#関税は一般に貿易赤字を補うものではない #三08

 https://archive.is/sZRs9　関税反対訴訟が活発化する中、経済学者たちは、輸入品に対する課税が貿易赤字を減少させるのではなく、逆に増加させる可能性があることを長年指摘しています。ドナルド・トランプ大統領は、貿易赤字は悪であり、関税はその解決策であると主張していますが、経済の実態は異なります。高い関税が課せられる国は、貿易赤字が大きいというデータも存在しており、この主張を裏付けています。 具体的には、米国の輸出業者は、材料を海外から調達するために関税を支払うことでコスト増を招き、国際競争力が低下し、貿易赤字を引き起こす結果になります。

貿易赤字の要因には、貯蓄制度、財政政策、経済成長率、富の分配、人口動態などが挙げられ、関税の影響は限られています。

また、為替操作について問題視されていますが、中国は今や通貨の価値を支える立場にあります。 通貨の価値が上昇すると、輸出が難しくなるため、関税が貿易収支に与える影響は正味の効果を制限します。トランプ大統領が関税を使った投資促進の期待を寄せているのも、結局は貿易赤字の削減には結びつかないことを示しています。

彼は海外投資を促進しながら貿易赤字を減らしたいと望んでいますが、実際には相反する目標です。 財政赤字の拡大が貿易赤字に及ぼす影響についての意見も分かれていますが、一般的には、財政赤字の増加が貿易収支を悪化させる可能性が高いです。多くのトランプ政策は、経済全体にわたって厳しい状況を引き起こすことが懸念されています。

一部の専門家は、米国の貿易赤字は他国の産業政策の影響によるものであるとし、強力な産業政策を推奨していますが、それでも貿易赤字を減少させるには限界があります。 最終的には、長期的な解決策として国民の貯蓄率の向上が重要です。しかし、これを達成するには時間がかかるため、現状の治療法には疑問を持つべきだという意見が強まっています。

経済学者たちは、関税の引き上げが貿易赤字を削減しないことを長く理解しており、データもそれを裏付けているという議論についてですね。スレッドの内容をまとめ、詳しく解説します。

議論の要点まとめ

1. 関税と貿易赤字の関係:

   • 経済学者の間では、関税を引き上げても貿易赤字は減少しないというのが一般的な見解です。むしろ、関税の高い国は貿易赤字が大きくなる傾向があるというデータも存在します。
   • アメリカの輸出企業（ボーイング、GM、キャタピラーなど）は、海外からの部品や材料に依存しています。関税によって輸入コストが上がると、これらの企業の国際競争力が低下し、結果的に貿易赤字が増加する可能性があります。
   • 貿易赤字が増加する原因は、関税だけとは限りません。貯蓄、財政政策、経済成長率、国民の豊かさ、人口構成など、多くの要因が複雑に絡み合っています。研究によると、貿易障壁（関税など）が貿易収支に与える影響は限定的です。

2. トランプ大統領の政策の矛盾:

   • トランプ大統領は、関税を武器に外国企業にアメリカ国内への投資を促そうとしていますが、これは貿易赤字削減には繋がりにくいと考えられます。
   • 外国からの投資が増えると、ドル高になり、アメリカからの輸出が不利になります。つまり、外国投資の増加と貿易赤字の削減は、同時に達成することが難しい目標です。
   • この点は、トランプ大統領の通商政策の矛盾点の一つと言えるでしょう。

3. 貿易赤字は悪なのか？:

   • 貿易赤字は、必ずしも悪いものではありません。外国からの投資を多く受け入れている結果である場合もあり、適切に管理されていれば、むしろ良い側面もあります。
   • 輸入超過は、海外からの投資によって賄われているという見方もできます。

4. トランプ大統領の関税政策の意図:

   • トランプ大統領は、関税が貿易赤字削減に効果がないことを理解している可能性もありますが、政治的な目的で関税を利用している可能性があります。
   • 「貿易赤字は悪いもので、自分が是正できる」という姿勢を示すことで、支持を集めようとしているのかもしれません。

