#黒海経済協力機構(BSEC)および黒海貿易開発銀行(BSTDB )とは何か? #三26
黒海経済は、黒海地域における経済活動や資源の利用に関連する重要なテーマです。この地域は、さまざまな経済的機会と課題を抱えており、特にブルーエコノミーや循環経済の観点から注目されています。
黒海のブルーエコノミー
黒海のブルーエコノミーは、海洋資源の持続可能な利用を通じて地域経済を活性化することを目指しています。最近の研究では、黒海の生態系が気候変動や人間の活動によって深刻な影響を受けていることが指摘されていますが、同時にその潜在能力も強調されています。トルコのトラブゾンで開催された「多様なステークホルダーの参加を促すフォーラム」では、ブルーエコノミーの17の分野にわたる課題と機会が議論され、効率的な協力が重要であることが示されました。
循環経済の導入
黒海地域では、循環経済のモデルが注目されています。特にロシアの黒海地域では、資源の持続可能な利用を促進するための新しい管理モデルが求められています。観光、農業、海洋経済活動が重要な役割を果たしており、これらの分野での循環モデルの適用が提案されています。循環経済の導入は、地域の持続可能な発展に向けた重要なステップとされています。
地域間の協力と研究の重要性
黒海地域の経済発展には、国際的な協力と研究の強化が不可欠です。例えば、黒海戦略研究とイノベーションアジェンダ(Black Sea SRIA)は、持続可能な管理のための優先事項を設定し、地域の研究機関や産業界との連携を強化することを目指しています。これにより、黒海地域の経済の持続可能性が高まり、地域社会の発展に寄与することが期待されています。
このように、黒海経済は多様な側面を持ち、持続可能な発展に向けた取り組みが進められています。地域の特性を生かしつつ、国際的な協力を通じて新たな経済モデルを構築することが求められています。
「黒海経済」という言葉は、主に以下の二つの意味合いで使われます。
黒海沿岸地域の経済活動全般:
地理的範囲: 黒海に面する国々(トルコ、ロシア、ウクライナ、ブルガリア、ルーマニア、ジョージア)および、それらの国々の黒海沿岸地域を中心とした経済圏を指します。モルドバやアルメニア、アゼルバイジャン、ギリシャ、アルバニア、セルビアなど、直接面してはいないものの経済的に関わりの深い国々が含まれることもあります。
経済的重要性:
交通・物流の要衝: ヨーロッパ、アジア、中東を結ぶ重要な海上輸送ルートであり、特に穀物(ウクライナ、ロシア)、エネルギー資源(ロシア、カスピ海地域からのパイプライン経由)の輸出において極めて重要な役割を担っています。ボスポラス海峡とダーダネルス海峡(トルコ海峡)は、地中海への唯一の出口として戦略的なチョークポイントです。
エネルギー回廊: ロシアやカスピ海地域からの石油・天然ガスパイプラインが通過・集積する地域であり、ヨーロッパへのエネルギー供給において重要な位置を占めます。
農業地帯: 特にウクライナとロシア南部は「世界のパンかご」とも呼ばれる豊かな穀倉地帯を抱えています。
観光: 黒海沿岸は多くの国でリゾート地として開発されており、観光業も重要な産業です。
漁業: 伝統的に漁業も行われています。
黒海経済協力機構(BSEC)は、1992年に設立された地域協力のための国際組織であり、黒海地域の経済発展を促進することを目的としています。BSECは、以下の国々から構成されています:
- アルバニア
- アルメニア
- アゼルバイジャン
- ブルガリア
- ジョージア
- ギリシャ
- モルドバ
- ルーマニア
- ロシア
- トルコ
- ウクライナ
- セルビア(2004年に加盟)
BSECの目的と活動
BSECの主な目的は、地域の経済協力を強化し、貿易、投資、エネルギー、交通、環境保護などの分野での協力を促進することです。具体的な活動には以下が含まれます:
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経済発展の促進: BSECは、加盟国間の貿易と投資を促進し、経済成長を支援するための政策を策定しています。
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環境保護: 環境問題に対処するための協力を強化し、持続可能な開発を目指しています。特に、黒海の環境保護に関する協定や行動計画が策定されています。
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地域の安定と安全: BSECは、地域の平和と安定を維持するための対話と協力の場を提供しています。これにより、加盟国間の友好関係を促進し、緊張を緩和することを目指しています。
最近の動向
最近では、COVID-19パンデミックからの回復を支援するための取り組みが行われており、交通、健康、貿易、観光などの優先分野に焦点を当てています。また、デジタル経済やグリーンエネルギーの推進にも力を入れています。
