🐢スローウェブ宣言：フィードの奔流から降りて、自分の「庭」を取り戻す #SNS疲れ #IndieWeb #六06

　

🐢スローウェブ宣言：フィードの奔流から降りて、自分の「庭」を取り戻す #SNS疲れ #IndieWeb

さようなら、息継ぎのできないインターネット。こんにちは、思考が深まる静かなウェブ。

目次

• はじめに：なぜインターネットはこんなに騒がしいのか？
• 第1部：フィードという名の奔流
  • 第1章：「与えられる」インターネット
    • 1-1. フィードの解剖学：終わりなきスクロールの仕組み
    • 1-2. 私たちは本を読まなくなった、コンテンツを「消費」するようになった
    • 1-3. 「反応」のためのコミュニケーションと、その疲弊
    • 1-4. ハッシュタグが作るコミュニティの光と影
  • 第2章：流れに抗う無力感
    • 2-1. ブロックリストとミュートワード：ささやかな抵抗の記録
    • 2-2. デジタルデトックスの試みと、その限界
    • 2-3. なぜ、最終的にフィードは勝つのか
• 第2部：「インターネットI」への郷愁と再発見
  • 第3章：僕らが恋した、静かなウェブ
    • 3-1. 小さな敷地の広大なコレクション：Web 1.0の記憶
    • 3-2. リンクを辿る喜びと、コミュニティの発見
    • 3-3. 「知らなかった」を知る学びの体験
  • 第4章：IndieWebとの出会い
    • 4-1. 2025年にウェブサイトを自作するということ
    • 4-2. IndieWebとは何か：独立したウェブのための思想とツール
    • 4-3. ウェブリングの復活と、新しい隣人たち
    • 4-4. 「何もない」ことの豊かさ：最初の投稿と、静寂の肯定
• 第3部：スローウェブの実践
  • 第5章：関係性を育むためのデザイン
    • 5-1. パーティーから、縁側の会話へ
    • 5-2. スローウェブという名の個人的な実験
    • 5-3. 違いを乗り越えるための「時間」と「空間」
    • 5-4. 自分の庭を育てるように：ゆっくりとウェブを構築する
  • 第6章：思想を実装する技術
    • 6-1. なぜReactは「間違った選択」なのか
    • 6-2. HTMLファーストとプログレッシブエンハンスメント
    • 6-3. 画像を支配する：SVG, WebP, そしてsrcset
    • 6-4. パフォーマンスの悪魔 `background-attachment: fixed`
    • 6-5. サーバーサイドレンダリング（SSR）は銀の弾丸か？
    • 6-6. リーン（Lean）であることの哲学
• 第4部：これからのウェブのために
  • 第7章：開かれた問い
    • 7-1. 疑問点・多角的視点
    • 7-2. 日本への影響
    • 7-3. 歴史的位置づけ
  • 第8章：未来への展望
    • 8-1. 今後望まれる研究
    • 8-2. 遅いウェブは、速いウェブと共存できるか
    • 8-3. 結論：ウェブは誰のものか
• 巻末資料
  • 登場人物紹介
  • 用語解説
  • 用語索引（アルファベット順）
  • 補足1: いろんな人の感想
  • 補足2: 詳細年表：パーソナルウェブとプラットフォームの興亡
  • 補足3: 潜在的読者のために
  • 補足4: 一人ノリツッコミ
  • 補足5: 大喜利
  • 補足6: 予測されるネットの反応と反論
  • 補足7: 学びを深めるために

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はじめに：なぜインターネットはこんなに騒がしいのか？ 🗣️💥

インターネットは、スピードを重視して作られている。そう感じませんか？

新しいサービスに参加すると、まず目に飛び込んでくるのは「フィード」。その名前がすべてを物語っています。フィードとは、家畜に与える「飼料」のこと。そして私たちは、それを与えられる側。あなたがフィードをコントロールすることはなく、あなたの役割はただひたすら「餌を与えられる」ことなのです。

この飼料は容赦がありません。次から次へと流れ込み、私たちの思考を、感情を、そして自分自身の見方さえも形作っていきます。私たちはもう、じっくりと本を読んだり、映画を味わったり、音楽に耳を澄ませたりはしません。私たちはただ、コンテンツを「消費」し、与えられたものを無批判に摂取するだけの存在になり下がってはいないでしょうか。

多くの人がこの現状に気づき、不満を抱いています。あなたもきっと、その一人でしょう。しかし、この絶え間ない情報の奔流から、一体どうすれば逃れられるのでしょうか？スマートフォンを窓から投げ捨てる？山奥に籠る？それとも、この流れの中で溺れないように、必死にもがき続けるしかないのでしょうか？

この記事は、そんな息苦しさを感じているあなたのための、一つの「処方箋」であり、そして「宣言」です。フィードから自らの意志で降り、かつて私たちが愛した、より静かで、より人間的だったウェブを取り戻すための旅へ、あなたをご案内します。さあ、ロッキングチェアに深く腰掛けて、少しだけ昔話にお付き合いください。私の芝生の上なら、大歓迎です。☕

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第1部：フィードという名の奔流 🌊

第1章：「与えられる」インターネット

1-1. フィードの解剖学：終わりなきスクロールの仕組み 📜♾️

SNSのタイムラインを、親指でスワイプする。新しい投稿、新しい写真、新しい動画。スワイプ、スワイプ、スワイプ…。気づけば30分、1時間が経っている。この抗いがたい魅力の正体は一体何なのでしょうか。

それは、「無限スクロール（Infinite Scroll）」と呼ばれるデザインパターンにあります。ページの終わりに到達すると、次のコンテンツが自動的に読み込まれる。これにより、ユーザーは「ここまでで一区切り」という思考の停止点を失い、半永久的にコンテンツの海を漂い続けることになるのです。

この仕組みは、カジノのスロットマシンが使う心理学的なトリックと非常によく似ています。レバーを引く（スワイプする）たびに、当たり（面白いコンテンツ）が出るかもしれないという「間欠強化（Intermittent Reinforcement）」が働き、私たちはドーパミンという脳内快楽物質のシャワーを浴び続けます。これは極めて中毒性の高い体験であり、プラットフォーム側は私たちの可処分時間を最大化するために、この仕組みを意図的に設計しているのです。

1-2. 私たちは本を読まなくなった、コンテンツを「消費」するようになった 🍽️

「フィード」という言葉は、私たちの役割を的確に表しています。私たちはもはや読者や鑑賞者ではありません。「消費者（Consumer）」です。

一冊の本を読む行為を考えてみましょう。そこには始まりと終わりがあり、著者と対話し、行間を読み、自身の経験と照らし合わせるという、能動的で思索的なプロセスが存在します。しかし、フィードの世界では、すべてが細切れの「コンテンツ」に還元されます。数秒の動画、数行のテキスト、一枚の画像。それらは味わうものではなく、ただ次から次へと消費していく対象です。

この受動的な消費行動は、私たちの集中力や深い思考力を確実に蝕んでいきます。私たちは新しい知識を得ているようで、その実、何も身についていない。たくさんの人と繋がっているようで、その実、誰とも深く関わっていない。そんな空虚な感覚に襲われたことはありませんか？

1-3. 「反応」のためのコミュニケーションと、その疲弊 ❤️👍😠

フィード上でのコミュニケーションは、「いいね」「リツイート」「リプライ」といった「反応（Reaction）」がすべてです。投稿すれば、即座に反応が気になる。反応がなければ、自分の投稿は価値がなかったのかと不安になる。他人の投稿を見れば、何か反応しなければならないというプレッシャーを感じる。

この「反応の経済圏」では、熟慮された意見よりも、瞬間的に感情を揺さぶる言葉がもてはやされます。共感、怒り、驚き。アルゴリズムはエンゲージメント（ユーザーの関与）が高い投稿を優先的に表示するため、結果として私たちのフィードは、より扇動的で、より極端な意見で満たされていくのです。

これは、まるで24時間終わらない巨大なパーティーに参加しているようなものです。大音量の音楽の中で、誰もが自分の声を聞いてもらおうと大声で叫んでいる。そんな喧騒の中で、本当に意味のある対話が生まれるでしょうか？いいえ、生まれるのは表面的なつながりと、深い精神的な疲弊だけです。