5. 関税の合法性:

   • アメリカでは、通常、関税を課す権限は議会にあります。ただし、戦争時などの非常事態には大統領にも認められる場合があります。
   • トランプ大統領は、「麻薬や移民問題」を理由に非常事態を宣言し、関税を課そうとしていますが、これが正当な理由なのか、憲法上の疑義が指摘されています。
   • 議会や司法のチェック機能が十分に働いていない現状も懸念されています。

補足

• 相関関係と因果関係: スレッドでも指摘されているように、データ上で関税が高い国が貿易赤字も大きいという相関関係が見られても、それが「関税が高いから貿易赤字が大きい」という因果関係を示すとは限りません。しかし、少なくとも「関税を上げれば貿易赤字が減る」という単純な理屈は、データからは支持されないと言えます。

• 政治利用の可能性: トランプ大統領の関税政策は、経済的な合理性よりも、国内向けの政治的なアピールや、特定の国への圧力といった意図が強い可能性があります。

• アメリカの政治システムへの影響: 関税の合法性に関する議論は、アメリカの政治システムにおける権力分立やチェック・アンド・バランスの機能不全といった、より大きな問題にも繋がっています。

まとめ

このスレッドでは、関税引き上げが貿易赤字削減に効果がないという経済学の一般的な見解が改めて確認されています。また、トランプ大統領の関税政策の矛盾点や、その背後にある政治的な意図、さらにはアメリカの政治システムの現状に対する懸念などが議論されています。

貿易赤字とは何か？

まず、貿易赤字とは、ある国がある一定期間（通常は1年間）に輸入した商品の総額が、輸出した商品の総額を上回る状態を指します。簡単に言えば、「輸入 ＞ 輸出」の状態です。

貿易赤字が「悪い」と言われる理由と、その反論

1. 雇用への影響：

• 悪い側面： 伝統的な考え方では、貿易赤字は国内産業が海外からの安い輸入品との競争に苦戦し、国内の生産が減少し、雇用が失われると考えられてきました。特に製造業において、輸入増加は国内産業の衰退を招き、失業につながるという懸念があります。
• 反論： しかし、現代経済においては、この単純な図式は必ずしも当てはまりません。
  • グローバルサプライチェーン： 多くの製品は、複数の国で部品が製造され、組み立てられるグローバルサプライチェーンによって生産されています。輸入は、国内企業の生産活動に不可欠な中間財や資本財である場合も多く、輸入を制限することは、国内企業の競争力を損なう可能性があります。
  • サービス経済化： 先進国経済はサービス部門が中心となりつつあり、貿易赤字の多くはモノの貿易で発生しますが、サービスの貿易黒字で相殺される場合もあります。
  • 雇用創出の分野の変化： 貿易赤字によって製造業の雇用が減少する可能性はありますが、その一方で、輸入された商品を利用した国内の小売業、サービス業、物流業などで新たな雇用が生まれる可能性もあります。

2. 経済成長への影響：

• 悪い側面： 貿易赤字は、国内の需要が国内生産だけでは満たされず、海外からの輸入に頼っている状態を示すとも言えます。これは、国内経済が自立しておらず、海外経済に依存している状態であると捉えられることがあります。また、貿易赤字が累積すると、対外債務が増加し、将来の経済成長を圧迫する可能性があると懸念されます。
• 反論：
  • 投資の呼び込み： 貿易赤字は、海外からの投資を呼び込んでいる結果である場合もあります。貿易赤字が発生している国は、投資先として魅力的である場合が多いのです。なぜなら、その国には消費意欲があり、経済成長の潜在力があると考えられるからです。海外からの投資は、国内の資本ストックを増やし、生産性を向上させ、長期的な経済成長を促進する可能性があります。
  • 消費者の利益： 貿易赤字は、国内の消費者が海外の安価で多様な商品を購入できることを意味します。これにより、消費者の生活水準が向上し、実質的な購買力が増加する可能性があります。
  • 一時的な現象： 貿易赤字は、一時的な経済状況や為替レートの変動によって発生する可能性もあります。例えば、国内の景気が過熱気味で輸入が急増した場合や、自国通貨が高くなった場合などです。このような場合、貿易赤字は必ずしも悪い兆候とは言えません。

