卒論 ビットコインを擁護し、未来の貨幣を想像する 9 貨幣形態Xの要件

3 貨幣形態Xの要件

この章では効用価値説の批判し、これまでの議論をふまえ未来の貨幣、貨幣形態Xの要件を抽出する。貨幣形態Xは効率的市場仮説に合致するものである。

 貨幣形態Xは効用に対して重要視すべきでない。経済は消費だけでは成り立たない。生産と消費の両輪によって成り立っている。このことから未来の通貨は「労働=効用(使用価値)」の完全情報ゲームを満たすべきである。ならばこの貨幣そのものが労働価値を表しつつ、同時に使用価値(交換価値は無視する)を表現しなければならない、つまり一物一価の法則そのものである。よって貨幣形態Xの要件として①貨幣形態Xは労働価値=使用価値を代表する。が見いだせる。

 労働価値を貨幣化すると聞くと、プルードンの労働証票が思いつく人もいるだろう。しかしこれは妥協的なものである。なぜならプルードンは労働価値をその労働時間で示したからである。労働時間では=使用価値となるような厳密さがない。サボタージュしたとしても同じ労働量に計量してしまうからだ。未来の貨幣では労働時間のような曖昧性のある概念ではなく。厳密に計量可能な労働量を表現できる尺度の概念でなければならない。ここから②貨幣形態Xは労働価値の厳密な尺度。を回収する。

 ここまでで①労働価値であること②労働価値の尺度であること。がわかった。しかしこれだけでは貨幣形態Xにはならないそれは、貨幣経済が市場の失敗を繰り返す中での主犯、交換価値の肥大化から生まれる希少性を超越しなければならない。③は貨幣形態Xに最も重要なことである。希少性を超越するとはどういうことか。

 過去に貨幣は限られた通貨圏内で短期的に流通してきた。その価値は限られた圏内では良好に通用したが、空間的時間的圏外に達すると流通不全を起こし、その価値を変化させ多くは失われ、再び新たな貨幣が生まれる。生成変化の差異に人々は希少性などを見出し交換価値として肥大化させる。この希少性が権力となって人々を誘引することは既に述べた。これは貨幣が一般的等価物として受け入れられているからだ。貨幣形態Xは一般性を超える。空間や時間的な境界を、つまり希少性を超克した価値、普遍的価値、普遍的等価物として現れる。ここから③普遍的等価物である、が抽出される。

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