1-4. ハッシュタグが作るコミュニティの光と影 #️⃣

ハッシュタグ（#）は、同じ興味を持つ人々を繋げる強力なツールです。#猫好きさんと繋がりたい と検索すれば、そこには猫を愛する人々の投稿が溢れています。これは素晴らしいことです。かつては探し出すのが難しかった同好の士を、一瞬で見つけ出せるのですから。

しかし、この手軽さには影の側面もあります。ハッシュタグによるコミュニティは、非常に流動的で、刹那的です。それは共通の話題についての投稿が集まる「広場」であって、メンバー間の深い関係性が育まれる「居場所」にはなりにくいのです。

さらに、ハッシュタグは時として、異なる意見を排除し、同じ考えを持つ人々だけで固まる「エコーチェンバー現象」や、集団が過激な方向に進む「集団極性化」を加速させる装置にもなり得ます。共通のハッシュタグの下に集まることで安心感を得る一方、私たちは自分たちの「外」にある多様な世界から、知らず知らずのうちに目を背けてしまっているのかもしれません。コミュニティは、ハッシュタグによって与えられるのではなく、本来は時間をかけて築き上げるものだったはずです。

コラム：初めての「炎上もどき」

あれはTwitter（現X）がまだ牧歌的だった頃の話です。私は当時ハマっていた海外ドラマについて、何気ない感想を投稿しました。すると数分後、見知らぬアカウントから「それは解釈が違います」というリプライが。まあ、それくらいはよくあること。しかし、そのリプライに「いいね」が付き始め、あれよあれよという間に数十件の引用リツイートで「にわか」「何もわかってない」という言葉が飛び交い始めました。いわゆる「炎上もどき」です。たった140字の言葉が、文脈から切り離されて一人歩きしていく恐怖。心臓がバクバクして、その日は一日中スマートフォンの通知が気になって仕方がありませんでした。あの時感じたのは、フィードという広場がいかに無防備で、いかに言葉の責任が軽くなる場所かということでした。あの経験が、私がフィードから距離を置く大きなきっかけになったのは間違いありません。

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第2章：流れに抗う無力感

2-1. ブロックリストとミュートワード：ささやかな抵抗の記録 🛡️

フィードの奔流に抗うため、私も様々な手を尽くしました。不快なアカウントを片っ端からブロックし、見たくない単語をミュートワードに登録する。タイムラインを時系列順に並べ替え、アルゴリズムの支配から逃れようと試みる。これは、押し寄せる濁流の中で、小さなバケツで水を掻き出そうとするような、健気で、そして絶望的な戦いでした。

確かに、これらのカスタマイズは一時的な安らぎを与えてくれます。しかし、プラットフォームは常に私たちの抵抗の上を行きます。新しい広告フォーマット、新しいレコメンド機能。「あなたへのおすすめ」は、ブロックの網をすり抜けてタイムラインに滑り込んでくるのです。

結局、これらの抵抗は対症療法に過ぎません。病気の根本原因、つまり「ユーザーの注意を引きつけて離さない」というプラットフォームのビジネスモデルそのものに手を付けない限り、私たちは永遠にイタチごっこを続けるしかないのです。

2-2. デジタルデトックスの試みと、その限界 📵

「もう限界だ！」と感じた私は、次に「デジタルデトックス」を試みました。週末はSNSのアプリをすべて削除し、通知をオフにする。意図的にスマートフォンに触らない時間を作る。最初の数時間は、まるで禁断症状のようにソワソワしました。世の中から取り残されたような不安感（FOMO: Fear Of Missing Out）。

しかし、時間が経つにつれて、心は静けさを取り戻します。鳥の声に耳を澄ませ、積んであった本を手に取り、散歩に出かける。ああ、なんと人間的な時間だろうか、と。しかし、月曜日の朝、アプリを再インストールした瞬間に、現実に引き戻されます。数百件の未読通知、喧騒に満ちたタイムライン。週末の静寂は、まるで夢だったかのように消え去り、デトックス前よりも強い疲労感に襲われるのです。

デジタルデトックスは、いわば「一時的な避難」です。しかし、私たちが生きる社会は、もはやデジタルと切り離せません。避難所から戻れば、そこには相変わらず荒れ狂う嵐が待っている。根本的な解決策にはなり得ないのです。

2-3. なぜ、最終的にフィードは勝つのか 🏆

私たちは、なぜフィードに抗えないのでしょうか？意志が弱いから？自制心がないから？

そうではありません。相手は、世界最高峰の頭脳を持つエンジニア、デザイナー、心理学者が、莫大な予算を投じて作り上げた、人類史上最も洗練された「注意の収穫機」なのです。個人の意志の力だけで、この巨大なシステムに立ち向かうのは、竹槍で戦車に挑むようなものです。

フィードの流れに抵抗することは、絶え間ない意志の行為です。常に警戒し、メンテナンスを怠ってはならない。それはひどく疲れる作業です。そして、少しでも気を抜けば、私たちは再び流れに飲み込まれてしまう。だから、最終的には常にフィードが勝つのです。

だから私は、戦うことをやめました。抵抗するのではなく、オプトアウトする（降りる）ことを選んだのです。私はフィードを、残しました。

コラム：消えたウェブサイト

フィードから離れた後、私は何度か自分のウェブサイトを作ろうとしました。「これからは自分の言葉で、自分の場所で発信するんだ」と意気込んで。でも、数ヶ月もすると更新が滞り、結局サーバー代の請求書が来るたびに「何のために維持してるんだっけ…」と虚しくなって、サイトごと削除してしまう。そんなことを繰り返していました。今思えば、それは「フィード的な成功」を無意識に求めていたからなのでしょう。アクセス数、コメント、誰かの反応…。誰も見てくれないウェブサイトは無価値だと思い込んでいたのです。フィードを物理的に離れても、その価値観は幽霊のように私に取り憑いていた。本当の意味でフィードから自由になるには、もっと根本的な変化が必要だと気づくのに、さらに数年の時間が必要でした。

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第2部：「インターネットI」への郷愁と再発見 懐

第3章：僕らが恋した、静かなウェブ

3-1. 小さな敷地の広大なコレクション：Web 1.0の記憶 💾

股間の老人だと思われても構いません。私が育った「インターネットI」、いわゆる Web 1.0 の時代は、確かにもっと静かでした。それは今より小さかったわけではありません。むしろ広大でした。しかしその広大さは、巨大なショッピングモールがいくつかあるのではなく、個性豊かな個人商店が無限に連なる、巨大な商店街のようなものだったのです。

夜な夜な、見知らぬ誰かが作った個人サイトを巡るのが私の日課でした。そこには、広告も、アルゴリズムも、過剰な「いいね」もありません。ただ、サイトの主人が愛してやまないもの——古い映画、B級SF小説、自作のMIDI音楽、育てているサボテンの観察日記——が、手作り感あふれるデザインと共に、静かに置かれているだけでした。

  .／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
  |     ようこそ！           |
  |     私のホームページへ     |
  |     あなたはxxxxx人目の    |
  |     お客様です！         |
  ＼＿/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

あの頃のウェブサイトは、一つひとつが持ち主の「部屋」のようでした。壁紙の色、カウンターの数字、置いてある文章や画像。それらすべてが、作り手の人となりを雄弁に物語っていました。私たちは、その人の部屋をそっと訪れ、その人が大切にしているものを見せてもらうような、そんな慎ましくも豊かな体験をしていたのです。

3-2. リンクを辿る喜びと、コミュニティの発見 🔗

Web 1.0の世界を旅するコンパスは、ハイパーリンクでした。あるサイトで面白いトピックを見つけると、そのページの片隅に「おすすめリンク集」といったコーナーがあるのです。クリックすると、同じテーマを愛する別の誰かのサイトへ飛ぶ。そこからまた別のサイトへ…。

このリンクの連鎖を辿る行為は、宝探しに似ていました。一つの興味から出発して、気づけば全く予想もしなかった知識の海にたどり着いている。この偶発的な発見の喜び、いわゆるセレンディピティこそが、初期のウェブサーフィンの醍醐味でした。

