフォーム規制に関する公正取引委員会資料(各自検索):https://www.jftc.go.jp/dkp/ など
推薦図書
- 『インターネットという「怪物」との付き合い方』ジェフ・トゥーセット 著, 冨田勝 訳
- 『監視資本主義 ―― デジタル社会がもたらす光と影』ショシャナ・ズボフ 著, 村井章子 訳
- 『ウェブとは何か ―あるいはグーグル検索の社会史』ティム・バーナーズ=リー 著, 山形浩生 訳
- 『デジタル・ファシズム:日本の未来』成田悠介, 倉貫義人, 斎藤幸平, 奥田知志, 望月優大 著
プログラミング言語の簡潔で不完全、そしてほとんど間違った歴史 #六21 #平成IT史ざっくり解説
https://dopingconsomme.blogspot.com/2025/06/brief-incomplete-and-mostly-wrong.html
本書の目的と構成 プログラミング言語の歴史について、真面目な教科書だけでは伝わりにくい、開発者の「あるある」やコミュニティの雰囲気、そして何よりユーモア💡を交えてご紹介することを目的としています。歴史的事実に基づきつつも、大胆な飛躍や誇張、そして多分に筆者の偏見を ...
Webの黒歴史?点滅とスクロールが語るHTMLの混沌時代 #Web開発の歴史blink および marquee #HTML #デジタルノスタルジー #1994ルー・モントゥリのNetScape_平成IT史ざっくり解説 #六08
https://dopingconsomme.blogspot.com/2025/06/html-blink-marquee-web-history.html
6月 08, 2025
【衝撃】コンテキスト100万!常識破りの低コストAI!「MiniMax-M1」が示す、中小企業も使えるAIの未来 #六18 #MiniMax
https://dopingconsomme.blogspot.com/2025/06/blog-post_18.html
【衝撃】コンテキスト100万!中国MiniMax製AI「MiniMax-M1」オープンソース化で世界はどう変わる?🚀 #AI #LLM 常識を覆す超長文対応AIが登場!低コスト開発の秘密とビジネス活用術を徹底解説します。
ロボットとAIの簡潔で不完全、そしてほとんど間違った歴史 #ロボット技術史 #AIWinter #六21 #工学史ざっくり解説
https://dopingconsomme.blogspot.com/2025/06/robotics-ai-history-wrong.html
🤖💸 ロボットとAI、期待と失望の「ほぼ間違った」歴史 #技術史 #AIWinter 誇大広告とバブル、そして繰り返される冬の物語 このレポートは、ロボット工学と人工知能(AI)の歴史を、通常の教科書では語られないような、少し皮肉で、大いに不完全で、そして「ほとんど間違った」視点から ...
知識の迷宮を解き明かす羅針盤:デューイ十進分類法(DDC)のすべて #図書館 #分類法 #DDC #歴史 #情報学
https://dopingconsomme.blogspot.com/2025/06/dewey-decimal-classification-ddc-history...
まずタイトルがさ、『江戸IT史ざっくり解説』って言うから、なんか江戸時代の『からくり情報仕分け術』みたいな、ちょっとオタク心をくすぐるような内容を期待したんだけど、蓋を開けてみれば延々デューイさんの分類法(DDC)の話。
AIが「描く」デザイン革命の幕開け:SVG特化型LLMが拓くウェブの未来 #SVG #AIデザイン #生成AI
https://dopingconsomme.blogspot.com/2025/06/llm-for-svg-design.html
第一部:SVGの基礎とAIとの出会い 第1章 本書の目的と構成 デジタルコンテンツが生活の中心となり、ウェブサイトやアプリケーションのデザインは日々進化を遂げています。その中で、ロゴやアイコン、グラフといったビジュアル要素の表現において、 SVG (Scalable Vector Graphics)という技術が ...
#00フリードリヒリストと傾斜生産方式_昭和日本史ざっくり解説 戦後日本「傾斜生産方式」の魂は彼の叫びだったのか? #経済思想 #日本経済
https://dopingconsomme.blogspot.com/2025/05/00.html
これは、経済思想史と政策史の対話を促進し、より統合的な歴史認識に貢献するものです。 🤝 1.2.3.2 現代の産業政策への応用可能性 リストの思想と傾斜生産方式の経験から得られる教訓は、現代の産業政策を考える上で示唆に富んでいます。
磁石覇権の真実:日本が見失った技術とサプライチェーンクライシス #レアアース #経済安全保障 #技術移転 #中国磁石生産の歴史_平成
https://dopingconsomme.blogspot.com/2025/06/china-rare-earth-magnet-dominance-report.html
ようこそ、稀なる磁力の物語へ。目に見えない力、磁石が、いかに世界の産業と覇権争いの行方を左右しているのか、その深層に迫ります。 磁石覇権の真実:日本が見失った技術とサプライチェーンクライシス🇨🇳🇯🇵🌍 #レアアース #経済安全保障 #技術移転 〜静かなる磁力戦争が、世界 ...
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