3. 通貨価値への影響：

• 悪い側面： 貿易赤字が継続すると、自国通貨の価値が下落する可能性があります。これは、輸入品の価格上昇を招き、インフレを招く可能性があります。また、通貨価値の下落は、対外債務の負担を増やす可能性もあります。
• 反論：
  • 為替レートの調整機能： 為替レートは、貿易収支の不均衡を自動的に調整する機能を持っています。貿易赤字が拡大すれば、自国通貨が下落し、輸出が促進され、輸入が抑制されることで、貿易収支は徐々に均衡に向かうと考えられます。
  • 意図的な通貨安誘導の可能性： 一部の国は、輸出競争力を高めるために、意図的に自国通貨安を誘導する政策をとることがあります。このような場合、貿易赤字は政策的な意図によるものであり、必ずしも悪い状況とは言えません。

貿易赤字が良い場合もありうるケース

• 成長のための投資: 貿易赤字が、国内の生産能力を高めるための投資（例えば、機械設備や技術の輸入）によって引き起こされている場合、それは将来の経済成長のための準備段階であると解釈できます。
• 海外からの投資流入: 貿易赤字が、海外からの直接投資や証券投資などの資本流入によって賄われている場合、それは海外からの資金が国内経済に流入し、経済活動を活発化させていることを意味します。
• 資源の有効活用: 国内で生産するよりも、海外から安価な資源や製品を輸入する方が効率的な場合、貿易赤字は資源の最適な配分を反映していると言えます。

貿易赤字が警戒すべき場合

• 持続不可能な赤字: 貿易赤字が過度に大きく、かつ持続不可能である場合、将来的に経済的な問題を引き起こす可能性があります。例えば、対外債務が累積し、返済が困難になる、通貨価値が急落し、経済が不安定になるなどです。
• 消費主導の赤字: 貿易赤字が、投資ではなく、主に消費財の輸入によって引き起こされている場合、それは将来の生産能力の向上に繋がりにくく、長期的な経済成長には貢献しにくい可能性があります。
• 国内産業の空洞化: 貿易赤字が、国内産業が海外との競争に敗れ、衰退していく過程で発生している場合、雇用喪失や技術流出などの問題を引き起こす可能性があります。

重要な視点：経常収支

貿易赤字を議論する際には、貿易収支だけでなく、経常収支全体を見る必要があります。経常収支は、貿易収支に加えて、サービス収支、第一次所得収支（投資からの収益など）、第二次所得収支（政府間の援助など）を含めたものです。

貿易赤字（貿易収支の赤字）であっても、サービス収支や所得収支が黒字であれば、経常収支全体としては黒字になることもあります。経常収支は、より包括的に国の対外的な経済活動を示す指標であり、貿易赤字の評価においても、経常収支の状況を考慮することが重要です。

まとめ

貿易赤字は、単純に「良い」「悪い」と二分できるものではありません。その国の経済状況、貿易構造、為替レート、資本移動など、様々な要因が複雑に絡み合って発生する現象であり、多角的な視点からの分析が必要です。

貿易赤字を評価する際には、以下の点を考慮することが重要です。

• 貿易赤字の規模と持続可能性: 過度に大きく、持続不可能な赤字は警戒が必要です。
• 貿易赤字の原因: 投資主導なのか、消費主導なのか、どのような要因で貿易赤字が発生しているのかを分析することが重要です。
• 経常収支の状況: 貿易収支だけでなく、経常収支全体の状況を見て、国の対外的な経済活動を評価する必要があります。

貿易赤字について議論する際には、感情的な反応や単純な善悪の二元論に陥らず、データに基づいた冷静な分析と、多角的な視点を持つことが不可欠です。