そして、リンクを辿っていくと、必ずコミュニティが見つかりました。特定のバンド、テクノロジー、漫画、哲学…。どんなにニッチなテーマでも、それについて語り合うウェブサイト群や、IRC (Internet Relay Chat) のチャンネル、あるいは phpBB で作られたフォーラム（掲示板）が存在したのです。そこでは、同じものを愛する人々が、肩を寄せ合うようにして、熱く、深く、語り合っていました。

3-3. 「知らなかった」を知る学びの体験 💡

私が「インターネットI」で過ごした時間は、純粋な学びの連続でした。例えば、子供の頃に夢中になった『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』といった漫画（当時はそう思っていました）が、実は「アニメ」と呼ばれる日本独自の表現形式であり、それが海外でも高く評価され、驚くほど進化を遂げているという事実。それを知ったのは、あるファンサイトの片隅に書かれたコラムがきっかけでした。

サイトがフィードに置き換わるにつれて、この「学び」は「反応」に取って代わられました。驚きは無関心に、喜びは疲労に、そしてコミュニティはハッシュタグに。私は、フィードが破壊してしまった、あの静かで豊かなインターネットを、決して忘れることができませんでした。

コラム：テレホーダイと夜の冒険

今では信じられないかもしれませんが、当時はインターネットに繋ぐのにお金がかかりました。それも従量課金制で、繋いだ時間だけ電話代がかかる。そんな我々学生の救世主が「テレホーダイ」というNTTのサービスでした。夜11時から朝8時まで、指定した2つの電話番号への通話が定額になる。つまり、プロバイダのアクセスポイントを登録しておけば、夜の間だけインターネットが使い放題になるのです！ 10時55分になると、皆そわそわとパソコンの前で待機し、11時ちょうどに一斉にダイヤルアップ接続を開始する。「ﾋﾟｰｰｰﾋｮﾛﾛﾛﾛｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞ」というあの懐かしいモデムの音は、夜の冒険の始まりを告げるファンファーレでした。朝まで個人サイトの海を泳ぎ、眠い目をこすりながら学校へ行く。あの頃の不便さと、それに伴う全能感は、今の常時接続の時代にはない、特別な輝きを持っていたように思います。

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第4章：IndieWebとの出会い

4-1. 2025年にウェブサイトを自作するということ 🤔

フィードを離れ、時折ウェブサイトを作っては消しを繰り返していた私ですが、今年のはじめ、もう一度だけ挑戦してみることにしました。しかし、また数ヶ月で挫折する自分の姿が目に浮かびます。「いっそ、noteやはてなブログのようなプラットフォームを使おうか…」と弱気になったり、「いや、それでは意味がない！」と奮起したり。数週間にわたる優柔不断なワッフルの末、私は一つの事実に気づきました。

「前回、私がサイトを建てた時から、世界は大きく変わっているのではないか？」

そこで私は、2025年現在、人々がどのようにして個人のウェブサイトを構築しているのかを調査し始めました。すると、検索結果の片隅に、見慣れない言葉が何度も現れることに気づいたのです。その言葉は、「IndieWeb」でした。

4-2. IndieWebとは何か：独立したウェブのための思想とツール 🛠️

IndieWebとは、一言で言えば「巨大プラットフォームから独立した、個人のウェブサイトを取り戻すための思想であり、技術的な実践の集まり」です。

彼らは、FacebookやTwitterのような中央集権的なサービス（彼らはこれを「サイロ（Silos）」と呼びます）に自分のコンテンツ（投稿、写真、人間関係）を預けてしまうのではなく、自分自身のウェブサイトをアイデンティティの中心に置くことを提唱しています。自分のドメインこそが、あなたのオンライン上の「家」であるべきだ、と。

IndieWebの主要な原則とツール（クリックして展開）

• 自分のデータを所有する (Own Your Data): コンテンツは自分のサーバーに置き、プラットフォームのサービス終了や規約変更に振り回されないようにします。
• POSSE (Publish on your Own Site, Syndicate Elsewhere): まず自分のサイトに投稿し、そのコピーをSNSに「配信（Syndicate）」する、という考え方です。これにより、友人との繋がりを維持しつつ、コンテンツのオリジナルは自分の手元に残すことができます。
• Webmention: ブログのコメントやSNSの「いいね」「リツイート」のようなリアクションを、サイト間で直接やりとりするための仕組みです。これにより、プラットフォームを介さずに、個人サイト同士が連携できます。
• Micropub: スマートフォンアプリなどから、自分のウェブサイトに簡単に投稿するための標準的な規格です。

これらのツールは、既存のウェブ標準（HTML, CSS, HTTPなど）の上に構築されており、Web 1.0のシンプルさと、Web 2.0の双方向性を両立させようという野心的な試みなのです。詳しくはIndieWebの公式サイト（英語）や、日本語の解説記事などを参照してください。

4-3. ウェブリングの復活と、新しい隣人たち 🌐🤝

IndieWebのコミュニティが運営するWikiを読み進めていると、私は「webring」という、懐かしい響きを持つリンクを見つけました。クリックすると、IndieWebを実践している人々のサイトがランダムに表示されます。私は吸い込まれるように次々とサイトを訪れ、気づけば1時間が経っていました。

そこにあったのは、まさしく私が探し求めていた「小さな敷地の広大なコレクション」でした。デザインも、テーマも、文章のトーンも、何もかもが違う。しかし、そこには共通の情熱がありました。「自分の手で、自分の場所を作る」という、静かで、しかし確固たる意志です。

さらに驚いたことに、彼らはコミュニケーションの場として、なんと IRC を現役で使っていたのです！ 懐かしいチャットルームの扉を開けると、そこには数人の人々が、非常に特殊で技術的なトピックについて、情熱的に語り合っていました。私は、あの頃感じた身近な共同体意識が、胸の内に蘇ってくるのを感じました。

4-4. 「何もない」ことの豊かさ：最初の投稿と、静寂の肯定 ✨

コミュニティに触発され、私はついに自分のサイトを立ち上げ、最初の投稿をしました。そして、息を殺して待ちました。何が起こるだろうか、と。

答えは、「何も起こらなかった」でした。

誰も反応しない。誰もコメントしない。誰も私をフォローしろと要求してこない。誰も私に何かを売りつけようと、フォローするフリをしてこない。

しかし、不思議なことに、私はここ数年で感じたことがないほど、コミュニティの一員であると感じていました。その静寂の中で、私はなぜそう感じるのかを考えることができました。フィードの喧騒から離れた場所で、私の言葉は、ただそこに「在る」ことを許されたのです。評価されるためでも、消費されるためでもなく、ただ、在るために。それは、驚くほど解放的な体験でした。この「何もない」ことの豊かさこそ、スローウェブの出発点なのです。

コラム：88x31ピクセルの魔法

IndieWebのサイトを巡っていると、多くのサイトのフッターに、小さなバナーが貼られていることに気づきます。サイズは88x31ピクセル。これはWeb 1.0時代に大流行した、いわゆる「リンクボタン」「アフィリエイトバナー」のサイズです。そこには「HTML5 Valid!」とか「Viewable with Any Browser」といった技術的な主張から、「Anti-AI」「Made with Love」といった思想的な表明まで、様々なメッセージが込められています。この小さなピクセルアートに、サイトの持ち主は自分のアイデンティティを凝縮させているのです。私も早速、拙いドット絵で自分のサイトのバナーを作ってみました。誰かにクリックされるためではありません。ただ、自分のサイトがこの広大なウェブの一部であることを示す、ささやかな旗印として。この小さなバナーを眺めていると、自分が巨大なプラットフォームの「ユーザー」ではなく、ウェブという共同体の「一員」になれたような気がして、少しだけ誇らしい気持ちになるのです。

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第3部：スローウェブの実践 🐢

第5章：関係性を育むためのデザイン

5-1. パーティーから、縁側の会話へ 🍵

人間関係について考えてみましょう。私たちは、騒がしいパーティーで一度会っただけの人のことを、本当に「知っている」と言えるでしょうか？ 私が知っているのは、その人が大音響の中で叫ぶことができる言葉、つまり、他人に知られても構わないと思っている外面だけです。私たちは知人にはなれるかもしれませんが、決して友人にはなれません。

本当の友情は、速くも、うるさくもありません。それは、静かな瞬間に育まれるものです。喫茶店でのコーヒー、公園の散歩、一緒に遊ぶゲーム。刺激的なことや、腹の立つことについて、ゆっくりと語り合う時間。そんな瞬間にこそ、私たちは相手が投影したい姿ではなく、相手そのものを知ることができるのです。

