#トランプは貿易赤字を減らせるか？ #士17

 この投稿は、ポール・クルーグマンがトランプ大統領の貿易政策と関税の影響について論じたものであり、特に米国の貿易赤字削減の可能性とその結果について検討しています。

彼は、トランプ氏が貿易赤字を被害者として捉えているが、その分析が誤りであることを指摘し、関税が貿易赤字を削減する可能性はあるものの、それがトランプ氏が想定する理由ではないと主張します。 

クルーグマンは、米国の貿易赤字が多額の資本流入に起因していることを強調し、関税がこの資本流入を減少させる可能性があると述べています。具体的には、関税が物品貿易に対する障壁となり、国際資本の流動性を妨げることが、結果的に貿易赤字の縮小につながる可能性があると説明します。 また、彼はトランプ大統領の過去の関税政策が、部分均衡分析に基づいて逆効果を生む可能性があることを示唆し、直接的な影響だけでなく、間接的なマクロ経済的影響や為替レートへの影響も考慮する必要があると述べています。

特に、米国がグローバルバリューチェーンに深く組み込まれているため、関税が製造業に対して逆効果をもたらす危険性があると警告しています。 さらに、関税が報復行動を引き起こす可能性も示し、米国の経済力に対する誇張された感覚が影響を及ぼすとしています。クルーグマンは、米国の輸出が輸入よりも少なく、対外関税の影響が米国の輸入に対する関税の影響を相殺する可能性があると指摘し、農業など輸出に依存する業界への影響を懸念しています。 

結論として、クルーグマンは、関税によって貿易赤字が縮小することはあり得るが、それは米国への資本流入が減少することによるものであり、結果として国際経済に悪影響を及ぼすことになると警告しています。彼は、トランプ大統領の政策が経済的に破壊的な結果をもたらす可能性が高いと結論づけています。

クルーグマンの「トランプは貿易赤字を減らせるか？」という記事では、トランプ政権の関税政策が貿易赤字に与える影響について考察されています。彼は、一般的な見解として、貿易赤字は部分均衡と一般均衡の観点から減少しないと述べています。部分均衡の視点から見ると、米国の製造業はグローバルバリューチェーンに深く依存しており、関税の引き上げは生産コストを上昇させ、雇用を減少させる可能性が高いと指摘しています。また、関税が報復関税を引き起こすことも懸念されています。さらに、米国は世界の貿易パワーとして購買力平価で中国に後れを取っており、EUや中国からの反応も強力であることが示されています。 一般均衡の視点では、貿易収支、純投資収益、純資本流入の恒等式に基づいて、資本流入が減少しない限り経常赤字は減らないと説明しています。つまり、関税で貿易赤字を減らそうとする試みは、別の場所で赤字を引き起こすことになるというのです。クルーグマンは、貿易赤字が減らないのは資本流入が一定であるという仮定に基づいているが、実際には資本流入が減少する可能性があると指摘します。 この資本流入の主要な理由は、米国の人口動態にあります。先進国全体が高齢化する中、米国は比較的労働力人口の伸びが小さいため、資本を引き付けています。しかし、トランプが不法移民を強制送還する場合、その利点が失われる可能性があります。また、財の貿易障壁が資本移動を妨げることも重要な論点であり、これについての研究は限られています。 クルーグマンは、例えば火星と地球の間で資本移動が成立するかを考え、貿易がなければ資本の移動もないと結論付けます。現実的なモデルでは、A国の投資に対する実質収益率がB国より高い場合に資本が流れ、貿易赤字が生じることが示されています。関税が生産物の取引を制限すると、米国の貿易赤字を維持するためにはドルが大幅に増価する必要があると述べています。 最終的に、トランプの貿易赤字削減の試みは失望に終わる可能性が高いが、もし成功した場合でも、それは国際資本市場や世界貿易システムを損なう形での成功になると警告しています。