BSECは、地域の経済的な統合を進めるための重要な枠組みであり、加盟国間の協力を強化するための多様な戦略を展開しています。これにより、黒海地域の持続可能な発展と安定が期待されています。
目的: 黒海地域の平和、安定、繁栄を目的として、加盟国間の経済協力(貿易、運輸、エネルギー、通信、環境保護、観光、科学技術など多岐にわたる分野)を促進するために1992年に設立された国際機関です。
加盟国: 上記の沿岸6カ国に加え、アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ギリシャ、モルドバ、セルビア(計12カ国)。
現状と課題: 加盟国間の政治的対立(特にロシアとウクライナ、アルメニアとアゼルバイジャンなど)により、協力が円滑に進まない場面も多く、その活動は限定的なものとなっています。
現在の状況:
近年、特に2022年以降のロシアによるウクライナ侵攻により、黒海経済は甚大な影響を受けています。ウクライナの港湾からの穀物輸出が妨げられ、世界の食料安全保障に大きな影響を与えました(黒海穀物イニシアティブによる一時的な再開と停止などがありました)。また、海上輸送のリスク増大、エネルギー供給網の混乱、地域全体の地政学的緊張の高まりなど、経済活動全体が不安定な状況に置かれています。
要約すると、「黒海経済」とは、地政学的・経済的に重要な黒海沿岸地域の経済活動全体を指す言葉であり、同時にその地域協力を目指す国際機関(BSEC)の名称にも関連しています。しかし、現在は紛争や政治的対立により、その潜在能力が十分に発揮されず、不安定な状況にあると言えます。
先ほどの国々の一人当たり名目GDP(IMFによる2023年推定値)を高い順に並べ替えます。
国名 一人当たり名目GDP (2023年推定値、米ドル)
- ギリシャ (Greece) 約 23,156ドル
- ルーマニア (Romania) 約 18,570ドル
- ブルガリア (Bulgaria) 約 15,898ドル
- トルコ (Turkey) 約 13,384ドル
- ロシア (Russia) 約 13,006ドル
- セルビア (Serbia) 約 11,731ドル
- アルメニア (Armenia) 約 8,280ドル
- ジョージア (Georgia) 約 8,164ドル
- アルバニア (Albania) 約 8,024ドル
- アゼルバイジャン (Azerbaijan) 約 7,713ドル
- モルドバ (Moldova) 約 6,518ドル
- ウクライナ (Ukraine) 約 5,225ドル
注記:
これはIMFによる2023年の推定値です。
名目GDPであり、購買力平価(PPP)ベースではありません。
経済状況は変動する可能性があります。
出典は世界銀行(World Bank)のデータ(主に2021年)。 人口置換水準(約2.1)と比較すると、ジョージアを除く全ての国がこれを下回っています。
設立: 1992年6月25日にトルコのイスタンブールで、11カ国の首脳が「ボスポラス宣言」に署名し、政治的な取り組みとして発足しました。 1999年5月1日に正式な国際機関として憲章が発効しました。
目的: 加盟国間の 経済関係の多角化・深化 (貿易・経済開発、銀行・金融、通信、エネルギー、運輸、農業、保健、環境保護、観光、科学技術など)。黒海地域を 平和、安定、繁栄の地域 とすること。欧州および国際社会への 統合 を促進すること。
加盟国 (12カ国): 黒海沿岸国: トルコ、ロシア、ウクライナ、ブルガリア、ルーマニア、ジョージアその他周辺国: アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ギリシャ、モルドバ、セルビア(当初11カ国で発足し、後にセルビアが加盟)
主な活動分野: 貿易・経済開発 運輸・交通 エネルギー 通信 科学技術 環境保護 観光 農業・アグリビジネス 組織犯罪対策(テロ、麻薬、武器密輸など) 中小企業支援 緊急事態支援 など、非常に多岐にわたります。
組織構造: 首脳会議: 最高意思決定機関(不定期開催)。外相理事会: 主要な意思決定・運営機関(年2回開催)。常設国際事務局: トルコのイスタンブールに設置。その他、関連機関として黒海貿易開発銀行(BSTDB)、BSECビジネス評議会、黒海研究国際センター(ICBSS)などがあります。
現状と課題: 加盟国間には良好な関係だけでなく、深刻な 政治的対立 (例: ロシアとウクライナ、アルメニアとアゼルバイジャン、ロシアとジョージアなど)を抱えている場合が多く、これがBSEC全体の協力活動を大きく制約しています。合意形成が難しく、具体的な協力プロジェクトの実施が限定的になることがあります。 特に近年のロシアによるウクライナ侵攻は、BSECの機能や存在意義そのものに大きな打撃を与えています。 しかし、対立がありながらも、経済的な相互依存関係や共通の課題(環境問題など)も存在するため、対話と協力の枠組みとしての潜在的な重要性は依然として指摘されています。