フィードにいた頃の私は、常にパーティーに参加しているようなものでした。たくさんの繋がりは作りましたが、それらは希薄で、失っても大きな喪失感はありませんでした。しかし、パーソナルウェブ、あるいは「スローウェブ」の世界を発見することは、新しい友人を作るプロセスによく似ています。

5-2. スローウェブという名の個人的な実験 🔬

IndieWebコミュニティに親近感を覚えた私は、活力を得ました。彼らと知り合い、彼らがやっていることを何でも真似してみたい！という衝動に駆られました。しかし、私はその衝動と闘うことに決めました。少なくとも、「今すぐ」すべてをやろうとする衝動とは。

代わりに、私は自分のウェブとの関わり方を「スローウェブ（The Slow Web）」と名付け、いくつかの暫定的なルールを設けました。

• 投稿は、急がない。 何か言いたいことが自然に湧き上がってくるのを待つ。
• 人のサイトはじっくり読む。 1日に読むブログ記事は数本に留め、その代わり一行一行を味わう。
• 繋がりは、ゆっくり築く。 私は自分のMastodon（分散型SNS）インスタンスを立て、フォローしているのはたったの4人です。
• 技術も、少しずつ学ぶ。 一度にすべてを実装しようとせず、一つずつ試してみる。

これは「正しいやり方」ではありません。スローウェブの素晴らしい点の一つは、人々がそれを自分だけのものにしていく、その多様な方法を発見することです。これは、あくまで私にとってうまくいく方法なのです。

5-3. 違いを乗り越えるための「時間」と「空間」 🤝

スローウェブを実践する中で、私の他者への反応は大きく変わりました。フィードのラッシュとノイズの中から解放されると、意見の違いが脅威ではなくなります。

例えば、このコミュニティにいる誰かが、私とは相容れないAIについての楽観的な見解を述べたとします。フィードの世界であれば、私は反射的に「それは違う！」と反論の投稿をしたかもしれません。しかし、スローウェブには、彼らがなぜそう考えるのかを説明するための時間と空間があります。そして私には、その理由を理解しようと努めるための時間と空間があるのです。最終的に同意できなかったとしても、その思考のプロセスを尊重することができます。

誰かが私の興味のないもの（例えば、派手な色のCSSや、88x31ピクセルのボタン）に情熱を注いでいるとき、私はその対象に触発されなくても、その熱意そのものに触発されずにはいられません。

これこそが、私の最も強い人間関係が発展してきた方法です。類似点が絆を生み、違いが成長を促進する。スローウェブは、オンラインでそれを可能にする環境を提供してくれたのです。

5-4. 自分の庭を育てるように：ゆっくりとウェブを構築する 🌱

したがって、私はスローウェブに固執するつもりです。もちろん、物事を見逃してしまうのではないかという不安（FOMO）は常にあります。ここには発見すべきことがたくさんあり、それを一度に吸収したいという衝動を抑えるのは困難です。

しかし、私は知っています。その素晴らしいコンテンツは、来週も、来月も、来年も、きっとそこにあるだろうと。そして、私がこのスローウェブという名の小さな庭を、ゆっくりと、しかし着実に育て続けるなら、私自身もまた、ここに在り続けるだろうという希望を持っています。

コラム：20年越しの投稿

私の新しいサイトには、まだ数えるほどしか記事がありません。そのうちの一つは、実は20年前に書いた文章のコピーです。それは、あるマイナーなゲームの攻略ガイドでした。当時運営していた個人サイトがプロバイダのサービス終了と共に消滅し、そのテキストも失われたと思い込んでいたのです。しかし先日、古いハードディスクの奥底から、そのテキストファイルが奇跡的に見つかりました。読んでみると、文章は拙く、情報は古びていましたが、そこには確かに20年前の私の熱意が詰まっていました。私はそのテキストを、ほぼそのままの形で新しいサイトに投稿しました。誰かの役に立つ情報ではありません。しかし、それは20年前の私から、現在の私への、時を超えたハイパーリンクなのです。この投稿は、私のサイトという庭に植えられた、最初の、そして最も古い木になりました。スローウェブとは、このように自分の歴史を慈しむことでもあるのかもしれません。

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第6章：思想を実装する技術

さて、ここまでは「スローウェブ」という思想、いわば精神論について語ってきました。しかし、思想は具体的な形を持ってこそ力になります。この章では、RedditのWeb開発コミュニティなどで交わされている議論を参考に、「スローウェブの哲学を、どのようにウェブサイトのコードに落とし込むか」という、より技術的な側面に踏み込んでみましょう。特に、低速なインターネット接続や、安価なスマートフォン（ローエンドデバイス）を使っているユーザーに優しいサイトを作ることは、すべての人を尊重するというスローウェブの精神に合致する、重要な実践です。

6-1. なぜReactは「間違った選択」なのか ⚛️🚫

現代のウェブ開発、特にフロントエンドの世界では、ReactのようなJavaScriptフレームワークを使うのが当たり前になっています。これらは複雑なアプリケーションを効率的に作るための強力なツールです。しかし、こと「スローウェブ」、特にローエンドデバイス向けのサイトにおいては、Reactは多くの場合、間違った選択である、と専門家たちは指摘します。

その理由は、Reactが「電力に飢えた（power-hungry）」フレームワークだからです。Reactでサイトを動かすには、ユーザーのブラウザが大量のJavaScriptコードをダウンロードし、実行する必要があります。高性能なPCや最新のスマートフォンなら問題ありませんが、古い携帯電話では、この処理がCPUに大きな負荷をかけ、ページの表示を著しく遅くしたり、操作をカクカクさせたりする原因になるのです。

Preactのような軽量な代替フレームワークを使ったとしても、依然として私たちはクライアントサイド（ユーザーのブラウザ側）で多くの処理を行うという道筋に乗ってしまいます。それは、根本的に間違った道を進んでいる可能性があるのです。

6-2. HTMLファーストとプログレッシブエンハンスメント 🏛️✨

では、どうすればいいのでしょうか？ 答えは、ウェブの原点に立ち返ることにあります。それは、HTMLを多用し、JavaScriptは補助的に使うというアプローチです。これは「プログレッシブエンハンスメント（Progressive Enhancement）」という考え方に基づいています。

1. まず、基本的なHTMLだけで、すべてのコンテンツが閲覧・利用できる状態を作る。 これが土台です。JavaScriptがオフになっていても、古いブラウザでも、サイトの核心的な機能は失われません。
2. 次に、CSSで見栄えを整える。
3. 最後に、JavaScriptを使って「強化（Enhance）」する。 例えば、よりスムーズなアニメーションや、ページ遷移なしでのコンテンツ更新など、体験をリッチにする機能を追加します。

このアプローチなら、ローエンドデバイスのユーザーも最低限の体験は保証され、高性能なデバイスのユーザーはよりリッチな体験を得ることができます。すべての人を置き去りにしない、インクルーシブ（包括的）な設計思想なのです。

6-3. 画像を支配する：SVG, WebP, そしてsrcset 🖼️⚡

ウェブサイトを遅くする最大の要因の一つが、画像です。特に低速回線では、重い画像のダウンロードは致命的です。画像の扱いには、細心の注意を払う必要があります。

• SVGを愛用する: ロゴやアイコンのような単純な図形には、SVG (Scalable Vector Graphics) を使いましょう。ベクター形式なので拡大・縮小しても荒れず、多くの場合ファイルサイズも非常に小さく済みます。
• 最適なフォーマットを選ぶ: 写真などの画像には、従来のPNG/JPGよりも圧縮率が高い WebP や AVIF といった次世代フォーマットを積極的に利用します。
• srcset属性を使いこなす: HTMLのタグにsrcset属性を指定することで、ユーザーの画面サイズや解像度に応じて、ブラウザが最適なサイズの画像を自動で選んでくれるようになります。これにより、スマートフォンのユーザーに巨大なデスクトップ用の画像を送りつける、といった無駄を防ぐことができます。
  srcsetのコード例

  この例では、ブラウザはビューポートの幅に応じて、500px, 1000px, 2000px幅の画像の中から最適なものを選択してダウンロードします。

6-4. パフォーマンスの悪魔 `background-attachment: fixed` 👿

これは少しマニアックな話ですが、非常に重要な指摘です。CSSのプロパティである background-attachment: fixed; は、背景画像をビューポート（表示領域）に固定する効果を持ち、スクロールしても背景が動かない、いわゆるパララックス効果のような見た目を簡単に実現できます。

しかし、この指定はパフォーマンスの悪魔となり得ます。ブラウザは、スクロールするたびに、コンテンツと背景の両方を完全に再描画する必要に迫られるのです。古い携帯電話では、これだけでフレームレート（1秒間あたりの描画回数）が致命的に低下し、スクロールが紙芝居のようになってしまうことがあります。

幸い、これには回避策があります。背景とコンテンツを別の要素に入れ、CSSのpositionやz-index、あるいはisolation: isolate;といったプロパティを駆使して、ブラウザに「これらは別々のレイヤーで描画してね」と教えてあげるのです。少し手間はかかりますが、ユーザー体験の向上効果は絶大です。

6-5. サーバーサイドレンダリング（SSR）は銀の弾丸か？ сервер => 📄

サーバーサイドレンダリング（Server-Side Rendering, SSR）も、パフォーマンス改善の文脈でよく語られます。これは、ユーザーのブラウザ（クライアントサイド）でJavaScriptを実行してページを組み立てるのではなく、ウェブサーバー側で完成品のHTMLページを生成してユーザーに送る方式です。

メリット:

• クライアント側のJavaScript実行量が減るため、特に非力なデバイスでの初期表示が高速になる。
• 不要なデータをクライアントに送らずに済むため、データ通信量を節約できる可能性がある。

デメリット:

• サーバー側の負荷が増えるため、より高性能なサーバーが必要になる場合がある。
• 場合によっては、生成されたHTMLよりも、元のデータ（JSONなど）の方がファイルサイズが小さいこともある。

SSRは万能薬（銀の弾丸）ではありません。しかし、JavaScriptの実行時間がボトルネックになっている古いデバイスの体験を改善したい場合には、非常に強力な選択肢となり得ます。

6-6. リーン（Lean）であることの哲学 🧘‍♂️

ここまで様々な技術を紹介してきましたが、根底にある哲学は一つです。それは「リーン（Lean）であれ」ということです。

リーンとは「無駄がなく、引き締まっている」という意味です。重いフレームワークを捨てる。不要な画像を削る。アニメーションを最小限にする。一つ一つのAPI呼び出しを減らす。これは単なる技術的な最適化ではありません。

• ユーザーの時間を尊重すること。
• ユーザーのデータ通信量を尊重すること。
• ユーザーのデバイスのバッテリーを尊重すること。

これらすべてが、スローウェブの思想、つまりより人間的で、意図的で、思いやりのあるウェブを構築するという哲学に繋がっているのです。消費と対話はゆっくりと、しかし技術的な配信は速く効率的に。これこそが、思想を実装する技術の目指す場所なのです。

コラム：初めてのPageSpeed Insights

自分の新しいサイトを初めてGoogleのPageSpeed Insightsで計測した日のことを覚えています。スコアは「99」。緑色の数字が誇らしげに輝いていました。Reactや多機能なCSSフレームワークを使っていた頃には、お目にかかれなかった数字です。もちろん、スコアが全てではありません。でも、その数字は、私がユーザーの見えない負担——データ量、CPU負荷、バッテリー消費——に対して、配慮できていることの証のように思えました。それは、誰かからの「いいね」よりも、ずっと価値のあるフィードバックでした。リーンなウェブを作ることは、自己満足ではありません。それは、画面の向こう側にいる見知らぬ誰かへの、静かで、しかし確かな「おもてなし」なのだと、私は信じています。

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第4部：これからのウェブのために 🔭

第7章：開かれた問い

ここまで、フィードへの批判からスローウェブという対案、そしてその実践方法までを語ってきました。しかし、この物語はハッピーエンドで完結する単純なものではありません。このムーブメントは多くの可能性を秘めていると同時に、数多くの課題や疑問点を抱えています。この章では、楽観的な視点から一歩引いて、より多角的で批判的な問いを投げかけてみたいと思います。

7-1. 疑問点・多角的視点 🤔

• ノスタルジーの美化ではないか？

  私が「インターネットI」として描いたWeb 1.0時代は、本当に牧歌的な楽園だったのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。当時から荒らし、誹謗中傷、情報格差、そして深刻なデジタル・デバイド（情報格差）は存在しました。過去を過度に美化し、現在のプラットフォームが解決してきた問題（例えば、通報システムの整備やアクセシビリティの向上）から目を背けてはいないでしょうか。

• 「スローウェブ」は特権的な趣味ではないか？

  個人のウェブサイトを構築し、独自ドメインを維持するには、ある程度の技術的知識、時間、そしてサーバー代やドメイン代といった金銭的コストがかかります。これは、誰もが享受できるものではなく、一部の知識層や経済的に余裕のある人々の「高尚な趣味」で終わってしまう危険性はないでしょうか。忙しい日常の中で、誰もが「庭師」になれるわけではないのです。

• コミュニティはタコツボ化しないか？

  フィードがもたらす偶発的な出会い（セレンディピティ）にも、価値はあります。一方で、IndieWebやウェブリングのような、意図的に繋がるコミュニティは、内向きで閉鎖的な「タコツボ」になってしまうリスクを常に孕んでいます。新しい参加者が入りにくく、同じ意見ばかりが反響する空間は、果たして健全と言えるのでしょうか。

• スケールしない解決策ではないか？

  IndieWebやパーソナルウェブは素晴らしい概念ですが、現在、数十億人が利用する巨大プラットフォームが抱える社会的な問題（偽情報の拡散、世論操作など）に対する、現実的な代替案となりうるのでしょうか。それとも、あくまで巨大資本主義へのアンチテーゼとして存在する、ニッチで文化的な抵抗運動に留まるのでしょうか。

7-2. 日本への影響 🇯🇵

この「スローウェブ」の思想は、日本のインターネット文化の中でどのように響くでしょうか。

• 「mixi日記」文化への回帰: かつて日本のSNSの主流であったmixiは、友人間の日記を通じた、よりクローズドで緩やかなコミュニケーションが中心でした。本稿の思想は、あの時代のコミュニケーションへの郷愁や再評価と強く結びつく可能性があります。事実、近年「SNS疲れ」からmixiに回帰する若者がいるという報道も見られます。
- 「note」や個人ブログの隆盛: 短文のTwitter（X）とは対照的に、長文のコンテンツプラットフォームである「note」や、再び「はてなブログ」などで個人ブログを始める人が増えている現象は、フィードの速度感から離れ、自分の考えをじっくりと表現したいという欲求の表れと見なせるでしょう。 - 「タイパ」文化との緊張関係: 「タイムパフォーマンス（タイパ）」を極端に重視する風潮が強い日本では、「スローウェブ」の思想は非効率なものとして敬遠されるかもしれません。しかし、そのカウンターカルチャーとして、意図的に「遅さ」や「手間」を楽しむ文化が、より一層価値を持つようになる可能性も秘めています。

7-3. 歴史的位置づけ 🗺️

このレポートで語られてきた動きは、ウェブの歴史においてどのように位置づけられるのでしょうか。

これは、Web 2.0の成熟と、それによって生まれた歪みに対する、Web 1.0の精神的・技術的再評価の動きと見ることができます。

ウェブの進化の簡単な整理

• Web 1.0 (The Read Web / 読むウェブ): 1990年代～2000年代初頭。情報の発信者が個人のウェブサイトを作り、閲覧者はそれを読む一方向的なモデルが中心。本稿で「インターネットI」として懐かしむ対象。
• Web 2.0 (The Read/Write Web / 読む/書くウェブ): 2000年代中盤～。ブログ、SNSの登場により、誰もが容易に情報を発信できる双方向のモデルへ。しかし、次第にGAFAなどの巨大プラットフォームに情報と権力が集中し、「フィード」に代表される商業的で中毒性の高いシステムが主流に。
• 本レポートの位置: Web 2.0のプラットフォーム支配と「速すぎるインターネット」に異議を唱え、Web 1.0時代の「個人のウェブサイト」の価値を再発見し、「IndieWeb」という現代的なムーブメントを通じてそれを取り戻そうとする試み。これは、中央集権からの脱却を目指すWeb3.0の思想とも一部共鳴しますが、ブロックチェーン技術に依存せず、既存のウェブ技術を再活用する点に大きな特徴があります。