黒海貿易開発銀行(BSTDB)は、黒海地域の経済発展を促進するために設立された国際金融機関です。この銀行は、地域の国々に対して投資や融資を行い、経済協力を強化することを目的としています。
黒海貿易開発銀行の役割
BSTDBは、黒海地域における貿易と投資の促進を通じて、経済成長を支援しています。具体的には、以下のような役割を果たしています:
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融資と投資: 銀行は、インフラプロジェクトや企業の成長を支援するために、資金を提供します。これにより、地域の経済活動が活性化されます。
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経済協力の促進: BSTDBは、加盟国間の経済的な連携を強化し、貿易の障壁を低減するための取り組みを行っています。これにより、地域全体の経済的な安定性が向上します。
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技術支援と専門知識の提供: 銀行は、プロジェクトの実施に必要な技術的な支援や専門知識を提供し、地域の開発能力を向上させることを目指しています。
最近の動向と課題
最近の研究では、黒海地域のエネルギー協力や貿易の動向が注目されています。特に、地域の安定性を確保するためには、外部の影響を受けやすいこの地域での協力が重要です。BSTDBは、こうした課題に対処するための新しい戦略を模索しており、地域の国々が協力していくための枠組みを提供しています。
また、黒海地域の経済発展には、持続可能な開発や環境保護も重要な要素です。BSTDBは、これらの目標を達成するために、地域の特性に応じた投資戦略を策定する必要があります。
このように、黒海貿易開発銀行は、地域の経済成長と安定に向けた重要な役割を果たしており、今後の発展が期待されています。
ギリシャ (Greece): 16.5% ロシア連邦 (Russian Federation): 16.5% トルコ (Turkey): 16.5% --- (上記3カ国が同率で最大) --- ルーマニア (Romania): 14.0% ブルガリア (Bulgaria): 13.5% ウクライナ (Ukraine): 13.5% --- (上記3カ国が次いで大きな割合を占める) --- アゼルバイジャン (Azerbaijan): 5.0% アルバニア (Albania): 2.0% アルメニア (Armenia): 1.0% ジョージア (Georgia): 1.0% モルドバ (Moldova): 0.5%
地政学的な不安定性と加盟国間の対立: ロシアによるウクライナ侵攻: これが最も深刻な課題です。主要出資国であるロシアとウクライナが直接的な戦争状態にあることは、銀行の運営、意思決定、プロジェクト実施において計り知れない困難をもたらしています。協力関係の構築という銀行の根幹を揺るがす事態です。その他の対立: アルメニアとアゼルバイジャン間のナゴルノ・カラバフを巡る対立(現在はアゼルバイジャンが支配)や、ロシアとジョージアの関係など、他の加盟国間にも緊張関係が存在し、円滑な協力の妨げとなっています。
制裁の影響: 主要出資国であるロシアに対して多くの国が経済制裁を科しており、これがBSTDBの活動にも影響を与える可能性があります。ロシア関連の取引や資金調達、他の国際機関との連携などに制約が生じる恐れがあります。
ガバナンスと意思決定の困難: 加盟国間の政治的対立が、銀行の理事会などにおける意思決定プロセスに影響を与え、迅速かつ効果的な判断を妨げる可能性があります。特に、全会一致やコンセンサスが求められる事項では、対立が膠着状態を招きかねません。
信用リスクの増大: 紛争や経済不安は、融資先の企業の経営状況を悪化させ、貸し倒れリスクを高めます。特にウクライナ国内や紛争の影響を強く受ける地域のプロジェクトに対するリスクは極めて高くなっています。これにより、銀行の財務健全性が脅かされる可能性があります。
資金調達環境の悪化: 地域の地政学的リスクが高まることで、BSTDBが国際金融市場で資金を調達する際のコストが上昇したり、資金調達自体が困難になったりする可能性があります。銀行の信用格付けにも影響が出かねません。
地域協力促進という本来の目的達成の困難: 加盟国間の対立が深まる中で、国境を越えたインフラプロジェクトや共同事業など、本来BSTDBが推進すべき地域協力型のプロジェクトを形成・実施することが非常に難しくなっています。
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