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第8章：未来への展望

8-1. 今後望まれる研究 🧑‍🔬

スローウェブの思想と実践をより豊かにしていくために、今後、以下のような分野での研究や議論が深まることが期待されます。

• デジタルウェルビーイングとウェブデザイン: 「スローウェブ」的なデザイン（例：無限スクロールの廃止、通知の抑制、意図的な"摩擦"の設計）が、ユーザーの心理的幸福感やストレスレベルにどのような影響を与えるか、定量的・定性的な効果測定研究。
• 分散型ネットワークの持続可能性: MastodonやIndieWebのような分散型・個人運営のネットワークが、技術的・経済的・社会的に長期運用可能かどうかの研究。特に、サーバーコスト、モデレーション（不適切投稿の管理）、スパム対策などが大きな課題です。
- 歴史社会学研究: 「古き良きインターネット」へのノスタルジーが、なぜ、どのような社会層・世代で、繰り返し語られるのかを分析するアプローチ。それは単なる懐古趣味なのか、それとも現代社会への批評的な視点を含んでいるのか。

8-2. 遅いウェブは、速いウェブと共存できるか 🐢🤝🐇

私の願いは、スローウェブが現在の「速いウェブ」を完全に置き換えることではありません。緊急時の情報伝達や、リアルタイム性が求められるエンターテイメントなど、「速さ」に価値がある場面も間違いなく存在します。

重要なのは、選択肢があることです。ファストフードもあれば、スローフードもある。大規模な音楽フェスもあれば、小さなジャズ喫茶もある。それと同じように、インターネットにも多様な「速度」と「居場所」があっていいはずです。

スローウェブは、ファストなウェブに疲れた人々のための避難所であり、異なる価値観を提示するカウンターカルチャーとして、速いウェブと共存していく。それが現実的な未来像なのかもしれません。

8-3. 結論：ウェブは誰のものか 🙋‍♀️🙋‍♂️

結局のところ、この問いに尽きます。ウェブは誰のものか？

Web 2.0の時代、私たちはその答えを巨大なプラットフォームに委ねてしまいました。私たちのデータ、コンテンツ、人間関係は、彼らのサーバーの中にあり、彼らのビジネスのために利用されています。

IndieWebとスローウェブの運動は、この問いに対して、シンプルかつ力強い答えを突きつけます。

「ウェブは、私たちのものだ」と。

それは、自分の手でHTMLを書き、自分のドメインを取得し、自分の言葉で世界に発信する、というささやかで具体的な行動によって証明されるのです。この広大なウェブの片隅に、あなただけの小さな庭を耕すこと。それは、受け身の消費者から、能動的なウェブの「住人」へと生まれ変わるための、静かなる革命の第一歩なのです。

コラム：未来への手紙

この記事を書き終えたいま、私は自分のサイトのフッターに、新しい一文を加えようと思っています。「This website is a garden, not a feed.（このウェブサイトは庭であり、フィードではない）」。これは、未来の自分自身への手紙です。またアクセス数や反応が気になり始めたとき、フィードの喧騒に心が惹かれそうになったとき、この言葉が私を初心に立ち返らせてくれるでしょう。私の庭は、まだ小さく、雑草も生えています。しかし、私はこれからも、ゆっくりと、自分のペースで、この庭を育てていこうと思います。もしあなたがこのウェブのどこかで、私の小さな庭を見つけることがあれば、気軽に声をかけてください。縁側でお茶でも飲みながら、ゆっくりとお話しましょう。そのための時間と空間は、ここに常に用意してありますから。

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巻末資料

登場人物紹介

筆者

Web 1.0時代に青春を過ごし、フィードの喧騒に疲れてスローウェブの世界に足を踏み入れた、少し懐古趣味のウェブ愛好家。

IndieWebの友人たち

IRCやウェブリングを通じて出会った、ウェブへの情熱に溢れる人々。派手な色のCSSを愛する者、88x31ピクセルバナー職人、パフォーマンスチューニングの鬼など、個性派揃い。

Redditの賢人たち

r/webdevなどのコミュニティに生息する、技術的な知見に優れた開発者たち。時に辛辣だが、その指摘は常に的確で、筆者の技術的な指針となっている。

用語解説

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ActivityPub (アクティビティパブ)

Mastodonなどの分散型SNSで使われている、サーバー間で情報をやりとりするための標準プロトコル（通信規約）。これにより、異なるサービス間でもユーザーが相互にフォローしたり、投稿を共有したりできる。W3C（World Wide Web Consortium）によって勧告されている。W3C勧告の原文

FOMO (フォーモー)

Fear Of Missing Outの略。「何かを見逃しているのではないか」「取り残されているのではないか」という不安や恐怖感のこと。特にSNSの普及により、この感覚を抱く人が増えたとされる。

HTML (エイチティーエムエル)

HyperText Markup Languageの略。ウェブページの構造（見出し、段落、リストなど）を定義するための言語。ウェブの最も基本的な構成要素。

IndieWeb (インディーウェブ)

巨大プラットフォームから独立し、個人のウェブサイトをオンライン上のアイデンティティの中心に据えることを目指す思想・ムーブメント、およびそのための技術群。

IRC (アイアールシー)

Internet Relay Chatの略。古くから存在するテキストベースのチャットシステム。特定のトピックごとに「チャンネル」と呼ばれる部屋を作り、リアルタイムでコミュニケーションを行う。

JavaScriptフレームワーク

JavaScriptを用いたウェブアプリケーション開発を効率化するための骨組みやライブラリ群。React, Vue, Angularなどが有名。多機能だが、その分ウェブサイトが重くなる原因にもなりうる。

Mastodon (マストドン)

ActivityPubプロトコルを利用した、オープンソースの分散型SNSソフトウェア。誰でも自分のサーバー（インスタンス）を立てることができ、異なるインスタンスのユーザーとも繋がれるのが特徴。

phpBB (ピーエイチピービービー)

PHP言語で作られた、オープンソースのフォーラム（電子掲示板）ソフトウェア。2000年代初頭に、多くのオンラインコミュニティで利用された。

POSSE (ポッセ)

Publish on your Own Site, Syndicate Elsewhereの略。「まず自分のサイトに公開し、そのコピーを（SNSなどに）配信する」というIndieWebの主要なコンテンツ戦略。

React (リアクト)

Facebook（現Meta）が開発した、ウェブのUI（ユーザーインターフェース）を構築するためのJavaScriptライブラリ。現代のフロントエンド開発で最も広く使われているツールの一つ。

SSR (エスエスアール)

Server-Side Renderingの略。ユーザーのブラウザではなく、ウェブサーバー側でHTMLを生成する技術。クライアント側の負荷を減らし、初期表示速度を向上させる効果がある。

SVG (エスブイジー)

Scalable Vector Graphicsの略。XMLベースのベクター画像形式。拡大・縮小しても画質が劣化しないのが特徴で、ロゴやアイコンに適している。

Webmention (ウェブメンション)

あるウェブページが別のウェブページにリンクしたことを通知するための標準プロトコル。これにより、プラットフォームを介さずに、個人サイト間でコメントや「いいね」のようなやりとりを実現できる。W3C勧告の原文

WebP (ウェッピー)

Googleが開発した、高い圧縮率を誇る次世代画像フォーマット。同じ画質で、従来のJPEGやPNGよりもファイルサイズを大幅に小さくできる。

用語索引（アルファベット順）

• ActivityPub: Mastodonなどの分散型SNSで使われる、サーバー間で情報をやりとりするための通信規約。異なるサービス間での相互フォローや投稿共有を可能にする。W3Cによって標準化されている。
• FOMO (Fear Of Missing Out): 「取り残されることへの恐怖」。SNSなどを常にチェックしていないと不安になる心理状態を指す。(文中での言及箇所)
• HTML (HyperText Markup Language): ウェブページの骨格を作るための言語。この記事の構造もHTMLで書かれている。(文中での言及箇所)
• IndieWeb: 巨大SNSから独立し、個人のサイトをアイデンティティの中心に置くことを目指す運動。(文中での言及箇所)
• IRC (Internet Relay Chat): 古典的なテキストチャットシステム。特定の話題の部屋（チャンネル）でリアルタイムに会話する。(言及箇所1, 言及箇所2)
• JavaScript Framework: ウェブアプリ開発を楽にするためのJavaScriptの道具セット。Reactなどが有名だが、サイトを重くする一因にもなる。(文中での言及箇所)
• Mastodon: 誰でも自分のサーバーを立てられる、Twitterに似た分散型SNS。ActivityPubを採用している。(文中での言及箇所)
• phpBB: 2000年代に流行した、ウェブサイトに掲示板（フォーラム）を設置するためのソフトウェア。(文中での言及箇所)
• POSSE (Publish on your Own Site, Syndicate Elsewhere): 「まず自分のサイトに書き、そのコピーをSNSに流す」というIndieWebの考え方。コンテンツの主導権を自分に保つための戦略。(文中での言及箇所)
• React: Facebook（Meta）製で、現代ウェブ開発の主流であるJavaScriptライブラリ。UI構築に強いが、多機能ゆえに動作が重くなりがち。(文中での言及箇所)
• SSR (Server-Side Rendering): サーバー側でページを完成させてからユーザーに送る技術。表示速度の改善に繋がる。(文中での言及箇所)
• SVG (Scalable Vector Graphics): 拡大してもギザギザにならないベクター画像形式。ロゴやアイコンに最適。(文中での言及箇所)
• Webmention: 個人サイト間で「この記事に言及したよ！」と通知しあう仕組み。分散型のコメント機能を実現する。(文中での言及箇所)
• WebP: Googleが開発した画像フォーマット。キレイなままファイルサイズを小さくできる。(文中での言及箇所)

補足1: いろんな人の感想

ずんだもん、ホリエモン、ひろゆきがこの記事を読んだら…？（クリックして展開）

ずんだもんの感想

「この記事、すごくわかるのだ！ タイムラインは早すぎて目が回るし、なんだかずっと見てないと不安になるのだ。そうじゃなくて、昔の個人サイトみたいに、好きなことについてじっくり書いてあるページをのんびり読むほうが楽しいのだ。僕もずんだ餅の作り方だけの『スローなウェブサイト』を作りたいのだ。この記事を書いた人は天才なのだ！ みんなもフィードのことは忘れて、ずんだ餅を食べるのだ！」

ホリエモン風の感想

「いや、遅いとか言ってる時点で完全に思考停止してるよね。フィードが速い？当たり前じゃん、それが情報の最前線なんだから。そのスピードについていけない奴はマーケットから置いてかれるだけ。ノスタルジーに浸って個人サイトとか作ってる暇あったら、そのフィードからどうやってマネタイズするか、どうやって次のビジネスチャンス掴むか考えないと。まあ、金と時間のあるおっさんの道楽でしょ、これ。俺は1秒も無駄にしたくないから、爆速で次行くけどね。そもそもウェブサイト作るのにReact使わないとか、エンジニアのキャリア捨てるようなもんだよ（笑）」

西村ひろゆき風の感想

「それってあなたの感想ですよね？ 『フィードは疲れる』っていうけど、それって情報に優先順位つけられない無能な人ってだけじゃないすか？ まあ、広告まみれのクソみたいなまとめサイトよりは、個人のウェブサイトのほうがマシだとは思いますけど。結局、IndieWebとか言っても、その中で人気者になりたいっていう承認欲求が見え隠れしてて、やってることSNSと変わんなくないすか？なんか、データに基づいてない、ただのポエムっすよね。あと、未だにIRCとか使ってるの、ただの時代遅れじゃないすか？（笑）」

補足2: 詳細年表：パーソナルウェブとプラットフォームの興亡

ウェブの歴史を振り返る（クリックして展開）

年代	主要な出来事・技術	社会・文化的な動き	本レポートとの関連
1990-1994	- WWW (1991) の誕生 - HTML, HTTPの標準化 - 初期のWebブラウザ (Mosaic, Netscape)	- 学術・研究機関中心の利用 - テキストベースの文化	「インターネットI」の原風景
1995-1999	- GeoCities, Tripod, aol hometown - CSS Level 1 (1996) - JavaScriptの標準化 (ECMAScript) - ブログの原型 (Online diary) 登場 - phpBB (2000) のようなフォーラムソフト	- 個人ホームページ作成ブーム - ウェブリングによるコミュニティ形成 - 「テキストサイト」文化の隆盛（日本）	筆者が愛した「小さな敷地の広大なコレクション」の時代
2000-2004	- Blogger, Movable Typeの普及 - Wikipedia (2001) - RSS (Really Simple Syndication) の普及 - mixi (2004), Facebook (2004)	- ブログ文化の爆発的拡大 - ソーシャル・ネットワーキング・サービスの黎明期 - Web 2.0という概念の提唱	個人が発信する手段が多様化し、後のプラットフォーム化の萌芽
2005-2009	- YouTube (2005) - Twitter (2006) - iPhone (2007) とApp Store (2008) - Google Chrome (2008)	- 「タイムライン」「フィード」が主流に - モバイルインターネットの始まり - コンテンツの動画化・短文化	「フィードは容赦ない」時代の幕開け
2010-2015	- Instagram (2010), Pinterest (2010) - レスポンシブウェブデザインの一般化 - React (2013), Vue.js (2014) などのJSフレームワーク台頭 - IndieWebCamp (2011) 始動	- プラットフォームの寡占化が進む - アルゴリズムによるフィードのパーソナライズ - 「SNS疲れ」の顕在化 - IndieWebムーブメントの開始	筆者が離脱した「フィード」全盛期と、その対抗運動の始まり
2016-2020	- ActivityPub (W3C勧告, 2018) - Mastodonの成長 - 静的サイトジェネレーター (Gatsby, Next.js) の人気 - PWA (Progressive Web App) 技術の成熟	- 分散型SNS (Fediverse) への関心 - note.com (日本) などでの長文コンテンツ復権 - プライバシー意識の高まり	IndieWebと共振する分散型・非中央集権への技術的・社会的関心
2021-現在	- Web3, ブロックチェーン, NFTへの注目 - AIによるコンテンツ生成の一般化 - WebP, AVIFなどの次世代画像フォーマットの普及	- 巨大プラットフォームへの不信感と代替案の模索 - タイムパフォーマンス（タイパ）重視の風潮 - デジタルウェルビーイングへの関心	本レポートが書かれた背景。速度と効率性へのカウンターとしての「スローウェブ」

補足3: 潜在的読者のために

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キャッチーなタイトル案

• フィードよ、さようなら。インターネットの速度を落とすという、最もクールな選択。
• 私たちはコンテンツの消費者ではない、ウェブの住人だ。「スローウェブ」宣言。
• なぜ僕は、いいねもリツイートもない「何もない」場所に戻ってきたのか。
• 帰ってきたパーソナルウェブ：IndieWebと、もう一つのインターネット。
• Web開発者よ、リーンであれ：哲学としてのパフォーマンスチューニング。

SNS共有用ハッシュタグ案

#スローウェブ #SlowWeb #IndieWeb #SNS疲れ #デジタルデトックス #パーソナルウェブ #Webパフォーマンス #デジタルウェルビーイング

SNS共有用文章（120字以内）

絶え間ない通知とフィードに疲れたあなたへ。「スローウェブ」という選択肢。個人のサイトを取り戻し、静かで深い繋がりを育むインターネットのあり方とは。#スローウェブ #SNS疲れ #IndieWeb #デジタルデトックス

ブックマーク用タグ

[Web][SNS][IndieWeb][スローウェブ][デジタルウェルビーイング][Web開発][パフォーマンス]

ピッタリの絵文字

🐢 🐌 📝 🕸️ 🧘 ☕ 🏡 🌱

カスタムパーマリンク案

• the-slow-web-manifesto
• leaving-the-feed-for-indieweb
• reclaiming-your-personal-web
• how-to-build-a-slower-internet

補足4: 一人ノリツッコミ

関西弁でお送りします（クリックして展開）

「もうええわ！ フィードに支配される人生はもうウンザリや！ ワイはこれからは自分の言葉で、自分のサイトで、静かに発信する『スローウェブ』を始めるんや！ …って息巻いてIndieWebのwiki見に行ったら、更新情報がRSSフィードで流れてくるんかい！ 結局フィードから逃げられてへんやないかーい！ 静けさとは一体。まあ、自分で購読選んでるだけマシか…いややかましいわ！」

補足5: 大喜利

こんなスローウェブは嫌だ（クリックして展開）

• ウェブサイトを開こうとすると、「ただいま心を込めてHTMLを1バイトずつ編んでおります。お茶でも飲んでお待ちください」と表示され、本当にページの容量（KB）× 1秒待たされる。
• ハイパーリンクをクリックすると、相手のサイトの管理人に手紙が郵送され、返信のハガキが届くまでページが表示されない。
• コメントを投稿すると、返信が伝書鳩のアニメーションで届き、鳩が疲れていると数日かかる。
• 画像の`alt`属性（代替テキスト）を音読し終わるまで、次のページに進めない。

補足6: 予測されるネットの反応と反論

いろんな声が聞こえてきそう…（クリックして展開）

なんJ民

• コメント: 「おっさんの昔語りポエムやんけw ワイはリアルタイムで情報追えんと死ぬんやが。遅いとか正気か？そんな暇あったら実況スレのひとつでも多く回るわ」
• 反論: リアルタイム性の価値を否定するものではありません。しかし、すべての情報がリアルタイムである必要はなく、情報の種類に応じて接し方を選ぶ「使い分け」が、精神的な健康や深い理解に繋がるという提案です。ハンバーガーも食べれば、懐石料理も味わう。そういう多様性があってもいいのでは？

ケンモメン（嫌儲民）

• コメント: 「GAFAのクソデカプラットフォームから搾取される養分乙。個人の手にウェブを取り戻すのは正しい。でもどうせサーバー代も払えない貧乏人には無理な話なんだろ。結局、技術と金持ってるやつの道楽じゃん。俺たちは一生養分だよ」
• 反論: 確かにサーバー代はかかりますが、GitHub PagesやNetlify、Vercelなど、静的サイトなら無料で始められるホスティングサービスも増えています。重要なのは、巨大資本の論理の外側に、自分たちの手で小さな空間を作るという意志と工夫であり、必ずしも富裕層限定の活動ではありません。

ツイフェミ（と目されるアカウント）

• コメント: 「男性のノスタルジーで『古き良きネット』とか語ってるけど、当時も女性へのミソジニーやハラスメントは酷かった。管理者のいない無法地帯より、通報・ブロック機能が整備されたプラットフォームの方がマシ。安全性の視点が欠けている。」
• 反論: ご指摘の通り、過去のインターネットの負の側面を無視すべきではありません。IndieWebやMastodonなどの分散型ネットワークでは、個人やサーバー管理者が独自のルール（行動規範）を設け、ブロックや非公開設定を駆使して安全な空間を作る試みがなされています。これは、巨大プラットフォームの画一的なルールとは異なる、小規模コミュニティごとの自治的な安全確保のあり方を探る動きであり、非常に重要な論点です。

爆サイ民

• コメント: 「スロー？ かったるいんだよ！ こういう意識高い系のポエムが一番サムい。黙ってろや。俺は速攻でレスバしたいんだよ」
• 反論: スピードや効率性を求める価値観も一つですが、世の中の全員が同じ価値観を共有する必要はありません。多様なウェブのあり方の一つとして、このような選択肢があっても良いのではないでしょうか。高速道路もあれば、散歩道もあるべきです。

Reddit / Hacker News

• コメント: "The critique of the 'feed' is valid, but the conflation of 'slow web' (philosophy) and 'fast-loading site' (performance) is a bit confusing. That said, the discussion on ditching React for progressively enhanced HTML is spot on. We need more focus on lean web development." (「フィード」への批判は妥当だが、「スローウェブ」（哲学）と「高速読み込みサイト」（パフォーマンス）を混同しているのは少し紛らわしい。とはいえ、Reactを捨ててプログレッシブエンハンスメントされたHTMLに移行する議論は的を射ている。もっとリーンなウェブ開発に焦点を当てる必要がある。)
• 反論: The connection is that a lean, fast-loading site respects the user's resources (time, data, battery), which aligns with the 'Slow Web' philosophy of creating a more humane and intentional online experience. It's about being slow in consumption and interaction, but fast and efficient in delivery. (その繋がりとは、リーンで高速に読み込まれるサイトはユーザーのリソース（時間、データ、バッテリー）を尊重するものであり、それはより人間的で意図的なオンライン体験を創り出すという「スローウェブ」の哲学と一致します。消費と対話はゆっくりと、しかし配信は速く効率的に、ということです。)

目黒孝二風書評

• 書評: 「本書は、速度という名の悪魔に魂を売り渡した現代インターネットへの痛烈な告発状である。タイムラインの奔流に押し流され、我々はいつしか『考える』ことをやめ、『反応する』だけの存在に成り下がった。著者はその流れに抗い、かつて我々が愛した＜ウェブ＞の原風景――個人の言葉が静かに息づく場所――へと読者を誘う。これは単なる懐古趣味ではない。デジタル社会における人間性の回復を問う、静かなる革命の狼煙なのだ。行間から聞こえるのは、メガバイト単位の喧騒ではなく、魂の静かな囁きである。」
• 反論: ありがとうございます。しかし、これは革命の狼煙というほど大げさなものではなく、巨大なショッピングモールの隣で、自分の手で小さな家庭菜園を始めるような、ささやかで個人的な実践の記録なのです。その土の匂いを、少しでも感じていただけたなら幸いです。

補足7: 学びを深めるために

クイズとレポート課題（クリックして展開）

高校生向けの4択クイズ

問1. 筆者が批判している「フィード」中心のインターネットの特徴として、最も当てはまらないものはどれ？

1. 新しい情報が次々と流れてきて、終わりがない。
2. ユーザーは、何を見るか完全にコントロールできる。
3. コンテンツをじっくり味わうより「消費」する感覚になる。
4. 常に他の人の反応を気にしなくてはならない。

答え: 2. （筆者は、アルゴリズムによって表示されるものが決まり、ユーザーは受動的になりがちだと主張している）

問2. 筆者が提唱する「スローウェブ」の考え方に最も近いものはどれ？

1. インターネット回線の速度をわざと遅くして使うこと。
2. 返信に1週間以上かけるなど、コミュニケーションを意図的に遅らせること。
3. 即時の反応を求めず、自分のペースで発信したり、他者の考えをじっくり読んだりすること。
4. 昔のコンピューターを使ってインターネットに接続すること。

答え: 3. （「スロー」とは物理的な速度ではなく、精神的な関わり方のことを指している）

問3. 後半の技術議論で、低速回線や古いスマートフォンでも快適なウェブサイトを作るために「避けるべき」とされているものはどれ？

1. HTMLをたくさん使うこと。
2. Reactのような、多機能で重いJavaScriptフレームワーク。
3. WebP形式のような、ファイルサイズが軽くなる画像形式。
4. 必要な情報だけをサーバーから送るサーバーサイドレンダリング。

答え: 2. （多機能な分、ファイルサイズが大きくなり、古い端末では動作が遅くなる原因になると指摘されている）

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大学生向けのレポート課題

課題1（情報社会学・メディア論）:
本稿で提示された「スローウェブ」の概念と、現代社会における「タイムパフォーマンス（タイパ）」重視の風潮との関係性について論ぜよ。スローウェブはタイパ文化への有効なカウンターカルチャーとなりうるか、あるいは単なる一部のノスタルジーに過ぎないか。日本のインターネット文化（例：テキストサイト、mixi、2ちゃんねる、noteなど）の変遷を踏まえ、具体的な事例を挙げて考察すること。（2000字程度）

課題2（ウェブ工学・HCI）:
本稿の第6章で述べられた「リーンであることの哲学」に基づき、あなたが考える「スローウェブ」を具現化するウェブサイトまたはウェブアプリケーションの設計案を提案せよ。その際、以下の点について具体的に記述すること。
1. サイトの目的とターゲットユーザー
2. 思想を反映したUI/UXデザイン（無限スクロールや通知の扱いなど）
3. 技術選定（フレームワーク、レンダリング手法、画像最適化など）とその理由
（A4用紙2枚程度、図やワイヤーフレームを含んでも良い）